ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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遂に最終章!?
初めはこの人との対決だ!!



※『日常』をいつもの18時ではなく0時に投稿してしまいました。もし『日常』も読んでいる方がいましたら覗いてみてください。


第六章
第一話 ‐狂気の大和撫子‐


 

「あぁ~……頭が痛い」

 

 

 朝から頭がパンクするぐらい脳を働かせていた俺は、再び学院へと戻ってきた。授業を勝手に抜け出してきた手前、先生に嘘の事情を話さないといけないし、何より訳も話さず解体作業をやらせた真姫たちに本当の事情を話さなければならない。それに解体したモノも回収する必要がある。ちなみに絵里、希、にこの3人は学院を早退してもらった。休んで欲しいという理由もあるが、そもそも制服がボロボロになっていて授業どころではない。

 

 

「海未がちゃんと先生に伝えておいてくれればいいんだが……」

 

 

 学院に戻る以上授業は受けなければならない。正直な話、μ'sが再結成出来るのなら授業の1日や2日サボっても構わないのだが、何となく今まで皆勤賞である学院生活の経歴に傷を付けたくない。それに今こそ、海未から穂乃果やことりの事情を聞くべきだろう。

 

 

 などと思っている間に校門前に到着した。1日に2度学校に来るとは珍しい日もあったもんだ。もうこれっきりにして欲しいけどな。

 

 

「もう昼食か……丁度いい」

 

 

 やけに学院が騒がしいと思ったら、丁度4時間目が終了して昼食の時間であった。これなら今学院に戻って来ても怪しまれずに済む。とは言うもののカバンは教室に置きっぱなしだから、クラスメイトからは『午前中何してたんだよ』と言われかねないけど。

 

 

「おーーーい!!零くーーーん!!」

 

「凛!?」

 

 

 こっそり学院に侵入しようと思ったが、凛に見つかってしまった。隣には真姫と花陽もいる。たぶん俺を待ち伏せしていたんだろう。授業中突然あんな連絡をしたら、そりゃあ理由を聞かずにはいられないもんな。

 

 

「待ってたわよ、零」

 

「真姫……怒ってらっしゃる?」

 

「当たり前よ!!急に『学院に爆発物があるから解体してくれ』って、何の冗談かと思ったわよ!!そのあとで突然秋葉さんから解体の手順まで教えられて……頭がパンクしそうだったわよ!!」

 

「初めは半信半疑だったけど、実際に零君の言われたところに行ってみたら本当にあってビックリしたよ~……」

 

「一から十まで、何があったのかぜーーんぶ聞かせてもらうにゃ!!」

 

「お前らには本当に感謝してる。今から話すよ」

 

 

 真姫たちがいなかったら、この学院が炎の海になるか絵里と希がさらに危険な目に遭っているかのどちらかだっただろう。もしそうなっていたら絵里たちを信じて学院を守っていたかもしれない。絵里たちならそう望むハズだ。だがそんな心配をしなくても、あの2人だけでにこを取り戻せたけどな。俺がいなくても大丈夫だったみたいだし。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「まさかにこちゃんがそんなコトに……」

「いっぱい不安を抱えていたんだね……」

「でも、帰ってきてくれてよかったにゃ!!」

 

 

 俺は真姫たちに、午前中に起きていた出来事について知っている範囲の情報をすべて伝えた。もちろんにこが背負っていた不安や葛藤も。あまり人の悩みを勝手に他人に話すものではないが、コイツらなら伝えても大丈夫だと自信を持って言える。3人共俺の話を聞いて三者三様の反応を見せるが、にこが元に戻ってきたと聞いて最後はみんな笑顔になった。

 

 

「それで今絵里たちは?」

 

「一旦家に帰って休憩中。流石にボロボロのまま学校を彷徨く訳にはいかないだろ」

 

 

 理由を俺たち以外の誰かに聞かれたら困るしな。それにあの3人には積もる話もあるだろうから、今日だけは俺たちに任せてもらった。幸いにも明日は祝日で学院も休みだが、穂乃果たちについてはなるべく早めになんとかしたい。もちろん可能ならば今すぐにでも。

 

 

