自分でもこの先の展開が楽しみ過ぎて、どんどん執筆したくなる病にかかりました。
神崎零が理事長と面会している最中、西木野真姫、星空凛、小泉花陽の3人は教室に戻りながら先程の作戦会議を振り返っていた。作戦会議とは言うものの実際に作戦を立てるコトはほとんど出来ず、現在の状況把握だけで終わってしまったが。
「まさか穂乃果とことりがそこまで変わっていたなんて、思いもよらなかったわ」
「うん、私も意外だったよ。それにしても穂乃果ちゃん、大丈夫かな……?」
「肝心のことりちゃんもどっかに行っちゃうし、どうしたらいいのかにゃ~……」
希から告げられた穂乃果とことりの変貌具合。真姫は一度病院で2人と対峙しているが、あの時は自分も2人と同じように豹変していたためあまり覚えていない。花陽は2人と直接会っていないが、凛は穂乃果と対決したコトもあってよく覚えている。
「凛たちに出来るコトって何もないのかな?このまま待つだけって言っても、待っていられないにゃ!!」
「零君たちもあれ以上は何も知らないって言うし、理事長さんがことりちゃんについて何か教えてくれるコトを祈るしかないね」
「でも凛の言う通りこのまま待つだけっていうのも癪だし、海未やにこちゃんからも事情を聞ければいいんだけど……」
「「……」」
「どうしたの?急に黙り込んで」
「「そ……」」
「そ?」
「「それだ!!」」
「うぇっ!?ビックリするじゃない!?大声出さないでよ!!」
突然耳元で大きな声を出され、頭がキーンと響く。真姫自身は特別なコトを言ったつもりは一言もないのだが、凛と花陽にとっては吉報だったらしい。そもそもその反応は忘れていたというコトなのだろうか。
「海未ちゃんとにこちゃん、どうして思いつかなかったんだろう!!真姫ちゃんナイスだにゃ!!」
「本当に申し訳ないけど、忘れてたね……ゴメンなさい、海未ちゃん、にこちゃん」
「やっぱり忘れてたのね……」
「いや~最近忙しかったから仕方ないにゃ」
「確かに忙しかったのは認めるわ」
零が忙しかったのは誰もが周知の事実だが、意外と真姫たちも彼には及ばないものの忙しくはあった。土日にμ's内で一悶着あって休みがなかったのは、この3人に加え希も同じである。凛と花陽の場合、土曜日は思いっきり加害者側であったが。
「もうすぐ授業始まっちゃうし、次の休み時間に海未ちゃんとにこちゃんのところに言ってみる?」
「いや、その必要はないわ。零が海未、絵里と希がにこちゃんに話を聞くだろうから、わざわざ行かなくてもいいんじゃない。忘れていた凛たちとは違ってね」
「なんか棘のある言い方だにゃ……」
「ゴメンなさい……」
「別に謝らなくてもいいんじゃない。それよりも、事態解決に全力を尽くしましょ。ねっ、花陽」
「う、うん!そうだね!」
「なんでかよちんだけなの!?凛は!?」
「はいはい頑張りましょ」
「扱いが雑だにゃ!!罰として、ジュース1本真姫ちゃんの奢りね!」
「はぁ!?なんでそうなるのよ!!意味分かんない!!」
「まぁまぁ……」
凛が突っかかり、真姫がツッコみ、花陽が止める。これがこの3人の日常風景だ。一時はこの関係が崩れてしまったが、またお互いの笑顔を取り戻した。だが本当の笑顔はまだ見るコトは出来ない。それが実現するのは、9人全員が揃ってμ'sを再結成した時だ。
~※~
ことりが学院の人間を全員消そうとしている。そうにこから告げられた俺は、しばらくの間驚愕して声が出せなくなっていた。もちろんことりがそんな画策を練っているというコトも驚くべきではあるが、一番初めに思ったのは今までと違って明らかに規模が大き過ぎるというコトだ。
これまでことりを含め、変貌したみんなが狙っていたのは俺か自分と同じμ'sメンバーだったハズだ。だが今回は内部抗争に無関係な生徒や先生まで巻き込もうとしている。一体何を考えているんだ?
