ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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今回から第五章のスタートです!しかしタイトル厨二っぽい……

第四章が長くなってしまった感があるので、この章はテンポよく行きたいです。(願望)


第五章
第一話 ‐堕天使の行方‐


「ムカつく…………ムカつく…………」

 

 

 μ's内部で激動があったその夜、とあるマンションの一室では夜の闇すらも黒に染めるような雰囲気が漂っていた。部屋は真っ暗で僅かに月明かりが照らす。身体をベッドに預け、床に座りながら隣の部屋に聞こえないぐらいの小さな声でブツブツと呟く。自慢であるツインテールは降ろされ、逆に垂れた髪によって前髪が隠され心底不気味に見える。まるで彼女の心境が具現化されている部屋であった。

 

 

 そんな彼女、矢澤にこは顔色や表情を一切変えずにただ一点を見つめていた。それは"彼"の写真。

 

 

 心に想い浮かぶのは1人の少年。自分を救い出してくれた彼の笑顔。最近は一瞬たりとも忘れたコトはない彼の姿。既に彼女のすべては彼によって支配さていた。彼が欲しい。彼の髪の毛の先から足の指の先まですべてが欲しい。彼と一生共にいたい。彼を独り占めしたい…………欲望を挙げていけばキリがない。彼に対する"愛情"ならずっと言い続けられるだろう。

 

 

 だがそれを邪魔する者がいる。かつて自分も所属していた『μ's』と呼ばれるスクールアイドルだ。スクールアイドル界に突如現れたそのグループは、上位のアイドルグループと互角に渡り合えるような成長を見せた。それはメンバーの厚い絆と固い結束によるモノだ。しかし今は違う。今のμ'sに絆や結束などという繋がりは皆無となっている。一部正気を取り戻した者もいて、μ'sを再結成しようとしているみたいだが、彼女にそんな気は一切ない。

 

 

 彼女の目的は1つ。μ'sメンバーの殲滅。愛しの彼、神崎零によって導かれたμ'sメンバーは彼に好意を寄せている者ばかりだ。それが気に食わない。彼は自分だけのモノだ。彼の愛情をメンバーじゃなく自分だけに注いで欲しい。そのためにμ'sを破壊する。

 

 

 にこはそれを実現するために、裏で様々な手を回してきた。それは零が真姫に監禁されている時から行われていたりする。だが、もう裏での作業には限界を感じている。彼女は今まで誰かを焚きつけるコトによって他の誰かを襲わせるなど、自分の手を汚さない作戦を実行していた。しかし零によってμ'sメンバーは次々と正気に戻され、その上穂乃果とことりは連絡がつかず、残った海未は自分の幼馴染を始末するコトにしか興味がない。誰も自分の思い通りに動いてくれる人がいなくなったのだ。

 

 

 だとしたら、もう自分が動くしかない。零を我が物にするため、遂に自分の手でμ'sを殲滅する。

 

 

「フッ…………フフフフフフフフフ…………」

 

 

 その不敵な笑みに隠された陰謀は誰にも分からない。1つだけ確かなのは、再び零とμ'sが地獄に叩き込まれる、ただそれだけだ。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 圧・倒・的・10・時・間・睡・眠!!

 

 

 昨日希の家から帰宅した俺は、適当に飯を食って風呂に入った後、倒れこむように眠ってしまった。絵里が戻って来て安堵したせいか、連日の疲労が群れを成して襲いかかってきたのである。そして朝、気付けば10時間以上ぐっすりと寝ていた。しかし疲れはあまり取れていない。精神疲労も回復しない限り、完全復活とはならないだろう。

 

 

「ふあああぁ~…………まだ眠い……どうなってんだ俺の身体は……」

 

「本当に大丈夫なの?休んだ方がいいんじゃ……」

 

「そうしたいのは山々だけど、そんな場合じゃねぇだろ」

 

 

 いつもより少し早く家を出て、絵里たちと今後についての作戦を練る予定だ。その学校に行く途中に絵里と会い、今一緒に登校している。ちなみにμ'sの活動は休止中、もちろん朝練もない。

 

 

「それよりさっきの話は本当か?ことりが穂乃果を連れ去ったって」

 

「えぇ。希は実際にその現場に居合わせたみたいなの。助けようと思ったけど、ことりにやられて動けなくなったって言ってたわ」

 

 

 結局昨日、俺や真姫たちは休息を取るためすぐに帰ったが、絵里は希の部屋に泊まり、学校の支度をするために朝早く家に帰ったそうだ。ことりと穂乃果の話は泊まった時に希から話を聞いたらしい。

 

 

「それって、穂乃果やことりの親にはどう説明してあるんだ?」

 

「その話を聞いた後、すぐに2人の家に電話したわ。穂乃果のお母さんには、穂乃果がことりの家に泊まってるって説明されているみたい」

 