「そうだそうだ!お前らにまだ言ってないコトがあったんだ」

 

「ん?なに?」

 

「真姫、お前先週木曜日の放課後だけ、記憶が曖昧なんだろ?」

 

「え、えぇ。あなたに言われたコトは全然思い出せなくて……」

 

 

 先週の木曜日は俺が希に拉致監禁された日だ。あの日、絵里と希の計画では事態に気付いた真姫を公園前で絵里が妨害するという算段だったらしい。だが実際には真姫の姿は公園にはなく、なぜか学院にいた。それについては絵里も不思議に思ったという。

 

 

「それはにこの仕業だったんだよ」

 

「に、にこちゃんの!?」

 

「ああ。お前は間違いなく公園で絵里に倒された。だけど絵里はお前の数分間の記憶を消したあと、お前を放置してその場を去ったと言っていた。つまり本来お前は学院にはいないハズだったんだ。そのお前を回収したのがにこだ」

 

「それは分かったけど……どうしてにこちゃんはそんなコトを?」

 

「まだお前が使えるという価値を感じていたんだと。あの時のにこは人を使うコトしか考えてなかったみたいだし」

 

 

 ちなみに希の部屋に向かっていた絵里に電話を掛けて、学院に帰ってこさせたのもにこらしい。あの状況で絵里と遭遇していたらどうなっていたのだろうか?その時は真姫も凛も花陽もいなかったので、確実に敗北していたと思う。

 

 

「それに凛と花陽に、西木野総合病院で起きたコトを伝えたのもにこなんだろ?」

 

「うん、でもあの時は凛たちも冷静じゃなかったから……」

「それを聞いて、私たちさらにおかしくなっちゃったよね……」

 

 

 土曜日、俺が凛と花陽に拉致監禁された日、この2人は俺が真姫に監禁されていたコトや穂乃果たちが病院内に侵入していたコトも知っていた。それもにこの仕業で、凛たちに教えたのは彼女だった。俺の携帯に発信機を付けていたので、何処にいるのかは一目瞭然だったのだろう。

 

 

「俺が今知っているのはこんなところかな」

 

 

 これで大体明らかになっていない謎は解けたと思う。あとはあの3人だ。穂乃果、ことり、海未…………μ'sの元祖にして原点。もちろんアイツらを取り戻さなければμ'sの再結成は出来ない。だがアイツらについては今まで以上に懸念だらけだ。真姫たち1年生組も、絵里たち3年生組も、心に闇を抱えていたためそこを振り払ってやるコトで解決してきた。目の前に明確な答えがあったがゆえの結果だ。

 

 しかし、あの3人は違う。もし今の穂乃果たちが本当に"歪んだ愛情"だけで構築されているのだとしたら、そこに俺たちが付け入る隙は何処にもない。つまり絵里たちのように不安や悩み、葛藤などが存在していないので厳しいというコトだ。ただ俺への愛情だけでアイツらの心が満たされているならば、それをどうやって取り除けばいいのだろうか?

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 

 教室へと戻って来た俺は、まず穂乃果とことりの存在を確かめた。出席簿を確認すると、やはりと言うべきか欠席となっている。どうやらすんなりとは会えないみたいだ。そうなったら仕方ないが海未に事情を聞くしかない。だが今の海未も穂乃果たち同様に危険な状態だ。知っていたとしても素直に話してくれるかどうか……

 

 

「零!!」

 

「海未……」

 

「さぁ、話してもらいますよ!!午前中何をやっていたのですか?」

 

「そ、それは……放課後でもいいか?まとまった時間が欲しいんだ」

 

「……いいでしょう。ですが洗いざらいすべて話してもらいます。あなたと私の間に隠し事など不要ですから……」

 

 

 ただ一人、教室で異彩を放っている。教室にいる生徒の中に海未の変化に気付いている者はいない。周りには何人もの生徒がいるにも関わらず、まるで彼女と俺だけがその空間から切り取られ別次元にいるようだ。それぐらい海未は恐ろしく変化していた。

 

 

