ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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今回はアニメ2期の希回について触れているところが多いです。見直さなくても、文章中で大体補完しています。


※前々回から零の身体が不調なため、彼の会話文が三点リーダー多めとなっています。言葉が途切れ途切れになっている事を表していますので、読みづらいかと思いますがご理解お願いします。


第五話 ‐東條希‐

 

「お前……どうしてココにいるんだ?」

 買い物に行くと言って出かけたハズの希が、俺の後ろに立っていた。人の気配には敏感な俺だが、背後に迫っていた希には全く気が付かなかった。そういえば、μ'sについて相談する時も知らず内に現れていたような気がする。

 

「買い物なんてウソや。零君にこの部屋を覗いてもらって、その驚く顔を見たかっただけ」

 

「悪趣味……だな」

 希から何をされたのかは知らないが、俺の体力はみるみる失われている。言葉も途切れ途切れでしか話せない。近くのデスクに手を付きながら、かろうじて身体を支える。

 

「えぇ~いいと思うんやけどな、この部屋」

 

「人の写真を……勝手に飾るな」

 

「でも、ウチはこの部屋にいると凄く落ち着くんよ。零君に囲まれているみたいで」

 希は恍惚とした表情で、自分の両手で身体を抱きしめる。

 

「写真如きでそんなコト……」

 

「あるよ。ウチが落ち込んだ時や壁にぶつかった時なんか、いっつも零君を見て癒されてるんやから。四方八方から零君がウチを包み込んでくれる感じでな」

 今度はうっとりとした表情を浮かべている。普段俺の写真を使って、何をしているのだろうか。とにかく、正気の沙汰でないコトは確かだ。

 

 

 

「どうしてそこまで……俺に拘るんだ?」

 

「どうしてって……零君が好きやからに決まってるやん。もちろんラブの方やで」

 真姫の前例があるため、大体この答えは予想がついていた。俺は歪みきった愛を受け入れるコトなどしない。

 

「ウチ、零君のコトをずっと見てたんや。穂乃果ちゃんたちが名も無き頃のμ'sを結成した時からずっとな」

 

 俺は廃校阻止の手伝いとして、自ら穂乃果たちの手伝いをしていた。しかし、あの時から手伝っていたのは俺だけではない。希もその1人だ。μ'sという名前を決めたのも、第一回のPV撮影を許可してくれたのも希だ。彼女あってこそ、μ'sはここまで来れたのだと思う。

 

「前に話したやろ?ウチには夢があるって話。穂乃果ちゃんたち、そして零君なら、その望みが叶うと思ったんや」

 

「それで俺たちに……初めから肩入れしていたんだろ………あの時聞いた」

 穂乃果の家で恋愛映画を見た帰り、希の様子がおかしくて後を追いかけた。そして、希の部屋で彼女の夢を聞いたんだ。両親の転勤続きで、まともに友達が出来なかった希。だが、高校で絵里という初めて親友と呼べる仲間ができた。その後にμ'sに加入し、新しい仲間がたくさんできた。希はその証として、みんなで1つの曲を作り上げたいという夢があったんだ。

 

 

 

「ウチにとってはな、零君は救世主なんよ。μ'sをここまで成長させて、ウチに夢を叶えるコトができる可能性をくれた零君には、感謝の気持ちでいっぱいや」

 

「だったら……どうして俺に……こんなコトを」

 

「そうやって段々と、零君を好きという感情に気付いた。それと同時にな、μ'sのみんなに嫌悪感が出てきたんや。みんなが零君に近づく度に、憎しみや苦しみがウチを支配していった。でもな、『好き』って言えへんやんか。もしかしたら、その一言でμ'sが壊れてしまうかもしれへん。そうなってしまうと、ウチの夢も叶わへんから……」

 

 今はμ'sに亀裂が入ってしまってるが、まだその時はμ'sを崩壊させようとは思っていなかったらしい。

 

「でもな、ある時、絵里ちがこう言ったんや。『ねぇ希、零を私のモノにしたいんだけど、手伝ってくれない』ってね。その瞬間、ウチは自分の中で何かが崩れていく感じがしたんや。そしてもう迷わないと決意した。零君を誰にも渡さない。彼はウチが手に入れるってな」

