キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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個人的に呂不韋は嫌いじゃないです。というよりも結構好きな方ですね。


第四話「呂不韋」

「……」

 

 んまー。久しぶりにめちゃくちゃうまい酒を飲めた。恐らく古代中国でも一二を争う程の上等な酒だろう。それを瓶から直接飲めるのが最高だ。酔っぱらう心配もスキルのおかげでないしほろ酔いで味わえる。

 

「はっはっはっ! 良い飲みっぷりだな。ワシも招いた甲斐があるというものだ」

「ん。おかわり」

 

 そう言って笑うのはこの酒の提供者にして俺が参加する宴の主催者である呂不韋というおっさんだ。以前気まぐれで盗賊から救った商人も今では国のトップレベルの役職にまで上り詰めているのだからかなりの実力者だ。多分。

 最近じゃ自分の派閥を作っているようで俺もそれに入れたいのか今まで以上に頻繁に宴に誘われるようになった。だが本人からそのことを聞いたことはない。恐らく宴に参加することで俺が派閥の人間だと思わせたいのだろう。たとえそうじゃなくとも外部からはそう見えるし呂不韋も否定しなければ殊更に。

 さすがにここまでやって来ただけの事はあり人を操ることが上手い。それでいて俺が不快にならないように結構気を使っているのもわかる。今俺が座っている場所は呂不韋の対面だ。つまり呂不韋と同様に上座におり、他の出席者を見下ろす様な形となっている。不思議と呂不韋には不快にならない為にここまでする必要は無いのだが有り難いから指摘はしない。酒も料理も美味いしな。

 

「聞いたぞ? この前の魏との戦では名のある将を討ち取ったとか」

「ん。知らない」

 

 そうだっけ? 適当に切っていた記憶しかないからわからないが……まぁ、確かにいつもよりも報酬は多かった気がする。

 

「はっはっはっ! お主にとってはそんなものは関係ないか!」

「構わない。その程度だっただけ」

「それもそうではあるが、おぬしほどの実力者と戦える者など数える程しかおらんだろう」

「そうかもね」

 

 秦で言うなら六将くらいだろう。というかほかに誰がいるのかしらん。昔から人を覚えるのは苦手だ。

 

「ん。美味い」

「それは良かった。お主は中々に美食故にな。宴の度に満足しておるかひやひやしておるのだぞ」

「その甲斐はあるね」

 

 実際酒も飯も美味いしな。久しぶりに物凄く美味いもんを食えたおかげか少し気分が良い。今なら何でもできそうだ。

 

「美味しかった。呂不韋。気分いいから何か頼み事聞いてあげるよ」

「ほう? それは素晴らしい」

 

 うわ、一瞬で表情が変わったよ。先程までは文官っぽい感じだったのに今じゃ大きな取引を持ち掛けられた商人みたいだ。実際、大きな商談には間違いないか。

 意外と文官の間では暗殺が横行している。権力を握るために邪魔な奴らを殺しているんだ。実際、ここに来るまでに暗殺者っぽい気配を感じている。前に参加した時なんてすぐ近くまで来ていたしな。恐らく呂不韋を狙ったんだろう。威圧して追い返したけどな。

 

「なれば明日の会議にてともに来て欲しい」

「それだけ?」

「無論だ。ワシを守るような動きを見せてくれればよい。最悪、近くにいるだけでも構わんぞ」

「良いよ。なら泊めて」

「勿論だとも。直ぐに用意させよう」

 

 呂不韋の願いは意外なものだったがよくよく考えてみるとかなりのインパクトを与える事になるだろうな。そして、それによって俺が呂不韋陣営の人間であることは確定されるわけか。これは暗殺とか起こりそうな気もするなぁ。少し早まったか?

 いや、別に悪い事ではないだろう。どの派閥に入ろうと俺がやることは変わらない。適当に戦に参加して金をもらって好きなように過ごすだけだ。それが脅かされないのであれば俺の不快にならない範囲で勝手に使う事なんて気にしないさ。

 

 

 

 

 

 国王になりたいという夢を持つ呂不韋にとって炎鬼との出会いはまさに人生の中でも強運と呼べる出来事だった。山賊に襲われていた所を助けられて以降炎鬼との関係は途切れることなく現在に至るまで続いていた。

 当時こそ無名だった両者だが現在ではその名をとどろかせつつあった。近年、戦神ともうたわれた昭王が死に、新たな王が誕生して以降呂不韋は着々とその立場を上げており、次代の王になれば宰相という文官の中では最上位に位置する役職に届く所まで来ている。

 一方の炎鬼は今も傭兵を続けているがその戦歴はそこらの将軍を凌ぐほどであり、炎鬼が参加する戦は必ず勝つと言われているほどである。更に言えば炎鬼は敵対した国で参戦することはない上に優先度では一番秦を最上位に置いている為に秦が炎鬼と敵対する可能性はないと言える状況にあった。

 戦場の悪鬼とも呼ぶべき炎鬼の存在は呂不韋にとっては最高の駒と言えた。無論、それを言えば炎鬼は不快感を示して自分から離れる事は確実な為に態度にも言動にも出すことはない。

 呂不韋は炎鬼との関係を維持するために気を使っていた。宴を開き、贅の限りをつくした酒に食べ物を振る舞い、傾国とも言える美女をあてがった。結果的に炎鬼を呂不韋派閥の人間として周知させる事に成功した。

 

炎鬼を連れて会議に出た際の奴らの顔は傑作だった。

 

 気分を良くした炎鬼が突然提案してきた頼みごとを何でも聞くという提案。それに対して呂不韋は会議に出席して欲しいという単純な頼みごとをしたがその結果として生まれる利益は高かった。

 秦の王都である咸陽でも炎鬼の噂は響いているうえに呂不韋に招かれてよく訪れる為に実際に目撃した者も多い。そして、その圧倒的な戦意に文官たちはビビり散らかしていた。何度か、炎鬼を殺すために暗殺者が送り込まれたが実行する前に炎鬼によって追い払われてる。威圧だけで暗殺者をひかせる炎鬼に文官如きではどうする事も出来ない。

 結果的に呂不韋と敵対したくないと考えて彼の下に人が集まる結果となり、派閥内は大きく肥え始めていた。後は呂不韋が宰相の地位にさえ就ければ派閥は安泰だろう。そうなれば秦を掌握したと言っても過言ではない強力な権力を有する事が出来るようになるだろう。

 呂不韋はまもなく訪れる最高の瞬間に笑みを零すのだった。

 

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