これからはバッシバシ投稿していきます(多分)
花陽たちが買い物をしている中、矢澤にこはある場所へ向かっていた。表情は前髪で隠れて周りからは一切見えない。歩くたびに自慢のツインテールが可愛らしくぴょこぴょこ跳ねるが、にこ本人はそれとは全く逆、ストレスで苛立ちを感じていた。
その原因はにこの妹と弟。まだ妹たちは幼いため、長女であるにこは何かと頼られる。だが、今のにこに妹たちを気にしている暇などない。心が零に支配されているにこにとって、擦り寄ってくる妹たちは邪魔な存在でしかなく、もはや妹たちに"殺意"の目すら向けるようになっていた。しかしそれでも妹たちはなついてくるため、ついに業を煮やして家を飛び出したのだ。
妹たちのコトもそうだが、にこはそれ以上に懸念しているコトがある。今のμ'sの現状だ。現状といってもμ'sの崩壊を心配しているのではなく、にこにとってはむしろ崩壊を阻止されかかっているコトが問題である。迅速にμ'sを解体し、零を我が物にするために画策しているのだが、意外にも零は健闘しているため自分の思うように策を講じれない。にこの計画としては穂乃果たちを焚つけ、お互いを争わせて自分の負担を減らすコトだ。しかし、この1週間で零は信じられないほど早くμ'sのメンバーを取り戻している。にことしては迷惑な話だ。
「やっぱり先に零を狙うべき……」
だが、真姫みたいに病院の一室などはないし、希みたいに一人暮らしでもない。花陽みたいに親のツテで部屋を借りることもできない。にこは零を捕らえたとしても、閉じ込めておく場所がないのだ。もちろん自分の部屋など論外である。
だとしたら作戦は変更できない。上手く穂乃果たちを焚きつけて漁夫の利を狙っていくしかない。
「コマは多いほうがいい……特に穂乃果とことりを追い詰めるなら……」
にこが向かっているのは待ち合わせ場所。既に会う約束はしてある。
「あなたの本当の心を引きずり出してあげるわ……海未」
~※~
「やっと買えたにゃー!」
「長かったね」
「どれだけ人気なのよ、このクレープ」
凛、花陽、真姫の3人はクレープ屋に来ていた。このクレープ屋は雑誌やテレビで紹介されるほどの人気で、ちょうど昼食の時間帯であったためか、クレープを買うだけで30分程度並んでいた。
「おいしい~!」
「これだけ並んだんだもの、おいしくないと許さないわ」
「あははは……」
さすがの人気店なだけあって、舌が肥えている真姫も満足気だ。そもそも真姫はあまりこのようなスイーツ系は食べないので、味に関しては真新しく感じている。
「真姫ちゃ~ん、そっちのも一口ちょーだい?」
「イヤよ。絶対に一口じゃないでしょ」
凛は大きな口を開けて真姫のクレープにかぶりつこうとするが、身体を後ろに大きく仰け反らせて回避する。その時に凛が持っていたクレープを見てみた。
「あなた、もうクレープほとんど残ってないじゃない!それでよく人のモノまで食べようとしたわね。普通はギブアンドテイク、こっちがあげたらそっちもくれるのが常識でしょ!」
「ふ~ふ~」
「だから口笛吹けてないわよ……」
「だったら私のクレープ、少し食べる?」
「いいの!?」
「ダメよ!花陽は凛を甘やかし過ぎ!」
花陽、凛の2人とは高校からの付き合いだが、花陽のお人好しすぎる性格に少し呆れるところがあった。今の花陽を見ていると、すぐ変な詐欺に引っかかってしまいそうで危なっかしい。μ'sに加入する前よりは物事をビシッと言える性格にはなってきたが、時よりとことん甘くなったり、周りに流されてしまう。
「はぁ~。これじゃあ花陽、もし誰かに騙されても嘘だってコトにすら気付かなそう」
「そうかな?」
「そうよ。特に凛ならね」
「凛はかよちんを騙したりしないにゃ!!」
「花陽に『今年の夏休みの宿題はかよちんに手伝ってもらわなくてもいいにゃー!』とか言ってたのはどこの誰だっけ?結局、私に泣きついてきたくせに」
「え!?そうだったの、凛ちゃん?」
「それは……真姫ちゃん何で言っちゃうの!?内緒にするって約束だったのに!」
「高校生にもなって甘えないの」
「うぅ~……こうなったら」
凛は真姫の持っているクレープに狙いを定める。その目は餌を確保するために身構えている野良猫のようだ。
「うりゃぁあああああああ!!」
パクッ!
