ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

41 / 51
やっと行方不明となっていた穂乃果が登場。
もちろん他のμ'sメンバーも随時登場予定です。

誰も脇役なんかにさせません!!


第四話 ‐奈落の太陽‐

 提示された条件は2つ。1つ目は自分が指定した場所へ行くコト。そこに行けば穂乃果の安否が確認出来るらしい。簡単なように見えるが、向こうが指定した場所へわざわざ赴くのは自殺行為に等しい。2つ目は他の誰にも連絡しないコト。誰かの気配があった時点で穂乃果を襲うと脅迫された。普通に考えて、こちらから罠へと向かうのは正気の沙汰とは思えないだろう。だけど誰かが行くハメになる。それが今回は自分たちだっただけのコト。凛と花陽の2人は街外れを駆け抜ける。

 

 

「この辺は建物が密集していて道が分かりにくいにゃ~……」

 

「もう少し分かりやすい地図を送ってくれればいいのにね」

 

 

 ことりが送りつけてきた地図は非常に見づらいモノだった。建物自体は灰色で表しているものの、高低差や形状などは記されてない。従って自分たちがどの建物の近くにいるのかが判断しづらく、現在地が正確に掴めない。とにかくことりが指定した建物に向かってただ突き進むしかなかった。

 

 

「ここがどこか、凛全然分かんないよ!!」

 

「私も、もう知ってる場所じゃないや……」

 

 

 そもそもこの地域は住宅街やマンション、商業ビルなどが立ち並び、他の地域から高校生がやって来るような場所ではない。この地域外の人が土地勘に優れないのも無理はなかった。

 

 

「しかも何でことりちゃん、先に行っちゃたんだろう?凛たちを案内してくれてもいいのに」

 

「他の用事があったのかな?それとも、私たちと一緒に行動してたらダメとか?」

 

「用事ってもしかして、真姫ちゃんたちにも会いにいくのかな?でもみんなを一箇所に集める理由って……」

 

「う~ん……とりあえず今は穂乃果ちゃんが心配だよ。とにかく急ごう!」

 

「うん!このままだと凛たちが先に着くし、穂乃果ちゃんを助け出してみんなを安心させてあげるにゃ!!」

 

 

 考えるよりまず行動。これが凛の行動理念(むしろ考えるのが面倒だと言った方がいいのか)だが、実は花陽もそうである。零のように格段に頭がいい訳でもない、真姫のように状況判断に優れている訳でもない。しかも凛とずっと一緒にいれば、自ずと自分の気づかない間にそうなってしまう。別に彼女はその理念が間違っていないと思っているし、変えたいとも思わなかった。まあ彼女がそう思い始めたのも自分の"強さ"を手に入れてからなのだが。

 

 

 穂乃果とことり。2人を救い出して元の場所へ帰る。μ's再結成のピースを探し出すために、2人はその隠し場所を目指す。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 西木野真姫も街を彷徨いていた。ただ彷徨いているだけではなく、零や親友に連絡を入れながら探し回っている。今日は作戦会議をするために、一旦絵里と希以外の人は別の場所に全員集まってから希の住むマンションへ行く予定だったが、如何せん集合場所への集まりが悪い。自分以外の誰も来ていないとは何事だ。零とにこは音信不通で、凛と花陽は遅れるとだけ連絡が来て後は音沙汰なし。ここまで同時に人が消えると不気味さを感じざるを得ない。

 

 

「もう……来ないなら来ないって連絡入れなさいよね、それに零も何回音信不通になれば気が済むのよ」

 

 

 もう何度目か分からない零の行方不明。大抵こういう時はいい展開ではないコトだけは確かだ。恐らくというより確実に誰かに捕まっているのだろう。可能性としたらことりか海未か。昨日の零からの連絡では、海未と会っていたらしいのだが進展はなかったという。そうなれば昨日接触していた海未が一番怪しい。自分なりの結果を導き出そうとしたが、目の前に見知った人物がいたのでそこで思考が途切れた。

 

 

「あれはにこちゃん?あんな物陰でコソコソして、どうしたのかしら?」

 

 

