ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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自分で言うのもアレですが……超展開過ぎた。
プロットや構想よりも、文字にしてみるとより鮮明になりますね。


第五話 ‐想定内の不測事態‐

 計画とは、ただその日に行うコトの予定を立てる、だけではない。例えば登山に出掛けるとすると、頂上までの道のりを全て網羅し、どの道を通って登山をするかがメインの計画に当たる。だがそれだけでは不十分。途中で怪我をしてしまった場合どのような対処を取ればいいのか、災害が起こった場合自分のいる場所から一番近い避難所はどこかなど、不測の事態が起きた場合の対処法を考えておくまでが計画である。登山のような命に関わるような計画ならば、力の入れるべきはむしろ『もしも』の事態の対応方法だろう。

 

 

 その点で言えば、ことりの計画は穴が存在しないと言っていいほど完璧だ。穂乃果や零を連れ去り監禁するという計画を実行する以前に、誰も殺さずに今日を迎えるという大前提があった。そしてそれは既に達成されている。穂乃果が凛を殺すため、夜道を徘徊していた彼女を制止し、海未が穂乃果に向けて放った矢を弾き返した。ここまでは『どの道を通って登山をするか』に当たる。

 

 

 その次、『不測の事態が起きた場合の対処法を考えておく』についてだが、これも自分が"想定した範囲内での不測の事態"ばかりだったので対処可能だ。具体的に言えば、零と穂乃果の脱出。凛と花陽に用件を伝えたことりは、既に彼らのいる建物に戻って来ていた。携帯の画面には、出口を探して走り回っている零と穂乃果が映っている。

 

 

 穂乃果が零の匂いを感知して、零が監禁されている部屋に無理矢理突撃するのは目に見えていた。彼女の良くも悪くも一直線という性格を分かっていたからである。しかしこれは想定していた不測の事態。

 

 

「さぁ、零くん始まるよ♪楽しい楽しいショータイムが!!」

 

 

 だからことりは動じない。むしろ自分の"思い通りの不測の事態"にワクワクしている。ここまでは予定調和。そしてここからさらに加速する。ことりが描く未来には、μ'sというグループもそのメンバーも誰1人存在しない。いるのは自分と零、ただ2人のみ……

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 真姫からの連絡を受け、絵里と希も街へと繰り出していた。海未の方はにこと真姫に任せてあるので、目下の目的は零、凛、花陽の捜索だ。零が行方不明になるのは日常茶飯事だが、凛たちまで同時に音信不通になっているコトに疑問を感じる。

 

 

「零と凛、花陽……3人一緒いるのか、それとも別々なのか……?」

 

「せめて誰か一人でも連絡してくれたら助かるんやけどねぇ……」

 

「連絡出来ない状況なのか、そもそも連絡する手段がないのか……全く分からないわ」

 

 

 日曜日に起きたμ's内の大抗争。その日、零や真姫たち1年生組は自分たちの頭をフル活用してその時の状況や、過去に起きたコトを分析して行動し、事態終息への鍵とした。彼らと同じようにすれば彼らの居場所も検討が付くのかもしれないが、それでは壁に突き当たる。

 

 そもそも穂乃果がことりに連れ去られ、海未はにこたちが監視している時点で零たちと接触しているであろう人物は1人しかいない。南ことり。だが昨日、零たちが必死に彼女の情報を探しても有力な情報は見つからなかったのに、自分たちで考えてどうにかなる問題ではなかった。

 

 

「でも、このまま闇雲に探すのも骨が折れるわね」

 

「どうする?ことりちゃんの家に行ってみる?もしかしたら何か掴めるかも」

 

 

 絵里と希は雲を掴むような捜索を一度諦め、零やことりに関係ありそうな場所を回るコトにした。一人暮らしの彼の家に行っても無駄足になるかもしれないので、先にことりの家へ向かう。

 

 

「ことりか……今思えば私、ここ数日間ことりが何をしていたのか、あなたたちに聞かされるまで全く知らなかったわ」

 

