ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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ここに書くことが段々なくなってきた……

全然投稿ペースを上げられなくて申し訳ない。


ep.3 ‐奪われた希望‐

 西木野真姫は一体何が起こっているのかが理解できなかった。真姫たちの目の前に立っているのは紛れもない"神崎零"である。しかし、彼は自分たちを知らないと言い張る。もしかして別人なのかもしれない。真姫は混乱の最中で、目の前の彼が"神崎零"ではないという証拠を見つけ出そうとする。

 

 

 だが、彼を見れば見るほど"神崎零"だという証拠しか出て来ない。顔、体格、髪型、言動、雰囲気……どれを取っても"神崎零"そのものだ。

 

 

 だとしたら、彼に何が起きた?記憶がなくなっているのだとしたら記憶喪失が一番の候補だろう。でも、もしそうだとすると彼がここにいるのは不自然だ。記憶がなくなった人間が、呑気にこんなところで立ち往生しているハズがない。

 

 

 花陽と凛を横目で見る。2人とも呆然と立ち尽くしているが目で零の全身を見渡しているため、自分と同じようなコトを考えているのだろう。

 

 

 

「何もないなら、とっととどっかに行ってくれ。こっちは待ち合わせをしてるんだ」

 

 

 

 待ち合わせ?そういえばさっきもそのようなコトを言っていた。一体誰と待ち合わせをしているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

「零~~~!!」

 

 

 

 零の背後から女性の声が聞こえた。その声を聞いた瞬間、真姫たちの背中に悪寒が走る。

 

 

「遅いぞ、どれだけ時間掛かってんだ」

 

「ゴメンゴメン。でもデートなんだから、少しは着ていく服ぐらい悩ませてよ」

 

「ったく……」

 

 

 零と話しているのは自分たちがよく知る人物。その美しき金髪とブルーの瞳を持つ女性…………絢瀬絵里。

 

 

「……絵里」

「「……絵里ちゃん」」

 

 

 

「あら?あなたたち、奇遇ね」

 

 

 3人はさらに何が起こっているのかが分からなかった。零は自分たちのコトは知らないようだが、絵里のコトは知っている。もはやその理由すらも考えられないほどに混乱していた。

 

 

「ん?この子たち、絵里の知り合いなのか?」

 

「えぇ、一応ね。でも今となっては顔見知り程度よ」

 

「はぁ……」

 

 

 

 

「ちょっと待ちなさい!!」

 

 

 真姫は大声で2人を制す。どれだけ考えても答えは絶対にでない。だとしたら、無理だと分かっていても絵里から聞き出すしかない。

 

 

「絵里、あなた零に何をしたのよ!?」

 

「そうだにゃ!!零くんが凛たちを知らないなんて有り得ない!!」

 

「教えてください!!」

 

 

 凛と花陽も真姫に便乗して絵里から事情を聞き出そうとする。もちろん答えてくれるとは思っていないが、そう口に出さざるを得なかった。

 

 

「何したのって、意味が分からないんだけど。零は元々、私の彼氏でしょ」

 

 

「「「はぁ!?!?」」」

 

 

「零、あなたからも説明してあげて」

 

「説明って……。まぁ何だ、絵里の言ってるコトは本当だぞ。俺と絵里は恋人らしいんだ」

 

「それ、説明になってないんだけど。私たち恋人でしょ!?この子たちにしっかり説明してよ!!」

 

「そうだけど、証拠になるものなんて持ってないぞ」

 

「じゃあこの場でキスでもしましょうか?」

 

 

 

「「「!!」」」

 

 

 もはや今日だけで何度驚いたか分からない。自分たち目の前で繰り広げられているのは茶番か現実か、どちらにせよ零がおかしくなっているコトだけは確かだ。

 

 

「よ、よせってこんな道の真ん中で!?とりあえず、君たちも信じてくれよ」

 

「そんな簡単に信じられる訳ないにゃ!!」

 

「そうです!!こんなのおかしいですよ!!」

 

「えぇ~!!じゃあどうすりゃいんだよ……」

 

「やっぱりキスを……」

 

「あ゛ぁーー!!もう行くぞ!!」

 

