ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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クリスマスとか関係なく平常運転。
今回のメインは…?


第三章
第一話 ‐平穏の一呼吸‐


 

 真姫と希が更生してから最初の休日がやって来た。思えばこの1週間、随分神経と精神を削られた。休日ぐらいはゆっくりと羽を伸ばして休もうかと考えていたが、残念ながら問題は山積みだ。

 

 

 1つ目に真姫の行方について。簡潔に言えば彼女は無事だった。だが、疑問なのは真姫が学校にいたコト。そして、真姫自身が何も覚えていないというコトだ。希の話では、絵里が真姫を足止めする算段だったのだが、彼女は普通に学校にいて、絵里については覚えがないらしい。

 

 

 2つ目は絵里について。希と一波乱があった日以降、彼女は学校には来ていない。来ていないといっても金曜日に1日休んだだけで、すぐに休日になってしまっため真意は分からない。

 

 

 そして3つ目は……

 

 

 

 

 

「また来た。さっきから何回携帯震えてんだよ…」

 

 たった数秒で次、また次と俺の連絡用アプリに通知が入る。正直、それを見るのがおぞましい。実際にどんな内容か、以下に代表例を挙げてみる。

 

 

 

・穂乃果

『零君、ドコにいるの?今零君の家の前にいるんだけど出てきてよ!!』

『鍵壊して勝手に入っちゃった、ゴメンネ!でも零君が悪いんだよ、穂乃果をほったらかしにするから』

『ねぇ!!家にいないってどういうコト!!?休日は穂乃果と過ごさなきゃいけないのに!!』

 

 怖すぎる……しかも、休日を誰と過ごそうが俺の勝手だろう

 

 

 

・ことり

『おはよう零君!今日は絶好のデート日和だね!どこで待ち合わせする?』

『じゃあ公園の噴水で待ちわせにしよ!!今日はどんな服着て行って欲しい?』

『そっか~じゃあ零君の言う通りワンピースにするね!』

 

 この3つが約1秒間隔で送られてきた。もちろん、俺は一切質問に答えていない。

 

 

 

・花陽

『零君、今日も一緒に出かけませんか?この前、とっても美味しいご飯があるところ見つけたんです!』

『最近出たばかりのアイドルグッズが欲しいんです!そこへも一緒に行きましょう!』

『あぁ~零君と行きたいところがいっぱいあるよ~。よし!計画を立てましょう!』

 

 以下、秒単位で立てられた計画が延々と送られてきた。分かっていると思うが、俺は行くなんて一言も言ってない。

 

 

 

 その他に凛と絵里からも送られてきたが、大体内容は同じである。彼女たちは俺の意見など全く無視している。そんな奴らに返信する義理などないのだが、俺が無視したら無視したで家に突撃してくるだの、通知を何百発も連続で送ってくるだの、厄介極まりない。

 

 

 ところで俺は今何をしているのかと言うと、家に突撃されて捕まってしまうのを防ぐため、隣町に避難している。特別にやるコトはなくブラブラしているだけだが、アイツらに捕まるよりはよっぽど充実している。真姫や希の家で過ごすコトもできたが、今週は色々あったため、彼女たちには十分に休んで欲しい。

 

 

 とりあえず携帯の電源をオフにして、ゆっくりと今後について考えよう。休日までアイツらに構っていたら身体が持たないだろうし。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 

 俺は特にアテもなく街を見回っている。俺の住んでいるところと比べれば、こちらはかなり都会だ。あの秋葉原に近いというコトもあるのだろうか、ゲーム店や音楽店、アニメショップなど若者向けの店が立ち並んでいる。

 

 穂乃果たちが追跡してくる可能性もあるため、とにかく人が多いところに行きたかった。捕まってしまえば、この休日は絶対に帰してくれないだろう。

 

 

 

「いつ家に帰ればいいのやら。もしかして穂乃果の奴、ずっと俺の家にいるとか?ありえそうだな」

 最近は穂乃果からのスキンシップが激しい。それを妬んでかは知らないが、ことりも対抗しようとしてくるので学校にいる間は疲労しか溜まらない。

 

 

 

「あれは……海未?」

 前方からこちらへ向かって歩いてくる海未を見つけた。向こうもこちらに気付いたようで、少し驚いた表情をしている。

 

「零!?珍しいですね、ここで出会うなんて」

 

「ああ、隣町までは中々来ないからな。お前は何してるんだ?」

 

「弓道で使う備品を買いに来たんです。ここの方が安くて種類も豊富ですから」

 こうやって普通に会話するのが新鮮に思う。学校では穂乃果やことりをあしらったり、花陽や凛、絵里の話を上手く聞き流すので精一杯だからな。まともに会話できるのは元に戻った真姫と希、元々正常な海未とにこぐらいだ。

 

「零!!」

 

「な、なんだ?」

 

「さっきから呼んでいたのですが……聞こえなかったのですか?」

 

「悪い、考え事してた」

 

「あなた、最近怖い顔や険しい表情が多いですよ。何か悩み事でも?」

 この1週間、俺の人生の中でも一番内容が濃かったからな。たぶんその濃さはまだ薄れるコトはないと思う。それに、悩んでいるのは俺だけではないハズだ。

 

「それだったらお前もそうだ。学校でもお前、ずっと考え事してるだろ?練習の時だってそうだ、全然楽しそうじゃないし」

 