「裏で色々と動いてるみたいやから、絵里ちが知らへんのも無理ないよ。休日に一度出会ったウチだって、ことりちゃんが何を考えているのか分からへんかったし……」

 

 

 日曜日に裏路地で出会った時も、ことりは一切物怖じせず希を襲って穂乃果を誘拐した。まるで初めから計画が立てられていたかのような。それに希は、あの時ことりに言われたコトが今でも記憶に残っていた。

 

 

『誰も零くんにはなれない』

 

 

 希は零のようにみんなに手を差し伸べて救い出そうとした。しかしことりを逃がし、穂乃果は連れ去られ、絵里に後一歩届かなかったコトは記憶に新しい。自分ではみんなを助けるコトは出来ないのか、そう思ってしまう時がある。

 

 

「希?どうしたの、難しい顔して……?」

 

 

 絵里は希の表情を見て彼女の面持ちを読み取ったのか、希の心に語りかけるように声を掛けた。やはり3年間一緒にいた親友だからだろうか、お互いの気持ちは表情だけで感じ取れるぐらいの絆の深さである。希は思い切って絵里に相談した。この前ことりに言われたコト、そして自分の考えを。

 

 

「ことりがそんなコトをね……」

 

「ウチ、零君に憧れてるところがあって、みんなを導けるのがすごく羨ましいんや。だけど、ウチもその零君みたいになろうって行動しても全然上手くいかなかった……」

 

 

 転校を繰り返してきた希にとって、自然と仲間を作り、その仲間を導ける零は憧れである。彼女は憧れを憧れのまま放置しておくほど引っ込み思案ではない。自分からこの憧れの人を目指し、その人と同じようになるため自ら行動する。だがそれをことりに否定されてしまったのだが。

 

 

「それは……私もことりと同じ考えだわ」

 

「やっぱり……」

 

 

 例えばプロ野球選手になりたいと思い、憧れのプロ野球と同じ練習メニューをこなせばその人と全く同じ舞台に立てると言えばそうではない。そのプロ野球選手には食事や健康管理といった内面的なモノから、情熱や闘魂といった精神面など誰にも見せていないであろう苦労や自分の誇りを持っているハズだ。それを知らないのに練習メニューだけを模倣しても、プロ野球選手の足元にすら及ばないだろう。

 

 

「でもね、希には希なりの考えや想いがあると思うの。零になる必要はない。みんなを助けたい、救いたいって気持ちが重要なんじゃない?」

 

「絵里ち……」

 

 

 零には零なりの考えや想いがある。そして希には希なりの考えや想いがある。『みんなを救い出したい』『μ'sを再結成したい』という終着点は同じでも、そこまでに至る想いには微妙な差異がある。その僅かな差異で零と希の行動も異なってくる。だから零にはなれない。自分が強い想いを持っていれば持っているほど。

 

 憧れのプロ野球選手が抱く情熱と、自分が抱く情熱は確実にどこかで異なる。その自分の情熱は、誰かの情熱と似るコトはあっても決して同じではない。じゃあどうすればいいのか。自分の意思を強く持って、憧れの人を目指せばいい。

 

 

「私たちが零になろうと思ったら、零の考えや想いまで模倣しないといけないでしょ?そんなのは無理よ。それで行動したって失敗するだけ。だってそれは零が"自分の意思"に従っている行動なんだから。私たちの意思じゃないわ。それこそことりの言葉と同じ、自己満足よ。そう自分を偽っているだけ。希は確固とした意思を持っているんだから、それに従えばいいと思うわよ」

 

「絵里ち……ウチ、絵里ちと親友でいられて本当によかった」

 

「なっ!?急にどうしたの!?」

 

「とってもスッキリしたって話!!やっぱ打ち明けて正解やった」

 

「あなたの心が晴れたのなら私もそれで満足。これで希に助けられた借りは返したかな?」

 

「借り?絵里ちそんなコト思ってたん!?」

 

「うそうそ♪」

 

「も~う!!堪忍や!!」

 

 

