ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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今回はすべて零視点。つまり地の文多めとなっています。



※第二話の後書きで言った通り、『爆弾』という言葉が似合わないのでこの話では全編通して言葉が出てきません。つまり主語がない文章が多いです。例として『仕掛けられていた』とあった場合、『何が』に該当する部分ありません。補完をよろしくお願いします。



第三話 ‐錯綜‐

「ケホッ!!ケホッ!!砂埃すげぇな……ちゃんと掃除してんのかよ」

 

 

 俺は校舎から無駄に離れ、無駄に広い体育倉庫を調べていた。倉庫の中には明らかに最近使われていない体育用具も存在し、それには尽くホコリが被っていた。ここには運動場で使うモノばかりが集められているため、必然的にホコリが砂と一緒になり舞い上がってしまう。これで目が潰されたら堪ったものではない。

 

 

「本当にこんなところにあるのか?暗くて隠すのなら絶好の場所だけど……」

 

 

 無駄に広い体育倉庫なので、入口を開けても倉庫の奥まで光が届かない。それ以外で唯一外と繋がっているのは高い位置にある1つの空気窓だけだ。そこも近くが石垣に阻まれていて中々光が倉庫に差し込まない。まるで軽いお化け屋敷のようだ。

 

 これだけ暗ければ、モノを隠すのにこれほどいい場所はないだろう。だが絶好の場所というのは、逆に言えば誰にでも思いつく。ましてこの学院の生徒なら全員。もちろんだが、体育倉庫は体育の授業で使うためひょんなコトから見つかってしまうかもしれない。わざわざそんな危険を犯してでもココに隠すだろうか?

 

 そもそも、これもにこが仕掛けた誘導に乗せられているという可能性もある。俺がそう考えるコトを読んであえてこの倉庫のどこかに隠しているのか……そう思わせておいて本当は別の場所に隠してあるのか……

 

 

 

 考えてもキリがない。俺がにこの思考を読んでいるコトをにこが読んでいて、さらに俺がそのにこの思考を読んでいる。またにこがその俺の思考を読んでいる…………その連鎖だ。しかもこの連鎖は彼女が有利だ。なぜならタイムリミットがあるから。俺がどれだけアイツの思考を読み当てても正午になれば全員死ぬ。

 

 こうやって色々と考えを巡らしているが、にこの言葉通りことりが仕掛けた可能性も十分にある。にこが本当のコトを言っているのに、俺が無駄ににこの言葉を疑って時間を消費し、正午になってドカンじゃ笑えない。その時こそ、ことりの思う壺だろう。

 

 

 

 考えたら考えただけ迷う。だが闇雲に探しても見つかりはしない。二律背反の事象が、俺に焦りとストレスを感じさせる。焦りとストレスは俺の判断を大きく鈍らせる。俺を惑わせるコトもにこ、またはことりの手なのか?…………ダメだダメだ。また出口のない迷宮に、俺の思考が立ち入りそうになった。にこやことりがどう考えているのかを予想するだけでも迷宮に迷い込んでしまう。

 

 

「ここにはなさそうだな……」

 

 

 個人的には丁寧に探したつもりだ。ないと分かったら早急に次の場所に行かないと。探している間にも、次に探す場所の候補もいくつか考えていた。いちいち迷っている時間はない。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 次にやって来たのはゴミ捨て場だ。体育倉庫の裏に位置しているため、学院の全施設の中で敷地の一番端に存在する。ここに来た理由の根拠らしい根拠は特にないが、業者がゴミ回収にくるのは授業日の放課後。つまり休日であった一昨日から隠していても問題ない訳だ。

 

 

「1人でゴミ漁りって……不審者かなにかと勘違いされそうだな……」

 

 