 真姫の目に飛び込んできたのは、建物の影に隠れているような素振りを見せるにこだった。誰かを監視しているのか、その目は一点に集中している。通行人が多いため、真姫側からは彼女が誰を監視しているのか検討が付かなかった。アイドル好きの彼女だ、もしかしてファンをしているアイドルのストーカーをしているのではなかろうか。そうであれば集合場所に来なかった理由も納得が出来る。とにかくそれを含め、にこに声を掛けるコトにした。

 

 

「ちょっと何してるの?」

 

「うぇっ!?ま、真姫!?驚かさないでよ!!」

 

「そんなコトより、どうして集合場所に来なかったの?もうとっくに時間過ぎてるんだけど」

 

「あっ!見失う!!」

 

「ちょ、ちょっとにこちゃん!?」

 

 

 にこは通行人を掻き分け、かつ監視対象に気付かれないように走り出した。真姫は何が何やら理解すらしていないが、とりあえず彼女の後を追う。そしてにこが再び建物の物陰に隠れたので、真姫も同じように続いた。

 

 

「もうっ!急にどうしたのよ!!」

 

「しっ!静かに!!」

 

「え……?」

 

「あれを見なさい」

 

 

 真姫は目線をにこの目と指の先へ向ける。それは1人の通行人だった。それもただの通行人ではない。自分がよく知る、自分の先輩、自分と同じμ'sのメンバー。

 

 

「う、海未……」

 

「そう。さっきから何処へ向かっているのかしら?」

 

「じゃあにこちゃんはずっと海未を追っていたの?遅れるって連絡もせずに」

 

「仕方ないでしょ。携帯弄ってたら見失うかもしれないじゃない。でもアンタが来てくれて良かったわ、絵里たちに連絡しといて。にこは海未を監視しておくから」

 

 

 いつの間にやら真姫もストーカーの一員として任命されていた。海未の様子がおかしいコトは既に零から聞いている。もちろん彼女もμ'sの大事な1ピース、救うべき人なのだが、真姫には1つ疑問に思うコトがあった。

 

 

「にこちゃん、海未にこだわってない?昨日電話した時も海未を必ず元に戻すって張り切ってたし」

 

 

 昨日の夜、穂乃果たち幼馴染組を除くμ'sメンバーでグループ通話を行った。真姫はその時に、にこが海未に固執しているコトを思い出したのだ。こう言っては本人に悪いが、ここまで気合を入れた彼女は自分が出会ってから初めて見る。それには何か理由があるのだろうか?

 

 

「海未がああなったのは、にこのせいなのよ」

 

「にこちゃんの?どういうコト?」

 

「にこがおかしかった頃、まぁおとといだけど、にこが海未の心を焚きつけたの。海未を利用しようと思ってね。だからこれはにこの責任。海未は絶対ににこが元に戻してみせる」

 

 

 海未を利用して穂乃果とことりを始末するため、彼女の心を抉ってまで闇へ落としてしまった。だから責任は自分にある。文武両道な彼女は手強いかもしれないが、それでもやる。それが彼女に対し自分が今唯一出来るコトであり、にこ自身が彼女を取り戻さなければ、自分がμ'sの一員である資格はない。

 

 

「それなら私も協力するわ。あなただけだと危なかっしいもの」

 

「え……?」

 

「にこちゃんも海未も私たちの仲間なんだから、当然でしょ?」

 

「真姫…………ありがとね、頼りにしてるわ」

 

 

 にこは自分に引っ掛かっていた重りが軽くなったような気がした。それは零と絵里、希が自分を取り戻してくれた時と同じ感覚。やはり仲間の存在が自分を強くしてくれるのだと確信した。

 

 

「海未、アレ何を背負っているの?」

 

「多分だけど、弓と矢じゃない?外見からは気付かれないようにしてるみたいだけどね」

 

 

 海未は自分の背丈の少し低いぐらいのケースみたいなモノを背負っていた。にこの話ではそこに弓が入っているとのコトだが、彼女がそう断定するのには理由がある。おととい、にこが海未に会った際に背負っていたものと形状が似ているからだ。海未があの時とは違うケース(?)を背負っているのは、周りからあの時と同じモノを背負っていると周りに気付かれないよう、彼女の細心の注意だった。

