もう少しキレイに終わりたかった…
絵里は、零を追いかけて来た真姫を退け、希が住むマンションへと向かっていた。
「真姫を邪魔するのが目的だったけど、ここまで時間を取られるとは予想外だったわ」
思ったより真姫が抵抗してきたのが原因だった。絵里が真姫を止めるコト自体は、希と計画を立てていた。だが、絵里自身が希の部屋に行くというのは計画には入っていない。そもそも、彼女は希と一時休戦状態なだけであって、協力をするつもりはさらさらなかった。
プルルルルルルル
制服のポケットの中に入れていた携帯が鳴る。
「今ソレどころじゃないんだけど…」
今は希から零を奪うのが先決なので、迷うコトなく携帯を無視する。
プルルルルルルル
プルルルルルルル
プルルルルルルル
「これだけこっちが出ないんだから諦めなさいよ!!」
プルルルルルルル
プルルルルルルル
「あ゛ぁぁぁぁもう!!出ればいんでしょ!!出れば!!」
ポケットから乱暴に携帯を取り出し、相手の名前を確認する。
『矢澤にこ』
「にこ……?」
正直言って、彼女から電話が来るコト自体相当珍しい。同じ学年、同じ教室、同じ部活として交流はあるが、携帯でやり取りを行うコトはあまりないからだ。
「もしもし?」
『やっと出たわね!!何回コールさせるのよ!!』
「悪いけど、用事なら後にしてくれない?今忙しいのよ」
『はぁ?練習抜け出しておいてよく言うわ。真姫は見つかったの?』
絵里はそんな言い訳で練習をサボったなんて忘れていた。それに、真姫を見つけるどころか仕留めておいたとは言えるハズがない。
「まだ見つけてないわ。どこへ行ったのかしら?」
『こっちが聞きたいわよ。とにかく、早く戻ってきなさい。零も希も帰っちゃったみたいで、機材全然運び終えてないんだから』
「別に明日でもいいんじゃない?」
『生徒会長のアンタがいないと使用許可が取れないじゃない。その使用許可、今日までなの覚えてるの?』
「!!」
最近、零のコトばかり気にかけていたせいで生徒会仕事が疎かになっていた。許可証の申請は学校に戻らないとできない。しかも、時間的に今から戻らなければ間に合わないだろう。
(希が零を確保してくれさえいれば、いつでも奪える。今焦る必要はないか……)
「わかったわ。今すぐに戻る」
『急いでよね!!』
「わかったわかった」
そこで通話は終了した。メンドくさいと思いながらも、歩いていた方向とは逆の方向に歩き出す。
(今、μ'sを完全にバラバラにする訳にはいかないわ。もう少しだけ保っておかなきゃね)
絵里の画策は、だいぶ先を見つめている。
~※~
「これで全部や」
「俺が言うのもアレだけど、剥がしてよかったのか?」
俺と希は、手分けして寝室の俺の写真をすべて剥がした。数が数だけに骨が折れたが、希から解毒剤を貰ったコトで体力も元に戻って来た。
「もうええんや。悪い夢を見ていたウチとはもうさよならしたから」
「そうそう、そうやって笑っていた方が可愛いよ」
「ちょっと!?からかわんといてえや」
こんな顔が真っ赤な希は見たコトがない。慌ててる顔も可愛いよ、とか言ったらさらに赤くなるんだろうか。
「本心だよ。嘘偽りなんてない」
「ウチが可愛いとか……そんな言葉似合ってないよ」
「似合っている似合っている。この俺が言うんだ、間違いない。確かにお前は他のみんなに比べれば大人っぽいけど、それでも1人の女の子なんだ。自信を持て」
「ちょっとやめて!!恥ずかしすぎる!!」
遂に手で顔を抑えてしまった。そんな反応をするあたり、しっかり女の子だな。
「いや~そう言われても本当のコトだしなぁ。可愛いし、スタイルも抜群ときた。これに惹かれない奴は男じゃないね」
「ダメや……羞恥心で死んでまう」
こんな希、一生で一回見れるか見れないかだぞ。俺も希がこんなに可愛いと思ったコトはない。ビデオ撮影しておきたいぐらいだ。家を盗撮した代わりとして撮影させてもらおうかな?でも、この勢いだとさらなる羞恥心で気絶しそうだ。
「ホラ!少し手をどけてみろ。顔見えないだろ」
「何でそんなにグイグイくるん!?今度は零君がおかしくなった!?」
「元々俺はこんな性格だろ?」
「堪忍してや……」
いつもはワシワシなんかでみんなを責めている希だが、責められる彼女もいいもんだ。ちょっと涙目になっているところもグッド!
