ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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今回から零が一人目と対峙。

この後どうなっていくか作者自身が楽しみにしていたり。





第二話 ‐放課後の闇‐

 

 その後は特に変わったところもなく、いつもの日常が続いた。ただ一点挙げるとすれば、真姫が練習に来なかったということだ。彼女は穂乃果の様にズボラではないため、予め『作曲が忙しいから』と海未に連絡を入れていた。

 

 今日の練習には俺も参加した。いつもはただ眺めているだけだったが、今回は確固とした目的がある。

 

 

 穂乃果たちの言動を探るため。

 

 

 真姫からはほっとけばいいと言われたが、ただならぬ様子の友達を放置できるほど人間は腐っていない。もちろん海未が言っていたことりたちにも目を光らせている。しかし、誰一人として様子がおかしいことはなかった。俺がいつも通り見ている練習風景だ。8人であっても、しっかり歌やダンスをこなしている。こんな風景を見ていると、また『あのことは気のせいだ』と思ってしまいそうだ。

 

 

 

 

 

 突然ポケットが震えた。俺の携帯にメールが来たようだ。送信者は……

 

 

 

 

「真姫……」

 今日は作曲で練習を欠席していたんじゃなかったのか。午前中の真姫の様子から察するに悪い予感しかしない。俺は恐る恐るメールを開ける。

 

『部室に来て。相談したいことがあるから。』

 

 メッセージはこれだけであった。自分のことは自分で解決しようとする真姫から相談されるとは珍しい。もしかしたら俺は何か思い違いをしているのかもしれない。とりあえず行ってみよう。

 

 

 

 

「悪い!ちょっと抜けるわ」

 

「え~どうして!」

 

「そんな顔するなよ穂乃果、ちょっとだけだからさ」

 

「必ず戻ってきてよ」

 

「わかってるって」

 

 

 

 この時の俺は『俺だけが勘違いしている可能性があり、思い違いをしている』と僅かな希望を持っていた。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

ガチャ

 

「来たぞ。真姫」

 

真姫は部室のドアに背を向けながら話し始めた。

 

「来てくれたのね……そうよねあなたは優しいもの……困っている人を見過ごせるハズがない、そんな人」

 

 表情は見えなくとも、今の真姫はあの時の真姫と同じオーラを感じる。だが逃げる訳にはいかない。もしかしたら、本当に相談事があるのかもしれない。少しでもポジティブな考えを張り巡らして、ネガティブな考えを払拭しようとする。

 

「相談事があるの……でも誰かが戻ってきちゃうといけないから別の場所でしたいの」

 

「どこだよ」

 

「着いて来て」

行ってはいけないような気がする。

 

 

 

 

ガシ!!

 

 

 

「なに!」

 

 突然真姫が俺の手首を掴んだ。迷っていた俺は急に現実に引き戻される。真姫は意図的なのか、表情を一切見せようとはしない。俺からの多少の抵抗を無視して、真姫はツカツカと廊下を進んでいく。真姫から感じる圧倒的な威圧と勢いから、もうその流れに逆らうことはできなかった。

 

「真姫、ちょっと痛いって!力強すぎる!」

 

「もっと……もっと強く……零に私のモノって印を……」ボソボソ

 

 

 

 俺の声は彼女には一切届いていない。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 南ことりは全速力で階段を駆け下りた。目的はもちろん零を追いかけるためだ。部室に予備のタオルを忘れてきたと嘘を付き、練習を抜け出してきたのだ。『練習なんかより零の方が大事』。零にはバレてはいないが、ことりも明らかに豹変していた。

 

「真姫ちゃんってば、ことりの零君を勝手に持って行っちゃダメなのに。これはオシオキだね」

 

 ことりは自分自信が狂っていることは以前から分かりきっていた。だが、自分で分かっていたとしても零を手に入れたいという気持ちに嘘はない。狂っていてもいい、零を自分のモノにできるのなら。そのためならどんな犠牲も厭わない。

 

 

 

バン!

