ラブライブ!~μ'sとの"非"日常~【完結】   作:薮椿

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遂に……遂に最終話まで来たぞ!!
自分はこんなにテンションが高いですが、話はとてもローテンションです(笑)特に零君が……


※内容的に申し訳ないのですが、地の文は零君がいるのにも関わらず第三者目線となっています。こっちの方が演出上都合がよかったので。


最終章
最終話・前編 ‐笑顔の消えた英雄‐


 

 

 激動の9日間が過ぎ去り、神崎零とμ'sはいつもの日常へと帰ってきた。各自怪我も無事に完治し、μ'sの活動も徐々に再開されている。特にダンスレッスンに関しては、長期に渡り練習をしていなかったので早期に開始された。それでも滞りなく、9人全員が何の問題もなく練習は進められている。もうμ'sは完全に復活し、あの時よりさらに成長して帰ってきたのだ。

 

 

 しかし、完全復活を果たしたのはμ'sだけだった。あと1人、自分たちを救ってくれたヒーローである神崎零。彼の様子が最近おかしいのだ。あの一連の騒動が終わった、その翌日から様子が一変した。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「零君おっはよーーー!!」

「零くんおはよう♪」

「おはようございます」

 

 

「あぁ……おはよう」

 

 

「「「……?」」」

 

 

 一連の騒動の翌朝、いつもの日常に戻ってきた穂乃果たちは登校中に神崎零と出会った。各自零へ挨拶をするが、彼からの返事は素っ気ないモノだ。まだ連日の疲れが抜けきっていないのだろうか?それともすべてが終わった余韻に浸っているのだろうか?この9日間様々な出来事があったが、一番の功労者は零で間違いはない。だとしたら彼が疲れているのも、余韻に浸っているのもどちらもあり得るだろう。

 

 

 だが今まで零をよく見てきた穂乃果たちは疑問に思った。これは"いつもの"彼ではないと。疲れているのも分かる、余韻に浸っているのも分かる。だけどそれ以前にこの零は今までの零と何かが違っていた。3人はそれを詳しくは説明できないが、それを感じさせる何かがある。

 

 

「どうしたの零君?もしかしてまだ疲れてる?」

 

「そう見えるか?」

 

「うん、何だか元気ないよ……」

 

「そうかな……?別に体調もいいし、気にしないでくれ」

 

 

 気にしないでくれ。その言葉を聞いた瞬間、穂乃果たちは彼との心の距離を感じた。彼はそこにいるけれども、どこか遠く離れているような感覚。ずっと待ち焦がれていた日常が、あの時と同じ日常ではないみたいであった。

 

 

「零……どうしたのでしょう。体調が優れないのでしょうか?」

 

「でも、ただ疲れてるって感じじゃなさそうだね……」

 

「えぇ、ですが深く思い悩んでるみたいでもなさそうですし……まるであれがいつもの零かのような……」

 

「違うよ!!だって零君はいっつも穂乃果たちに笑顔をくれていたんだよ!?あの零君がそんな……」

 

 

 穂乃果や凛以上に彼はμ's内でのムードメーカー的な存在である。しかし、今の彼からは自分たちを包み込んでくれる暖かさを一切感じない。だが彼が今も自分たちを守ってくれているのは確かだ。穂乃果たちは、また何とも言えない感覚に惑わされた。

 

 

「何してんだ?早く行くぞ」

 

「う、うん……」

 

 

 決して自分たちに冷たく当たっている訳ではないようだ。むしろ彼は自分たちのコトを気にかけてくれているが、それは以前の彼と何も変わらない。だったらこの違和感は何だ?穂乃果たちに不安と迷いが生じる。昨日と一変して、彼の雰囲気が変わりすぎているコトに戸惑いを隠せない。

 

 

「れ、零君っ!!」

 

「ん?どうした穂乃果?」

 

「さっき行きつけのパン屋に寄ってみたら、ジャジャーン!!新しいパンが発売されてたんだよ!!」

 

 

 穂乃果は新作メロンパンと書かれた袋から、買ってきたメロンパンを1つ取り出して零に見せる。カバンから袋を出しただけで、メロンパンの香ばしい匂いが零や穂乃果たちを包み込んだ。だがそんなパンや匂いなどは穂乃果にとって関係なく、ただただ零の顔ばかり見つめていた。

 

 

「おっ、すごく美味そうじゃん。いい匂いだし、お前だったら昼休み前までに食っちゃいそうだな」

 

「そ、そんなコトないもん!!最近は早弁もしなくなったしね」

 

