キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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後二話くらいで韓攻め終わりにして山陽行きたい


第十七話「韓攻め3」

「白老からの命令だ。南陽に向かうぞ」

 

 韓への侵攻からひと月が経過した。蒙驁将軍及び桓騎達副将によって韓は11の城を僅か一月で失う事となった。その結果として第一目標だった安方という城を越えて南陽へと攻め入る事が決定されたのだ。

 

「南陽の手前にある最後のでけぇ城は白老が担当する。俺たちは先に向かって南陽の動きを注視する」

 

 もし、苦戦するようであればその手前にある安方や介泉で侵攻を終える予定であったが僅か一月で落とせたことで最終目標の南陽を攻める事を決定したのである。

 蒙驁は介泉を攻撃し、桓騎は攻撃中の蒙驁軍が南陽軍の攻撃を受けないように見張りを行い、もう一人の副将は南部からの攻撃に警戒することとなった。とはいえ蒙驁軍を狙って攻撃するのであればそれは南陽以外にはおらず、それはつまり博王谷が出てくる事を意味していた。

 

「ま、本当に出てきた場合にゃ適当に相手して逃げるがな」

 

 蒙驁自身からも「無理して防衛することはない。守れないと判断したのなら引いて良し」と伝言を受け取っている。桓騎軍はそう言った忍耐力が必要な戦い方は苦手としているための言葉だった。

 そのため、桓騎は自軍6万を連れて東進。南陽からはギリギリ見えないあたりまで接近してそこで陣形を整えたのだった。

 この動きに対して南陽は防衛の姿勢か決めあぐねているのかは定かではないが何かアクションを起こすことはなかった。南陽へと偵察を出しても門は固く閉ざされているだけで中の様子は一切確認が取れなかったのだ。

 

「こうまで静かだと逆に不気味ですね。何もないのが一番ではありますが」

 

 南陽が動かないことは桓騎軍内でも気味悪がる者が出てくるほどだった。それでも奇襲に備えて桓騎軍はできうる限りの準備を行った。近くの森に朱摩を筆頭とした精鋭騎兵を配置し、本陣前には黒桜の弓兵部隊が囲み、突破してきた敵兵に矢の雨を降らせる布陣とした。

 その一方で炎鬼に関しては明確な布陣を知らせなかった。知らせなかったというよりも作らなかったと言ったほうが良いだろう。炎鬼は何処にいても抜群の戦闘能力を発揮する。敵がどれだけの情報を掴んでいるかは分からないが炎鬼がいると分かっても何処にいるかは分からないようにすることで炎鬼による攻撃を奇襲攻撃に変化させることを狙ったものだった。

 

「ま、余程のことがない限り厘玉のところにいるだろうがな」

 

 なんだかんだで厘玉とは良い関係を築いているようで普段から炎鬼がそこから離れることはなかった。離れる時は気が向いた時か呼び出しがあった場合、若しくはうまいと判明した摩論の飯を食べに行くときくらいであり、基本的に動いてる姿を見る事は少なかった。

 

「偵察してきたが門は硬く閉ざして防御の姿勢を取っていた。少なくともこちらが攻めれば反抗する程度の事はしてきそうだな」

 

 隠密作戦が得意な那貴による偵察の結果として南陽が打って出てくる可能性は低いが攻めれば頑強に抵抗してくる可能性が高いという物だった。つまり、蒙驁が命じた守備命令は無事に達成できそうである事を示していたのだ。

 

「そうすると暇になってしまいますね。下の者達が暇を持て余して暴れないか心配ですね」

「ククク。そういう奴等には炎鬼が相手をしてくれるぞ、と言えばいい。直ぐに大人しくなる」

「むしろ何も喋らなくなりそうですがね」

 

 このように桓騎軍は比較的穏やかな時を過ごしていたがその一方で南陽では博王谷達将校による軍議が連日のように行われていた。議題は単純明快であり、うってでるか、それともこのまま南陽に籠っているのかについてである。

 

「奴らは6万! こちらは7万はいる! 討って出る事は可能だ!」

「バカな! それで負けたらどうする!? 南陽は王都新鄭に次ぐ重要な城であるのだぞ! ここを失う事は王都を危険に晒すのと同様である!」

「だからこそ今まさに迫ってきている危険を取り除こうというのではないか! このままでは秦軍20万の軍勢が南陽を囲む事になるのだぞ!」

 