 

 いつもの温厚なことりではない。性格は悪魔そのものであった。部室の扉を乱暴に開け、奥の更衣室を確認する。

 

「少し出遅れちゃったかな?もう…穂乃果ちゃんがミスするから時間掛かっちゃったんだよ……フフッ出ておいでよ!柱の影に隠れてても丸分かりだよ。だって幼馴染だもん」

 

 

 

 

 

「あはは~バレちゃったか?でもどうしたのことりちゃん、タオル取りに行かないの?」

 いつもの穂乃果らしく無垢な笑顔を向けている。誰が見ても憎めない、そんな笑顔である。

 

「白々しいね。それを言いに来たのなら柱に隠れる必要ないでしょ?」

 ことりは瞬時に穂乃果の裏の表情を読み取っていた。

 

「穂乃果も飲み物を取りに来たんだよ。ホラ、今まで飲んでたのが空になったから」

 

「いい加減にしたら?穂乃果ちゃんもことりと同じコトを考えていたんでしょ?」

 

「え?何のコト?」

それでも穂乃果は何も知らないフリを続けた。二人にはもう幼馴染の関係などどうでもよくなっていた。目の前の人物は敵。零のためなら幼馴染ですら切り捨てる。それだけの覚悟があった。

 

 

 

 

「まあいいや、くれぐれもことりの邪魔だけはしないでね」

 

「・・・」

 

「ことりを出し抜こうったって無駄だよ、穂乃果ちゃんとはココが違うんだから」

 ことりはツンツンと自分の頭をつつく。

 

「じゃあね」

 その言葉を最後にことりは真姫の探索へ向かった。しかし、慌てているという表情はなく、むしろ余裕の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ポツンと残された穂乃果は扉が開けっ放しの部室に入った。こちらも焦る表情は一切見せず、ことり同様に余裕の笑みをしていた。

 

「本当にバカだなぁことりちゃんは……」

 穂乃果はゴソゴソとイスの裏を調べる。そしてそのイスに付けられていた小さな機械を外す。

 

「穂乃果たちが対面する前から、既に勝負は始まっているんだよ」

 穂乃果の手に持っているのは盗聴器だった。つまり真姫と零の会話は丸聞こえだったことになる。

 

 

「後はココとココでしょ」

 

 

 

 

「そして…あれ?」

 仕掛けていた盗聴器は全部で4つ。穂乃果が回収したのは3つ。扉の近くに仕掛けてあった盗聴器だけが無くなっていた。

 

「もしかしてことりちゃんが扉を乱暴に開けた時に、どこかに落ちちゃったかな?もう面倒くさいなあ!」

 その場を軽く探したが見つからなかった。グズグズしているとことりに先回りされてしまう。

 

「しょうがない、後にしよう」

 

 結局最後の盗聴器を見つけられないまま部室を去った。

 

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 

「おっそいわね!!何やってるのよ!穂乃果もことりも!」

 

「部室行ったついでにトイレにでも行ってるかもしれんし、もう少し待っとこ」

 穂乃果とことりが出て行ってから10分以上が経過し、練習が一時中断となっていた。にこは最近のストレッチの成果が出てきたのか、より一層練習に身が入ることになった矢先にこれだった。

 

「今日はいつも以上に暑いし、休憩時間を多くしてもいいんじゃない?倒れたら元も子もないわ」

 

「何か絵里って、μ's入ってから甘くなったわね」

 

「そうかしら?」

 

「そうよ!加入前にやらされた地獄特訓の恨みは忘れないんだから」

 

「悪かったわね…地獄で…」

 

 加入前の絵里のレッスンはμ'sを解散に追い込むためのプランであったため、地獄というのはあながち間違ってはいない。

 

「でもあの時、みんなや”零”が後押ししてくれなかったら私はココにいないんだし、とても感謝してるわ」

 

