完結は次回となります。
今回はついに零vs絵里!
絵里、真姫、凛、花陽。さっきまで渦中の渦に巻き込まれていた4人だが、俺の乱入により何事もなかったかのように収まった。4人は俺の顔を驚きの表情で眺め、今起こっている状況を理解しようとするが、誰1人として俺がココにいる理由を理解出来ていないようだ。それほどまでに俺がいるコトは不自然なんだろうな。
「あなた……家に帰ったんじゃなかったの?」
初めに言葉を切ったのは絵里。だからといってこの状況が飲み込めた訳ではないと思う。俺の登場が意外過ぎて、いつもの絵里の思考が働いていないだけだろう。
「ああ、帰ったよ。その後またココに来た」
「どうして……どうやって……」
絵里はこれまでにないってぐらいの困惑した表情を見せる。正直、絵里に攻め込むなら心が揺れている今しかない。だが俺はそれよりもやらなけらばいけないコトがある。そう、倒れている希たちを放ってはおけない。
「大丈夫か?凛、花陽……そして、真姫」
「え!?」
「零君!?」
「私たちの名前……」
驚くのも当然だ。俺は記憶喪失に"なっていた"からな。無理もない。だが、本当に驚いているのは絵里だと思うけど。
「花陽、凛。立てるなら希を休ませてあげてくれ。真姫のところまでは俺が連れて行くから」
「う、うん……」
「分かったにゃ……」
希の息はまだある。ただ意識を失っているだけだろう。呼吸の乱れもないし、この調子だったらすぐに復活するだろう。
「聞いてるの!?私の質問に答えなさい!!」
「……」
希を抱え、花陽と凛を連れて真姫のところへ戻る。絵里……次はお前だ、次は絵里の中の"絵里"を救ってやる。だからもう少し待っていてくれ。
「やっぱり……初めから気付いていたのね。私たちのコト……」
「まあな」
柔らかい地面の木陰に希を座らせている間に、真姫が俺に対して呟く。やはり真姫なら分かってくれたようだな。真姫の言う通り、俺は3人と会った時点で記憶はすべて取り戻していた。
「すごい……じゃあ真姫ちゃんがさっき言ってたコトは本当だったんだ」
「真姫ちゃん名推理だにゃ!!」
名推理?あぁ、もしかしてココに来るまでにお互いに答え合わせをしたのか。
「初めからって……どういうコトよ!!」
「怒鳴るな、誰か来たらどうするんだよ。真姫、説明してやれ」
「私が!?」
「俺たちがついてるから大丈夫だ」
さっきまで淀んでいた真姫の目が、一気に光を取り戻した。確かに逃げるコトも1つの道かもしれない。だが、逃げては前に進めない。何も1人で進まなくてもいい。誰かと一緒に、誰かに後押ししてもらってもいいんだ。
「私が気になったのは、零と絵里が2人で私たちの前に現れた時、零が言っていた言葉よ」
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『説明って……。まぁ何だ、絵里の言ってるコトは本当だぞ。俺と絵里は恋人らしいんだ』
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「それがなによ」
「分からない?2人は恋人関係だったんでしょ?なのに『恋人らしい』っておかしくないかしら」
「っ……」
「零のその言葉を聞いてある程度の確信は持てたわ。その時の零は、絵里との関係に違和感を持っているってコトがね」
もし洗脳に成功しているのなら、俺は『恋人らしい』なんて不確定な言葉を使ってはいないだろう。逆にそういう言葉を選んでいるってコトは、真姫の言った通り俺がその関係に違和感を持っているか、それか記憶を取り戻しているかの2択しかない。ちなみに後者だ。
「さっきまではそう考えていた。けれど、この場所のマップが送られてきた時にハッキリと確信したわ。私のメールアドレスを知っていて、今あのタイミングでこのマップを送れるのは零しかいないってね。それも、記憶を取り戻した零以外有り得ない」
「そ、そんなコトって……」
俺が記憶を取り戻してもない限り、真姫にマップを送るどころか送ろうとすら考えないだろうからな。いつもの連絡用アプリを使えばメールアドレスは不要だが、あえてメールで送ったのが功を奏したようだ。狙い通り真姫に確信を持たせるコトが出来たのだから。
「それは分かったわ。でも!!そもそも零の記憶はなぜ戻ってるの!?どうしてココで希と会うって知ってたのよ!?」
「そこからは俺が言う。ありがとな、真姫」
「え、えぇ……」
やっぱり真姫たちに俺の記憶が戻ったという痕跡を残して正解だったな。こうして真姫も逃げずに前に出れた訳だし。