 

「そんなコトしたら……お前の夢が……」

 

 

 

「もうどうでもいいんや、そんなコト。今のウチの夢はな、零君と一生一緒にいるコトなんよ」

 

「だから……俺にこんな仕打ちを」

 

「そう。絵里ちと一緒に考えた作戦や。後は、絵里ちを含めたみんなをどう処理するかやね」

 もはや、陰日向にμ'sを支えていた時の希は存在していない。仲間たちと打ち解けられるよう一計を案じるなど、面倒見の良い彼女はとうの昔の消え去っているのだろう。今は、あの時の真姫と同じく邪魔者を消し去るコトしか考えていない。

 

 

 

「それで……今絵里はどこにいる……?」

 

 

 

 

ドゴォ!

 

「がはっ!!」

 急に希の拳が、俺の腹をえぐった。身体が弱っているためか、感じたこともない激痛が襲う。

 

 

 

 あまりの痛みに腹を抑え、その場に倒れ込む。

 

 

「な、に……すんだ……」

 

 

 

「彼女の前で別の女の話は禁止や。常識やろ?」

 

 

「ゲホッ!!ゴホッ」

 身体から酸素が一気に抜け出そうとするため、咳が止まらない。さっきなんつった?彼女?勝手に決めつけやがって……

 

 

 

 

「もう楽になってもいいよ。零君、最近疲れてるやろ。真姫ちゃんの時も色々大変やったしなぁ」

 

「知ってたのか……真姫がやったコト」

 

「ウチも絵里ちも知ってるよ。作戦を張り巡らすなら、まず敵の行動を読まないとあかんしね」

 今回の行動もすべて、真姫が行動を予測してのコトだったのか……

 

 

 

「でもこれで零君が頑張るのは終わりや。今までの疲労は、ぜーんぶウチが癒してあげる。一緒に暮らすのに、ストレスなんて感じて欲しくないから」

 

 

 

 

 

 

「こと……わる」

 

 

 

 

「え?」

 

 

「断るって……言ったんだ……俺は…今のお前と……一緒に暮らすつもりなんてない」

 

 

「どうして!!?ウチの愛の告白聞いたやろ!!?」

 その声は希とは言えないほどの悲痛な叫びだった。彼女のそんな声を聞くと心が痛いが、今はそれどころではない。

 

 

「そんなの……俺の心には響かない」

 

 

「じゃあこの部屋を見てみ!!ウチがどれだけ零君のコトが好きか分かるやん!!」

 

 

「無駄だ……今のお前を好きには……なれない」

 

 

「何が!?何が不満なん?零君もウンザリやろ、おかしなみんなと一緒にいるコトが!!もうみんなは諦めて、ウチと一緒になろうや!!後始末はウチが全部、しっかりしとくから!!」

 さっきまで冷静だった希だが、本性が直に出てきた。彼女もここまで狂っていたとは。いつもの穏やかな性格の希からは、誰も想像ができなかっただろう。

 

 

「やだね……光を失ったお前なんて……見たくもない」

 

 

 

「は、はは~ん、わかったで。そうやっておちょくって、ウチの反応見て楽しんでるんやろ?やらしいな零君は!まあ、そんな可愛い零君も大好きやで」

 

 

 

「俺はな……夢を追っているお前が好きだったんだ」

 

 

「……そんな夢、捨てたって言ったやろ」

 

 

「じゃあ……またあの時に戻りたいんだな……1人孤独だった、あの頃に」

 

 

「1人じゃない、零君と2人や。零君がいるから孤独にはならへん」

 

 

「例え俺と一緒でも……みんなを手にかけるのなら……その傷は一生埋まるコトはない」

 

 

「そんなコト……」

 

 

「そんなコトある……お前は優しすぎる……絵里と手を組んだのも……自分ではなく絵里にみんなを始末させようとしたんだろ?」

 

 