 

 

「よし動くわよ」

 

「ええ」

 

 

 通行人が多いため、離れてしまうと簡単に見失ってしまう。2人は海未に見つからず、かつ見失わない最適な距離を保ちながら尾行を続けた。彼女は何処へ向かっているのか、それも同時に探りながら……

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 目が覚めると、俺の部屋がとってもファンシーになっていた。多分俺の部屋ではなくて別の場所に移されたんだろう。枕の隣にはクマさんやネコさんなどの動物の人形がたくさん置かれている。壁紙もピンクで家具は白や黄色、目がチカチカしてならない。そして、ご丁寧に俺の右腕は手錠でベッドの支柱に繋がれていた。とりあえず自分に掛けられていた布団と毛布をベッドの下に落とし、動ける範囲を広げる。

 

 そこで俺は普段着を着ているコトに気が付いた。昨晩ことりに襲撃された時はジャージだったから、彼女が着せ替えたに違いない。しかもご丁寧に靴下や靴まで履かされている。俺の足が地面に引きずられるのを考慮したのだろう。もちろん携帯などないため連絡が取れない。

 

 

「また監禁か……久しぶりだな。もう流石に驚かねぇぞ……」

 

 

 自分でも驚くほど冷静なのは、手錠で繋がれるのはもう3度目になるからか。監禁マスターと呼ばれるぐらいには閉じ込められている。しかもこれが日常茶飯事となっているので恐ろしいものだ。とにかく手錠を外さないとどうにもならないので、何か使えそうなモノがないか辺りをくまなく調べる。

 

 

「硬い針金状のモノなら何でもいいんだけど…………おっ!いいのがあるじゃん」

 

 

 枕の隣に置いてあったクマさん人形を手に取り、クマさんが装着しているリボンの留め具を引っ張って外す。リボンの部分は捨て、留め具を伸ばして釣鐘状にした。

 

 

「監禁マスターの俺を舐めてもらっちゃ困るぜ。あらゆる状況を想定して、脱出ルートぐらい予習してあるっての」

 

 

 普通に生活していれば微塵にも役に立たない知識だが、今の状況では俺の人生を大きく揺るがす。ことりの奴、これは完全に盲点だっただろうな。まさか勝手に手錠を外して一人で脱出するとは思うまい。

 

 俺とベッドを繋いでいる手錠は以前、凛と花陽によって拘束された時の手錠とは異なっていたが、形状などは似通っていてすんなりと外すコトが出来た。これからは安物の手錠じゃないくて高価な手錠を買うんだな。もう監禁は懲り懲りだけど。

 

 

「さてと、次はこの部屋から出ないと……」

 

 

 何とこの部屋、窓がない。完璧に俺を監禁したいなら窓がある部屋を選ぶハズはないので、この部屋は元々部屋ではなく物置か何かだった可能性もある。それにしては、ドアは一般家庭の部屋のドアみたいだ。手錠の外し方を知っているといってもピッキング技術までは持ち合わせていないため、外に出るのは簡単ではない。

 

 

「ドアを破るしかないか……でもその音でことりに気付かれたら?」

 

 

 もちろんだがこの部屋にことりはいない。だとしたらこの部屋の近くにいると考えるのが妥当だが、そうなると俺がこの部屋を出た時点で見つかってしまう。俺が勝手に部屋を出たとことりに知られれば、穂乃果の情報がぷっつりと途絶えてしまう可能性も否めない。ことりに見つからず、穂乃果と合流出来ればいいのだが……

 

 

 

 

タンタンタンタンタンタン!!!

 

 

 

「何だこの音!?」

 

 

 部屋の外から物音が聞こえた。これは……誰かが床を蹴っている音だ。しかもかなり乱暴に。それに段々と音が大きくなってきているというコトは、この部屋の方に近付いているのだろう。

 

 

 

 

タンタンタンタンタンタン!!!

 

 

 

 かなり近い。と言うよりもうそこまで迫って来ている。音を聞くに誰かが走って来たというのは明白だが、恐らくことりではない。ことりならこんな乱暴な音を立てて俺に聞かせる必要はないし、俺が気絶していた場合起きてしまうかもしれない。

 

 そして、その音が俺のいる部屋の前で鳴り止んだ。

 

 

 

 

ダンダンダンダンダンダン!!!

