ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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早速お気に入り、感想を頂きました。ありがとうございます!

今回は零が事態の追求をする回となります。実際に動き出すのは次回からになりそうです。


第一章
第一話 ‐黒に染まる‐


 

「休むなら休むで、もう少し早く連絡を下さい!心配しましたよ!」

 

「ごめんごめん」

 

 本当に穂乃果は練習を休んでしまった。海未には体調が悪いと連絡したらしい。

 

「あなたはいつもいつも……」

 

「だからごめんって」

 

 こう見ていると、いつもの穂乃果と海未のやり取りに見える。何も変わったところはない。やっぱり今朝の心配は気のせいだったのかもしれない。

 

「なあことり」

 

「な~に?零君?」

 

 おおぅ、いつも以上にニコニコしているな。何かいいことがあったのか?

 

「穂乃果と海未って、あの調子で喧嘩したことってないのか?」

 

「あるよ」

 

「あるのかよ!俺は見たことないけど」

 

「高校に入ってからは無いかな。中学の頃は何度かあったよ。でも、その時は穂乃果ちゃんがしっかり反省したり、海未ちゃんも言い過ぎたって言ってすぐ仲直りしちゃうから」

 

「まあ、いつものお前らの仲の良さを見てれば納得できるわ。お前も大変だな、ことり」

 

「全然そんなことないよ。あっ!保健室に用事があるんだった!ちょっと行ってくるね」

 

「そういえば保健委員だったな。行ってらっしゃい」

 

「うん!」

 

 ことりの奴、本当に機嫌がいいのか?そんな笑顔で返さなくても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ことりってば本当に大変なんだから。手間掛けさせないでね、穂乃果ちゃん、海未ちゃん」

 

 俺はことりの異変には、微塵も気付かなかった。

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「結局気のせいだったってことでいいのか?」

 

 廊下を歩きながら、今朝からの一連の出来事について考える。メンバーと出会って半年ぐらいだが、みんなのことについては大体把握できているつもりだ。だからこそ、今朝の穂乃果の様子を気のせいで終わらすことはできない。

 

 だが、本人は現在至っていつも通りだ。それなのに今朝の出来事について言及すれば、またあの状態の穂乃果になりかねない。

 

「メンバーの誰かに聞くのが手っ取り早いか」

 

 基本的にはμ'sの練習には毎回出ているが、朝練などには出ていない。そういう意味では、穂乃果と一緒にいる時間が長いメンバーたちに聞くのが効率がいい。

 

「あれは……真姫?おーい!!」

 

「零?何か用?」

 

「変なコト聞くかもしれないけど、最近穂乃果の様子ってどんな感じだ?」

 

「穂乃果?あなたの方がわかってるんじゃないの?」

 

「いや、練習中とかさ」

 

「いつもと同じ、一生懸命やってると思うけど」

 

「そうか」

 

いつもと変わらずか……。これじゃあ何も手掛かりがない。

 

「でもそういえば」

 

「え?」

 

「最近あなたの話が多い様な気がする。お弁当分けてもらったとか、一緒に帰りたいとか。いつもは休憩時間になるとダンスや歌とか練習のことばかりなのに、最近はそれに関係ないあなたのことばかり」

 

 真姫から見てみれば明らかにおかしなところがあったのだ。やはり正常ではないのだろうか。誰にも言えない悩みでもあるのか?

 

 

 

 

 

「でもいいんじゃない?」

 

 

 

 

「……いいって?」

 

 嫌な予感がした。今朝の穂乃果の表情がフラッシュバックされる。

 

「別に放っておいてもいいってこと。穂乃果ならどうせ明日になればケロっとしてるわよ」

 

「ほっとくって、そんなの友達としてできる訳ないだろ...」

 

「友達……友達か……穂乃果は友達なのね……フフッ」

 

 真姫は見たこともないような薄ら笑いをしている。いつもは素っ気ない態度を取っているが、仲間のことを誰よりも大切にしている。そんな真姫が友達の異変を放っておくハズがない。そう思っていた。

 

 しかし、目の前の真姫は違う。周りのことなど、まるで自分には関係ないかのようだ。そして、そんな真姫が集中しているのは……

 

 

 

 

 

 俺……

 

 

 

 

 真姫は先程から俺の瞳をジッと見つめていた。ブレることなく、俺が目を反らしても追い続ける。真姫の考えられない言動に困惑する。

 

 

 

 

 

「聞きたいことはそれだけ?」

 

「あ、ああ……」

 

「そう。それじゃあ私用事あるから」

 

「そうか……引き止めて悪かったな……」

 

 ここで俺は穂乃果の時と同じミスを犯した。穂乃果や真姫の異変を追求するならば、ここで引き止めてでも話を聞いておく必要があった。だが、この場の雰囲気に恐れをなしたのか、それ以上の追求は出来なかった。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 心配事を解決しようと思ったら、逆に心配事が増えてしまった。これはあくまでも予感だが、このまま放っておいたら俺たちは元の日常に戻れない様な気がした。

 