 そう言えば、これほどまでに頭がごちゃごちゃしたのは初めてかもしれない。真姫や凛、花陽は勢いだけで俺を監禁していたし、絵里や希の時は薬にやられていた。つまり今回はその5人とは違う。じっくり温めておいた作戦を完璧なるまで寝かせておき、ベストなタイミングで俺の前に突き出したのだろう。しかも絵里たち5人は俺の考えを無視した一方的な作戦だったのに対し、今回は俺の思考を読んでの作戦。人を操っての計算高さは、にこやことりが一番得意そうだ。

 

 

「思ったよりゴミが少ないな。まぁ、休日明けだからそりゃそうか。探す手間が省けて楽だからいいけどさ」

 

 

 ゴミの匂いあまりしないものの、衛生上ココにはいたくないので迅速に探して切り上げる。ここは外部からじゃ見えないし、授業中だから誰も来ないコトを見越してこの辺に隠されているのかもしれないが。

 

 

「もう30分も経ったのか……」

 

 

 2ヶ所探しただけで30分。あと2時間半。しかもその2時間半は見つけるまでの2時間半ではなく、残りの時間で学院が吹き飛ばないように無力化しなければならない。大雑把に見積もってもあと2時間が許容範囲だ。

 

 

「あまりウロウロして先生に見つかってしまうと終わりだからな。なるべく裏手を通らないと」

 

 

 授業中に制服を着た生徒がこんなところを彷徨いていれば、当然理由を求められる。素直に『この学院を守るためです』と言ったとしても、頭が打ったのかなと思われるに違いない。嘘を言っても授業を抜け出してココに来ているコトぐらいは、教師なら調べればすぐ分かる。う~む……どう答えるべきなのか……?

 

 いっそのコト、基地外認定されてもいいから自分の正義を貫いてもいいかもしれない。最悪頭が痛い子と思われて釈放してくれるかもしれないし。それに万が一、正午になりそうな場合はみんなを避難させなければならないからな。その時こそ、パニックならないように嘘をついた方がいいか。もちろんそんな事態に陥らないのが一番いい。

 

 

「もうゴミ漁るの虚しくなってきた……次行こ。ここにはもうない!!断言する!!」

 

 

 丁寧には調べたつもりだが、やっているコトはゴミ袋を荒らすカラスと同じ行為だと思うと突然空虚の時間が発生した。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 次にやって来た場所はプール及びその更衣室だ。この時期になるともう授業で使われてはおらず、次の大掃除まで放置となっている。一応この学院には水泳部があるのだが、冬も近くなって肌寒くなってきたためか、最近は近くの水泳施設を利用しているみたいだ。

 

 

「まさか水の抜かれたプールに入るなんてな……そういやμ'sのみんなと大掃除したコトもあったっけ」

 

 

 思い出されるのは夏終わりの記憶。10人でふざけ合いながらも笑いながら掃除したっけ。あの時は毎日毎日、1日1日が本当に楽しかった。卒業という一つの区切りまでは、こうしてみんな一緒に笑い合って居られる。そう思っていたんだよな。

 

 だが、無残にもその日常は崩れ去った。根本的な原因は分かっている………………俺だ。みんなの確執には必ずどこかに俺がいた。恐らくにこもことりも、穂乃果も海未もみんな同じなのだろう。俺が原因じゃなかったら何が原因だと言うんだ。だから俺には、みんなを元に戻さなければならないという責任がある。使命と言ってもいい。

 

 誰の思惑から歯車が狂いだし、その思惑が誰の歯車を狂わしたのかも分からない。つまり誰が始まりなのか、どのように広がっていったのかすら分からない。きっかけは些細なコトなのか、誰かと誰かの争いがあったのかすらも……

 

 みんなを元に戻さなければならない責任、あと2時間も経たない間に学院を救わなければならないというプレッシャー。2つの重圧が容赦なく俺に伸し掛かる。だが、みんなを救うためならそんな重圧いくらでも背負い込んでやる。みんなにそんな辛い重圧を絶対に背負わしたくないから。

 

 

「とっとと探さねぇと……」

 

 

 そんなコトを考えていた俺は、自分自身でも焦っているのが分かった。ここからどうする?これから学院内にある可能性も視野に入れていくのか?いや、まずはこの辺から順番に……