「俺の記憶が戻ったのは、公園でお前と分かれてすぐだ。と言っても、その時は完全には戻らなかったけどな」
「そんなに早く……?」
「俺はお前に質問された『μ's』って言葉がすごく気掛かりだった。だから携帯で調べようとした」
「でもその携帯では調べられないハズ……」
「ああ、それに関するワードで検索をかけても、結果が除外される設定に変えられていたからな。『μ's』、『ラブライブ!』、『スクールアイドル』とか色々ある。ここに来る前に試したがどれもダメだった」
「だったらどうして……?」
「ショッピングモールに行った時に見えたんだよ、あのフレーズがな」
「フレーズ……?」
「『みんなで叶える物語』、そう!μ'sのキャッチフレーズだ!!」
「!!!」
このキャッチフレーズは、俺とみんながラブライブ予選前に考えたモノだ。その言葉を考えるのに、みんなは長時間真剣に話し合った。それで出たキャッチフレーズがコレだ。みんなの願いを1つにした、俺たち10人の絆と想い。
「俺は電子掲示板にそのフレーズが流れた時、すべてを思い出したんだ。みんなの顔も名前もすべて……もちろんお前もだ、絵里」
「私のコトは初めから覚えていたハズよ!!」
「いいや。俺は本当のお前を思い出したんだ。今のお前じゃない」
「私は私よ!!意味分からないコト言わないで!!」
「そうだろうな。今のお前には分からないだろう。だったらお前の心に聞いてやる!!」
そうだ。"今"の絵里には何を言っても無駄だ。希の説得は間違っていなかった。だが説得すべき対象を間違えていたんだ。希の分まで、"本当"の絵里に届かせてみせる。
「お前の本当にやりたいコトは何だ!!」
「私は零と一緒にいたいのよ!!それが私の望むべき道、それしか未来は考えられない」
「μ'sを、みんなを傷付けてもか?」
これは希の説得と同じ内容だ。むしろ同じ内容の説得をしたかった。希の想いを、しっかりと絵里にぶつけるために……
「そうよ、μ'sなんてどうでもいいわ!!私にはあなたがいれば満足なのよ!!」
「みんなを気付けるコトに抵抗はないのか?」
「ないわ!!今すぐにでも殺したいわよ!!あんな目障りな集団!!」
「それは違うな……」
「……え?」
「俺の後ろ、希に花陽に凛がいるだろ。なぜアイツらの息がある?」
「……は?」
「今ココで、殺すチャンスはいくらでもあったハズだ。あのままの力で希の首を締め続ければ殺せた。倒れ込んだ花陽と凛に近付けばそのまま殺せた。俺が希に駆け寄った時にそれを引き剥がすコトも出来た」
あれだけの闘争があったのにも関わらず、絵里はあまり動いていない。みんなを殺したいと言うのなら、そのチャンスはいくらでも転がっていた。自分さえ動けば自分の思惑は達成されていたハズだ。
「なのに……それをしなかった」
「それは……」
「まだ未練があるんだろ?本当に自分がやりたかったコトに」
「ないわよ!!何度過去を振替ようが、私には関係ない!!もう昔の私は捨てたのよ!!」
「お前には聞いていない!!聞こえるか、"絵里"!!」
「っ……!!」
「聞かせてくれ"絵里"!お前のやりたいコトを!!そして思い出すんだ!!お前の本当の笑顔見られて嬉しかったと言っていた親友を!!みんなで同じ夢に向かおうと決めた時の、μ'sのみんなを!!そしてμ'sに入って、やりたかったコトを実現した自分の笑顔を!!」
「!!!」
希は言った、絵里がμ'sに入って本当の笑顔を見せるようになったと。それを希は何よりも嬉かったと言った。だけど希だけじゃない、俺たち全員がそう思っているんだ。
バレエを習っていた時の絵里の過去、彼女がどれだけ頑張っても廃校阻止に繋がらなかったコト、その時の絵里を俺たちは知っている。知っているからこそ、スクールアイドルとしてみんなと一緒に踊って歌っているその姿は、正しく彼女がやりたかったコトを実現できたのだと感じるコトが出来た。
「絵里ちゃん!!また花陽たちと一緒にアイ活しましょう!!絵里ちゃんのダンス、また見たいな」
「怒られる時もあるけど、凛は絵里ちゃんの一生懸命なところに憧れているんだよ!凛も絵里ちゃんみたいに上手く踊れたらなぁって。今度またダンスを教えて欲しいにゃ!!」
「絵里が出す作曲のアイデア、私は好きよ。今まで色々な曲の参考になったしね。だから、また作曲のお手伝いをしてくれないかしら」
「花陽……凛……真姫……」
真姫たちの援護射撃により、絵里の本当の心が現れようとしている。やっぱりまだ心までは死んでなかったようだ。このまま絵里に取り付く闇を浄化すれば……!!