「くっ、ふふ……」
「オイ、どうした急に笑い出して」
涙目で恥ずかしがっていると思ったら、急に笑い出した。遂に壊れたか?
「さっきのは恥ずかしいけど、やっぱ零君とこうやって話していると楽しいなぁって」
「!!」
「ウチが望んどったんはコレやったんやな。零君だけやない、みんなともこうやって楽しく過ごせたらええなって思ってたんやった。それがいつの間にか、目の前の欲望だけに囚われてしまってたんや」
希は仲間との絆がまだ切れていないコトを、しっかりと理解してくれたようだった。今の希を見ていると、諦めずに希を取り戻せてよかったと思う。
「でも、零君が好きって気持ちは変わってへんで。みんなよりも零君の一番になりたいって気持ちもな。だけど、そこでもう道を間違えたりはしいひんよ。今度は零君からウチに振り向かせてみせる!!」
「希……」
「もしかして……ドキっとした?」
「う、うるさい!せ、せいぜい頑張るんだな!」
「顔赤くなっとるよ~」
「え゛ぇぇい!!とっととゴミ捨てに行くぞ!!」
「はいはい」
「ったく…」
やっぱりコイツは強敵だ……と思いながらも、俺は自然に笑みが溢れていた。
~※~
「はいコレ」
希は俺から没収していた携帯電話を返してくれた。嬉しかったのは、真姫の時の様にボロボロになっていないコトだ。こんな短期間で携帯を買い換えるなんて嫌だもんな。
「サンキュ……って、うわ!真姫からめっちゃ連絡来てた」
「真姫ちゃん……?」
「どうした?」
急に希が考え事を始めた。真姫について心当たりがあるのか?今日は普通に練習をしていると思うが。
「あ!!絵里ち!!」
「何だ!?今度は絵里か!?」
「今日、絵里ちが真姫ちゃんを襲う計画やったんや!ウチが零君、絵里ちが真姫ちゃんの担当で」
「でも真姫は学校だぞ。それにみんなも一緒にいるハズ。そんなところでどうやって…」
「真姫ちゃんは絶対にウチらを警戒するから、もし零君がいなくなったらウチの部屋に真っ先に駆けつけるっていう想定を2人でしてたんや」
そういえば今朝、真姫は絵里の様子がおかしいってコトに気付いていた。それを読んでのこの計画だった訳か。真姫を1人、おびき寄せるために。
「絵里はどこにいるんだ!?そこに真姫もいるんだろ!?」
「詳しい場所は聞いてへんけど、ここへ来るには公園の前を通るのが一番近いから、多分そこやと思う」
「じゃあ今すぐ行こう!真姫に何かあったら大変だ!!」
俺たちはすぐに部屋を飛び出して、公園前に向かった。
~※~
既に日が完全に落ちようとしていたので、公園前に人はいなかった。そう誰も……
「さすがにいないか」
「もう2人とも帰ったのかもね」
「でもおかしいだろ!真姫は俺に、絵里はお前に連絡いれるだろ、普通。さっきから何回も真姫に連絡してるのに、全く反応しねぇ」
もしかして、真姫の身に何かが起こって連絡できない状態にあるとか。そんな最悪の事態がないコトを祈るが、もし絵里と遭遇していた場合、その最悪が訪れている可能性は十分にある。
「お前は絵里に連絡したのか?」
「まだや。向こうから来たら、じっくり考えようと思う。こうなったら絵里ちともしっかり話し合わないかんしな」
下手に彼女を刺激して、想定外の行動をされたら危険だ。希の判断は正しいと言える。
「どこで何をしているんだ……真姫」
1つ解決して、また新しい問題が浮上した。
そして渦は激しさを増していく……
とりあえず第二章を終える事ができました。第一章と違って、少し後に繋がるような感じで終わらせてみました。ヤンデレ成分は真姫の方が大きかった印象です。
『非日常』を投稿してから約20日、お気に入りが133件、感想16件とわずかな期間でこれだけ読んで下さっている方がいて本当に嬉しいです!お気に入りや感想がなくても読んで下さっている方が沢山いると思うので、そちらの方々にも感謝です!
次は第三章。今年中にはある程度進めようかなぁと考えています。冬休みになればペースも上げられるかな?
それでは、読者様と零君(そして私)、第二章お疲れ様でした!
一章につき2回更新予定のメンバーヤンデレ度vol.4
正常(協力者):真姫、希
正常(?):海未、にこ
予備群:花陽、凛
異常:穂乃果、ことり
末期:絵里