「おいにこ、それは本当なんだろうな?」
『えぇ』
「全員を消すってどうやって?」
『この学院を敷地ごと吹き飛ばすのよ』
「なんだよそれ……」
『タイムリミットは午後12時ジャスト。ちょうどお昼前だから、遅刻してきた生徒も登校している頃ね』
「ちょっと待て、なぜお前がそれを知っている?」
よく考えればことりの計画をなぜにこが知っているのかが気になる。もしかして手を組んでいるとか?この前俺の携帯に発信機を仕掛けたみたいに、今度は盗聴器でも仕掛けたのか?ことりがそんな隙を与えるとは思えないけど……
『だってそれ、にこが仕掛けやつだし』
「はい?」
真姫の言葉を借りれば『意味分かんない!!』だ。別に借りなくても同じ気持ちではあるが。なぜにこが仕掛けたモノをことりが利用しているんだよ。
『初めはにこが使おうと思ってたんだけど、事後処理とか大変そうだしやっぱりやめようとしたのよ。それで今日の夜、あらかじめ仕掛けてあった社会科教室に行ったら』
「なくなっていた訳ね」
『そう。そしてその周りを入念に調べたら、ベージュ色の髪の毛が一本落ちていたのよ。それも真新しい髪の毛がね』
ことりの髪の色は特徴的だ。この学院でベージュ色の髪の毛をした生徒なんてほとんどいないだろう。その中でも、怪しいモノを見つけてそのまま持ち帰りそうなのはことりという訳か。
「…………そうか、この際お前が仕掛けた理由は後でもいい。ことりがどこにそれを隠したのか、見当はつかないのか?」
『爆発の範囲的に敷地の端っこ過ぎると全体を巻き込めないから、校舎の中って可能性が高いわね』
「そのタイムリミットは変えられたりしてないのか?」
『一度セットしたら変えられない仕組みだから、それは無理だわ』
「そうか……後1つだけいいか?」
『なによ』
「お前は今どこにいる?」
『部屋にいるわ。遠隔で止められないか試しているから』
「そうか……だったら一旦切るぞ」
『ええ。そっちはお願いね』
「ああ……」
そこでにことの通話を切った。起動までのタイムリミットは午後12時。あと3時間半以内に見つけ出すだけではなく止めなければならない。モタモタしている時間はない、一刻も早く動き出さないと。
「零!!」
突然、後ろから大声で名前を呼ばれた。その凛々しい声はμ'sメンバーの中で唯一変貌していない人物であり、誰よりも一番今のμ'sを心配していると思われる人物。
「海未……」
海未には穂乃果やことりについて色々と聞きたかったのだが、今は学院の崩壊を食い止めなければならない。話はその後にでも出来るだろう。だから今は何も言わず俺を解放して欲しい。
「どこへ行ってたんですか、もうすぐ朝礼が始まりますよ」
「悪い、先に教室行っててくれ」
「なぜです?」
「やらなきゃいけないコトがあるんだ」
「このままだと欠席扱いになりますよ?」
「別にそれでもいい。それか、お前が先生に言ってくれれば……」
「ダメです!!行きますよ!!」
ガシッ!!
「おい!?」
海未は俺の手首をガッチリ掴み、脈を止めるかのような力で握り込む。穂乃果やことりからのボディタッチは頻繁にあるが、海未から仕掛けてくるのはかなり珍しい。しかもそれだけではなく、手首を掴んだまま教室に行くのかと思いきや、逆に俺の方に歩み寄ってきた。
ボフッ!!
「えっ!?」
俺の目の前まで歩み寄ってきた海未は、身体ごと俺に倒れ込んできた。俺と彼女では身長差があるため、海未の頭が丁度俺の胸に当たる。そのまま海未は俺の胸に顔を埋め、しばらくの間そのまま静止していた。
「お、おい……どうした?」
「はぁ~、やっぱりいい匂いがしますね、零の匂いは……」
「え……」
「こうしていると、身体全体があなたに包まれている感じがしてとても幸せです。もっと抱きついてもいいですか?いいですよね?だって零は私のコトをいつも大切に想ってくださっているのですから、私もそれに応えなければ……」
「落ち着け!!いきなりどうしたんだお前!?」
ギュー!!
俺の言葉を無視し、海未は両腕でガッチリと俺の身体をホールドする。その力は、コイツから出ている力とは思えないほど力強かった。そしてこれは、この前穂乃果やことりにされたコトと全く同じだ。も、もしかして!?ま、まさかコイツも!?でもなぜだ!?土曜日に会った時は、μ'sについて真剣に相談していたハズだ。あの時から猫かぶっていたとか……?