 

 零は絵里の腕を掴んで真姫たちの進行方向と反対方向に歩く。無理矢理腕を掴まれて戸惑っていた絵里だが、すぐに零の腕に自分の腕を絡ませて歩き始めた。まるで恋人みたいに……

 

 

 

 真姫たちはしばらくの間、道の端っこで佇んでいた。

 

 

 

 

「零くん、まるで別人だったね……」

 

 花陽が先陣を切って口を開く。

 

 

「凛たちのコトを知らないって……記憶が飛んじゃったとか!?真姫ちゃん、医学の勉強もしてるんでしょ?記憶喪失について知らない?」

 

「そこまで詳しくは知らないわ」

 

 

 医学と言っても、記憶喪失は一般の医者ではどうしようもできないし専門外だ。

 

 

 時間が経ち、頭の整理も少しずつだが出来ている。3人は零があのようになった原因を探るため、さっきまでの状況を再び思い返す。本来なら愕然とするところだが、生憎3人はある程度の修羅を乗り越えて来ているため順応も速い。その修羅というのが自分たち自身なのだが。

 

 

 

「とりあえず、荷物だけでも家に置いておきましょ」

 

「うん。もう1度零君に会って話を聞かないと」

 

「それはダメよ、花陽」

 

「どうして!?」

 

「零があの調子だと、絵里の方に味方するのは目に見えてるわ。私たちがあの2人を敵に回して勝てるとは到底思えない」

 

 

 あの時、零はまだ自分の状況の説明に戸惑っていた。と言うコトは、まだ彼を取り返すチャンスは大いにある。しかし零が完全に絵里の味方になってしまった場合、そのチャンスも絶望的になってしまう。次に絵里たちと接触する時は、真実を掴んだ時だ。

 

 

「希ちゃんにも連絡しよ!希ちゃんなら絶対に力になってくれるにゃ!」

 

「そうね、私もそうしようと思ってたわ」

 

 

 零や海未と並んでμ'sのブレインである希に助力を求めたほうが、自分たちだけで考えるより効率がいい。

 そういえば、希は何をしているのだろうか……

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 東條希は1人、ある場所へと向かっていた。

 

 『昨日頑張ったから、今日は休もう』とは一切思わず、むしろ『昨日あんなコトがあったから、尚更今日は休めない』と事態を収束させる動きに出ていた。これは、『悪い状況はすぐに片付ける』という零の信念に強く影響されているのかもしれない。

 

 

 目的地は和菓子屋"穂むら"。昨日、真姫や凛から話を聞いた時から今日はココに来ようと決めていた。零だけに負担はかけられない。自分の本当の気持ちに気付かせてくれた恩返しとして、少しでも零の手助けをしたい。

 

 

 

(穂乃果ちゃんいるんかな?もう着いてしまったんやけど、そういえば穂乃果ちゃんがココにいるって保証は一切ないやん……)

 

 

 希は裏路地に隠れながら、穂むらの様子を伺う。

 こう言っては申し訳ないが、今時和菓子を好む人はそれほど多くないためか客の出入りは少ない。店内に入るなら今しかないが、穂乃果がいるという保証はなかった。

 

 

 

(おらんかったら、お母様や雪穂ちゃんに聞いてみればええか)

 

 

 裏路地から穂むらに向かって一歩踏み出す。

 

 

 

 

 

 

「お探し物はここにありますよ~」

 

 

 

「!!」

 

 

 

 背後から聞こえたのは女の子の声。いつもなら、μ'sを輝く未来に向かわせてくれる元気のある声。ただし今は、μ'sを地獄に送る恐怖の声。

 

 

 

「穂乃果……ちゃん?」

 

 

「ピンポーン!大正解!」

 

 

「どうして……?」

 

「部屋にいるのもつまらなかったから、フラフラと外に出てたの。もしかしたら誰かを殺せるかもしれないしね。そしたら、まさか本当に会えるとは思ってなかったよ」

 

 

 真姫や凛から話には聞いていたが、これほどまでに壊れているとは想像もしてなかった。今の彼女の口からは、簡単に殺人をほのめかす言葉が出てくる。

 

 

「ちょうどよかった。ウチも穂乃果ちゃんに会いたかったんや」

 

「ふ~ん、わざわざ死にに来たんだ。頭までスピリチュアルになっちゃったのかな?アハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

 表情、笑い声、雰囲気、すべてがあの時の穂乃果とは違う。目も完全に据わっている。自分もこうだったのだろうか?