「ちょっと凛!!何するのよ!!」
「もぉがぁもぁがぉ(おかえしだにゃ)」
「食べながら話すのやめようよ、凛ちゃん」
凛は真姫の残ったクレープの半分を一気に食べてしまった。おかえしと言っているが、夏休みの宿題に関しては完全に自業自得である。
真姫が花陽と凛の甘さを捨てなければならないと思う理由が2人のこれからの将来の他にもう1つだけあった。
それはμ'sを取り戻すためだ。昨日の夜、真姫は1つ確信した。気持ちだけではこの事態を乗り越えられない。零のため、μ'sのためにと決心していた自分だったが、零の家で凛と穂乃果の激突を見た時、その決心はすぐに崩れ落ちた。目の前で親友同士が本気で命の取り合いをしているところを見て、あっという間に逃げ出してしまった。2人の表情は見えなかったが、穂乃果の不気味な笑い声ははっきりと覚えている。
その恐怖に怯えないためには、『今の自分なら大丈夫』『決心をした』などという根拠のない自信を捨てるしかない。自分たちは零みたいに強くない。おそらく花陽たちも自分の仲間同士が争っているところを見れば恐怖に駆られ、逃げ出してしまうだろう。その時に『どうにかなる』『誰かが助けてくれる』などの甘い思考もいらない。そういった考え=甘さを捨てていかなければ穂乃果たちには対抗できない。いつもみんなが一緒だとは限らないから。それは実際に体験した真姫が一番よく知っている。
真姫は再び、昨夜の出来事を思い出していた。真っ先に思い浮かぶのは逃げ出した自分。結局、花陽と凛には自分から何もしてあげるコトが出来なかった。零や希に感謝すると共に、自分の未熟さを思い知った。
自分の答えはまだ完全には出ていない。今できるのは、花陽と凛の心を少しでも強くするコトだけだ。自分と同じ失敗をこの2人にさせないために。
(あなたたちに覚悟はある?恐怖に駆られた時に逃げ出さない勇気が……)
~※~
にこは海未との待ち合わせ場所に一足先に来ていた。その場所は休日だが人通りがあまりない普通の歩道。小中学校では通学路として使われているので、休日だと人通りが少なく見えるだけなのかもしれない。
「にこ、もう来ていたのですね」
「今着いたばかりよ。とりあえず、歩きながら話しましょ」
「ええ……」
海未には『μ'sの現状のコトで話がある』とだけ言ってある。今の海未と話をするにはこの話題で釣るのが手っ取り早い。実際にこの話を持ち出して連絡したら、すぐに今日会う約束を取り付けられた。
「海未は今のμ'sを見てどう思う?」
「零にも相談したのですが、やはりおかしいと思います」
「ちょっと待って、零と会ったの?」
「ええ、昨日たまたま」
「そう……続けて」
「はい……最近誰も練習に身が入ってないような気がするんです。穂乃果やことり、花陽、凛も指導している私を見ているというより、零の方を見てませんか?絵里に至っては連絡もなしに休んでしまいますし……」
「そうね、にこもそう思ってる。あの子たちの様子は尋常じゃない」
「わかってくれる人がいてくれてよかったです。同じμ'sのメンバーでも危機感を持ってくれている人がいるとは」
「そうねぇ……どうすればいいのかしら」
にこは心の中で苦笑する。今のμ'sを『おかしい』の一言で済ませられるハズがないからだ。海未の現状把握能力の低さに嘲笑うコトしかできない。
そう、にこは海未の話など全く気にしてもいないし興味もないのだ。
「穂乃果とことりはどうなの?毎日一緒にいるアンタなら、何か気付かない?」
ここからが本題。海未にとっても、そしてにこにとっても。
「あの2人は特に何を考えているのか分かりません。先週は話す機会すらあまりありませんでした」
「話す機会がない?」
「向こうからは一切話しかけて来なくなりました。こちらから話しかけてもすぐに話題を別の話題に変更してくるんです。それも決まって零の話題に。それ以外だと、用事があるって言って話すコトすら叶わなかったり、そもそも無視されたりと話す機会自体がないのです」
「へぇ~。仲良し幼馴染のアンタたちがそんな風になってるなんてね」
「最近は零の話題の時ぐらいしか2人の嬉しそうな顔を見たコトがありません」
にこはそりゃそうだと思った。あの2人は他のメンバーよりも明らかに零に執着しているのが見ているだけで分かる。もう隠してもいない。それが作戦なのか感情を制御出来ていないのかは知らないが、行動はストーカーの域を軽く超えている。零の私物を盗んでいるのはほとんどが穂乃果とことりの仕業だ。彼の使った割り箸やストローなどのゴミすらも見逃さない。
