『日常』と『非日常』で合計100話以上連載していても未だに慣れません。
やるべきコトは2つ。1つは逃した穂乃果を再び捕まえなければならない。あの穂乃果がμ'sの誰かを見つけた場合、何も考えずに突撃するのは明白だ。今の彼女に目を付けられたら命の保証はない。もう1つは海未の動向を探るコト。ことりから携帯を返してもらった俺は、真姫からの連絡で海未が何処かに向かっているという情報を聞いた。今度は何を企んでいるのかは知らないが、このまま海未を野放しにしておいていいコトは決してない。
「海未の方はにこと真姫に任せるとして、とりあえず俺たちは穂乃果を探そう。アイツを放っておけば、他の誰かに危害を加えるだろうからな、早く見つけ出さないと」
「でも穂乃果ちゃんが逃げてからだいぶ時間が経ってるから、どこに行ったのか検討も付かないね」
さっき俺たちの元へ帰ってきたばかりのことりだが、早速彼女にも協力してもらわなければならない。あの穂乃果を元に戻すには、幼馴染であることり、そして海未の力が必要だと考えているからだ。俺としてはことりには休んでいて欲しいけど、今は非常事態。安息の日々はまだ先だ。
さらに言えば先に海未を説得して本当の彼女を取り戻したいのだが、先程言った通り今の穂乃果をこのまま放置するのは危険過ぎる。仕方なく優先順位を変えなければならない状況であった。
「よし、穂乃果を探しに行こう。絵里たちにも連絡したし、これだけの人数で探せば見つかる可能性も高いだろ」
「でも、今の穂乃果ちゃんは……」
「危険だろうな。だから行動は団体だ。1人1人手分けして探し回るのは無謀過ぎる。だから……って」
ここで俺は花陽が足を抑えているコトに気付いた。さっきまで普通に立っていたので心配ないと思っていたのだが、やっぱりあの時……
「花陽、お前足に怪我したのか?」
「えぇ!?かよちんそうなの!?」
「怪我はしてないんだけど、爆発から逃げる時に少し捻っちゃって……途中までは平気だったんだけど、今急に痛み出したんだ」
「ゴメンね花陽ちゃん!!ことりのせいで……」
「気にしなくていいよ。ちょっと休めば良くなるから」
「花陽ちゃん……今までの埋め合わせは今度絶対にするよ!!何でも言ってね!!」
「うん、ありがとうことりちゃん!!」
元に戻ってきたみんなが一番懸念するのは、やはり今まで自分が犯した罪だ。真姫を皮切りに、みんなが同じ苦悩を味わってきた。でも大事なのは過去の過ちを振り返るコトじゃない。それを受け入れ、今度は自分が誰かを助ける番だ。部屋の隅っこで体育座りしているだけでは、何の解決にもならない。
「でもかよちん、その状態じゃあ歩けないよね?」
「流石に無理だね。良くなるまで休んでないと……だから零君、花陽のコトは後でもいいから先に行って。早く穂乃果ちゃんと海未ちゃんを助けてあげて欲しいんだ。このままだと私、足でまといにしかならないから」
足でまとい。否定したいが、今はそうだと言うしかない。流石の俺でも怪我人を庇いながら、穂乃果や海未と戦うなんて荒業は無理だ。申し訳ないが、今は休んでいてもらうしかないな。
「凛、お前が花陽に付いていてやれ。花陽1人をココに残しておく訳にはいかないからな」
「凛が……?」
「そんな、私1人で大丈夫だよ。だから凛ちゃんは穂乃果ちゃんたちを探して」
「いやダメだ。穂乃果が戻ってくる可能性がゼロとは限らないだろ?もしそうなったら凛、お前の出番だ」
「零くん…………うん!!凛も頑張るにゃ!!だから零くんもことりちゃんも頑張ってね!!」
「あぁ、もちろん」
花陽の言い分も分かる。1人でも多い方が探す効率が上がるコトぐらいは。でもそんなコトをしなくったっていい。仲間を想う気持ち、支え合う心があれば、それがこの事態解決への一歩となる。凛が花陽を守る、それだけで最悪の事態を避けられるのなら、それが終息へと繋がるんだ。
「じゃあ凛、花陽を任せたぞ」
「任されました!!」
「よし、ことり!申し訳ないけどお前にも一緒に来てもらうぞ」
「う、うん……」
ことりの返事が弱々しい。花陽が気にしなくてもいいと言っていたが、まだ落ち込んでいるのか。彼女たち側に立ってみたコトはないが、俺が思っているより深刻な悩みだというコトは絵里の時に知った。ことりが完全に立ち直るのはまだ先のようだ。何とか俺がケアしてやれればいんだが。