「まず早弁をするという概念を捨てろよ……」

 

「まぁいいじゃんいいじゃん♪それよりお昼一緒に食べようよ」

 

「いつも一緒に食べてるだろ?」

 

「ち~が~う~、一緒にメロンパン食べようねってコト!!」

 

「そうか、ありがとな。楽しみにしておくよ」

 

「う、うん……」

 

 

 最後に、零は穂乃果に対して微笑んで会話は終了した。そして彼はスタスタと軽い足取りで進んでいく。穂乃果はその後ろ姿をしばらく眺めていた。いくら眺めてもその姿は神崎零そのものだ。しかし今の零は何かが違う。繰り広げられた会話の中で穂乃果はそう読み取った。

 

 

「穂乃果ちゃん、何で今お昼ご飯の約束なんかしたの……?」

 

「ああやって元気がないだけで、話してみたらいつもの零君になってくれるかなって思って……」

 

「それで、どうだったのですか?あなたから見た零は……?」

 

「やっぱりいつもと違ったよ。零君と一緒にいるのは楽しい、楽しいけど一緒に話していても盛り上がらないっていうか、いつもなら零君と話すだけでとってもテンションが上がるのに、今は全然……」

 

「零くん、すごく冷静だったもんね。いつもなら自分から『メロンパンが欲しいから一緒に食べよ』って言いそうなのに……」

 

「うん……それに零君、笑ってなかったよ」

 

「そうですね、あれは作っているかのような微笑みでした……」

 

 

 今まで零の笑顔を見てきたからこそ言える。あれは作り物の笑顔だと。みんなの笑顔を追い求めていた彼が、なぜ笑顔を作っているのだろうか……?

 

 その登校中、穂乃果たちは自分たちの足取りが、零とは違ってズシリと重く感じられた……

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 飼育係として早く学院に来ていた花陽と、その手伝いをしていた凛は仕事を切り上げて教室へ戻っていた。その途中、自分たちの見知った背中があったのでその人に駆け寄る。特に凛は廊下をバタバタと走りながら、その背中に向かって大きく飛びついた。

 

 

「零くんおっはようにゃーーー!!」

「零君おはよう」

 

「うおっ、おはよう。凛、急に抱きつくと危ないぞ」

 

「う、うん……ゴメン」

 

 

 凛はその一瞬だけで零の様子がいつもと違うコトに気が付く。いつもなら抱きついた時に彼の面白い反応が見られるのだが、今回はサラっとあしらわれた。彼の機嫌がよければそのまま抱きつき返してくれるコトもあるのだが、今日は明らかに雰囲気が違う。

 

 

「お前らやけに早いな、もしかして飼育係の仕事か?」

 

「うん、最近アルパカさんの世話をあまりやってなかったからね」

 

「そうか、きっとアルパカも花陽が戻ってきてくれて喜んでると思うぞ」

 

「そ、そうかな……?」

 

「そうさ」

 

 

 零は花陽に笑顔を向けたが、そこで彼女も彼の異変に気が付いた。優しいところは普段と変わっていないのだが、彼の笑顔はどこか不自然だ。優しいというよりかは他人行儀の律儀さが伺える。いつもと比べれば僅かに距離がある気もした。

 

 

「零くんなんだかテンション低いにゃ~」

 

「俺だって、いつでも馬鹿みたいに騒いでる訳じゃないさ。それにそれほど朝も強い方じゃないしな」

 

「そ、それはそうかもしれないけど……」

 

「でも凛の元気には俺も助けられているから、お前にはいつも元気でいてもらいたい。それはもちろん花陽も、μ'sのみんなもだけどな」

 

 

 以前なら、零からこんなに自分を褒めてもらうととても心に響いていた。凛も花陽も零のコトが大好きだから、彼から褒められるだけでドキドキしたものだ。でも今の彼の言葉は全く心に響かない。褒められて嬉しくはあるのだが、ドキドキはしない。

 

 自分たちが彼に魅力を感じなくなったのか?いや、彼が変わってしまったのだ。あの時の零とは全く別人のように……

 

 

「じゃあ俺日直で職員室に行かないといけないから、また放課後な」

 

「う、うん……き、今日からまた練習頑張るにゃ」

「ま、またあとでね……」

 

 