 希は唇を噛み締め、そっぽを向く。どうやら図星のようだ。彼女は人生で唯一の親友や仲間を忘れられていない。口ではみんなを手にかけるようなコトを言っていたが、彼女は最後の最後で非情にはなりきれなかった。だから、希は俺だけを捕まえ、他のみんなは絵里に任せていたのだ。自分の傷口が再び開くのを防ぐために。

 

 

「μ'sの練習では運動音痴な花陽や……行き過ぎてミスが目立つ穂乃果や凛に目が行きがちだけど……俺は分かってたよ……お前のコト」

 

 

「ウチの?」

 

 

「ああ……一生懸命練習して……空いている時間に自主連をしている時もあったよな」

 

 

「そ、それは……」

 

 

「頑張って練習して……みんなに教えるコトができるようにしてたんだろ?みんなとライブを成功させたい……ラブライブで優勝したい……初めて仲間と共に……一緒に頑張ることができる………嬉しかったんだよな…?」

 

 

「っ……」

 

 

「俺はしっかり見ていたよ希……お前をな……そして俺は……そんなお前が大好きだった……俺にとっても救世主だったんだよ」

 

 

「零君……」

 

 

「初めは俺1人で廃校を解決しようと思った……今まで俺が動けば何とかなってきたコトばかりだったから……でも今回ばかりはそうはいかなかった」

 周りからは『彼がいれば何とかなる』と思われてきたし、俺自身もそう思っていた。だが、廃校なんて大きな問題を1人で解決できる訳なかったんだ。

 

 

「その時、穂乃果たちに出会った……彼女たちならこの問題を解決できると悟ったんだ……だが、俺にはアイドルの知識なんて皆無だ……どう手伝っていいのか分からなかった……そこでお前が現れたんだよ」

 

 

「ウチ……?」

 

 

「そう……お前は陰ながらμ'sをサポートしていった……結果、今のμ'sは最高のメンバーが集まった……それもお前のおかげだ……希がいなかったら、俺の夢が潰れていたんだから」

 μ'sをここまで成長させたのはメンバー全員だ。もちろん希もその一角を担っている。

 

 

「だから……もう一度やり直さないか?」

 

 

「え……?」

 

 

「もう一度俺たちであの頃のμ'sを取り戻すんだ!!夢を捨てたとしても、何回も追いかけていいんだ!!まだそれができる!!」

 身体を蝕まれながらも、必死で彼女の心に問いかける。俺なんて、多少朽ち果てても構わない。

 

 

 

(なんやろ……今の零君の言葉で、胸がスっと軽くなったような気がする。夢、か……みんなの顔が思い浮かんでくる。みんな楽しそうや………)

 希はμ'sと関わってからのコトを次々と思い浮かべる。みんなと一緒に練習したり、遊んだ記憶が蘇ってくる。

 

(零君が伝えたかったコト、やっと分かったよ。今までのウチは、ただ嫉妬心に支配されていただけ。本当のウチはあの中にいる。ウチが一緒にいたいのは零君だけやない、"みんな"と一緒や。もう一度走り出したい!みんなと同じ夢へ向かって!!)

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん、もう大丈夫」

 どうやら、いつもの希に戻ったようだ。

 

 

 

「もう一度聞く。俺たちとまた夢を目指さないか?」

 手や腕に力は入らないが、俺はそっと手のひらを希に差し出した。

 

 

 

 

 

 

「はい」

 そう言って、希は俺の手を取ってくれた。その手はすごく暖かく、彼女が戻って来たという温もりが感じられた。そして俺は、その時の希の笑顔を決して忘れるコトはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 




第二章クライマックスでした。どうだったでしょうか?希の葛藤はアニメでよく描かれていたので、想像しやすかった人も多いかと思われます。そんな彼女だからこそ、人への恋、はたまた憎しみや嫉妬で心がブレやすいですね。


勝手にQ&A

Q.希は零が好きだから襲ったんじゃないの?みんなと一緒にいたいとか解決になってなくね?

Q.絵里は!?真姫は!?

A.全部次回で!(笑)





次回は第二章完結編。次回までに零君生きてるかな…?
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