そして俺とことりの2人で穂乃果探しに出掛け、凛と花陽はその場で待機となった。ことりの様子を見るに、まだまだ事態終息の兆しを拝むのは早いみたいだが、でももう目の前にあるコトだけは間違いない。今日で、俺たちがすべてを終わらせてやる。
~※~
にこと真姫は、何処へ行くのかも分からない海未の背中を追いかけている。しかし彼女の動向に集中し過ぎた結果、知らず知らずの間に街外れまで来てしまっていた。だからと言って追跡をやめる理由にはならないのだが、通行人が減ってきているためか、見失うコトはなくなったものの見つかりやすくもなってしまった。2人は全神経を集中させて追跡を続行する。
「ホント海未ってば、何処へ向かってるのかしら?にこ、結構疲れてきたんだけど……」
「ずっと迷うコトなく歩いているから、少なくとも目的地ぐらいはあると思うんだけど……それがどこかはサッパリね」
「真姫はこの辺の地理分かる?にこは来たコトないから分かんないわ」
「それは私も。こんなところまで歩いてきて、一体何を考えているのかしら」
結局ここまで来ても、海未が何処へ向かっているのか、その理由は全く検討が付かなかった。彼女はただひたすら歩き続けているだけだ。その足取りに迷いがないコトから、目的地はしっかりと定めてあるというコトぐらいは分かっている。
「それで零たちは今からどうするって?さっき連絡したんでしょ?」
「逃がした穂乃果を追うって言ってたわ。海未は私たちに任せるって」
「そう……」
「なに?もしかしてにこちゃん、零がいないと心配?」
「そ、そんな訳ないでしょ!!」
「しーーーっ!!」
「あっ……」
周りには人もほとんどいなくなっているため、人混みが声をかき消してくれるコトはない。話し合うにも小さな声でボソボソと、声が息になるぐらいの声量が要求される。ところでこうして海未を追ってはいるが、もし彼女と対峙した場合、2人には対抗策など一切なく、非情に危険な綱渡りだ。『ぶっつけ本番』という言葉がこれほど恐ろしいモノだと、2人は初めて認識した。
「建物が多いし、道も曲がりくねってるし、下手したら見失いそう……」
「これはもっと近付いた方が良さそうね」
海未は建物の間を曲がりに曲がり、まるでにこたちを撒くかのように移動している。これでは海未を見失うばかりか、見知らぬ土地で迷子になってしまう。にこと真姫は海未が角を曲がってこちらの姿が見えない隙を付き、駆け足で一気に距離を縮める。
しかし、ここで想定外の出来事が起こった。
「待って、海未が……いない……」
「え!?どうして、さっきこの角を曲がったばかりなのに」
にこと真姫が曲がり角を抜けると、そこには人っ子一人いなかった。いるのは自分たち2人だけ。まるで初めから誰もいなかったかのように閑散としている。でも2人の目には確かに焼き付いていた、海未がこの角を曲がるところを。さらにこの道は長く一本道となっていて、自分たちがココに来るまで別の道に逸れるなんて真似は出来ないハズだ。突然の海未の消失に、にこと真姫は唖然とせざるを得ない。
「もしかして気付かれた!?だから走ってこの道を……」
「いや、流石に私たちがココに来るまでに、走ってこの道を抜けるなんて無理よ」
にこたちは一本道を抜け海未の姿を探す。さっきまでは建物ばかりだった風景が一転、木々が立ち並ぶ雑木林へと変化していた。住宅街の裏にある林と言われると、子供が遊ぶスペースとしては絶好の場所のように聞こえるが、この雑木林の木々はかなり背が高く、土地を覆い隠くしているので日光もまともに入ってこない。それゆえ、昼でも薄暗いという不気味さで周辺住民が誰も寄り付かない場所となっていた。
「こんなところに入られたら、もう見つけられないわよ」
「そうね………………ん?」
遠くで空を裂く音がした。にこには聞こえていないが、音楽に精通した真姫なら、その音が雑木林で鳴る音ではないとすぐに察知した。そしてその音はどんどんこちらに近付いてくる。
この間は一瞬。真姫は悟った。
このままだと、にこか自分、どちらかが死ぬ……
「にこちゃん伏せて!!」
とは言ったもののもう間に合わないと判断した真姫は、にこの懐へと突っ込んだ。今から何が起きるかなど彼女は分かっていない、完全に直感で行動していた。
「ま、真姫!?」
ドンッ!!
バシュッ!!