 

 

「希ちゃん、もう死んじゃうけど言い残したいコトはある?真姫ちゃんたちに伝えておいてあげるから」

 

「え?」

 

 

 希は穂乃果の言葉に疑問を感じた。なぜ真姫たちなのか?

 

 

「いいよいいよ~その表情。いつも何もかもお見通しの希ちゃんを追い込めるのは快感だよ!!」

 

「知ってるん?真姫ちゃんたちが、穂乃果ちゃんたちと違うコト……」

 

「分かるんだよ穂乃果には……新鮮な雌豚の匂いと腐った雌豚の匂いの違いがね……」

 

 

 希は大体だが理解した。恐らく腐った雌豚というのは絵里やことりなど、豹変している人たちのコト。新鮮な雌豚は、自分を含め真姫や凛、花陽といった更生した人たちのコトだろう。

 

 

「どうせなら腐った豚さんを狩りたかったけど、今日はこの豚さんで我慢するか」

 

「……そう上手くはいかんよ」

 

「どうかな?凛ちゃんも初めはそんな調子だったよ。でも追い詰められた時の表情ときたら……ククク……今でも笑いが止まらないよ!!」

 

「相当やね……」

 

「穂乃果は零君と一緒になる。一生2人きりで暮らすんだ。だからみんなは邪魔なの。だからね…………死んで?」

 

 

 

 

 そう言った瞬間、穂乃果は希に向かって一直線に動いた。いつの間にか穂乃果の手にはナイフが握られている。慈悲はない。ただあるのは絶望だけ。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

「無様ですね……あのように真っ向から挑むなんて」

 

 

 とあるビルの屋上。海未は穂乃果と希を観察していた。2人は何やら話し込んでいる。もちろんここからではどのような話をしているのかまでは聞こえないが、話の内容など海未にとってはどうでもよかった。

 

 

「つくづく穂乃果は甘いですね。背後を取ったのなら、いちいち声を掛けなくとも後ろから刺してしまえばいいでしょうに……」

 

 

 幼馴染の関係。穂乃果もことりも海未も、そんな関係は既に破棄している。お互いはただの敵。相手の失態を見つける度に、なぜこのような低脳と幼馴染になったのかという疑問すら湧いてくる。こんな人と幼馴染の関係だったコトに嫌気が差す。

 

 

 煩わしさが増せば増すほど、相手に憎しみが募る。特に穂乃果たち3人の間ではその傾向が顕著だ。慈悲のなさで言えば、この3人が一番なのかもしれない。

 

 

「さてと……」

 

 

 海未は隣に置いてあった弓を手に取り、あらかじめ決めていたポジションに着く。狙いは穂乃果、ついでに希。特に希には恨みはないが、近くにいるのなら消してしまおうという考えだ。海未にしては珍しく、理由のない行動である。心が完全に零で満たされている海未に、もはや理由を考える必要はない。零の周りの人間を片っ端から排除すればいいのだから……

 

 

 

 心が零で満たされたといっても武道の心までは揺れていない。海未は弓を構え、精神を統一する。今から幼馴染を殺すコトに心は揺れない。むしろ待ちわびた瞬間である。

 

 

 

 弓を引く。

 

 

 

 

「さようなら穂乃果。あの世で安らかに眠って下さい」

 

 

 

 

 矢が、穂乃果の頭目掛けて一直線に放たれた。

 

 

 

 

 彼女の死まで、あと数秒……

 

 

 

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

戦況報告

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 




穂乃果ちゃんお疲れ様でした!次回作にご期待下さい!

普段は向こうで日常モノをダラダラ書いているので、戦闘シーンに入る緊張感があってこれはこれで楽しくなります。


挿絵の希が他の人と比べて薄くなってしまった……。気付いた時には遅かったんや……
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