「ではまた放課後」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 それだけ言って海未は自分の席へと戻っていった。今朝、学院の廊下で俺を壁に追い込むぐらい迫ってきた海未とは大違いだ。今はかなり冷静なように見える。穂乃果やことりと違って、ある程度感情のコントロールが出来ているのだろうか?あの2人は公衆の面前でも容赦なく俺に引っ付いてくるが、彼女はしてこない。その辺の良識は弁えているみたいだ。

 

 

 

 そして今日の授業がすべて終了し、放課後となった瞬間に俺は腕をガッチリと掴まれた。もちろんだがその相手は海未だ。もう既に笑顔を浮かべているが、その表情からは黒さしか感じられなかった。

 

 

「さぁ、行きますよ!」

 

「い、行くって何処に!?俺はまだ学院で用事があるから、ここからあまり出たくないんだけど……」

 

「私の家に行きましょう。今日は両親が不在なので安心してください。そうです、晩御飯も一緒に食べましょう!!それがいいですね!!零と2人きりで晩御飯、なんて充実した生活なのでしょう……」

 

 

 俺を無視して次々と今日のプランが決められていく。なんとか腕を振りほどこうにも、いつの間にか腕を絡められていたので無理矢理引き剥がすコトも出来なくなっていた。むしろこっちが抵抗すればするほど海未の力が増していく。

 

 

「離せ!!そんなに引っ張らなくても歩けるから!!」

 

「嘘ですね。離したら逃げるに決まっています。それに愛するもの同士、一緒にいたいというのは当然の欲求でしょう?」

 

「お前……」

 

 

 どうやら海未には既に完成された未来設計図があるみたいだ。俺の意見など全く聞き入れず話が進んでいく。この調子の海未を止めるコトなど出来ないので、仕方なく海未の家に向うコトにした。真姫や絵里たちにはまた連絡を入れておこう。とりあえず行くのは俺1人でいい。俺以外の人がいると暴走しかねないからな。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「それでは待っていてください。今から夕飯を作りますので」

 

「あぁ……」

 

 

 結局俺は海未に連行され、無理矢理自宅へ連れてこられた。よく考えてみれば、今まで海未の家には来たコトがない。彼女の言葉遣いからも分かる通り、かなり規律を重んじる家系らしい。そのせいか家は外から見るだけで神経が研ぎ澄まされそうで、中に入れば汚れが1つもない清潔な部屋ばかり。家具や絵画もピシッと揃えられていて、数ミリの傾きもない。この家の床にただ座っているだけで緊張してしまう。

 

 

「ん?あれは……」

 

 

 俺は棚から1つの分厚い本を取り出す。背表紙に名前はないがこの分厚さと覆っている特有のビニールから見て、これはアルバムだと確信した。

 

 

「やっぱりそうか……勝手に見るのは癪だけど……」

 

 

 ずっと思っていたコトなのだが、俺は彼女たちの過去を詳しく知らない。穂乃果とことり、海未の3人が昔からの幼馴染であるというコト以外にはなにも。僅か半年前に廃校の張り紙を見た時が始まりで、彼女たちとの思い出はまだ1年にもなっていない。俺はそっとアルバムを開けてみた。

 

 

「家族との写真に、穂乃果とことりとの写真……それぐらいしかないけど、とても楽しそうだ」

 

 

 写真の海未はどれも純粋無垢な笑顔を浮かべていた。この笑顔はつい最近まで見られた顔だ。でも今の笑顔は純粋無垢からは程遠くなってしまった。彼女たちの本当の笑顔を見たり思い出す度に自分の心が痛くなる。俺が原因なのか、とまた考えてしまう。

 

 

「ん?これは……?」

 

 

 これもアルバムのようだけど、やけに他のアルバムとは離れた位置に置いてあった。俺は何気にそのアルバムを開けてみる。

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

バタン!!