 とりあえず情報が欲しい。あの様子から察するに、本人から聞き出すのは逆効果だろう。それだったら話は早い。μ'sの指揮官で実質的なリーダーとなっている海未に聞くしかない。

 

 

 

「海未!」

 

「零、どうかしましたか?顔色が優れないようですが」

 

 俺は海未が1人になった瞬間を見計らって話しかける。穂乃果には聞かれたくないからだ。

 

「心配ない。それより今日の穂乃果、何か変じゃなかったか?」

 

「そうですか?休みの連絡を寄こさないことなんて珍しいことではありませんけど」

 

珍しいことじゃないんかい!アイツはひたすら頑張ってやるか、サボるかのどっちかだな。

 

「そういうことではなくてだな……何て言えばいいんだろう、こう雰囲気が違うというか……それに俺の話題が多いって真姫から聞いたけどどうなんだ?」

 

「あぁ……言われてみればそんな気も……しかしそれは穂乃果だけではありませんよ」

 

「何!?」

 

「ことりや真姫、花陽や絵里も結構あなたのことを話していますよ」

 

 俺のことが話題に出るのは嬉しい。だが状況が状況である。もしかしたらことりたちも…?でもさっき話していた時は変わったところはなかったような?

 

「零?怖い顔していますけど、大丈夫ですか?」

 

「なぁ海未、これからそいつらに妙なことがあったら俺に連絡してくれないか?」

 

「何故です?」

 

「よくない予感がするんだ……このまま何もかもが壊れてしまいそうで…」

 

「心配ありませんよ。μ'sの結束はどこのスクールアイドルにも負けません。それは零がいつも言っていることではありませんか」

 

「そ、そうだよな……」

 

そうは言うものの、危険は寸前にまで迫っている可能性がある。俺の悪い予感はよく当たる。事態解決の為には今すぐにでも動き出したいのだが、それはできない。何故なら…

 

 

 

どうしたらいいのかわからない

 

 

 

何が原因で様子がおかしくなったのか、自分は彼女たちとどう接すれば元に戻せるのか、それが全くわからない。人から情報を得れば得るほど、起きている事態が如何に巨大かがわかる。今起こっている事態を把握するだけでも精一杯なのに、そこから解決方法を導き出すのは到底不可能だ。

 

「そろそろ授業が始まるので行きましょう」

 

「ああ……」

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

「海未ちゃん。零君と何話してたの?」

 

「ことり。穂乃果の様子を聞かれましたが」

 

「それで何て答えたの?」

 

「いつも通りですって言いましたが…。もしかしてことりも穂乃果の様子が変だって言うのですか?」

 

「ううん!どんな話をしていたか気になっただけだよ。確かに穂乃果ちゃん、最近零君の話多くなったよね」

 

「零は頼りになりますし、人望もあります。それに私たちの周りに男性は彼だけなんですから、話題に出てもおかしくはないと思います」

 

「ふぅ~ん、海未ちゃんはそう思ってるんだ」

 

「何か言いました?」

 

「何でもないよ!ほら、早く行こ!」

 

「え、ええ」

 

 

 

 

 

 

(さすがことりの零君!もう気付いちゃったんだ。ことりもそろそろ動いたほうがいいかなぁ)

 

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 

「あれ?真姫ちゃんはどこ行ったのかにゃ?かよちん知ってる?」

 

「真姫ちゃんならさっき急いで出て行ったけど。お昼は2人で食べててって」

 

「えぇー!真姫ちゃんの豪華なお弁当に期待してたのに!」

 

「いつもいつもおかず貰うのやめた方がいいよ、凛ちゃん」

 

「しょうがない、今日は諦めるにゃ」

 

「そうだね。いつ戻ってくるのかわからないし、時間なくなっちゃうから早く食べよ」

 

「そうするにゃって…かよちん今日もおにぎり!?」

 

「うん!このお米とっても美味しんだよ。零君にも食べてもらいたいなぁ」

 

「あ!かよちんまた零君の話してる!最近そればっかりだにゃ」

 

「そ、そうかな?」

 

「もしかして好き…とか?」

 

 

 

ブブー!

 

 

 

「ちょっとかよちん汚いにゃ~」

 

「ごめん!でも花陽が好きなのはお米だけだよ!」

 

「何か上手く逃げられたにゃ……」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「ついに届いたわ……」

 

 学校の裏。誰も通らないような建物の影に真姫はいた。

 

 

 

 

「これがあれば零を私のモノに……フフフフ……」

 

 真姫は今までの誰よりも黒に染まっていた。

 

 

 

「もう誰にも近づけさせない……たとえそれがμ'sのみんなであったとしても……」

 

 

 

 恐怖は既に目の前まで迫っていた。

 

 




いかがだったでしょうか?

『日常』を書こうと思っていた時からずっと『非日常』も書こうと考えていました。向こうとは話の雰囲気がガラリと変わるので、『日常』を書いていて行き詰まったら『非日常』を、『非日常』で行き詰まったら『日常』を書くというスタンスにしています。


話の中で事態の規模が巨大化しているとありましたが、実際には零が思っているよりも遥かにドロドロしています。それも合わせて次回にご期待下さい。


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