キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話 作:鈴木颯手
なんかものすごく伸びている事にびっくりしてます。
この時代では基本的に侵略するのは秦がほとんどだった。他の国も他国に侵攻することはあるがそれでも秦に比べれば圧倒的に少ないと言える。どうやら他の国々は長年の争いで侵略する国力がなくなりつつあるらしい。それ故にまだまだ国力に余裕がある秦が毎月の如き連戦を挑む事が出来るのだろう。
「今日は魏、か」
今回、俺は魏に攻めるための軍に参加していた。名前は忘れたが黄河沿いにあるでかい城を落としに行くらしい。総大将は、暑苦しいギザ歯の爺さんだ。実力はあるのだが指揮官としては酷い数値を叩き出しているがそれを補って余りある直観力の高さが特徴的だ。というよりも戦闘能力だけ見れば王騎すら超えているのがすげーや。他国を見てもここまで突出したステータスを持った奴なんてそんな見たことないぞ。多分廉頗将軍なら同等レベルだろうけど一回も見たことないから本当の所はよくわからない。強いことは確かだろうけど。
「あっ!? お、お前……!」
「?」
そんなわけで魏に向かう軍勢に紛れているのだが後ろから大きな声をかけられた。振り返って見ればいつぞやの王宮にいたボロ布の人だ。いや、基本的に平民と同じ服装とは言え絢爛豪華な王宮内ではすごく目立っていたからな。
「呂不韋と一緒にいたやつがなんでこんなところ……!」
「俺は傭兵だ」
そりゃ呂不韋と一緒にいたとはいえ俺は傭兵。戦場にいる事の方が多いからな。いや、ぶらぶらと色んな所を歩き回っている方が長いかもしれん。
「あ、そういえば昌文君がそんなことを言っていたような……」
「王宮の奴隷が何かよう?」
「誰が奴隷だ! 俺は信! きちんとした平民だよ!」
「どちらにしろあの場では場違いじゃん」
「俺は良いんだよ!」
うわ、面倒くさい奴だな。どれどれステータスは……、ほう?
「……お前、強いな」
「あ? いきなりなんだよ。俺はつえーに決まってんだろ」
「うん。強い。死ななければきっと将軍にもなれるんじゃない」
「え? そ、そうか?」
いきなり褒められた事で少し照れくさそうにしているが実際に強い。指揮官としての素質は熱血おじいちゃん以下で話にならない上に成長性も期待できないがその分武力に関してはかなりのものだ。実戦経験を積んでいけば王騎将軍に匹敵する力を得られそうだ。
無論、死ななければの話だ。実際、そう言ったやつらを何度も見たことがある。実力はあるけど一兵卒から抜け出せずに戦死していく奴のなんと多い事か……。こいつも同じ道を辿らないと良いけどな。
「それにしても凄い数だな。これが全員戦に出るのか……」
「ん? 実戦経験はない?」
「あ? ああ、俺ァこれが初めての実戦だな」
え? 嘘でしょ? 初陣なのにそこまで強いの? てっきり何度も戦に出ているのかと思ったけどそうではなかったのか。意外だ。とすると実戦を積めばマジで強くなるんじゃないか? うわ、少し楽しみなんだけど。
「……これ、あげる」
「なんだこれ? 瓶?」
「かければたちどころに傷が治る薬。死んでいない人間なら直ぐに生き返るよ」
「マジかよ?! え!? そんな高価な薬くれんのか!?」
「瓶の半分くらいで腹にどでかい穴が開いても直ぐにふさがるよ」
俺が数あるスキルを駆使して作り上げた一級品だ。現代の医者が一瞬で廃業に追い込まれる劇薬だがその分作れる数には限りがある。まぁ、後10本は作ってあるけどスキルで傷なら直ぐに治るから使い道はなかったんだよね。
「問題は無いと思うけど一応副作用とかに気を付けて」
「いや、ありがてぇけど本当にいいのか? 俺なんもかえせねぇぞ」
「ボロ布君の将来に期待してる」
「誰がボロ布だ! 信だ信!」
「死んだ君?」
「し! ん! ……まぁ、いいや。それと、あ、ありがとな」
「将軍になったらお礼を返して」
「おう! そんときを楽しみにしておけ!」
ボロ布君は良い笑顔でそう言ってくる。うん、本当に将来が楽しみだ。
信にとって炎鬼という存在は敵以外の何物でもなかった。そもそも、初対面があの呂不韋の帰還時だった為にやばい奴以外の情報が無かったのだ。
しかし、初陣である対魏戦で再会した時にその評価は大きく変わることとなった。自分の実力を認めてくれ、更に誰にも否定された天下の大将軍になる夢を応援してくれるどころかなれると断言してくれたのは共に幼少期を過ごした漂を除けば彼が初めてであった。
更には信にも分かるほど貴重な薬を譲ってくれ、信の中では炎鬼は凄くて良い奴という評価になっていた。薬の礼を将軍になったら返してくれと言われた事も信にとっては高評価につながる結果となった。
悲しい事に伍を組む際には炎鬼という事であっという間に引き抜かれて別々になってしまったが同郷の尾兄弟やただ者ではない雰囲気を纏った少年、最弱の伍長と言われている澤圭と面白い者達と巡り合う事が出来ていた。
「信君は炎鬼殿とお知り合いなのですか?」
「あ? まー、確かに知り合いっちゃ言えば知り合いだな」
その日の夜、伍長の澤圭にそう尋ねられた信は言葉に迷いながらも肯定した。実際は知り合いというには短すぎる付き合いだが行軍中の出来事もあり知り合いにはなれているはずだと感じていた。
「すごいですね。あの炎鬼と知り合いとは」
「その炎鬼って人は強いんですか?」
そう聞いてきたのは同じ伍になった尾兄弟の兄である尾平だった。炎鬼の事は戦場に出ている者は知っていても戦場には出ない一般人にまでは広がっていなかったのだ。
「そうですね。私も直接見たことはないのですが彼は傭兵として秦国を中心に戦場を渡り歩いていると聞きます。不思議な力を使うらしく、ある戦場では炎を生み出して敵を焼き殺したそうです」
「や、焼き……」
「殺した……」
あまりの事に尾兄弟は絶句していた。一方で信は炎を生み出す等あり得ないと思いつつもあの圧を思い出してありえそうだという思いに至っていた。
「最近では炎鬼が参加する戦は勝ち戦になるともっぱらの評判で彼を引き入れた部隊は栄誉が約束されると言われています」
「あー、確かに炎鬼が参戦するってわかっただけで凄い騒いでいましたもんね」
「一緒の伍になった連中なんて雄たけびを上げていたしな」
泣いて感謝する光景は思わず引いてしまったがそういう経緯ならばと二人は納得した。そして、その噂が本当なら自分達は勝ち戦に乗れていると少し喜んでいた。徴兵された上に初陣という事もあり、二人は中々に緊張していたのだ。それが少しでもほぐれる要因があったのは良い事だろう。
「4人は初陣との事でしたね。今回は炎鬼殿も参戦しているので悲惨な事にはならないはずです。ゆっくりと落ち着いてまずは生き残る事を考えましょう」
澤圭は初陣ばかりの伍のメンバーにそう優しく声をかけた。しかし、この時の信たちは予想もしていなかった。今回の戦がとんでもない大激戦になり、何度も死ぬような経験をするという事に。
因みにですが主人公はその気になれば不老不死の薬も作れたりします。やったね政君晩年の夢が叶うよ(ただし、材料は現実には存在しないファンタジー素材が必須な模様)