 

 

 

「なんなんだ……今の……」

 

 

 そのアルバムの中身を見た瞬間、俺は乱暴にそれを閉じた。そのアルバムの写真は今までのアルバムの写真とは180度違う。1ページ1ページぎっしりと写真が詰め込まれていて、その写真に写っているのはどれも同一人物だった。

 

 

 

「俺の……俺の写真しかない……」

 

 

 『約3年分の写真をアルバムにしまうことができます!!』と、このアルバムの帯に書かれているのだが、この半年間の写真だけでアルバムが満たされている。しかも俺の写真だけで構成されていた。希のように隠し撮り写真はないものの、どうやって撮ったのか分からないような写真が大量に詰め込まれている。しかもアルバムのページが所々汚れているというコトは、もしかしてアイツはこのアルバムを使って何かしているのか…………想像したくもない。

 

 

「これは閉まっておこう。そして見なかったコトにしよう……それがいい」

 

 

 いくら自分の写真であれ、自分以外の人が大量にそれを所持していると知ると、それがいくら親しい間柄であっても一気に気味が悪くなる。今まさにその状態だ。

 

 

ガラガラガラ

 

 

「お待たせしました」

 

「お、おう……」

 

「私の顔になにか付いてますか?」

 

「い、いや……別に……」

 

 

 いつの間にかかなりの時間が経過していたみたいだ。驚き過ぎて今から夕飯を頂くコトすら忘れていた。海未が持っているお盆にはふっくらと柔らかそうなオムライスが湯気を立てている。

 

 

「オムライスか……」

 

「はい。あなたが好きな料理ですから、頑張って練習したんですよ」

 

「そうか……じゃあ頂くよ」

 

 

 俺はスプーンで卵とチキンライスの比率を黄金比になるようにすくい上げ、冷まさず口へ運ぶ。どれだけ海未が変化しようとも、料理の腕だけは変わってないようだ。初めは料理に変なモノを混ぜていないか警戒していたが、見た目や匂いでそれはないと判断した。姉さんの研究の手伝いをしていたコトもあったから、変な薬品が混じっていたらすぐにわかる。

 

 

「どうですか?」

 

「あぁ、とても美味いよ」

 

 

 海未はホッと胸をなで降ろした。

 

 

 あれ?海未の右人差し指、包帯が巻いてある。しかも少し赤く滲んでいる。もしかして包丁で怪我でもしたのか?

 

 

「海未、その指どうしたんだ?」

 

「これですか?あなたに私を味わってもらおうと思いまして……つい」

 

「は……?も、もしかしてお前……」

 

 

 

 

「はい、私の血を入れておきました。美味しいと言ってもらえて嬉しいです!!」

 

 

「な……に……」

 

 

 この……このオムライスに海未の血が混入している!?俺は今それを食べてしまったのか!?味はオムライスの味しか感じず、美味しかったらそのまま晩御飯として頂こうかと思っていたのだが……

 

 

「零が私の血を……フフフフ……美味しいと言ってくれました……やはり愛の味は偉大ですね♪」

 

 

 海未は自分の世界に入り浸っている。ちょっとやそっとのコトでは帰ってはこないだろう。

 

 

「穂乃果やことり以上だな……お前」

 

「……」

 

「海未……?」

 

 

 自分の世界に酔いしれていた海未は、突然黙り込んでしまった。俯いたまま表情を見せず、ただ沈黙している。俺の問いかけにも反応しない。1つ分かっているのは、明らかに触れてはいけない何かに俺が触れてしまったというコトだ。

 

 

「零!!!!」

 

 

「海未!?ぐっぅ!!!」

 

 

 海未は俺の首に両手を伸ばし、そのまま力強く締め上げる。俺の身体は外界との接続を遮断され、呼吸による循環が行えなくなった。

 

 

「なぜ今……なぜ今穂乃果とことりの名前を出したのです!!!!今は私と一緒にいるんですよ!!!!他の女は関係ないじゃないですか!!!!」

 

 

「がぁ……はぁ……」

 

 

 首を締め上げられ声が出せない。なんとか海未の腕を掴み抵抗するも、呼吸が出来ないという生物上最大のピンチの前では思うようにいかない。海未の手の力はとどまるコトはなく、次第に力を強めながら俺の首を握り締める。

 

 

 容赦など、一切ない…………俺はただ、怒りに満ち溢れた海未の目を見つめるコトしか出来ない…………

 

 




ヤンデレと言えばこんな展開が王道ですが、あえてこの時まで取っておきました。是非海未にこの展開をやってもらいたかったのです。


ということで第六章がスタートしました。今回は最初からクライマックスで飛ばしていきます!
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