「恐らくことり自身がそう説明したんだろうな」

 

「ことりは……家に帰ってきているらしいの」

 

「なに!?じゃあ穂乃果はどこに?ことりが連れ去ったんじゃないのか?」

 

「分からない……今日学校に来てくれれば聞けるんだけど」

 

 

 まぁ、十中八九教えてはくれないだろうがな。そもそも今のことりが学校に来るとは思えない。手がかりがあればいいんだけど、この休みの間にことりには会ってないからからなぁ……土曜日に凛、花陽との騒動があり、日曜日つまり昨日に絵里との騒動があったばかりだ。

 

 

「理事長に直接会って、ことりの様子を聞いてみるしかなさそうだな」

 

「そうね。それしか方法がないかも」

 

 

 今日不在でないコトだけを祈らないとな。時間が経てば経つほど穂乃果の身に危険が起こるだろうし、もしかしたら既に無事ではないかもしれない可能性もある。

 

 

「そう言えば零、身体は大丈夫?本当に疲れているのなら、流石に休んだ方がいいわよ。希から聞いた話では、ずっと無理してるようだったから」

 

「平気だって!もしかして昨日のコト、まだ気にしてんのか?」

 

「それは……そうでしょう」

 

「ぷっ……アハハハ!!」

 

「えっ!?どうして笑うのよ!?」

 

「いや~~いつものお前が戻って来たって思うとさ、笑いが出てきちまったよ」

 

「どうしていつもの私で笑うのよ!!普段私ってそんなに変かしら?」

 

「あぁ、たまに抜けているところがあるとか、特に希から聞いた絵里のうっかりエピソードはいつも面白いよ。笑えない話がない」

 

「希ぃイイイイ……覚えてなさいよ……」

 

「アハハハ!!」

 

「笑わないでよ!!」

 

 

 これが絵里と過ごすいつもの日常。このちょっと不器用さが絵里の特徴であり、からかいがいがある。でもそれでいてとても楽しい。他のみんなとも、こうやって過ごせる日が来るのだろうか?いや、こっちからその日を取り戻してやる!!

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 俺、絵里、希、真姫、凛、花陽の6人は早朝の生徒会室に集まって現状と今後について話し合った。一応全員が現状把握は出来たのだが、今後については一旦保留となってしまった。穂乃果やことり、にこの動きが全く分からないため作戦が思うように上手く立てられなかったのである。1時間目の授業も迫ってきたので、一時ここでお開きとなった。

 

 

「やっぱり気になるよな……」

 

 

 ことりの様子について、時間が取れそうな放課後にみんなで理事長のところへ行く予定だったのだが、気になり過ぎて俺1人だけで理事長室の前まで来てしまった。ことりが家に帰って来ているというコトは、ことりの母親である理事長に話を聞くのが手っ取り早い。

 

 

コンコン

 

 

「どうぞ」

 

 

 扉の向こうから許可が出た。どうやら理事長が不在という懸念は杞憂に終わったようだ。

 

 

「失礼します」

 

 

 どうやら南理事長は資料整理をしていたようだ。机にたくさんの資料が積み上げられている。普通の学生の俺では到底捌ききれないだろう。それにしても理事長はいつ見ても若々しい。40代後半……40代前半……30代後半……いや、それよりももっと若く見える。容姿もあのことりの母親と言われれば簡単に納得する。

 

 

「神崎君、何か用かしら?もしかして、スクールアイドルのコト?」

 

「いえ、今日は別件です。むしろそれよりも重要な……」

 

「何かしら?」

 

「今からはこの学院の理事長としてではなく、ことりの親という立場で話を聞いて下さい」

 

「!!……」

 

 

 理事長の柔らかい表情が一転、険しい表情に変わった。その様子を見る限り、何も知らないというコトはなさそうだ。現状、ことりについての情報が希からの情報しかないためどんな些細なコトでも聞いておきたい。

 

 

「単刀直入に聞きます。ことりについて、何か知りませんか?彼女の様子がおかしいのは自分も把握しています。その上で話を聞きたいです」

 

「……」

 

 

 俺に何のコトか聞き返してこない。やはり何か知っているのか……そりゃあ、自分の娘だからな。様子がおかしかったら気になるのも当然か。

 

 

「やっぱりあなたも気付いていたのね」

 

「まぁ……普段と全然様子が違いましたから」

 

「そう…………あなたの言う通り、最近のことりは親の私でさえ怖いと思う時があるわ。一緒に話すコト自体も少なくなったし、話し掛けても無視されるコトだってあった。それで自分の部屋に閉じこもっては、ずっと1人でブツブツと声が聞こえるの。親である私が言うのもあれだけど…………不気味だわ」

 

 

