ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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お待たせしました、第四章完結編!!

前半は残りの謎解き、後半は……読んでみてのお楽しみということで。

ではまた後書きで!


第n+1話 ‐あなたがいてくれたから‐

 俺たちが空き地から去った時にはもう午後6時を回っていた。夕日も落ちかけ肌寒くなってきたが、また1人、μ'sメンバーが戻って来た喜びと安心で、俺たちの心は寒さに負けないぐらい暖かい。

 

 

 俺は希をおんぶして、彼女が住むマンションまで運ぶコトにした。耳元で可愛い寝息を立てられてドキっとしながらも、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っているのを見てホッと胸を撫でおろす。背中に当たる希の豊満な膨らみにもドキっとしたのは内緒な。

 

 真姫たちには遅くならない内に帰るよう促したが、そこま仲間想いの彼女たちだ、希が目を覚ますまで一緒にいると4人全員が声を揃えた。だが心配なのは絵里だ。元に戻ったとは言え、自分が希にしてしまったコトに大きな後悔を感じている。さっきからずっと希を見つめ、暗い表情を隠せない。

 

 

「絵里、そんな暗い顔するなよ。折角本当のお前が戻ってきたんだしさ」

 

「でも、私がしてしまったコトは許されるコトではないわ。あなたを記憶喪失にし、花陽たちも傷付け、挙げ句の果てには希を気絶させてしまった……」

 

「それに関しては、擁護できるところは何もない」

 

「そうよね……」

 

「だけど、それはもう終わったコトだ。終わったところですべての罪が消える訳ではないけど、それをずっと引きずって閉じこもっているのが一番ダメだ。大事なのは今までの行為を反省して、今度は自分が誰かに手を差し伸べるコト。もし道を踏み外しそうな人がいた場合、次は自分が助けてあげるんだ」

 

 

 こんな楽観的な考えを持っているのは俺だけかもしれない。個人的な意見過ぎて、普通ならおおっぴらには発言出来ないけど、今の絵里を立ち直らせるには最適な言葉だろう。いつまでも心に閉じこもっていて欲しくないからな。

 

 

「それに、相談相手は俺だけじゃない。後ろを見てみな」

 

「え……?」

 

 

 俺に言われた通り絵里は後ろを振り向いた。そこには花陽、凛、真姫の3人が笑顔で絵里を見つめていた。そう、この3人も絵里と同じ道を辿ってきた。だが今回で3人共完全に立ち直っている。同じ境遇だったからこそ、俺よりも彼女たちの方が絵里の気持ちを理解出来るだろう。

 

 

「それだったら私も同じだったよ。私も凛ちゃんや真姫ちゃん、希ちゃんに零君。みんなに迷惑を掛けちゃったけど、それでいつまでも落ち込んでちゃダメなんだって零君に教えてもらったんだ」

 

「花陽……」

 

「凛もだよ。自分のしたコトに責任を感じていたけれど、それを反省して、今はみんなを助けたいっていうみんなで固めた決意があるにゃ」

 

「凛……」

 

「零の言う通り、私たちがやったコトは決して許されるコトではないわ。でも、その経験があったからこそ仲間やμ'sの大切さを知るコトが出来た。それを生かして、今度は私たちがみんなを救う番だと思うの。だから、いつまでも閉じこもってられない」

 

「真姫……」

 

 

 また絵里の目に涙が溜まる。こんなに泣き虫な奴だったっけ?でも真姫たちの言葉は俺の心にとても響いた。というコトは絵里の心にはそれ以上の変化があるハズだ。やっぱり、仲間っていいな。こうしていると、断ち切れそうになっていた絆を取り戻せて本当によかったと思えてくる。

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

 

 希の寝息が俺の耳元をくすぐる。まだ意識は戻っていないが、その整った寝息はどこか安心しているように感じられた。

 

 

 希、お前の想いはしっかり絵里に届いたぞ……

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「そう言えば、零に聞きたいコトがあるんだけど」

 

「ん?なんだ?」

 

 

 希の住むマンションへ行く道中、唐突に真姫が質問をしてきた。怪訝そうな顔をしているので、まだ納得していない謎でも残されているのだろうか?さっきあの場で答え合わせをしたつもりだけど……絵里たちも『何かあったかな?』と思い出そうとしているようだ。

 

 

「まず1つ目」

 

「え!?いくつかあんの?」

 

「いいから聞く!1つ目は、あなたの記憶喪失について。私たちが絵里と零に会った時、どうして記憶が戻りかけてたのに『恋人らしい』なんて曖昧な言葉を使ったわけ?直接何か伝えてくれればよかったじゃない」