 希の心から暗雲は消え、遂に快晴となった。これで準備は万全。μ's再結成までラストスパートだ。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 内部は商業ビルのような小汚い建物なのだが、窓がどこも封鎖されていて外の景色を確認するコトが出来ない。これもことりの仕業だろう。俺は穂乃果の手を引きビルからの脱出を目論むが、内装が迷路のようになっていて階段を見つけるのも一苦労だ。エレベーターに乗れば閉じ込められる危険性があるので使用してはいけない。

 

 

「どんな構造してんだよこのビル。設計段階から間違ってるぞ……」

 

「零君に手、握られてる……ヘヘヘ……エヘヘへ……暖いなぁ」

 

 

 穂乃果はさっきからずっとこの調子で全く役に立たない。緊張感のない奴め、ことりに見つかったらどうするんだ。もしことりと出会ってしまった場合、穂乃果はことりに襲いかかるだろう。ことりももちろん反撃体制に入るハズだ。流石の俺でも、2人を同時に止めるコトなんて出来ない。3人の内、誰かの屍が転がってしまうだろう。

 

 

「おい、もうちょっと早く走れないのか?今まで監禁されていたから無理言うかもしれないけどさ、ことりが来たら面倒だ」

 

「爪をギューって押し込めば、穂乃果のマーク付けられるかな?でもでも、零君の綺麗な手に傷付けるのは恐れ多いよ!!」

 

「なに恐ろしいコト考えてんだ……それよりさっき俺がいったコト聞いてた?」

 

「ことりちゃん?ことりちゃんなんて出会った瞬間に殺すから安心してね♪零君には指一本触れさせないから」

 

 

 もうコイツは戦闘狂すぎて俺の話を聞く気などなさそうだ。だとしたら、早急にコイツだけでもここから脱出させないと。狂った2人を止めるのは俺一人では無理だ。

 

 

 

 

 

 

「じゃあご希望通り、お呼ばれしちゃおうかなぁ~♪」

 

 

 

 

「!!!」

「……ことりちゃん」

 

 

 

 俺と穂乃果の後ろの曲がり角から、ことりが気配なく現れた。口ぶりからして影で俺たちの会話を聞いていたのか、それともこの建物自体がことりの占領下にあるのか。どちらにせよ、考えていた最悪の事態になってしまった。穂乃果は俺の手を引きちぎるかの如く握り締める。その力だけで穂乃果に宿る怒りが垣間見れた。

 

 

「やっぱりことりの思った通り、脱出しようとしたね。でももうこれまでだよ」

 

「穂乃果……お前は逃げろ」

 

「えっ?」

 

 

 現在、俺を挟む形で穂乃果とことりが立っている。通路は一本径、つまりことりと反対側に逃げればことりは俺が邪魔で穂乃果を捕まえるコトは出来ない。さっきも言ったが、一番最悪なのはここで穂乃果とことりがぶつかり合うコトだ。それを避けるためにも穂乃果を逃がすしかない。

 

 

「イヤだよそんなの!!ことりちゃんを殺すまで、ぜっっっったいにここから出ない!!」

 

「そんなの無理無理♪」

 

「何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も穂乃果の邪魔ばっかりして!!もう許さないんだから!!今度こそ鶏肉にしてやる!!!!」

 

 

 

 

「いいから俺の言うコトを聞け!!!!!!」

 

 

 

 

「れ、零君……?」

 

「今は俺の言うコトを聞いてくれ、頼む」

 

「っ……」

 

 

 穂乃果は何も言わずに去っていった。これで俺たち2人きりになれたので一先ず安心だ。問題はここからなんだけどな……

 

 

「随分と乱暴だね。久しぶりに聞いたよ、零君があんなに怒るところ」

 

「アイツには悪いコトをした。でも、最悪の事態を回避するにはそれしかなかった」

 

 

