ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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今回は第三話の零視点の裏で起きていた絵里、希視点の話となっています。
ちなみに長さ的に次回まで引っ張ってます。


第四話 ‐先輩たち3人‐

 神崎零が学院を奔走していた頃、絢瀬絵里と東條希の2人は矢澤にこからの電話に応答していた。穂乃果やことりはもちろん警戒しなければならないが、実は零からにこも同じぐらい警戒するよう言われていた。μ'sメンバーの中で休日に彼女と会った人はおらず、唯一花陽と凛に監禁されていた零だけが会っている。彼曰く、にこは穂乃果たち同様に変貌しているとのコト。彼女は自分の本性を決して表に出していなかったが、零には見抜かれていた。

 

 

『誰もいないところに移動したんでしょうね?』

 

「うん、ここなら誰にも聞かれへんよ」

 

「私は聞かせてもらうけどね」

 

『絵里……まぁいいわ』

 

 

 電話口から聞こえる彼女の声は真剣かつ重々しい。宇宙No.1アイドルを目指す彼女は、いつもなら皆にどうしたら元気を与えられるか、笑顔に出来るのかを常に考えてきた。お世辞にも歌が上手いとは言えないが、その特徴的な声に魅了されたファンも多い。もちろんμ'sも、そんな彼女から元気を貰ったコトがある。

 

 

 だが、今は違う。

 

 

「にこ、あなた今何処にいるの?黙って学校サボって……」

 

『はぁ~……』

 

「なによ……?」

 

『同じコト聞いてくるなぁ~っと思ってね。そんなににこの居場所を知りたいの?人気アイドルは大変だわ』

 

「ふざけないで」

 

 

 いつもの絵里ならにこのジョークにツッコむか悪ノリするかどちらか、どちらにせよ意気揚々と振舞うにこと話すのは好きだった。しかし今はそんな状況ではない。彼女から自分たちに連絡してきたというコトは、よほどの余裕があると伺える。なぜなら彼女は自分たちμ'sを狙っているにも関わらず、不意打ちや奇襲もかけずに連絡してきたからだ。自分からこちらに連絡する必要など一切ないハズである。

 

 

『いいわよ、教えてあげる。ただしこちらの要求を飲んでくれたらの話ね』

 

「要求……?」

 

『穂乃果やことり、海未についての情報があるの。知りたくない?』

 

「穂乃果ちゃんにことりちゃん!にこっち、それはホントなん?」

 

 

 穂乃果とことりの情報は、今希たちが一番知りたがっている情報だ。今朝生徒会室で零たちと情報交換をしたが、この2人の行方については全く検討がつかなかった。仕方ないので放課後、みんなで理事長のところに行くコトになっている。だがそこには既に零が行っていて、かつ有益な情報は少なかった。

 

 

「待って、今海未って言ったわよね?もしかして海未も……?」

 

『それ以上詳しいコトはまた後で。にこが指定した場所に来てくれるなら、だけどね』

 

「……」

「……」

 

 

 明らかに罠。聡明な2人なら、そのぐらいはすぐに分かる。そもそもにこが本当に情報を持っているのかというのも怪しい。わざわざ敵地に自分から乗り込む必要あるのだろうか。

 

 

『それともう1つ。アンタたち2人で来るコト。それ以外に誰も連れてきちゃダメだし、このコトを言ってはならない』

 

「零君にも?」

 

『ええ』

 

 

 零を除け者とする理由は分からないが、この機会逃してしまえば、穂乃果たちの繋がりがポッキリと折れてしまうかもしれない。彼女が穂乃果たちの情報を知っているという保証はないが、知っているという可能性もある。

 

 

「…………分かった。ウチらだけで行く」

 

「希!?そんな勝手に!?」

 

『決まりね。もし別の人の気配を感じたら……その時は後悔してもらうから』

 

「にこっち……」

 

『じゃあ、すぐに指定場所の地図を送るから。急ぎなさいよ』

 

「うん」

 

 

 そこで通話は切れた。希は俯きながら携帯をポケットにしまう。絵里はまた希の悲しい表情を見てしまった。最後に見たのは昨日、希が自分を救い出そうとしてくれた時。無慈悲にも、希の想いは後一歩届かなかった。絵里は自分が暴走していた頃の記憶は鮮明に覚えているが、希との対面が一番印象に残っていた。もちろんあの時の希の表情も。

 

 

「ゴメン絵里ち、勝手に決めちゃって……」

 

「どうして……?」

 

「穂乃果ちゃんたちについて知りたいのももちろんある。けど、ウチはにこっちを救ってあげたい。実際に会って、じっくり話し合いたいからこの条件を飲んだんよ」

 