 

「そう言われればそうだにゃ!直接言ってくれれば、凛たちが頭を捻る必要なかったのに」

 

 

 ああそのコトね。それよりさっきの頭を捻るって、凛が頭を捻ったのか?なんからしくないというか、珍しいというか……こう思えるのも一段落ついたからかな。

 

 

「その時は、記憶が本当に全部戻っているのか怪しかったからだよ。下手なコトをお前らに言う訳にはいかなかったしな」

 

「もっと分かりやすい方法はなかったの?」

 

「考えすぎて訳分かんなくなってたから、とりあえずワザと曖昧な言葉を残してお前らに気付いてもらうしかなかったんだよ。それに絵里を出し抜くためにはその方法しかなかった」

 

「私を?」

 

「そう、お前は一筋縄では行かないからな。絵里に怪しまれない程度に、だけど真姫たちには気付いてもらえるように。そう考えた結果がさっきの方法だったんだよ」

 

「回りくどい方法ね」

 

「しょうがねぇだろ。薬で頭グラングランしてたんだから」

 

「ご、ゴメンなさい……」

 

「いや、もう謝らなくていいからな」

 

 

 あと何回このやりとりを続ければいいんだ……とりあえず、今日一日(といっても日付変更まであと6時間ぐらい)は引っ張りそうだな。明日には完全体のエリーチカに戻ってくれればいいんだが。

 

 

「1つ目は一応納得したわ。2つ目は、私に送ったマップがあったでしょ?そのマップに示された場所、つまりあの空き地に希と絵里が来るってどうして分かったの?」

 

「言われてみれば……あの時私は希と電話して、その後希から送られてきたマップを開いたわ。でも、その時はあなたトイレに行っていていなかったハズよね?」

 

「あぁ、その時トイレ行ってなかったから」

 

「えぇ!?じゃあ何してたの?」

 

「物陰から絵里を見てた」

 

 

ジトー

 

 

 何この視線。横から絵里、後ろから真姫、凛、花陽の3人の視線がグサグサ突き刺さる。確かに最後の言葉だけをピックアップすれば変質者に思えなくもないけど、これにはしっかりと理由があるんだよ。いっそのコト『俺はずっとお前たちを見てるよ』とか言って場の空気を和ませるのも悪くないが、これ以上変なレッテルを貼られるのもイヤなのでやめた。

 

 

「その目やめてくれません?変態であっても変質者ではないので」

 

「認めてるところが変質者を際立たせてるにゃ。ねっ!かよちん!」

 

「えぇーー!?私に振るの!?え、えぇ~と、そ、そんなコトよりさっきの質問の答えを」

 

(逃げた)

(逃げたわね)

(逃げたにゃ)

 

 

 花陽の奴、上手くかわしたな。急な無茶振りに弱いのが花陽の欠点だ。無茶振りする方もする方だけど。

 

 

「物陰から見てたっていうのは嘘じゃない。真姫たちから希に連絡が行くのは読めてたしな。しかも希だったら絶対に絵里とコンタクトを取ると思ったよ。なんたって親友のためなんだから、希が動くってコトも予想出来る。でも俺がいたら絵里は連絡が来ても携帯を取ろうとはしない。だから席を外したんだよ」

 

「なるほど、あなたが何回もトイレに行っていたのはそのためだったのね」

 

「ああ。常に携帯のカメラをズームにしておいて、いつでも絵里の携帯の画面を撮れるようにしてな」

 

「まさに変質者の経験が生きたって訳ね」

 

「しょうがないだろ、絵里が希から送られてきたマップを見るのは一瞬、それを撮るために神経を集中してたんだから」

 

 

 ちなみに絵里によって真姫たちの連絡先はすべて消されていたため、真姫のメールアドレスを覚えていたコトはとても幸いだった。それがなかったら俺単独であそこに乗り込むしかなかったからな。恐らく俺だけでは絵里を説得出来なかっただろう。真姫たちの想いもあったからこそ、絵里を取り戻せたと思う。

 

 

「ん?そんなコト言っている間に着いたみたいだな」

 

 

 真姫の質問も終わり、気付けば希の住むマンションに到着していた。息が整っているとはいえ、なるべく早めに休ませた方がいいだろう。明日は平日。流石に学校は休ませるか。

 

 

 

~※~

 

 

 

