キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話 作:鈴木颯手
というか20万で攻めるって言っていた気がするけど残りはどうしたって思ってたりもします
秦が趙と同盟を結んで凡そ一年くらいたっただろうか? その間に秦は魏に攻め入る準備を整えていた。山陽を攻める総大将は韓攻めと同様にあの白老らしい。ちなみに白老とはあのおじいちゃんの異名らしくでかいおじいちゃんと言ったら盗賊王に「それじゃ分かんねぇだろ。白老と呼べ」とちょっと凄まれる形で矯正されたためにそう呼ぶことにした。あの白老を盗賊王が何故気に入っているのか知らないけど何かしらあったんだろう。興味はないけどね。
「ん。来たよ」
「またか」
韓攻めでもそうだったけどどうやら俺は盗賊王の所にいるのが最適と判断されたらしくまた盗賊王の部隊に配属となった。変態仮面の部隊じゃなければ何処でも……あ、あの傲慢糞野郎の隊もやだな。あの親子似た者同士過ぎるって。
「お腹空いた。コックさんごはん」
「え? 私もしかして料理人と思われています?」
二年ぶりくらいなのに久しぶりという感じがしない。実家のような安心感がある。規律なんて皆無の所だから居心地がいいんだろう。コックさんの料理も上手いしね。
「ったく、そっちはなんも変わってないね」
「あ、痴女弓さん」
「誰が痴女だ!!」
黒弓さんでもいいんだけど痴女みたいな格好してるしそっちの方がなんか呼びやすいからね。現代人でさえ痴女と思えるような恰好をしているそちらが悪いからね。
「確かに黒桜は露出が激しいからな。……そういう趣味か?」
「雷土ォ……! 良い度胸してるじゃないか……!」
「ハゲデブも久しぶり」
「あ“?」
うん。ここは何も変わっていないね。
「ククク。お前らその辺にしておけ。そろそろ出発だ」
「ん」
「っち! 覚えておけよ炎鬼! 雷土! 何時かてめぇらの腹に風穴を開けてやるからな!」
盗賊王の言葉でまっさきに大人しくなったのは痴女弓さんだ。盗賊モブ曰く「姉さんはお頭に惚れてますので……」との事だ。何回か合体した事もあるらしい。確かに美人だけど好みではないかな。楽しい性格をしていると思うけど。
「今回は3軍で連携して城を落とす。前みてぇにでしゃばる事は許されていないからな。気楽にいくぞ」
白老の軍勢内だと城攻めは盗賊王が一番下手らしい。相手が強いと白老が惨敗するから変動するらしいけど。
白老って危険を冒さないから弱い相手にしか勝てない人らしい。盗賊王たちを副将に加えるまで惨敗続きだったらしいし。
「炎鬼。お前は暫く出番はねぇ。適当に摩論の飯でも食ってろ」
「え? お頭? 私に押し付ける気ですか?」
「コックさんお替り」
「え? はや!? ちょ、ちょっと待っててくださいね!」
盗賊王曰く「略奪は許すが皆殺しは禁止。城への破壊行為も禁止」と言明されたらしい。なので俺のような範囲攻撃ばかりする奴は大人しくしていろって事のようだ。相手が白兵戦に出れば好きなだけ暴れて良いらしいのでその時は活躍させてもらうつもりだ。
しかし、そうなると俺の出番はほぼ無いに等しいか。趙ならともかく魏に俺と野戦したい奴なんているのか? 魏って韓と同じくらい弱いし。白顔さんが熱血おじいちゃんとの戦いで死んでいるから強そうな将も残っていないだろうしね。
「楚に行った方がよかったかな?」
「あ? 楚で戦いてぇのか?」
「あそこは何時でも戦場があるから」
百越という南方の蛮族討伐の仕事が何時でもある。まぁ、わざと平定しないでいる節があるけど仕事があるのなら気にはしない。そんなわけであそこの戦いは基本的に野戦。城攻めなんてめったに起こらない。
「ならこの戦いが終わったら行けばいいだろ。今は大人しくしとけ」
「ん。寝るから馬車貸して」
「相変わらず自由気ままな奴だな」
仕方ないじゃん。出番がないなんて言われちゃやる気なんて出ないよ。それまでは適当に寝かせてもらうよ。
「きゃぁっ!? 誰ですか!」
「ん。ごめん」
ありゃりゃ。適当に馬車に乗ろうとしたせいか娼婦の御一行様の馬車に乗ろうとしてしまったようだ。失礼。
……もしかしてこれ全部そうか? 10台くらいあるけどまさか全部に乗ってんの? やっぱ盗賊王の軍勢は自由奔放だな。取り合えず中には乗れなさそうだし屋根で寝させてもらいますか。
桓騎は娼婦が乗る馬車の屋根で寝始めた炎鬼を見て面白そうに笑った。軍隊には向かないあまりにも奔放な性格は普通の軍なら嫌がられるだろうがここではそんな事もない。何しろ桓騎をはじめ彼らの軍勢は野盗たちで構成されているのだ。厳しい軍律とは真反対にいると言っても良い。炎鬼のような人物は居心地の良い場所だろう。
「まさか出会って直ぐに料理を求められるとは思いませんでしたよ」
「良かったじゃねぇか。デブだの痴女だの言われるよりは」
「お頭雷土さんたちの前で言うのやめてください。めちゃくちゃ睨んでくるじゃないですか」
摩論は桓騎の後ろから物凄い形相で睨んでくる二人に冷や汗を垂らしながら慌てて言った。桓騎を除けば炎鬼からの呼び名がまともな摩論に対して雷土達は納得いっていないのだ。ちなみに、厘玉に関してはピエロの意味が分からない為に誰も反応しない。
「こいつがデブでハゲなのは同意だが私が痴女なんて可笑しいだろ!」
「痴女はあってんだろ。逆に俺の何処がデブなんだ」
「「……あ゛あ゛!?」」
「落ち着けお前ら」
相変わらず騒がしい部下たちに桓騎は薄く笑みを浮かべながら宥める。このような喧騒も桓騎軍いや桓騎一家では日常的なものだ。そこに炎鬼という存在が一人入ったからと言って何かが変わるわけではない。
「そう言えばゼノウさんたちを連れてこなくて本当に良かったんですか? 炎鬼さんにものすごく会いたいと言っていましたが」
「城攻めな上に虐殺を禁止されているんだ。奴等には不向きな戦いだろ。ま、そのうち機会はあるだろうよ」
桓騎軍最強の武力を誇り、戦闘狂でもあるゼノウ。彼は炎鬼の話を聞いて以来手合わせというよりも殺し合いをしたくて仕方なかったが機会に恵まれる事はなかった。尤も、ここで出会っていた場合はそのまま殺し合いに発展している事に間違いはないため連れてこないという選択肢は正解であったが。
「んじゃ、行くとするか」
桓騎は号令を出して軍勢を前進させる。今頃別の場所でも蒙驁軍及び王翦軍も出陣しているはずであり、足並みを揃えなくてはいけない以上何時までも立ち止まっているわけにはいかないだろう。
野盗のみで構成された桓騎軍3万も山陽攻略の為に出陣するのだった。
主人公の出番は当分ないので決戦の地である流尹平野までカットします。オリジナルの城攻めは韓攻めでいっぱいやったので。多分書いても似た展開になると思うし。