 こう言っては穂乃果に申し訳ないが、俺が強く言えば彼女は言うコトを聞いてくれると思った。逆に言えばそれを利用しないと最悪の事態を回避出来なかっただろう。しかしこれも賭けだった。もしあのまま穂乃果が俺の言葉を無視してことりに突っ込んでいったら、間違いなく俺に打つ手はなかったからな。無我夢中で2人を止めるしかない。

 

 

「穂乃果ちゃん逃げちゃったけど、それも想定してなかった訳じゃないからまぁいいか。今は零君をことりのモノにするのが先決だよね~♪」

 

「穂乃果は俺を呼ぶために餌だったのか……それに、俺は誰のモノにもなるつもりはない」

 

「う~ん、それだけじゃないんだよね~、とりあえずこれ見てよ」

 

 

 ことりは自分の携帯を俺の足元まで滑らせる。その画面には動画が映し出されていた。そしてその動画に映っている人物は……

 

 

「凛!!花陽!!」

 

 

 携帯の画面から音声が聞こえてきた。

 

 

『ダメだにゃ~、どこの扉も開かないよ~。ことりちゃんの地図では、確かにこのビルだったのに』

『ことりちゃんもいないし、ここから出られないと穂乃果ちゃんも探しに行けないね』

 

「おい!!お前ら何してんだ!!」

 

「無駄だよ。こっちから向こうに声は聞こえないから」

 

「アイツらになにした!?」

 

「このビルのエントランスホールに閉じ込めただけだよ。すべての鍵をオートロックにして、外にも他の部屋も行けないようにしてね」

 

 

 あらかじめこんな映像を撮れるわけがないので、これは確実にライブ映像だろう。だったらなぜことりはこんなコトをしている?俺を自分のモノにしたいだけではないのか?色々考えを巡らすものの、凛と花陽の動向が気になってそれどころではない。

 

 

「今、ここでエントランスホールの天井を落としたら、どうなると思う?」

 

「な、何言ってんだ……お前……」

 

 

 突然ことりが訳の分からないコトを言い出した。落とす?天井を?そうなれば凛と花陽が……でもこれは多分……

 

 

「そ、そんなハッタリで俺が屈するとでも思ってんのか?」

 

「そぉ~お?じゃあ落とそうかな?」

 

 

 ことりの邪悪な覇気は最高潮に達している。本気だ、コイツは本気で凛と花陽を殺そうとしている。しかも俺の目の前で、仲間を…………携帯の画面からは凛と花陽の声が聞こえている。

 

 

『う~んこっちも開かない。凛ちゃんそっちは?』

『こっちは……』

 

 

「や、やめろ!!!」

 

「やめないよ、はいポチっとな」

 

 

 

 

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

 

 

 

 

 凛が喋りきる前に、ことりはスイッチを押した。その瞬間爆発音が聞こえ、爆発の衝撃で建物全体が大きく揺れる。俺はよろめき、膝と手が床に着く。

 

 

 

 

ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ!!!!!

 

 

 

 

 その直後、下の階で何かが崩れる音がした。爆発の影響で建物の一部が崩壊した音だ。崩壊した場所はもしかして……もしかしなくても……

 

 携帯の画面にはエントランスホールが映し出されている。そこには無残にも天井が抜け落ち、ホール全体を叩き潰していた。そこには…………誰の姿もない……

 

 

「うわ゛ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 俺はただ、感情に身を任せて叫ぶしかなかった……

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 南ことりの計画はほぼ完遂に近付いてきた。今は約99%といったところだろう。あとは絶望に打ちひしがれた零を自分のモノにするだけ。残りのμ'sメンバーは簡単に始末できる。今のことりを止める者も止められる者もいない。μ'sメンバーでさえも……そしてあの零ですらも……

 

 彼女にとってはすべてが予定調和。μ'sが再結成されるコトは、二度とない……

 

 

 




まさかこんな展開になってしまうとは!?
大丈夫、私はハッピーエンド派ですよ。


やっぱり全員を出演させるとなると、話がプロットよりも長くなってしまいますね。投稿ペースを早めて正解だったかもしれません。


次回はようやくことりとの直接対決。零とことりの1vs1、ではありませんよ!!
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