【カオ転三次】トラウマに苦しみながら向き合う終末への日々   作:夢空

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セツナの状況


わたしを形作るもの

 

「――わたしがもうながく無いって言ったらどう思う?」

「……なに」

「……え」

「…幼女ネキはさ、神主からわたしの過去について聞いてるんだったよね」

「……ああ」

「…わたしはさ…あそこでおこなわれた計画の中で素質はあっても魂の質って言えばいいのかな?それが低い方だった」

………

 

 

 

わたしが生まれたあの場所では願いをかなえる願望機たる『聖杯』を作るための計画が立てられていた。

幾度かの失敗を重ね足りないのは『聖杯』を作るうえで必要な『器』としての素質を持つ者だったことが分かったらしい。

……わたしはその『器』としての素質があった。

実のところ『器』には自己といったものがあると他の自我を混ぜたときに求められた基準に到達する前に壊れてしまったらしい。

…そのため、連中はわたしの自己といったものが形成されずらい環境でわたしを育てた。

まっさらとは言えずとも限りなく近い状態の『器』に数多くの魂を混ぜ合わせる事で集合的無意識の再現を企てた。

…連中の誤算は魂の質…ここではあえてレベルとでも言おうか…それが問題となった。

……単純にわたしが耐えられなかったのだ。

計画のために素材として集められた者たちは覚醒者もそうでない者も…他にも悪魔やらどうやったのかシャドウまで…

当時のわたしは覚醒してない子供だった…当然集められた中には高いレベルを持つ者もいた。

…魂の質…つまりレベルの差が問題になったのはある意味当然だったのかもしれない。

『器』として『調整』されるたびわたしの中にはわたしより強い魂が混ざることになる…

その結果がわたしの魂が削られていくことになった…

…今のわたしはそうやって削られていった魂の欠片と言ってもいいかもしれない。

……覚醒者は強くなればなるほど魂の質も上がる…わたしにはそれができるほど残されたものが無かった。

…話を戻そう。

『調整』で魂が消えそうになるまで削られたわたしはそこで『前世』を認識した。

…まあその時にはすでにわたしの存在は消えかかっていたのだけれど。

…『前世』を認識したわたしが消えゆく中願ったことがあった。

……『まだ終わりたくない』

…この世界がどんなものかも知らず気が付いた時には様々な感情に飲まれて消えそうになっていたわたしが願ったのは何も知らぬまま…何も残せないまま終わりたくない…だった。

…結果的にその願いはこうして今形作られているわけだけど。

…奴らの計画を叶えられるほどの物ではなかった『聖杯』はわたしが願ったことを形にするくらいの事はできたらしい。

消えそうになった魂は保護された……失われた分は元に戻らなかったから結果的に消えかけの魂しか残らなかったけど…

混ざりあう中残されたかすかなものはいつ消えてもおかしくは無いほど弱く小さなものだった。

……その後はガイア連合の人達がくるまで変わらない日々が続いた。

…その時研究所は異界と化していたらしいけど…おそらくわたしの中に混ざった多くの意思が作り出していたんだろうね。

……そのころの事は正直あまり覚えていないから分からないけど。

 

 

 

 

 

「…まあそんなわけで残された魂が願った結果が今のわたしを形作っている訳」

「「……」」

「あの日までそのことに気づく事は無く…いやむしろ目を背けていたんだろうね…それを知ってしまえばわたしは長く存在を保てなくなるから」

「…そうか」

「…何か長く生きる方法がないかとも思ったけれど…結果は残酷なものだった」

「…魂を修復することは難しかった…レベルを上げれば少しはましになるかもしれなかったけれど」

「…MAGの吸収が問題になった訳か」

「…MAGの吸収は奴らの作り上げた『聖杯』の完成のために使われる…その流れを変えることはわたしが『器』であるかぎり不可能だった」

「…わたしが目を背けた事は主に四つ」

「一つ…『過去の悪夢』…単純に恐怖から目を背けたかっただけ」

「二つ…『他者とのつながり』…無意識にでも生きていられる時間の事を意識させかねない事だったから」

「三つ…『他者との別れ』…出会いがあれば別れもある…けれど短すぎる生の中ではそれと向き合う覚悟ができそうになかった」

「四つ…『終わりの時』…いつか来る別れは誰かにとっての傷となる…そのことに怯えてしまっていた」

「……知ることに怯えた結果そのことに触れかねないことがわたしにとって恐怖となった」

「…けれど…知ってしまった以上わたしはわたしを維持し続ける事は難しい」

「…『聖杯』を完成させる事は最悪日本を消し飛ばしかねない」

「…残されたのはわたし事『聖杯』を破壊するか…わたしの中に混ざった意思を浄化すること」

「…けれどそれは同時に『わたし』の終わりをも意味する…混ざりあった意思が願いをかなえる力を生み出しているから」

「…だから…迷いが生まれた」

「…幼女ネキと出会って前に進むことを選んだ」

「…イズナと出会ってわたしは心を理解し始めていた」

「…他にも…様々な事に触れて見えてきたものもある」

「……それでもわたしの終わりが誰かを傷つける…それが怖かった」

「……残された時間はそう多くはない」

「…消えかけの魂がどうなるのかはわたしにも分からない」

「……わたしは…どうしたいんだろうね」

 

 

 

 





解説

セツナ
 『計画』の影響で魂が削られた結果自身の存在が消えかけていた
 消えかけた中願ったことを『聖杯』が叶えた結果今の自身を形成していた
 魂の成長はできず何時か消えてしまうかもしれない自分は何かを残すことができたのだろうか
 …いつか来る別れが怖い
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