キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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第三話「怪鳥」

 俺がよく参戦する秦だがこの国には面白い制度がある。その名も六将制度であり、6人の大将軍に戦争の自由を与えるというものだ。これの何が凄いかと言えば戦争の自由とはまさにその名のとおりであり、彼らが好き勝手に軍勢を率いて他国に攻撃を仕掛けても良いという事だ。これにより軍勢の動きは素早くなったが同時に内乱などの危険性もある。余程六将と王が信頼し合っていないと出来ない制度だ。

 六将に任じられる者達はその役職に相応しい実力者であり、中々面白い性格をしている。傭兵である俺も詳しく語れるくらいには有名な彼らの戦いは普通の将軍とは一線を画す程苛烈且つ緻密な戦いが多い。中にはその名を聞くだけで降伏する者もいるくらいだ。

 

「貴方が炎鬼ですね。戦いぶりは聞いていますよ」

「……そう」

「ンフフフ、噂通り無口な方のようですね」

 

 そして、俺は何故か参加した戦いの中で総大将にして六将の一人である王騎将軍と対面していた。呼び出された時は断ろうかとも思ったけど今から戦をするわけだし追い出されても嫌だから対面したが中々凄い人だ。特に顔。凄い唇だし顎髭も凄いし、口調もオカマっぽいし変な人だ。

 実力面に関しては敵対してきたどの敵将よりも強いというのが分かる。俺が持つスキルの一つに鑑定があり、ある程度は細かく強さを調べる事が出来るのだが王騎は強い。多分ステータスと剣技だけでは倒しきれない程度には強い。人間とは思えないレベルの化け物だ。

 

「今回の戦でも活躍を期待していますよ」

「……敵を切るだけ」

「ココココ。それだけでここまでの活躍が出来るのは貴方くらいなものですよ」

 

 変な笑い方をしているがまぁ悪い人ではないのだろう。少なくとも話をするくらいなら付き合っても良いと思える奴だ。

 

「本当は色々と聞いてみたい事もあったのですがあなたを見て確信しましたよ。貴方は随分と懐が狭い方のようですね」

「……」

「貴方を秦の敵にしない為にも詮索はしないと約束しますよ。貴方は恐らく、むやみやたらに近づいた者に嫌悪感を持つようですので」

「ん」

 

 ……ああ、本当に王騎将軍は凄いな。ここまで内心を当てられるとは。しかもこちらが不快にならないギリギリを見定めている。あの元商人とはまた違った付き合いが出来そうだな。

 

「どうです? 戦が終わった後に宴でもしませんか? 歓迎しますよ」

「参加する」

「ココココ。それはそれは、負けるわけにはいかなくなりましたね」

 

 まぁ、俺も六将レベルの宴がどれほどのものになるのか楽しみだしな。少し頑張ってみるとしようか。

 

 

 

 

 

 王騎は目の前の戦場で猛威を振るう炎鬼を見ながら自身の行動は間違っていなかったと感じた。戦が始まる前夜、王騎は炎鬼が参戦している事を知って呼び出していた。理由は単純であり、噂の人物を一目見ておきたいと思ったためだ。そして、場合によっては手合わせをしてみたいとも。武将として一騎当千の実力者である炎鬼がどれほどのものかを知ってみたかったのだ。

 

「ンフフフ。戦以上に気難しい方ですね」

「ハッ! 仰る通りかと」

 

 王騎の独り言に副官である謄が答える。何も理解していないような返答だが王騎に誰よりも長く仕えている彼は王騎の言葉をきちんと理解していた。

 呼び出しに応じて現れた炎鬼を見て王騎が感じたのは業火に燃える巨人だった。人では決して抗えない、抗ってはいけない禁断の悪魔を無理やり人の姿にしたかの如き圧力を放つ炎鬼に王騎は手合わせをしたいとは言えなくなっていた。

 

「将軍になって初めてですよ。必ず負けると断言できる相手に出会ったのは」

 

 炎鬼は想像以上に強大であり、気難しい気分屋であった。不快と感じた相手には二度と心を開かず、友好的な相手にさえ距離を置く。気分次第で敵にも味方にもなり、昨日の友にさえ平気で剣を向けられる性格をしていると理解した王騎は当たり障りのない言葉を紡ぐだけで精いっぱいだった。

 それでも炎鬼に好印象を持たれたのは不幸中の幸いとも言える。場合によっては王騎は殺され、秦は最悪の存在を敵に回していたかもしれないのだ。

 

「趙や魏、韓は災難と思う他ありませんね」

 

 基本的に炎鬼は秦か楚、斉の軍勢にしか入らない。敵対した国は最後まで敵対する道を選ぶため彼らが炎鬼を味方に引き入れる事は一生ないだろう。

 実際、幾度か炎鬼が趙や魏の誘いを受けている事は王騎も把握していた。そのたびに突っぱねられている事も。どれだけの金を積まれても首を縦に振らない炎鬼にとうとう暗殺者を差し向けたりもしたが当然のごとく返り討ちに遭っただけではなく報復と言わんばかりに城を一つ焼き尽くしている。

 炎鬼という呼び名に相応しい苛烈さだ。実際、目の前の戦場でも炎鬼が炎を生み出して敵軍を焼いていた。どういう原理なのかは王騎にも分からないが確実に根掘り葉掘り聞いてはいけない内容なのは間違いなかった。

 どのような力であれ、強大な力をその身に宿す人物が自分たちの味方をしている。そのことで満足するべきだと王騎は確信していた。

 

「さて、では我々も行きましょうか。このままでは炎鬼に全ての手柄を持っていかれそうですからね」

「ハッ!」

 

 王騎は馬を駆けて本陣を飛び出す。炎鬼が大暴れをしている為に敵軍は壊滅状態にある。物足りないとはいえ戦を終わらせるにはちょうどいいと王騎は愛用する矛を構えて戦を終わらせに向かうのだった。

 




因みにですが
炎鬼(全力)>>>(越えられない壁)>>>王騎>謄>炎鬼(平時)>>(越えられない壁)>その他モブ兵士
という想定で考えてます。炎鬼の全力は全てのスキルをフルで使い、魔法だろうと何だろうと使いまくる状態を言います。通常のステータスと剣術だけだと王騎には勝てない想定です。ただし、勝てないと判断した時点で全力で掛かってくるので負ける事は基本ないですが
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