キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話 作:鈴木颯手
秦と趙の間で同盟が結ばれた事を受けて秦は大きな動きを見せた。魏の要衝たる山陽を取るために軍勢を集め始めたのである。現段階でこそ準備中であるが攻め入る事は確実であり、それに向けて前線ではいくつもの遊撃部隊がその戦に参戦できるように武功を積んでいた。
その中には飛信隊の姿もあり、三百人隊の彼らはその小回りの良さを生かしてここぞという場面で活躍していた。
しかし、そんな彼らの前に立ちはだかったのは同じ三百人隊である玉鳳隊だった。立派な鎧と騎兵で構成される彼らは士族の出というエリート部隊であり、そんな彼らを率いるのは王騎将軍の本家筋にあたる王賁だった。
当然ながら士族のみで構成された玉鳳隊と農民ばかりで構成される飛信隊とでは仲良くできるはずもなく、彼らは互いに敵視しながら各地の戦場で活躍をし続けていた。
「ん。ボロ布君久しぶり」
「炎鬼!? なんでここに……!?」
「気まぐれ」
そんなとき、なんと炎鬼が飛信隊の所にやってきたのである。突然の来訪に信は驚くが自由気ままな炎鬼の動きを理解する方が難しいだろう。
「いっぱい活躍しているって聞いた」
「嫌味か? お前北の戦場で魏軍を壊滅させてただろ」
炎鬼の言葉に信は嫌そうな表情で答えていたがそれには訳がある。魏軍は様々な前線で小競り合いを繰り返していたが信たちがいる場所より北方では炎鬼一人によって魏軍が壊滅状態に追いやられていたのだ。総数は1万を超えており、その残党が南に集まり、大きな戦へと発展していたのだ。
因みに、炎鬼は勢いのままに城まで落としている為に魏の前線は大きく前進してしまっていた。
「活躍しすぎて報酬が出せなくなってきたって言われたからボロ布君の応援に来たよ」
「本当に気まぐれだな。だが俺だって金は出せねぇぞ」
飛信隊に金があるのなら鎧を購入していると信は言うがそこに関しては炎鬼も期待していない。むしろ出すと言われた方が心配になるほどだ。
「問題ない。戦うわけじゃなくて居候するだけ」
「一番やな奴じゃねぇか」
信は思わず突っ込むが炎鬼ならば別であった。何しろ炎鬼がいるだけで魏軍はビビって動きを大きく鈍らせるからだ。本当にすごい奴は名前を聞いただけで相手を委縮させ、姿を見せるだけで戦場を支配する。王騎将軍と出会ったことで信が理解したことだった。
「良かったじゃねーか! 炎鬼さんが一緒ならば心強いことないぜ!」
「玉鳳に行かれるよりは断然良いしな」
後ろで話を聞いていた隊員たちがこぞって賛成の声を上げる。炎鬼という最強の味方が戦わないとはいえ一緒にいる。それほど心強いことはないと。
「ん。あっちにはいかないよ」
「そうなのか? 正直あっちの方が金は出せるだろ」
王賁程になれば実家からも金を引き出させて雇う事も可能だろう。しかし、それを聞いた炎鬼は露骨に嫌そうな顔をして言った。
「あいつ嫌い」
「あ……」
「上から目線。傲慢。自己中心的。父親を嫌っている割にあの変態仮面と同じ性格してる。似た者親子」
「変態仮面……」
ぼろくそに言われる王賁に信は思わず引いたが同時に納得した。王賁の性格を考えれば炎鬼とそりが合わないのは当然と言えば当然だった。
実際、一度だけ王賁と同じ部隊になったことがあったのだが、王賁は傲慢に言ったのだ。
-お前のような誰にでも尻尾を振る傭兵に期待はしない。後方で待機していろ。
以来、炎鬼は王賁を露骨に避けるようになった。王賁の父親に関しても同じような傲慢さで彼に自分の配下になるように迫ったことがあった。
-お前は傭兵をやっていていい人材ではない。俺の配下になれ。それが最良の人生だ
-寝言は寝て言え変態仮面。
当然ながら王親子との関係は修復不可能なレベルになった。炎鬼も修復したいとは思っていない為に露骨に避けるようにしていたのだ。
「あいつらと要るなら熊さんと一緒にいた方が良い。……熊さんは面倒なだけで嫌いじゃないから違うか。小言おじさんに説教されてる方がマシ」
「誰が誰だかわかんねーよ!!」
人の名前を覚える事が苦手の炎鬼。変な渾名で呼ぶために知らない人相手だと誰の事なのか全然分からないのが致命的な弱点であった。
「え、炎鬼だ! 炎鬼がいるぞ!!」
「逃げろ! 殺されるぞ!」
炎鬼が飛信隊に居候するようになってからというもの更に活躍するようになっていた。何しろ炎鬼がいるだけで魏軍の士気は底辺にまで下がり、ちょっとしたきっかけで瓦解するようになっていたからだ。
そんな魏軍を飛信隊は的確について名のある将校を次々と討ち取っていくのだ。その活躍は速度で劣るはずの玉鳳隊を軽く凌駕するほどであった。
「くそ! 文句はいえねぇことは分かっているが結局のところ炎鬼の力じゃねぇか!」
「炎鬼が属する部隊としか思われていないからな」
しかし、そんな状況を信はとても許容できなかった。それも当然であり、飛信隊がどれだけ活躍しようと炎鬼の名前に活躍が押しつぶされてしまっているからだ。確かに炎鬼がいる事で戦果を簡単に上げる事が出来ているがその代わりに名声は全て炎鬼に取られている状況だったのだ。
そんなことを天下の大将軍を目指す信が許せるはずがなかったのだ。
「ん。呼ばれたから今日で終わり。バイバイ」
「は?」
炎鬼はあまりにも自由気ままだった。ある日、突然炎鬼は呼ばれたと言って飛信隊を去っていったのだ。まさに嵐としか言いようがない突発的な行動に流石の信も驚きのあまり何も言う事が出来なかった。以降炎鬼がいないと知られた事で魏軍の士気は回復し、苦戦する場面も多くなっていった。
「結局アイツは何がしたいんだ……」
振り回される形となった信はなんとも言えない気持ちを抱えたまま山陽攻略戦で戦果を上げやすい位置を獲得できるように注目と戦果を上げる為に今日も今日とて魏軍との小競り合いに挑むのだった。
主人公の仇名(備忘録も兼ねて)※作中で呼ばれていない人の分も有りますので一応注意
秦国
呂不韋→呂不韋
王騎→王騎将軍
騰→副官さん
嬴政→大王
信→ボロ布君
羌瘣→白布君
河了貂→なし
昌平君→諏〇部さん
蒙武→熊さん
李斯→小言おじさん
蔡沢→おじいちゃん
蒙驁→でかいおじいちゃん→白老(次回から)
桓騎→盗賊王
摩論→コックさん
黒桜→黒弓さん(若しくは痴女弓さん)
厘玉→肌色ピエロさん
雷土→ハゲデブ
王翦→変態仮面
王賁→傲慢糞野郎
麃公→熱血おじいちゃん
壁→上位モブ
縛虎申→縁の下さん
趙国
廉頗→廉頗将軍
李牧→(変態)嵌め殺し君
カイネ→愛人さん
魏国
呉慶→白顔
楚国
汗明→巨人ちゃん
媧燐→巨πちゃん
臨武君→ハゲ
書いてない人は主人公が把握していないか記憶していないかです(昌文君とか劇辛将軍とか)