ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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この話で第三章完結します。今回短かめです。


第八話 ‐箍を外す‐

 

 そもそもなぜ俺と凛が公園にいるのか。それは単純に『嫌な予感がしたから』、それだけだった。訓練さえすれば、人間でも予知ができるらしい。よくテレビでやっている、警察が怪しい人物に声を掛け、結果本当に怪しい人物であり、その人を逮捕するという展開を想像してみれば分かりやすい。別に超能力者でなくとも可能である。

 

 

 今回もその通りだった。公園に駆けつけると、希たちが険しい表情で会話しているのが見えたため、俺たちは隠れて様子を見ていたわけだ。まさかとは思っていたが、花陽が本当にμ'sのみんなを襲うとは……

 

 

 

 

「ここからは俺と花陽で話をさせてくれ」

 

 

 希は黙って後ろへ下がった。花陽からの抵抗もなくなったため、凛も花陽から離れて希たちと同じ場所で待機する。

 

 

「うっ……零君……」

 

 

 突然現れた俺にどう言葉を掛けていいのか分からないのか、今まさに希たちを襲うところを見られたためか、花陽はかなり動揺している。言いたいコトはほとんど希が言ってくれたため、俺から掛けてあげられる言葉は少ない。

 

 

 

「どいて…」

 

「花陽、お前は」

 

 

 

「どいてよ零君!!みんなを殺せない!!」

 

 

 目に涙を浮かべながら、まだ自分の役目を遂行しようとする花陽。どんな逆境に立たされても自分を保てるのは褒め称えたいが、あいにく俺が会いたいのはこの花陽ではない。

 

 

「どかない」

 

 

「どうして!?みんな零君を壊しちゃうんだよ!!」

 

 

「今の自分を見てみろ」

 

 

 今のこの状況。俺とその後ろには凛、真姫、希。対して反対側には花陽1人だけ。花陽は俺たちの顔を交互に見ている、となれば自分の立場が理解できただろう。

 

 

「大体希が言ってくれた通りだよ。俺は今のお前を絶対に褒めたりはしない。自分が何をやっているのか、よく考えろ」

 

 

「うっ……あぅ……」

 

 

 さらなる動揺に駆られ、思っているコトを口にだせないようだ。

 

 

「お前は俺のために行動しているって言ってたよな。でもそれと同時に、俺のためじゃなくてお前自身を守ろうとしたんだ」

 

 

「……?」

 

 

「そのままの意味だよ。俺を守ろうとする気持ちもあったんだろうけど、一番の目的は俺の傍にいる自分を守ろうとしたんだよ」

 

 

「それは……」

 

 

「本当に大切に思ってるんなら監禁したりしないだろ。つまりお前は俺がどんな状態であれ、俺が傍にいたらそれでよかったんだよ」

 

 

 キツイ言葉を投げかけているが、今の花陽を否定しなければ元の花陽は帰ってこない。

 

 

「俺と傍にいれば自分が狙われる、だから今までのお前の行動は自分を守るためだったんだ」

 

 

「うぅ……」

 花陽は両手両膝を地面に着き、ポロポロと涙を流して泣き始めた。

 

 

「!!」

 俺が急に頭を撫でたため、花陽は驚いて顔を上げた。

 

 

 

 

「俺は好きな花陽はただ努力するだけのお前じゃない、みんなと一緒に夢に向かおうとするお前が好きなんだ。みんなと同じ道を歩むために、一生懸命頑張っているお前が大好きなんだ。だからさ……」

 

 

 俺は一呼吸置いてから次の言葉に移る。正直言って、これで花陽が元に戻らなかったら手の打ちようがない。だけど、もう彼女は……

 

 

「俺たちと一緒にやり直してみないか?俺はもう1度、お前が踊って歌っている姿を見てみたい」

 

 

 俺はそっと花陽に向かって手を差し伸べた。

 

 

「いいの?こんな私でも?」

 

「いいに決まってるだろ、お前はμ'sのメンバーなんだから。μ'sに入った時の熱いハートがあれば、どんな苦難も乗り越えていけるさ」

 

 

 花陽はμ's結成初期から、ずっと加入するかどうか迷っていた。自分は加入しない方がμ'sのため、足を引っ張ってしまうから、そのような理由から躊躇していたんだ。だが、彼女の心にはアイドルに対する熱いハートがある。俺はそれに気付いた時、絶対花陽をμ'sに入れてやろうと決めた。