「ええ。悩みがあると言えばあるのですが、それは私のコトじゃなくて……」

 

「μ'sのコトだろ?」

 

「え?零知ってるんですか?」

 

「じゃあお前と俺は同じ悩みだな。今すぐには解決できないけど話してみろよ。少しは心が軽くなるかもしれないし」

 

 この3日ぐらい、俺は海未の笑顔を見たコトは1度もない。笑顔どころか全く楽しそうにもしていない。その点、いつもニコニコして俺ににじり寄ってくる穂乃果とことりとは大違いだ。

 

 

 道の真ん中で話し合う訳にもいかないので俺たちは人混みを避けるため、近くの公園へと向かった。

 

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

「この辺でいいか?」

「ええ」

 人混みを避けたといっても、今日は休日なので公園で遊んでいる人は結構いる。この会話さえ聞かれなければいいから問題はない。

 

 

 

「それで?お前は今のμ'sをどう思ってるんだ?」

 

「単刀直入に言えば……怖いです」

 

「怖い……」

 俺の今の考えと全く同じだ。

 

「はい。穂乃果もことりも、あなたばかりに執着しています。私が今後のμ'sの活動について話し合おうとしても、穂乃果たちは全然興味なさそうにしているんです」

 

「たぶん興味なさそうなんじゃない、興味がないんだ」

 

「やはりそうなのでしょうか……2人と話していても、『零君がこうしてくれた』『零君ああ言ってくれた』など、すぐに話題を切り替えられてしまいます。そして穂乃果もことりもその話題になると、いつも口喧嘩をするんです。今まであの2人がここまで口喧嘩をするのは見たコトがありません」

 

 

 俺は西木野病院に監禁されていた際に既に彼女たちを見ていたため、彼女たちの喧嘩の様子は容易に想像できた。海未の言う通り、穂乃果とことりがμ'sについて話している姿は最近全く見ない。練習や衣装作りなど最低限のコトはやっているらしいが。

 

 

「私、今疎外感を受けているんです。もう穂乃果とことりの目に私が映っていない様ですから」

 

「海未……」

 その表情は悲痛の一言で表せた。小さい頃から育んできた幼馴染の関係は、あっという間に途切れてしまった。3人が強い絆で結ばれてるからこそ、誰かが歪めば他の人にも大きな影響が出るのだろう。

 

 

「穂乃果たちだけではありません。絵里もいつもなら一緒に活動計画やステップアップのために色々とアドバイスを教えてもらえるのですが、最近はμ'sの活動を最低限しかやっていません」

 

「絵里……か」

 希の一件以来、彼女の見方は大きく変化した。今何をしているのやら。

 

「花陽も凛も練習に参加はしているのですが、集中はしていない気がします」

 

「ずっと俺を見つめているからな…」

 練習中もずっと俺に熱い視線をぶつけてくる。目が合うと可愛く笑いかけてくれるのだが、俺にとっては悪魔にしか見えない。しかも目をそらすと露骨に怒りの篭った視線を浴びせてくる。

 

 

 

「もうμ'sはあの頃に戻れないのでしょうか?」

 廃校を阻止するという目標を掲げた時、ラブライブの予選を突破すると決めた時、ラブライブを優勝するとみんなで誓い合った時、それもすべて過去のモノとなってしまった。今のみんなは私利私欲のために行動している。"仲間"の存在すらも切り捨てて。だが……

 

 

 

 

 

 

 

「戻れるよ。いや、俺が戻してみせる」

 

 

「零が……?」

 

「大丈夫だって。明けない夜はないって言うだろ?もう1度μ'sに光を差し込んでやるから心配すんな」

 

「相変わらず強いですね、零は……」

 

「いつでも自信満々。これが俺なんだから」

 

「フフッ久しぶりに聞きましたね、そのセリフ」

 あっ!笑った海未を久しぶりに見た。それを見れただけでも海未の相談に乗ったかいがある。

 

「そうかぁ?まあなんにせよ、困ったコトがあったら俺に言えよ。それに真姫と希も力になってくれるハズだ」

 

「はい!ありがとうございます」

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 その後、気分転換も兼ねて海未と一緒に街をブラブラした。これだけ普通に日常を送れたのはいつ以来だろうか。

 

 日も落ちかけてきたので、海未は一足先に帰宅した。俺はまだ家に帰るのが怖いので、また1人で街を徘徊するコトにした。

 

 

 

 

 

「金は十分に持ってきたし、今日は漫画喫茶で過ごしてやろうか……」

 さっき一瞬だけ携帯の電源を付けてみた。連絡用アプリの通知が9999件でカンスト、不在着信が682件、留守番電話が269件。俺はそっと電源を落とした。

 

 

 

「久しぶりに楽しい1日だったなぁ~。問題は多いけど、それは明日にでも考えるか」

 俺は伸びをしながら、夕日に照らされた道を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

「あーーー!!!零君発見だにゃーーー!!」

 

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 

 そしてひと時の平穏は崩れ去る……

 

 

 




この章のメインは海未と見せかけてあの人でした!


2014年12月24日13時の日間ランキングにて、この小説が5位に初めてランクインしました。ありがとうございます!

ヤンデレ+シリアスというのは原作ラブライブに全くマッチしていないので、逆にそのギャップを感じてもらえればと思います。






『日常』『非日常』共に年内更新は後1回ずつぐらいかな?
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