 俺たちは希の持ち物から勝手に部屋の鍵を拝借し、そのまま部屋に上がらせてもらった。希の部屋に上がるのは、俺が希に監禁(実際には連れて来られただけで、拘束はされてない)された時以来だ。相変わらず部屋はいつ誰が来てもいいというぐらい整っている。俺も1人暮らしなので見習いたいな…………出来の悪い姉が散らかすから意味ないか。

 

 

 女性の寝室に男がズカズカ侵入するのは気が引けたので、希を絵里に託して俺と真姫たちはリビングで待つコトにした。

 

 

「希ちゃんの部屋って落ち着くね。こうスピリチュアルパワーが漂っているって感じで」

 

「確かに、暖房を付けなくても暖かいにゃ~」

 

「それはこのマンションの機能のおかげだろ」

 

「あなた夢ないわね」

 

「ほっとけ」

 

 

 占いとか、そういうオカルト系は嫌いなんだよ。自分の運命を勝手に決められているようで気に食わないからな。これだけは希であっても譲れない。でもこの話になると、決まって希は嬉しそうにするのはなぜだろう?

 

 

 

 

 

「希!?」

 

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

 隣の寝室から絵里の声が聞こえてきた。名前を叫んでいたというコトはもしかして……

 俺たちは急いで寝室に駆け込んだ。気が引けるとか言っている場合ではない。

 

 

 

「ここは……?」

 

 

 俺たちが寝室に入ると同時に、希は目を覚ましたみたいだ。まだ現実に意識が戻ってきていないようで、この状況も飲み込めていない。

 

 

「希!!」

 

「え、絵里ち!?」

 

 

 絵里は衝動が抑えられなくなったのか、思いっきり希に抱きついた。その涙は今日1番の大涙。ずっと彼女が気に掛けていたコトだ、そうなってしまうのも無理はない。

 

 

「零君に真姫ちゃん、凛ちゃんに花陽ちゃんも……」

 

「希……」

「「希ちゃん……」」

 

 

 ふと横を見てみると、真姫たちの涙腺も崩壊しそうになっていた。

 

 

「ゴメンね、ゴメンね希!!私が……あんなコトをしたばっかりに」

 

「絵里ち……」

 

 

 絵里は希に顔を埋め、大粒の涙を流しながら彼女に謝る。言葉を掛けて立ち直らせたつもりだったけど、やはり引きずっていた傷は浅くはなかったのか。もしかしたら俺の発言の中にも軽率な言動があったかもしれない。今の絵里を見て、心の中で彼女に謝った。

 

 

「本当は仲間を、友達を失うのが怖かった!!ずっと一緒にいたいと思ってた!!だから我に返って希を見た時、私はとんでもないコトをしてしまったんだって……」

 

 

 

 

「もう大丈夫、ウチは平気や」

 

 

「希……?」

 

「絵里ちが戻って来てくれただけでウチは幸せや。それだけで満足……」

 

「でも……私はみんなに……」

 

「それやったらウチも一緒、零君やみんなには迷惑を掛けてしまったから」

 

「だけど!!」

 

「絵里ち、やったらもう一度一緒にやり直そ。もちろんウチらだけじゃない、零君に真姫ちゃん、凛ちゃんに花陽ちゃん。そして、穂乃果ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃん、にこっち……みんなでやり直すんや!!」

 

「出来るかしら……?μ'sに入る前も後も、私はあなたに頼りっぱなし。希がいなかったら今の私はいなかった。あなたがいてくれたから、私はココまで来られた。そんな私でも……」

 

「出来るよ。言ったやろ?ウチらだけじゃないって。もし転んでも大丈夫、ウチがいる、零君がいる、みんながいる。みんなで支えあえば、きっとやり直せる」

 

「やり直せる……」

 

「そうや!!今までしてしまったコトの反省をバネにして、μ'sを再結成しよ!!それに困ったらいつでもウチに相談して、だって絵里ちは…………」

 

 

 ここで希は言葉を区切る。

 

 

 

 

 

「ウチの大親友なんやから!!」

 

 

 

 

 

「希…………のぞみぃいいいいいいい!!」

 

 

 そしてまた、絵里は希の胸を借りて涙を流した。希は絵里を優しく抱きしめ、絵里は希を思いっきり抱きしめた。

 希と絵里、2人の絆は決して解けることのない信頼と友情で結ばれていた。そう、どんなコトがあってもその絆は断ち切れなかったんだ。固く結ばれた絆がある限り俺たちが、そして絵里と希がバラバラになるコトはないだろう。

 

 

 俺の隣では真姫たちも少しばかり涙を流していた。

 失いそうになって初めて分かる、仲間の大切さ。俺たちは今日改めてそれを思い知らされた。だが、その困難から決して目を背けてはならない。その気持ちを受け入れるコトで、さらに自分を強く出来る。それが仲間と一緒ならさらに強くなれる。

 

 

 

 再びμ'sを結成するためには、まだまだ続く果てしない道のりを超えなければならないだろう。だが俺たちは逃げ出さない。あの日常を取り戻すために、俺たちはどんなコトがあっても、みんなで一緒に立ち向かってやる!!

