キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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第九話「蛇甘平原2」

 今回の対魏戦の戦略はこうだ。最初は各地から徴兵した兵たちが前線近くの城に入り、そこで軍編成を行ってから国境にある……何とかというでかい城を落とすらしい。軍勢は第1から第6軍まで存在し、総数は15万にも及ぶらしい。

 俺が属している第4軍は丸城という城に入るらしい。そこの城主はかなり好戦的でいつも激戦地を好んで戦うらしい。

 その事で第4軍は少し不安げな気配が漂っている。俺が参戦しているということで少し緊張感が抜けていたところにこれだ。勝てても生き残れるのか心配なんだろう。まぁ、正直俺はきちんと金さえ出るのであれば何処だろうと気にしない。伍の連中についてもどうでもいいしな。

 

「大変だ! 丸城が落ちた!」

 

 と、思っていれば丸城が魏軍の攻撃で陥落したらしい。攻撃してきたのは呉慶という魏の大物だ。何度か戦ったことがあるが中々の実力者だった……と、思う。

 顔面のインパクトがなければ覚えていなかったかも知れない。

 まぁ、そんな事はどうでもいいのだ。目的地の丸城が陥落した以上俺たちが向かう目標地点は変わるということだ。

 

「我々は亜水に入城することになったそうです」

 

 確か熱血おじいちゃんがいる場所だったな。というか攻め手側のこちらがいいようにやられているのはかなり不味い状況なのでは?

 そんな不安は的中し、暫くすると目的地が亜水からその先の蛇甘平原という場所に変更となった。恐らく魏軍がそこに進出してきているから迎撃に動いているのだろう。熱血おじいちゃんならやりかねない。あの人は守備とか苦手だしな。

 蛇甘平原に決まったせいか暫くは走らされた。丸城に向かうと言っていた少し前が懐かしい。俺は平気だが他の奴らは皆汗だくでへばっている。これだけ走っていていまだに疲れ知らずなのはボロ布君くらいだろう。何名かいそうな気はするが軍勢の最前列を飛び越えてその遥か先を走っている為にとても目立っている。

 

「っ!!??」

 

 ……どうやらついたようだな。ボロ布君も感じ取ったようで一瞬動きを止めた後、全速力で前方、つまり戦場へと向かっていった。確か初陣と言っていたし戦場を見るのは、肌で感じるのは初めてなのかもしれない。

 

「つ、ついた……けど」

「なんで魏軍が……」

 

 詳しいことはなんも説明されていないからね。目的地に着いたら戦場とか笑えないね。伍長たちも絶句しているし。

 そしたら千人将たちが声を上げている。ふむふむ、片方が中々の実力者だ。縁の下の力持ちを荒々しく行えるタイプでもう片方は凡将だな。どんなに頑張っても器用貧乏からは抜け出せないけどそれでもその辺のモブよりは強い。言ってしまえばモブの上位互換のような人だ。

 どうやら上位モブは生真面目でもあるようで歩兵に戦況を説明しつつ鼓舞して士気を上げていた。皆や付十分だが敵は15万という大軍でこちらはその半分もいない。第4軍にしたって3万であり、それなのに今から突っ込むようだ。これは大分厳しい戦いになりそうだな。

 

「良かった。後方だ。少なくとも最初の突撃では生き残れそうだ……」

 

 そして、運が良いことに俺たちは後方に配置された。こういう時は大体最前列の兵士はぺちゃんこになって死ぬからな。伍の仲間たちの安堵も当然と言えた。

 

「第4軍! 前進!!!」

「「「「「オオォォォォォォォッ!!!!!」」」」」

 

 そして間を置かずに攻撃命令が下された。上位モブの激で多少の士気は上がれど数で劣ることは間違いない。そして魏軍は見るからに守備に徹している。これは、最前線は全滅だろう。

 

「……ん?」

 

 そう思っていたらなんとボロ布君が一人躍り出た。どうやら最前線に配置されていたみたいだけどあの壁の如き敵兵にも怯むことなく跳躍すると魏軍の内部に入っていった。やっはり実戦経験だけが足りていないだけで十分な実力を持っているようだ。