 南陽の目の前に陣取る桓騎軍は6万。南陽は徴兵した兵も合わせて7万まで揃えたが為に意見が割れてしまったのだ。桓騎軍を倒し、敵の数を少しでも減らすことが可能になってしまった事で意見がまとまらなくなってしまったのだ。

 

「王都からの援軍はこないのか?」

「魏が何やら怪しい動きをしているらしい。聞いた話によると国境付近の城に呉慶の子供が配置されたらしい」

「呉慶!? 子がいたのか!? という事はやはりやり手か?」

「現時点では不明だ。だが、やり手と想定して王都は動いている。洛亜完将軍が総指揮を執っているらしい」

 

 つまり、援軍は期待できず、現状の兵力で南陽を守らないといけないのだ。幸いなのは南陽は王都新鄭へと続く西側の大道をふさぐように位置している事で堅牢な事。城主を始めとして文官たちも優秀で敵が迫ってきている現状においても混乱は起きていない事である。

 

「将軍。いかがなさいますか?」

「……」

 

 軍議が白熱するなか、ただ一人黙ったままだった博王谷に将校の一人が問いかけた。その言葉を聞き全員が博王谷の方を見るが彼は普段と変わらない難しい表情をしたままだった。

 

「……()()動かない」

「っ! それでは敵が南陽に集結するのを黙ってみているというわけですか?」

 

 博王谷の言葉に討って出るべきだと騒いでた将校が食って掛かった。敵の数に怖気づいたように彼の眼には移っていたのだ。

 しかし、そんな将校の言葉を博王谷は否定した。

 

「違う。影からの報告で趙が秦への侵攻の準備を整えていると入って来た」

「成程。自国の窮地に敵は兵を引かざるを得ず、その背を討つというわけですね?」

「その通りだ。その過程で奪われた城や民を取り戻す事が出来るだろう」

 

 韓は戦国七雄の中で最弱と言われ、生き残っているのが不思議なレベルで国力が低い。他国に侵略する力は既になく、各国の動きに合わせて身をすり減らす哀れな国だがそれだけに彼らは情報という最大の強みを持っていた。

 この中華において韓を凌駕する程の情報網を構築している国や勢力はない。韓の目や耳は遥か辺境の地にまで至っており、国の隠し事など筒抜けにしてしまえる程の情報収集能力を持っていた。

 その力を十全に発揮した結果、判明したのが趙による秦の侵攻計画である。兵数は凡そ12万ほどであり、更に総大将には無名の将がつく事も韓は把握していた。

 

「趙を率いる男は龐煖という男だ。詳しい経歴は一切不明だが趙は三大天の地位を与えたらしい」

「三大天ですと!?」

 

 三大天の言葉に将校が驚愕の表情を持って反応した。三大天とは趙における大将軍の地位の名称である。秦の六将と同様に趙を代表する者達が就く事を許されていたが最後の生き残りである廉頗将軍が昨年に魏に亡命した事で現在は空白の状態だった。

 そんな地位に無名の男が就くなど考えられなかったのだ。

 

「……ですがそれが事実なら秦はこちらに兵を割いているわけにはいきませんね。最低でも半数は国に帰るはずです」

 

 とはいえその情報が出てきたことで南陽の方向性はほぼまとまることとなった。出陣は秦が撤退を始めた直後であり、これまでに奪われた領土の奪還を目標に定める事となったのだ。そうなれば南陽がするべきことはその時に備えて練兵を行い、万全の状態を整えておくことである。

 

 そして、凡そ半月後。介泉陥落から1週間ほどして趙は秦北部の都市馬央に侵攻。瞬く間に陥落させて続く馬陽へと軍を進める事となった。

 それを受けて、南陽に集結中だった蒙驁軍は撤退を決断。殿を迎撃の準備が整っている桓騎軍に任せて自らは秦国へと帰還するのだった。

 

「侵略者である秦を韓の土地より追い払う! 全軍、出陣!」

 

 蒙驁軍の撤退を確認し、博王谷は南陽軍6万を率いて桓騎軍へと進軍を開始した。博王谷軍と桓騎軍による韓攻め初の野戦が始まるのだった。

 




実は博王谷についてどうするか決めかねてます。何しろ原作だと博王谷が何かしたって描写がないのでただ後ろいて新兵狙って攻撃して李信を袋叩きにしたけど失敗して満身創痍の李信に返り討ちにされた人なので。
まぁ、剛の武将とか言われていたらしいので追撃戦の今回の戦いには強いのかもしれませんが
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