 

 

「不安なら、俺がまた取り払ってやる。挫けそうな時も、諦めそうな時でもずっと……だから戻ってこい!!」

 

 

「れ、零君…………」

 

 

 花陽の顔から黒さが、闇が消え去っていく。

 

 

「はい!!」

 

 

 花陽は俺の手を取って立ち上がった。真夜中だが、俺の目には明るくキラキラした笑顔だけが映っていた。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「どうだ?花陽と凛の様子は?」

 

「もう寝っちゃったよ。だいぶ疲れていたみたいやねぇ」

 

「そうか……」

 

 

 俺たちは花陽の貸家に戻って来た。一応事態は収束して安心しきったのか、隣の部屋で眠ってしまったらしい。

 

 

「零君もお疲れ様。まさか花陽ちゃんたちに監禁されているとは思わへんかったよ」

 

「俺もビックリした。ここまで計画を練っていたとはな」

 

 

 これから先は、もっと恐ろしい計画を練っている奴しかいない。どう考えても今まで通りのやり方では通用しないだろう。

 

 

 

 

「ゴメン、私もう帰るわね」

 

 さっきからずっと喋っていなかった真姫が口を開いた。花陽たちが戻ってきたというのに、その口ぶりはかなり重かった。

 

「ああ、今日はありがとな」

 

「っ……それじゃあ……」

 

 真姫は足早に家を出ていってしまった。

 

 

 

 

「真姫、どうしたんだろう?えらく暗かったけど」

 

「これは真姫ちゃん自身が1人で乗り越えなきゃあかんコトや」

 

「知ってるのか?真姫の気持ちを」

 

「大体察しはついてるよ。でもこれを教えてしまうと、また甘えてしまうから教えられんよ」

 

 

 甘える?誰が誰に?あまり事情は分からなかったが、希がこう言っているんだ。真姫を信じてみよう。

 

 

 

「零君ももう帰る?花陽ちゃんたちはウチに任せといて」

 

「そうだな。それじゃあよろしく頼むよ」

 

 

 あんな争いごとのあった家に戻るのは気が引けるが、家主は俺だ、何が悪い。というのは冗談で、もし穂乃果たちがいた場合、アイツらの好き勝手にはさせないためだ。

 

 

「じゃあな」

 

「うん、またね」

 

 

 

 

 

 希に挨拶をして貸家から出る。スッと夜風が通る。今まで感じられた邪気が嘘のように風が気持ちいい。

 

 

 

 まだまだ問題は解決していない。穂乃果たちのコトも、真姫のコトも。だが、決して明けない夜はない。俺は凛と花陽が戻ってきたという一時の幸福を噛み締めながらも、また次の事態へ立ち向かう決意を固めた。

 

 




これにて第三章完結になります。μ's同士の対決が激化したり、更生した人もまた新たな葛藤が生まれたりなど、今後の話に繋がる重要な章になります。真姫たちにも必ず活躍の場はありますのでご心配なく。



ここまでありがとうございました。次章でもよろしくお願いします。次章のあらすじは第三章の第六、七話の後書きに掲載しています。


以下付録集。個人的に小説の設定集というものが好きなので作成。


付録1:現時点でのメンバーヤンデレ度

正常:真姫、希、凛、花陽
正常(?):海未
予備群:にこ
異常:ことり
末期:穂乃果、絵里


付録2:ここまでの時系列

(時刻・時間帯):(出来事)


某月

【日曜日】
昼:花陽と昼食

【月曜日】
~本編開始~
~序章開始~
早朝:穂乃果来宅

~第一章開始~
昼:実態調査
放課後:真姫により拉致、穂乃果とことりが対峙、脱出
夕方:真姫が更生

【火曜日】
某時刻:絵里と希が拉致作戦を練る

【水曜日】

【木曜日】
~第二章開始~
早朝:真姫と情報交換
朝:希と情報交換
放課後:希により拉致、真姫と絵里が対峙
夕方:希が更生

【金曜日】
某時刻:絵里が姿を消す

【土曜日】
~第三章開始~
昼:海未の相談に乗る
夕方:凛と夕食
夜:花陽と凛により監禁、真姫が零の家へ、にこ襲来、脱出
真夜中:凛と穂乃果が対峙、穂乃果とことりが対峙、凛が更生、希と花陽の話し合い、花陽が更生

【日曜日】
~第四章開始~
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