 あ、盾を持った魏軍が内側から崩れた。どうやらボロ布君は独りよがりの戦いしか出来ないわけではないようだ。おかげであの部分だけ穴が開いた。そうなれば必然的にその部分だけ秦は大きく押し込める事が出来るが後はどれだけ行けるかだな。

 

「こ、ころ……!」

「ぎゃっ!?」

「つよ……!」

「弱い……」

 

 瞬く間に乱戦となり俺も適当に敵兵を切るがどれもこれも弱い。見れば分かるが向こうも徴兵された兵たちが多くいるようだ。普段の魏軍よりも兵は脆い。

 

「さ、さすがは炎鬼殿……」

「噂にたがわぬ実力者だ……!」

「い、行けるぞ! これなら勝てる……!」

 

 あ、こら。そんなフラグ建てちゃ……ああもう! もう回収されるじゃん!

 

「戦車だ! 魏の戦車隊が出て来たぞぉ!」

 

 その言葉と共にとてつもない地響きが聞こえてくる。それに気づけば魏軍の姿もなくなっている。弱くとも指揮系統はしっかりとしているわけか。

 

「伍長。後ろにいろ」

「は! お前らも下がれ! 炎鬼殿の指示通りにしろ!」

 

 今回の相手は魏軍だからな。当然戦車が出てくることは分かっていた。……ちなみに、戦車と言っても現代のような装甲に守られた砲弾をぶっ放す近代兵器ではない。二頭の馬に荷台を引かせ、そこに人が乗った物だ。元々の戦車だな。歩兵だと手も足も出ない最悪の敵だが俺には関係ない。

 

「な!? 火が何故……!?」

 

 俺はスキルを用いて炎を生み出すと向かってくる戦車隊に放つ。このスキルの最大の特徴はただの水では消せない事だ。俺と同じスキルの『水属性魔法』を用いるか俺の意思でしか消すことが出来ない。つまり、酸素がなくなっても燃え続ける古代中国では最悪の火という事だ。

 馬などの動物は火を恐れる。多少の訓練はされているかもしれないがこの戦乱の世で城攻めでもない限り戦場ではまずお目にかかれない火災の為に馬を調教している奴は稀だ。それが平原の戦いに特化した戦車隊の馬ならな。

 

「お、落ち着け! うわぁ!?」

「ぎゃっ!」

 

 火に驚き混乱する馬たちによって馬車は次々と事故を起こして倒れていく。それによって後続の道を潰し、被害は連鎖的に広がっていく。戦車は確かに強力だし平原だと無敵に近いが弱点がないわけではない。山などの高低がある場所にはめっぽう弱く、旋回も遅い。足元は隙だらけでちょっとした段差に直ぐにやられる。そして、直ぐには止まれない。

 

「やった! 戦車隊を撃退した!」

「ま、まて! 戦車隊は“次”が本番だ。今の地ならしのような物だ!」

 

 そう、魏軍は最初に敵兵を間引くために少数の戦車を出す。そうして次に膨大な数の戦車を出すのだ。これで死体などに足を取られて戦車が破壊されないようにするためだ。

 

「皆さん! 死体を積み上げて防壁を作ってください! 急いで!」

 

 すると、前方の方で誰かの声が聞こえた。……成程。死体で防壁ねぇ。ありだな。

 

「防壁作るよ」

「え? あ、はい! 急げ! 死体をかき集めろ!」

 

 戦において数は重要だ。流石の俺も守りには弱い。精々が百人を助けられるくらいだろう。その横で千人の命を犠牲にしてな。

 だが、歩兵がしっかりと自分の命を守れる状況であれば俺は攻勢に出る事が出来る。暴れられる環境が整えば俺は最強だからな。

 それじゃ魏軍の諸君、次は俺たちの番だよ。

 




主人公は劇辛将軍との戦いで自分よがりな戦いをしないように気を付けています。でないと今頃主人公は宮元のいる丘を焼き尽くしています。……その方が良いかもしれないけど。

因みにボロ布君は信ですが上位モブは壁、縁の下の力持ちは縛虎申です。主人公は王弟は反乱にはノータッチの為に壁が大王派の人間である事どころか謁見した際に王宮にいたことさえ気づいていません。なので彼にとってこの戦いが初対面です。
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