「ぐぅっ!!」
「ぎゃぁっ!!」
にこは真姫に押された衝撃で、真姫は背中を軽く何かに引き裂かれ声を上げた。真姫はにこの上に覆い被さるように、ドサッとその場で倒れ込む。幸いにも真姫は自分の上着だけを引き裂かれただけで、身体に異常はなかった。
「い、いきなりなにすんのよ!!」
「逃げるわよ!!」
にこも真姫も、今何が起こっているのかなど全く理解出来なかった。しかしこれだけは分かる。ここままココにいたら死ぬ。
逃げようと思ったのも束の間、さらに真姫は自分たちを狙う音に感づいた。今度はにこもその不穏な音に気が付く。
「なにしてんの!?こっちよ」
「ちょっ、にこちゃん!?きゃあっ!!」
今度はにこが真姫の腕を取り、ゴロゴロと地面を転がった。その時にこは、自分たちの隣を突き抜ける"何か"をハッキリとこの目で確かめる。
「矢……」
「矢って、弓の矢?」
「そう、にこたちを狙ってるのは矢よ。というコトは……」
「海未ね……」
ここまで的確に人の頭を狙え、さらに自分たちの命を奪おうとする人物は海未しかいない。彼女の姿は何処にも見えないというコトは、こちらからは目視出来ないほど遠くから狙っているのだろう。このままでは袋の鼠だ。建物が立ち並ぶ商業地区へ戻れば、向こうの視界も悪くなり建物を盾に出来る。
「っ……にこちゃんこっち!!」
「え、そっちに行ったら戻れないわよ!!」
しかし海未は間髪入れずに次々と矢を放ってくるため、戻るに戻れないでいた。恐らく海未は真姫たちがこの雑木林から脱出しないように誘導しているのだろう。真姫たちはただ翻弄され、気付けば雑木林の中の方にまで追い込まれていた。ここまで来てしまうと、もう無傷での脱出は不可能だろう。
「海未の矢を避け続けるしかないって言うの……?」
「あと何十本あると思ってるの!?にこは海未の元へ行くから、真姫はその間に脱出を……」
「そんなコト出来る訳ないでしょ!!って危ない!!」
「ひぃっ!!」
作戦を話し合う暇もなく、飛んで来る矢はにこと真姫を狙い続ける。このままではいずれこちらの体力が消耗し、動きが鈍ったところを仕留められるのがオチだ。だがにこと真姫で意見の齟齬が起きてしまい、反撃の糸口が掴めない。
「さっきからにこたちを狙う矢の角度が一定ね。もしかしたらほぼ同じ場所から狙っているんじゃ……」
「角度からして木の上から狙っているのは間違いないわ。だとしたら最小限の動きで避け続けるコトが出来るかもしれない」
真姫はにこが海未のところへ行ってしまわないように腕を掴みながら、2人はなるべくその場から動かずに矢を避け続ける。それにさっきから自分たちをわざと外している矢が存在しているため、海未はこちらを無駄に動かせて体力を消耗させようと考えているのだろう。だがある程度角度を見切ったにこたちは、その明らかな外れの矢については無視出来るようになってきた。向こうは無限に攻撃出来る訳じゃない、矢の数という制限がある。その時こそ攻め込む時だ。
「よし!!これで矢が切れさえすれば」
(ん?さっきまで間隔的に飛んで来てた矢が飛んで来なくなった……)
ヒュン!!
((矢の角度が変わった!?!?))
一瞬の出来事だった。さっきまで同じような角度から飛んで来た矢が、今度はかなりの低角度からにこたちを襲う。それに気付いた時にはもう遅かった。このまま矢が飛んでいけば、確実ににこの頭に突き刺さる。避ける時間は残されていない。
(にこちゃん!!)
(くっ……!!)
逃れるコトが出来ない恐怖に、2人は目を瞑った。
バシュッ!!
「がぁっ!!!」
「「!!!」」
直後、にこでもなく真姫でもない、第三者が声を上げた。その場で座り込んでいたにこと真姫の前に、誰かが自分たちを庇うように立っている。その背中の主を、2人は見たコトがあった。自分たちが、この世で一番頼りにしている人の背中。
「諦めるのは、まだ早いと思うぞ」
「「零!?」」
「にこちゃん!真姫ちゃん!大丈夫!?」
「「ことり!?」」
2人はことりに包み込むかのように抱きかかえられた。自分たちの前には零、後ろにはことり。この2人が来ただけで、ほんの数秒前に感じていた恐怖はすべて吹き飛ばされ希望の色に塗り替えられた。多大なる安堵と共に、にこと真姫の全身に一気に力が漲る。
「さぁ立て!!海未を取り返しに行くぞ!!」
反撃が、始まる。
なんだか今回は地の文が奮っていなかったような気がします。かなり読みにくい印象でした。真姫とにこが海未の攻撃を避け続ける部分は特に。話では一瞬の間でも、そこを文章にするとなると難しいです。
次回の前半では零とことりが真姫たちの元へ至る経緯を、後半では海未と直接対決です。