「にこ、どうしたらいいと思いますか?零は任せておけと言っていたのですが……」
「そうねぇ……時間が解決してくれるわよ」
「そんなものなのでしょうか?」
「そんなもんよ。あの子たちも時期が過ぎれば冷めるでしょ」
もちろんそんな時は来るハズがない。むしろ時間経過で今よりも混沌としていくだろう。海未は納得していないが、にこは初めから彼女の相談に乗るつもりは一切ない。話の内容などどうでもよく、どうやって自分の想定した計画まで話を持っていけるかだけを真剣に見定めていた。
「零がやるって言ってくれてるんだし大丈夫でしょ。零を信用してないの?」
「もちろん信頼しています。いつもはお調子者ですが、いざという時の零はとても頼りになります。今まで何度助けられたか……」
今だ……
零の話題になった。この瞬間を待っていたのだ。
「海未……アンタさ……」
「?」
「零のコト、どう思ってるの?」
~※~
「今日は楽しかったにゃ~!」
「うん!また3人でお出かけしようね!」
「私はあまり人混みは好きじゃないけど、たまにならいいかもね」
「真姫ちゃん素直じゃないにゃ~。行きたいなら行きたいって言えばいいのに」
「り~ん~!」
「きゃ~!真姫ちゃんがまた怒ったにゃ~!」
「まぁまぁ」
まだ15時を回ったばかりだが、午後も十分にショッピングを満喫したため帰路に立つ。この後は、花陽の家で今日買った戦利品をみんなで開封したり試着したりとお楽しみタイムの始まりだ。
「午後からだったら零君と希ちゃん、予定空いてるかな?」
「零君と希ちゃん?呼ぼう呼ぼう!!」
「いきなり連絡して大丈夫かしら?」
「本当は零君と希ちゃんを入れた5人でお出かけしたかったし、午後が空いてるなら一緒にどうかなぁって思ったんだけど」
「真姫ちゃん、何か心配事があるのかにゃ?」
「別にそういう訳じゃないけど……まあ一応なら連絡してもいいかもね」
真姫としては、花陽と凛を取り戻すために奮闘した零と希を今日ぐらいはゆっくり休ませてあげたいと思っていたのだが、あの2人とって一番有効的なのは花陽と凛の"笑顔"ではないかと考え直す。だとしたら誘ってみるのも悪くないのかもしれない。
「じゃあ連絡を……」
「あーーーーーー!!」
「何よ凛!急に大きな声出さないでよ!」
「あれ!零君じゃないかにゃ?」
「ホントだ、零君だね」
「何してるのよ……あんなところで」
零は道の端っこで佇んでいた。ここは住宅地の道路であり、立ち止まって見るものなど何もない。よほど疲れていてぼぉ~としているのだろうか。
「こんなところで会うなんて奇遇だにゃ!」
「よかった、今から連絡しようとしていたんです」
「こんなところで何してるのよ。疲れてるなら家で休んでた方がいいんじゃない?」
3人は零に話しかける。だが零は反応しなかった。
「零君!聞いてるの?」
凛は零の肩を掴んでクルッと彼の前に回り込む。そこで零が始めて口を開いた。
「えぇ~と……誰?」
「「「!!」」」
零から出てきたのは衝撃の言葉。3人は零の言葉が理解出来なかった。
「誰……ってヒドイにゃ~!」
「冗談はいいから、暇だったら今から花陽の家に……」
真姫は零の手首を掴む。
パシッ!
「え……?」
真姫は驚いて言葉も出なかった。零の手首を掴んだ瞬間、彼はそれを思いっきり振りほどいたのだ。
「誰か知らないけど、逆ナンならゴメンだ。今待ち合わせしてるから」
「は……?」
真姫だけではなく、花陽と凛も目を丸くしている。一体零は何を言っているのだろう?ついに疲労で頭がおかしくなったのかと思ってしまう。
「零君冗談キツイにゃ。ほら一緒に行こ!」
「こっちが聞きてぇよ、急に話しかけてきて。誰なんだよ!?」
「っ……」
花陽は零の威圧に少したじろぐ。凛と真姫も今まで見たコトがない零に動揺する。
「おい、何か言えよ」
彼女たちの目の前で、『希望』が崩れ去ろうとしていた……
~※~
戦況報告
この章では話の主軸が零ではないので、視点がコロコロといつも以上に変化します。そのせいか文章が上手くまとまらなくて投稿が遅れてしまいました。『日常』だとノリだけで書けるので、しばらくはそちらでお楽しみ頂ければと思います。