「へぇ~」

 

「な、何よにこ!その顔は!?」

 

「アンタ最近零のコトばっかり話してるわよ。気付いてる?」

 

「あ!それかよちんと一緒だにゃ!」

 

「花陽と……?」

 さっきまでは和気あいあいと話していた絵里だが、凛のその言葉を聞いた瞬間にその表情は曇った。

 

「私そんなに零君のコト話してるかなぁ」

 

「してるしてる!お昼もおにぎり食べてもらいたいって言ってたにゃ!」

 

「花陽ちゃんも女の子なんやねぇ」

 

「もう!凛ちゃんも希ちゃんもやめてよ~」

 

 

 

 

 そんなメンバーのやり取りを見て、海未は今日零と話したコトを思い出した。

 

(また零の話をしていますね。どうやら気のせいではなかったようです)

 

 そういえば零にメンバーに妙なところがあったら連絡するように言われていたが、このことを伝えておいた方がいいのだろうか。別に零の話が出る分には向こうは困らないハズだ。

 

(悪いコトをしている訳ではありませんし、大丈夫でしょう)

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 俺は真姫に連れられ、校舎裏に来ていた。校舎裏は校舎裏でも、ゴミを捨てに行く時にも通らないような暗い場所であった。夜になれば何も見えなくなるだろう。

 

「こんなところまで来てどうするんだよ」

 

「ここじゃないといけないの……」

 真姫の思考が全く読めない。普段から読み辛いのだが、今回は向こうが何を考えているのかわからない。言えることはただ1つ、いい展開でないことだけは確かだ。

 

「で?相談事って?」

 一応、警戒体制だけは崩さないつもりだ。何が起きてもいいように……

 

「昨日腕にケガをしてしまったの」

 

「ケガ?」

 

「ええ。家で少し振り付けの練習をしている時にね」

 

「ケガなんて俺にはどうしようもないぞ。実家が病院のお前なら、そこで見てもらえばいいじゃないか」

 

「そうなんだけど……これだと練習に支障がでるわ。どうしたらいいと思う?」

 

「どうしたらいいって……それはケガを見てみないコトにはな」

 

「それじゃあ見て……」

 

「ちょっと!?真姫!?」

 

 真姫は制服の袖を捲り、ケガをしたと思われる腕を俺に見せてきた。

 

 

 

 

「こ、これは……」

 

 

 

 

 ケガと言ってもどうせタダのかすり傷だと思っていた。しかし、真姫の腕に付いていた傷はかすり傷程度では済まない程の大きな傷だった。

 

「お前!その傷どうしたんだよ!?」

 

 俺は真姫の腕を取り、その腕に刻まれている生々しい傷を凝視する。離れていてはよく分からなかったが、この傷って……

 

「これ、刃物か何かで切りつけないと出来ない傷だぞ!お前まさか……」

 

 

 

 

バチバチバチバチ

 

 

 

 

「ぐぁああああああああああ!!」

 

 突然の電気ショックにより俺はなすすべなく地面に倒れこむ。

 

「お前……それ……スタンガン……」

 

「やはりこの傷、自分で付けて正解だったわ。あなたは確実に私を警戒するでしょうし」

 

「それで……傷を……俺に見せて……動揺させたんだな……」

 

「大正解、さすがね。でも今は安らかに眠りなさい」

 

「く、くそ……」

 あれだけ警戒していたのにも関わらず、真姫の罠にまんまと引っかかってしまった。何とか抵抗しようとするが体は動かない。俺はそのまま気絶してしまった。

 

「言ったでしょう?あなたは困っている人を見捨てられない。悪いけど、そこにつけ込ませてもらったわ」

 

 

 

 その言葉を最後に、俺の記憶は途絶えた……

 




やっとやりたい展開まで持って行けました。さて、ここからどうしようか……



とりあえず第一章までは早めに投稿できると思います。その後は『日常』シリーズとの相談ですね。
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