「みんなで叶える物語、この言葉こそがお前がやりたかったコトだろ?だから、もう自分から絆を断ち切ろうとするのはやめろ。それで俺を手に入れたとしても、お前は絶対に満たされない。お前を満たしてくれるのは俺だけじゃない……μ'sもだ」
「……μ's」
「そう。だけどμ'sは9人。誰が抜けても成り立たない…………絵里、お前は分かっているハズだ。お前の親友、希の言ったコトが」
壊れる怖さを、無に帰る怖さを絵里は知っていると希は言っていた。じゃあ逆にみんなで紡ぐ想いというモノが、どれほど大切で素晴らしくて、それでいて楽しくて、嬉しくて……あらゆる感情が詰まっているコトを、絵里は知っているハズだ。
「でも、私はもう戻れないわ!!こんなコトまでして……みんなを傷付けて……」
「別に失敗してもいい!!逃げ出してもいい!!」
「「!!」」
絵里と同時に真姫も反応する。俺の言葉で、何か気付いてくれ。
「失敗しても、逃げ出しても、もう一度立ち上がればいい!!立ち上がって前に進めば、絶対に道は見えてくる!!立ち止まったり、後ろ向きのままでは何も変わらない!!」
「零……」
「それでももし、失敗したり、逃げ出しそうになっても問題ない」
俺はゆっくりと息を吸う。これが、俺が絵里たちに語りかける本当の言葉だ。
「俺が隣にいてやる!!俺が一緒についていてやる!!立ち止まってしまうなら俺が背中を押してやる!!闇に飲み込まれそうなら俺が引きずり上げてやる!!」
「れ……い」
絵里の目に涙が溜まってきた。本当の心を取り戻しつつある証拠だ。
「こんなコトをしなくても、俺が一緒にいてやる!!俺がすぐそばにいる!!だから戻ってこい、絵里!!今度は俺が隣にいる!!また一緒に、あの日常を過ごそうぜ!!」
「零…………」
絵里の目の輝きが完全に元に戻った。放たれていた不気味なオーラも消え去り、さっきまで淀んでいた空気もまるで別の場所にワープしたかのように澄んでいた。
涙で潤んだ目で俺を見つめる絵里に対し、俺は腕を広げて答えた。
「れーーーーーーーーーーい!!!」
こちらの胸に飛び込んで来た絵里を、俺は思いっきり抱きしめる。その暖かさは絵里が帰って来たのだと感じさせるほど、俺の心にも伝わって来た。
「うっ、うぅ……」
その後、今まで溜まっていたあらゆる感情が爆発したのか、絵里はその感情に任せて大声で泣き始めた。その涙も暖かく、絵里の優しい温もりを感じられた。もう絶対に、あんな想いをさせないからな……
真姫たちにも、自然と笑顔が戻っているようだ。
「おかえり、絵里」
夕日に照らされ、また1つの光が戻って来た。
前書きの通り、完結編は次回となります。後1話だけ付き合ってね!
タイトルが「ep.~」からいつも通りの「第~話」に戻りました。これは本当の零が戻って来たことを意味しているだけで、特に深い理由はありません。
実はまだ未解決の謎があります。それも次回に解決します。
では次回が本当の第四章完結編です!
付録:現時点でのメンバーヤンデレ度vol.8
正常:真姫、凛、花陽、希、絵里
異常:海未、にこ
末期:穂乃果、ことり