 

 

 

 

 支配される。何もかも分からなくて生み出される、怒り、焦燥、惑い…………あの時の日常から駆り立てられる、苦しみ、悩み、そして2つの重圧…………

 

 

 

 

「くっそぉおおおおおお!!どこにあるんだよ!!このままだとこの学院が……みんなが……」

 

 

 

 

 プール、弓道場、柔道場、飼育小屋など校舎外で回れる場所を片っ端から探していく。1つの場所にそれほど時間は掛けず、かつ丁寧に。それでもタイムリミットまであと1時間半を切っている。

 

 

 

 

 

ドゴォッ!!!

 

 

「クソッたれ!!!!ふざけんな!!!!」

 

 

 俺は部室棟のトイレ内部を探しながら、ドアを思いっきり殴りつけた。もう誰に八つ当たりしていいのか、そもそも八つ当たりする相手がいるのかどうかすら考えられなくなっていた。全身が汗で濡れ、息も整っていない。空気を入れるため制服を着崩し、何も分からず顔を上げた。

 

 

 

 

「あっ……」

 

 

 

 

 その瞬間、俺は我に返った。俺が見つめているのは自分の顔。自分が写っている鏡と言った方が正解か。いつも自分の顔は見ているハズなのに、今はまるで他人のようだ。これが今の俺……?

 

 

 

「なんて顔してんだよ、俺……」

 

 

 写っていたのは鬼のような形相をした自分。だがその表情はどこか悲しくも見える。その自分を見つめ直すコトで少しは落ち着けた。そうだ、叫んでも怒鳴ってもみんなが助かる訳ではない。それに助ける側の自分がパニックになってどうする。

 

 落ち着け……よく考えるんだ。誰の言葉だろうが惑わされるな。例え迷宮に落とされたっていい。自分の信じた道を行けば絶対に出口は見つかるハズだ。この状況を好転する何かが確実に。

 

 

 

 

 ん?状況を好転?そう言えば、にこはなぜ俺にこのコトを伝えた?そうするコトで、にこにとってどう事態が好転する?そうだ!そもそも黙っているのが一番危険がない。なのに俺に伝えた……じゃあこれはにこが仕掛けたんじゃなくて、ことりが仕掛けた策なのか?

 

 いや違う……だったらことりがわざわざ穂乃果を連れ去る必要はない。穂乃果が学校に訪れた時点で、今の俺達と同じ条件で殺されるからだ。となれば、これはにこが仕掛けた策で、ことりが仕掛けたというのは嘘だ。

 

 じゃあ何処に仕掛けられている?校舎の中なのか外なのか…………待て、それじゃあ俺も殺されないか?こう自分で言ってはアレだが、アイツらは他のμ'sのメンバーを始末しようとしているだけであって俺を殺そうとはしていないハズだ。だが今の状況は俺まで死んでしまう。

 

 

 

 

 もしかして……元々この学院には何も仕掛けられていないんじゃ……そうだ!!なぜ今まで気づかなかったんだ!?にこやことりならこんなコトぐらいなら平気でするだろうと思っていたし、あらゆる焦燥感に駆られてあるものだと思い込んでいた。つまり、にこの言葉はすべて嘘というコトになる。俺がこれまでに起きたコトから導き出した結論はそれだ。

 

 恐らくにこは、俺が彼女の思考を深読みするコトを逆に読んでいたんだ。そうでなければあの嘘は成立しない。それだけじゃない、俺が思考の迷宮に迷い込むコトも想定内だったのだろう。解決出来なければ、怒りやストレスを溜めるという俺の性格まで織り込み済みだったんだ。そうして俺を惑わせた…………なんて奴だ。流石、裏での画策が得意そうなにこのコトだけはある。

 

 

 

 そこまで分かったら次だ。じゃあ彼女はそれで何をしたかったのか、である。にこにとってその嘘はどんなメリットがある?もう焦る必要はない、ゆっくり考えろ……にこの狙いを……

 

 元々、にこを含めみんなの狙いは同じμ'sのメンバーだ。だとしたら第一目標は彼女たちの殲滅。彼女たちの……絵里たちの…………あれ?俺は今1人で探しているよな?そうだ、もし大勢いて先生に見つかってしまった場合のリスクを考えた結果だったんだ。俺1人……これもにこが読んでいたとしたら……?