「そういえば、にことは1年生の時からの付き合いだって言ってたわね」

 

「うん、だから助けたい。もう1人の"親友"を……」

 

 

 絵里もにこも、お互いのコトは知っていたがμ'sという繋がりが出来るまで普通に話したコトは一度もなかった。むしろアイドル研究部のいざこざで啀み合っていたぐらいだ。あの頃の絵里とにこは、μ'sに入った後とは考えられないぐらい性格がねじ曲がっていたが。

 

 だがそれは過去の話。絵里にとってにこは大切なμ'sの仲間であり、そして親友だ。同級生というコトで一緒にいる時間も格段に増えた。そう考えると希とにこ、そして自分の3人一緒に学院生活を過ごしてきた記憶が蘇る。この3人でいた時間はμ's加入後のため非常に少ないが、その僅かな時間に楽しかった日々が凝縮されている。絵里はもう一度、この日々に戻りたいと思った。恐らく零もこのようにみんなを導いてきたのだろう。

 

 

「そうね、私もにこと話がしたい。大切な親友だもの。力になるわよ希、一緒ににこを取り戻しましょう!」

 

「絵里ち……ありがとね」

 

「むしろお礼を言いたいのはこっちよ。にこのコト、疑ってしかなかったから。話し合おうなんて考えてなかったし」

 

「ふふっ、零君に聞かれたらもの凄く怒られそうやね」

 

「あぁ~、それあるかも。『仲間のコトを常に心に留めておけ!!』とか言われそう」

 

「じゃあ、にこっちをウチらの隣へ引き戻しに行こか」

 

「ええ」

 

 

 2人の決意は固まった。もう1人の親友を救うため、自ら闇へと足を踏み入れていく。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 現在授業真っ盛りの1年生教室。真姫は数学の授業をぼぉっと聞いていた。どんな教科でもテストで満点を取れる彼女だが、その中でも数学は大得意だ。もう予習はとっくの前に終わらしており、さらに復習も終わらせてあるという用意周到っぷり。最近、学校で習うより自分で学んだ方がいいと思っている。いかにも完璧を目指す真姫らしい。

 

 

ヴ ーヴ ー

 

 

(えっ!?誰かから連絡?なんで今なのよ!?)

 

 

 平日のしかも授業中、突然震えだした携帯に真姫は驚く。ポケットの中に閉まってあり、音は聞こえないので心配はないが、もしかしたらを考えて冷や汗をかくのが人間である。それは"完璧"な真姫も同じだ。

 

 

(凛のイタズラだったらどうしてやろうかしら……)

 

 

 幸いにも真姫の席は窓際であり、誰かに見られるコトも少ない。授業を聞いていても暇なので、こっそりと携帯を取り出し、連絡用アプリによって通知されていた内容を見る。

 

 

(え!?これって……?)

 

 

 

 

 花陽は後ろの方の席であり、真姫とは違って真剣に授業を聞いていた。いくらμ'sに起きているコトが深刻であれ、今騒いだり考えたりしても仕方がないからだ。赤や青のペンを自在に使いながら綺麗にノートを取っていく。授業中に集中力で言えば、真姫よりも花陽の方が上かもしれない。

 

 

ヴ ーヴ ー

 

 

(あっ、誰かから連絡かな?でも今は授業中だし、もしかして凛ちゃんのイタズラ?)

 

 

 凛が2人からそう思われるのも無理はない。以前、授業中に凛は2人にイタズラで連絡通知を送りまくっていたからだ。マナーモードにしていなかったら、携帯の音が教室中に鳴り響いて悲惨なコトになっていただろう。

 

 

(凛ちゃんだったら注意しないといけないし……一応確認を)

 

 

 花陽は申し訳なさそうに携帯を取り出し、真姫と同じく連絡用アプリによって通知されていた内容を見る。

 

 

(えぇ!?ホントに……?)

 

 

 

 

 凛の席は教室の半分より少し前の廊下側だ。いつもなら真姫とは違う意味でぼぉっと授業を聞いているのだが、朝から作戦会議で頭を働かせていたためか、珍しく居眠りはしていない。もちろん真姫や花陽にイタズラなどもしていない。

 

 

ヴ ーヴ ー

 

 

(け、携帯鳴ってる!?もしかして真姫ちゃんのイタズラかにゃ!?)