 

 

『零君でしょ!?この部屋にいるの!!返事をしてよ!!ねぇ!!』

 

 

 誰かに気付かれるとか、そんなの一切お構いなしと言わんばかりに足音の主がドアを思いっきり叩く。それにこの声は、俺がここに来た理由の第一候補。

 

 

「ほ、穂乃果か!?」

 

『やっぱり零君だ!!穂乃果だよ!!今開けるからね!!』

 

「お前、開けるってどうやって……?」

 

『こうやって、だよ』

 

 

バンッ!!バンッ!!

 

 

「!!!」

 

 

 穂乃果は鈍器のようなものでドアと叩きつけているのか、鈍い音が部屋中に響く。その力は凄まじいもので、一瞬にしてドアノブが破壊される。この光景をどこかで見たと思ったら、俺が真姫に監禁されていた時に助けてくれたのは穂乃果とことりだったな。

 

 

 

 

バンッ!!ドカッ!!

 

 

 

「零くーーーーーーーーーーーーん!!」

 

「うおっ!?」

 

 

 穂乃果はものの数秒でドアを破り、それと同時にドア破りに使ったと思われる鉄の棒を投げ捨て、俺の胸へと飛び込んで来た。その勢いで少したじろいでしまうが、彼女を何とかキャッチして体勢を整える。穂乃果は俺に顔や身体、色々なところをスリスリしながら快楽に浸りだした。

 

 

「零君会いたかったよ~♪零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君零君!!あ~~……この匂い久しぶりだぁ~~……」

 

「お、お前今まで何処にいたんだ?どうやってここへ来た?」

 

「気が付いたら独房みたいな部屋に入れられてたんだ。何とか出ようと頑張ってたら零君の匂いがしてね、その匂いの嗅いでぐぐーーんってやる気と力が漲ってドアを蹴破ったんだよ!!」

 

「え、えぇ……」

 

 

 俺の匂いって、そもそもこの部屋は密室状態でよほど強烈でない限り匂いは部屋の外へ漏れないと思うんだけど。それは俺の匂いが強烈だって言っているのか、いやいや流石にそれはないだろう。どんな活力が穂乃果に湧いたのかは分からないが、ことりがいない今がチャンスだ。穂乃果を連れてここから逃げるしかない。

 

 

「まぁ、詳しい話はあとだ。ここから逃げるぞ」

 

「…………それは出来ないよ」

 

「はぁ?どうして?早くしないとことりが来ちまうぞ」

 

 

 さっきまで俺に擦り寄っていた穂乃果は一歩後ろに離れ、俺に"笑顔"を向ける。

 

 

「それは出来ないんだよ、だって…………ことりちゃんを殺さないといけないから!!」

 

「ほ、ほの、か……」

 

 

 その"笑顔"は、みんなの上から光を照らす太陽のような"笑顔"ではない。まるで下から、奈落の底から闇に引きずり込むために待ち構えているような"笑顔"。ここまで明確な殺意を感じ取ったのは、今までのμ's引っ括めても彼女が初めてだ。穂乃果に湧き出ていた不自然な力は、彼女のその心によるものだろう。

 

 

「だから先に零君が逃げて。穂乃果はことりちゃんを殺してから行くから……」

 

「そんなコト、させる訳ないだろ!!」

 

「きゃぁ!!」

 

 

 俺は穂乃果の手を乱暴に握り、部屋を飛び出した。この状況も何度か経験しているが、未だに慣れないし慣れたくもない。しかも今回はいつも以上に俺自身が冷静じゃなかった。それにまだ俺は気付いていない……

 

 

 




穂乃果を監禁した結果……もの凄い殺人鬼として帰ってきましたとさ。
個人的には暴走する穂乃果を一番書きたかったので、これから楽しみです。



今後の予定としては次回、次々回でことりとの最終対決となります。

また『日常』の投稿ペースを落とし、こちらの投稿ペースを上げるかもしれません。もしかしたら『日常』『非日常』交互に投稿されない可能性がありますのでご了承ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告