 

 




ということで、第四章お疲れ様でした!ここまで読んで下さった読者様には感謝しよにうもしきれないです!!


第四章の後半から駆け足で投稿したゆえ、特に今回の心理描写など感動すべきところなのに感動できない文章になってしまった可能性があります。そうなってしまった場合、非常に申し訳ございません。


この章では視点がコロコロと変わり、主役となるキャラクターが次々と変化していったため、多少読みにくいところもあったかもしれません。ですがこのような形態で執筆していく中で得たものは非常に大きく、今後の執筆に生かしていきたいと思います。


この小説の話としては更生したのが5人、絶賛ヤンデレなのは4人と味方の方が人数を上回りました。ここからの展開、零君やヤンデレ化したメンバーだけではなく、成長した真姫たちの活躍にもご注目して頂きたいです!



以下はこの章でのキーパーソン10人について、軽くまとめてみました。長いのでダラダラ読んでもらうとよろしいかと。


~真姫、凛、花陽~
 この章では3人ワンセットでの登場となりました。注目すべきポイントは真姫の行動と、凛、花陽ペアの行動の違いです。決意は一緒ですが、考えは真姫とりんぱなで大きく異なりました。真姫は一番初めに更生し、その後も様々な葛藤と戦ってきたので、心情が2人と大きく異なるのはそれが理由です。もしこの小説を読み返すことがありましたら、是非真姫の心情にも注目してみて下さい。この3人の成長が、今後物語にどのように影響するのか、乞うご期待!

~穂乃果、ことり、海未、にこ~
 現時点でヤンデレ化している人たち。正直言いますと、この4人は絵里を含め今までの誰よりも手強く厄介です。ここまで読んで下さった方なら予想はつくかもしれませんが、穂乃果を除けば裏で画策している人だらけです。この章ではその辺をあえて全面に押し出して、4人の手強さを伝えたつもりだったのですがどうだったでしょうか?ちなみに企画段階からこの4人を後ろに持ってくると決めていました。真姫、花陽、凛、希、絵里の5人に比べ、暴走した時のえげつなさが半端ではないと思うのです。

~希、絵里~
 第四章ではμ'sメンバー全員を主役にしましたが、やはりこの2人が真の主役でしょう。第四章後半はこの2人の友情を常に念頭に入れながら執筆していました。3年生組の過去はアニメでもあまり語られなかったので、一部捏造を含んでいるかもしれませんが、楽しんで頂けのなら幸いです。次章で希はもう1人の親友であるにこと対峙することになります。今度は絵里も加わって、3年生組がどう動くのかが第五章の鍵となる予定です。ちなみに、まだ希には解決していない1つの葛藤がありまして、それが何かにも注目して頂ければと思います。(ヒントはことりとの会話)

~零~
 章の最後の最後でようやく登場。登場するだけで安心する存在になっている気がします。今までは彼の視点で物語が進んできましたが、この章ではμ'sメンバーにスポットを当てるために一時本編から省かせてもらいました。結局は裏で色々と行動していましたけどね。第n話で、地の文が第三者視点から零視点になったことに安心している人もいたと思います。ちなみに私は安心しました(笑)。文章中にもありましたが、彼の行動が100%正しいとは限りません。それは彼が感情的になればなるほど下がります。次章からは彼の視点で話が進んでいきますが、みんなの成長を見て彼自身がどう変わっているのかにも着目していきます。



それでは、この辺で失礼させてもらいます。第五章もよろしくお願いします!!




次回予告……

 絵里を取り戻し、とりあえず安堵する零たち。だが穂乃果とことりが行方不明になっていると聞き、零は残っている海未に事情を求める。しかし、彼女の様子もおかしくて……

 同じ頃、もう1人の親友を救うため、絵里と希はにこの元へ行く。だがそれ最中で彼女の逆鱗に触れてしまい、再びμ'sメンバーは危険の渦へと巻き込まれる。









第五章は第四章の翌日から開始!つまり零君休みなし!!!
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