 

 

 お互いを無駄に犯人扱いしながらも、2人とは違って躊躇なく携帯を取り出して通知を見る。もしバレたらというコトを考慮してない訳ではないが、単純に授業を聞くのが暇だからである。

 

 

(嘘……でしょ)

 

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

「ここか……まさに寂れた工場跡って感じね」

 

「にこっち、どうしてこんなところに呼び出したんやろうか?」

 

 

 にこが指定した場所は、絵里の言う通り寂れた工場跡という言葉がピッタリだった。敷地内に入ってみると、工場というよりかは倉庫に近い。中身が入っているかも分からない大きなコンテナがあちこちに放置され、雨風を受けて流れ出した謎の黒い液体が水たまりのように広がっている。

 

 

ガラガラガラ

 

 

 2人は扉を開けて内部に侵入する。大きな扉だが大半が破損していたので、もはや開けるというよりどかしたと言った方がいい。その扉の下から黒い液体が内部に侵食しているほどだ。

 

 

「早かったわね。他に誰かいる気配もないし、上出来ね」

 

「そう、お褒めに預かり光栄だわ」

 

 

 にこは倉庫内のちょうど真ん中を陣取っていた。座っているドラム缶が他のモノに比べて綺麗なコトから、絵里たちが来る前にそれだけ掃除したのだろう。建物に入ったといっても屋根に空いている穴から日光が大量に注ぎ込んでいるので、周りを確認出来るぐらいには明るい。

 

 

「にこっち、偉いご機嫌やね」

 

「どんな目をしてたらそう見えるのよ……」

 

「分かるよ、1年生からの付き合いやもん」

 

「……」

 

 

 にこは顔をしかめた。人間本当に上機嫌の時は、それを隠そうとしても自然と顔のどこかに現れてしまうものだ。眉毛や口元の角度、頬の弛み具合。それは顔だけに限定されないかもしれない。普通の人間なら分からないかもしれないが、今までにこと一緒にいた希なら、彼女の僅かな仕草の違いがよく分かる。

 

 ただ今のにこが上機嫌になるというコトは、希たちにとっては不利益なコトなのだろう。計画が思い通りに進み、自分自身に酔っているのだろうか。それは彼女にしか知りえない。

 

 

「さっきからなに上を見てキョロキョロしてるのよ、絵里」

 

「別に……」

 

「心配しなくても大丈夫よ。何も仕掛けたりしてないから」

 

「そう……それなら安心ね……」

 

 

 もちろん絵里は安心などしていない。いくら親友の言葉だからって、『はいそうですか』とホイホイ信じるつもりもない。それは希も同じだ。この3人で一緒にμ'sに帰る。だからこそ警戒を強め、確実ににこを取り戻さなければならない。

 

 

「約束通り2人で来たから話してもらおか。穂乃果ちゃんにことりちゃん、海未ちゃんのコトを…………そしてにこっちの気持ちも」

 

「……なによそれ」

 

「ウチらがココに来たのは穂乃果ちゃんたちの情報を知りたいからっていうのもある。けど、一番の目的はにこっちを救うためなんや」

 

「私を……?」

 

「そうよ!!私とにこが一緒にいた時間は、希と比べれば遥かに少ない。だけど今は同じμ'sのメンバーで、一緒に笑い合える親友!私たちはそんなにこを取り戻しに来たのよ!!」

 

 

 2人はここへ来る前に決意した心を最大限発揮し、にこの心に問いかける。もちろんこれだけで元に戻ってくれるとは思っていない。だが絶対に届くハズだ。希は絵里との対峙で彼女の心を開けなかった失敗を何度も思い出す。しかしそのあと零たちが絵里を救ってくれた。自分1人では上手くいかなくても絵里となら、親友と力を合わせればきっともう1人の親友にも届く。絵里の想いも同様だ。絵里1人だけでは到底にこを説得するななど出来ないだろう。

 

 

 

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

 

「にこ……?」

「にこっち……?」

 

 

 突然のにこの高笑いに、2人は言葉に詰まる。

 

 

 

「にこを救うですって?とんだ勘違いしてるわね、笑っちゃうわ!!」

 

「それって……?」

 

 

 

 

 

「いーい?にこはもう救われているのよ!!とっくの前に、救ってもらっているの」

 

 

 

「「え…………?」」

 

 

 

 μ'sの先輩3人の対決は、ここから始まる……

 

 

 

 




遂に3年生組が対峙しました。アニメでもこの3人だけという描写は少なく、1、2年時の交友関係もあまり明らかではないのでかなり捏造設定が入っています。

第三話の最後から、絵里と希がにこに敗北している描写があるので所謂負け確定になってしまっているのがツライところです……それでも絵里たちを応援してあげてください。



次回は前半で3年生組の対決、後半で零視点と合流予定です。
1年生組?彼女たちにはこの後重要な役割が!?
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