 

 

 待て!!今、絵里たちは何処にいる?授業を受けている……ハズ……だよな……?

 

 

 

 

 マズイ!!もしかしたら!?

 

 

 

「絵里!!希!!真姫!!凛!!花陽!!」

 

 

 叫びながら、授業中にも関わらず俺は携帯を引っ張り出して電話を掛ける。誰が狙われているのかは分からない。とりあえず片っ端から……

 

 

 

 

ピリリリリリリリリリ

 

 

「なに!?電話!?誰から!?」

 

 

 こちらから掛けようと電話を取り出した瞬間、誰かから電話が掛かってきた。その相手の名前が画面に映し出される。

 

 

『矢澤にこ』

 

 

「にこ!?」

 

 

 今まさに話をしたかった人物だ。向こうから掛けてきたくれるなんてな。

 

 

「もしもし!!」

 

『その声、覇気が戻ったようね』

 

「にこ……全部分かったぞ。お前の計画がな」

 

『そう、そりゃよかったわ。ところで零、アンタ、にこのところに来てくれない?』

 

「言われなくとも……今何処にいる!?」

 

『ダメよ!!来ちゃダメ!!にこはあなたを』

 

 

 突然、にことは違う大人びた声が電話口から聞こえてきた。彼女の他に誰かいるのか?もしかしたら、絵里たち5人の誰か……っていうかその声は!?

 

 

「その声……絵里か!?」

 

『うっさいわね!!にこが話してるんだから入ってくんな!!』

 

 

ドゴッ!!

 

 

『ぐぅっ……』

 

 

 電話口からでも分かる、人を殴る鈍い音。その音に容赦の欠片もなかった。

 

 

『にこっち……ええ加減に』

 

『だからうるさいのよ!!黙って!!』

 

 

ドゴッ!!

 

 

『うっ……』

 

「絵里と希がいるのか!?オイ!!答えろ!!」

 

『場所は後でマップを送るから』

 

 

 

 通話はそこで終了した。やはりすべてはアイツが仕組んだ計画だったんだ。俺とみんなを分断させるために……

 

 

 

 俺は携帯を握り締め、既に走り始めていた。

 

 

 




第三話にして謎解きでした。皆さんの予想は当たっていたでしょうか?
前にも言いましたが、第五章はテンポよく進むのであと3話程度で終わります。

第四章のヒントについては、実は「ep.4 ‐それぞれの陰謀‐」の最後の方に、ことりの場面で『彼女は誰かが死なないように動いているのだ』という文章がありました。それが分かっていると『ことりが生徒全員を巻き込む爆弾を仕掛けるはずがない』⇒『じゃあにこの言っていたことりが仕掛けたというのは嘘となる』とあの時点でここまで予想が建てられます。

あとは零が本編で語っていた通りです。


今回のにこ編は、本編中でも言っていた通り今までとは大きく違います。真姫や希、凛、花陽はほぼ真っ向勝負でしたが、絵里編以降はみんな予め策を練に練っているので、零がその策を打破するという描写が必要になってきます。いつもと作品の雰囲気が変わって見えるのもそのためですね。他の人たちよりにこが手強いと言ったのは、この辺の事情もあります。ちなみに、この先のことほのうみ編では真っ向勝負に戻る予定です。


どうでもいいですが、今回出てきた体育倉庫は『日常』で零と絵里が閉じ込められた倉庫と同じです。またプール掃除の回想は、同じく『日常』でそれを描写した話があります。

次回は……
絵里と希に何が起こったのか、彼女たち視点で今回の裏で行われていた行動を描きます。


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