 自宅でもその調子なのか……学校にいる時とまるで変わらないな。海未も同じようなコトを言っていたような気がする。ん?海未…………あっ、申し訳ないけど存在を忘れてた。昨日色々あったからな。そうだよ、海未にも聞けばいいじゃないか。もう学校には着いているだろうから、教室に戻ったらことりについて聞いてみよう。

 

 

「ことりの様子は学校でもほぼ同じです。先週末あたりからずっと……そう言えば、土日のことりってどんな様子でしたか?特に昨日の夜とか」

 

「昨日の夜はいつもと少し違っていたわ。いつもよりご機嫌そうにも見えたし、何かをやり遂げたかのような達成感のある顔にも見えた……」

 

 

 理事長の表情が次第に曇っていく。自分の娘が異常なまでにおかしくなっているんだ、そうなるのも無理はない。それにしてもご機嫌そうな表情に達成感のある顔か……もしかして昨日、穂乃果を連れ去ったコトと何か関係があるのだろうか?

 

 

 これまでの会話から、理事長はことりが穂乃果を連れ去った事実を知らないようだ。だとしたらココで説明する必要はないだろう。むしろ説明しない方がいい。下手に大ゴト(既に大ゴトなのだが)となって、ことりを無理に押さえつけても何の解決にもならない。これは俺たちで解決しなければならない問題だ。申し訳ないが、理事長には待ってもらうしかない。

 

 

「神崎君、あなたの目から見て何か気付いたコトはなかった?」

 

「……いえ、特には。さっき話したコトぐらいですかね」

 

「そう……わざわざありがとう。私も誰かに相談したいと思っていたのよ。神崎君が来てくれて、少し軽くなったわ」

 

「こちらも同じですよ。ありがとうございました」

 

 

 すごく有益な情報、とまではいかなかったがことりの様子については大体把握した。後はあの2人がどこにいるのかだ。もしかしたら、ノコノコ学校に来ている可能性も僅かに存在するかもしれないが。

 

 

 

 

「神崎君……」

 

 

 俺が理事長室から退室しようと扉に手を掛けた時、理事長が俺を呼び止めた。いつもの堂々とした気品ある声とは全く違う、小さく弱々しい声。

 

 

「ことりは……帰ってきてくれるかしら……?」

 

 

 そんなコト…………もう決まっている。

 

 

 

 

 

 

「えぇ。絶対に俺が、いや"俺たち"が連れ戻しますよ。ことりは、俺たちの大切な仲間ですから」

 

 

 

 

 

「あなたの言葉、ことりの言う通りどこか安心出来るわね…………ことりをお願い」

 

 

「はい。では、失礼しました」

 

 

 最後の理事長は少し安堵した様子であった。ことり……俺のコトを理事長に話していたのか。まぁ、μ'sを手伝っているのなら話題にもなるか。ことりもよく理事長とμ'sについて話すって言ってたもんな。本当に仲のいい親子だ。だとしたらその親子の関係も、必ず取り戻してみせる。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

ヴ ーヴ ー

 

 

 教室へ帰る途中、俺の携帯が震えた。これはメールや連絡アプリの通知ではなく電話の方だ。こんな早朝に電話が来るなんて珍しい。そんな軽い気持ちで掛けてきた相手を見て、俺は真顔になった。

 

 

 矢澤にこ。一昨日、凛と花陽に監禁された俺を助けてくれたのはにこだった。その時から既に、凛たちと同じ雰囲気を漂わせていたコトを今でも覚えている。俺は恐る恐る電話に出た。

 

 

「もしもし……」

 

『おはよう零、土曜日ぶりね』

 

「ああ……そうだな」

 

『あれ?元気ない?』

 

「ちょっと立て込んでてな。それはそうと、お前今どこにいるんだ?わざわざ電話してくるってコトは、学校にはいないんだろ?」

 

『もちろん。いたら危険だしね』

 

「なに?」

 

『そんな話はどうでもいいの。要件は1つ。零、今すぐその学院から逃げなさい』

 

「はぁ!?どういう意味だ!?」

 

 

 

 

 

 

『ことりが学院内の人間を…………全員消そうとしているわ』

 

 

 

 

 

「なん、だと……」

 

 

 

 

 まだ授業も始まっていない早朝。再び俺たちは闇へと誘われる……

 

 

 

 




零君の敬語が珍しすぎて書くのが大変でした。基本的には年上にも堂々と失礼を働きますが、流石に状況が状況なので。

ちなみに今回で零君が3連勤!


まだあまり書き留めていないので何とも言えませんが、前書きの通りこの章は第一章や第二章並にテンポよく進み終わると思います。私は次回予告詐欺に定評があるので、あくまでも仮定ですが。





次回……
にこから告げられたことりの罠。最悪の事態を避けるため、零は学院を奔走する。
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