「お、お前……まさか……」
「すんすん……あぁ……いい香りがします。昨日から私、ずっとこうしたかったんです。零と一緒に抱き合って、お互いを感じ合って、色々なところを触れ合ったり……本当は誰にも邪魔されないところがよかったのですが、生憎あなたはお疲れのようでしたので、仕方なくここで抱かせてもらっています。そんなあなたを気遣えるのは私だけ。そうです!零、今から一緒に私の家に行きませんか?今日は親もいませんので、そこなら誰にも邪魔されませんよ」
俺は言葉を失った。海未に抱きつかれて上目遣いで見つめられるのは、普通だったら最高のシチュエーションだろう。そう、普通だったらの話だ。今の海未はあの穂乃果やことりと全く同じ狂気を感じる。俺を抱きしめる力は弱まるどころか次第に強くなり、俺を壁に追い込み脚を絡ませる。
「う、海未……どうしてお前まで……」
「今までが偽りの私だったのです……でも自分を偽るのはもうやめました。これからは零、あなたと共に生きていくと誓ったんです!!もう絶対に離しませんよ……そして誰にも触れさせません。この私を、あなたの欲望のまま好きにしてしまって構いません。だから私もあなたを好きにさせて頂いてもいいですか?」
「いい訳ないだろ!!」
「きゃっ!!」
普段の俺なら間違いなくその提案に飛びついていただろう。だがそれは俺が好きな本当の海未だったらの話だ。この海未の提案に乗ったら最後、どんなコトをされるのか想像するだけでも恐ろしい。少し強引に海未を引き剥がしてしまったが、今は許してくれ。
「どうして離れるのですか!?私のコトを好きではなのでは!?いつもそう言ってくれてましたよね!?そうですよね!?」
「いいから少し落ち着け!!悪いが今はそれどころじゃないんだよ。お前の気持ちは真剣に考える、絶対にだ。だから、今は俺を行かせてくれ……」
「それは私よりも大切なコトなのですか?」
「今はだ。だからと言ってお前を蔑ろにはしない。今は黙って俺を見送ってくれ」
「…………分かりました。零の頼みとあらば待ちましょう。ですが、私の気持ちも真剣に受け止めてくださいね」
「あぁ……前向きに検討するよ」
もちろん今の海未の気持ちを真っ向から受け入れるつもりは全くない。でも、今は嘘をついてでもいいからこの状況から抜け出さないといけないからな。嘘なんてついて、後でコイツになんて言えばいいのやら……
「先生には私が伝えておきます」
「ありがとな……」
海未からの拘束がなくなったので、俺はそのまま教室とは反対方向に向かって走った。もちろん海未のコトは心配だ。早く元に戻してやりたいと思っている。だが待っていてくれ。お前の知らないところで命が狙われているんだ。この学院と生徒たちを守るためにも、もう少しだけ我慢してくれ。
~※~
俺はそのまま校舎裏の体育館へやって来た。にこは校舎内が怪しいと言っていたが、俺はその言葉を信じる気は全くない。そもそもにこはことりに仕掛けたモノを見つけられたと言っていたが、俺からその事実を確認する方法は一切ないため信じるに信じきれない。そう考えればことりが別の場所に隠し直したというのは嘘で、にこが初めから別の場所に隠しただけの可能性もある。
つまり校舎内が怪しいと言って、俺に校舎内を重点的に探すように仕向け、本当は校舎外にある体育館などの施設に隠されているかもしれない。いかにもにこが考えそうな手だ。ずる賢い彼女だからこそでもあるが。
ちなみにこのコトを海未に話さなかったのは、あの状態の海未では何も役に立たないと思ったから。ことりについての言及を後回しにしたのもそのためだ。
それと絵里たちにも話していない。彼女たちなら必ず協力してくれるが、一度に1、2、3年生の教室から生徒が消えれば教師が怪しむ可能性があるし、大勢で学院内を駆け回っているのを見つかり捕まってしまうと大幅な時間ロスとなってしまう。もしバレて下手に騒ぎになれば、その瞬間ドカンもありうる。にこの奴、遠隔とか不穏な言葉漏らしやがって……
そもそも、タイムリミットの午後12時っていうのもかなり怪しい。あと3時間ぐらいしかないが、もしかしたらあと1時間程度なんてコトも考えられる。もしかしたらにこではなく、ことりが仕組んだという可能性も捨ててはならない。
「全く……メンドくせぇコトに巻き込みやがって……」
もはや誰の行動なのか、何が真実でどれが嘘なのか、明確ではなくなってきた。だが、迷ってるだけでは全員死ぬかもしれない。俺やμ'sのみんな、学院の生徒や教師を全員巻き込んで。だとしたら分からなくても動かなければならない。
「まずは体育館から……」
一時間目に体育の授業があるクラスはまずない。今の内に調べておかないと二時間目以降、授業で使われると調べられなくなる。
にこに踊らされている可能性もある、ことりの罠が仕掛けられている可能性もある。不確定要素が俺の脳を駆け巡り、それが怒りとストレスになる。解決できないというのは非常に腹ただしい。今の俺の行動がにこに踊らされている可能性を考えると、尚更怒りとストレスが溜まる。
タイムリミットまであと3時間。ゴールが見えない罠に、俺は足を踏み入れていく……
~※~
時が少し遡った3年生教室では、希の携帯に通話が入った。
「どうしたの希?もうすぐ授業よ」
「にこっちから電話が来た。もしかしたら今日休んだ理由を教えてくれるかも」
「じゃあ私も行くわ。欠席理由を学校に伝えてないなんて……しっかり言ってあげなきゃ」
こちらでも、ひっそりと時は動き出す……
『信じるのか否か』というタイトル通り、にこの言葉のどの部分が真実で、どの部分が嘘なのかが第五章前半のキーポイントです。これは感想欄の返信でも書いたのですが、実は第四章にヒントがあります。もちろん今回の話の中にもヒントが隠されています。
この段階ではすべての謎は解けませんが、段々読者様にも察しがつくように話を構成していくつもりなので、意識して読んでもらうとより楽しめると思います。にこやことりが何を企んで何をしようとしているのか……注目です!!
素直に『爆弾』って書けよと思われた方もいるかもしれません。ですが読み返して、あまりにもラブライブの小説に出てくる言葉として相応しくなかったので(今更かもしれませんが)、ある程度ぼかしました。
ところで今回の海未ちゃん可愛くなかったですか?