 そうして零は凛たちの横を通り抜ける。徐々に離れていく零が、まさに自分たちと彼の心を表しているかのようだ。2人はしばらくポツンと誰もいない廊下に佇んでいた。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 真姫は音楽室でピアノを弾いていた。朝早くに来れば学院内に生徒も少なく、騒がしかったり邪魔されるコトもないのでよくこの時間に足を運んでいる。特に今朝は涼しく心地よい風が優しく吹き込み気分も好調。作曲にも俄然力が入る。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 とりあえず一曲弾き終わった。最近放置していた曲も完成に近付き、もう少し手直しして作詞の海未と最終確認をすればμ'sの新たな曲としてみんなに発表出来るだろう。μ'sが再結成されてから、みんなで歌う初めての曲。みんなやあの人がこの曲で笑顔になってくれるところを想像すると、真姫は自然と笑みが溢れた。

 

 

「やっぱすごいな真姫は……いい演奏だった」

 

「零……聞いてたの?」

 

 

 いつの間にか音楽室の入口に零が立っていた。彼はパチパチと拍手をしながらピアノの前までやって来る。彼は彼女に向かって笑顔を向けているが、真姫も穂乃果たちと同じく彼の表情に疑問を持った。

 

 

「あなた、まだ休んだ方がいんじゃない?疲れているように見えるけど……」

 

「みんな同じコト言うんだな……俺は平気だよ。いつも通り元気だから」

 

 

 誰がどう見てもいつも通りには見えなかった。特に彼をよく知っている彼女たちならなおさらだ。毎回彼は自分の演奏を褒めてくれるのだが、今の彼には覇気がない。はっきり言ってしまえば、褒められても何も嬉しくないというコトだ。これはまだ真姫の勝手な憶測だが、彼の発言は1つ1つが精密に練りこまれているというか、それゆえその言葉には彼の気持ちが入っていないような気がした。

 

 

「そう……でもいつものあなたと何か違うのよね」

 

「そういや凛や花陽にも同じコト言われたな。もしかして俺って普段そんなに馬鹿騒ぎしてたか?」

 

「してたわ」

 

「……そうか」

 

 

 それは確信を持って言える。でも馬鹿騒ぎと言っても迷惑なコトばかりではない。いつも素直になれない自分の素を出せる唯一の場だ。偽りなく自分をさらけ出せる場として、真姫は零の暴走が割と好きだったりする。

 

 

「でもいつまで経っても何も考えずに騒いで、周りの迷惑も考えない奴のままではいられないだろ?みんな成長しなきゃいけないんだよ。あの一件以来お前らはとても成長した、だから今度は俺自身も変わらないといけないんだ」

 

 

 そう言って零は音楽室を去ろうとする。真姫は零の言葉を素直に受け止めながらも、どこか違和感がある気がしてならなかった。その正体が掴めないため零を引き止めるコトは出来ない。

 

 

「いつまでも子供のままだったらダメだってコトだよ」

 

 

 真姫は何も言い返せないまま零を見送った。さっきまで順調に進んでいた作曲も、今は全くやる気が起こらない。真姫の心にはずっと零の言葉だけが静かに響いていた。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「あぁ~朝から疲れたぁ~」

 

「ゴメンねにこ、生徒会の仕事手伝わしちゃって……」

 

「別にいいわよ、忙しかったんでしょ?」

 

「最近色々あって放置気味だったから、書類仕事からなにまですごく溜まったのよね」

 

「にこっちがいるだけで意外と仕事の効率が上がって助かったわ~」

 

「意外とって何よ!!意外とって!!」

 

 

 μ's内での騒動中は中々生徒会仕事に手がつかなかったので、溜まりに溜まっていた仕事を3年生3人の力を会わせて一気に片付けた。3人は凝り気味の肩をぐるぐると回しながら、自分たちの教室へと向かう。騒動の終結が昨日の今日なので疲れが抜けきっていないと言えば嘘になるが、だからと言って学院業務もスクールアイドル活動も疎かにするコトは出来ない。

 

 

 にこたちは教室へ戻る途中、学級日誌を持った零の姿を見つけた。

 

 

「零!!アンタ休んでなくてよかったの!?」

 

「にこ……絵里も希も一緒か。それなら大丈夫だ、ピンピンしてるから。それに今日からスクールアイドルの活動が再開されるのに俺が行かない訳ないだろ」

 

「そうやけど、まだ今日は歌のレッスンだけやから放課後ぐらいは休んだ方がええんと違う?」

 

「だから大丈夫だって、お前らが気にするコトじゃない。それよりも絵里、お前の怪我は大丈夫なのか?」

 

 

 にこも絵里も希も、零の言葉に嫌悪感を感じた。『お前らが気にするコトじゃない』と『それよりも』、どちらも自分自身のコトを捨てているセリフだ。それに零の雰囲気が違うという、他のみんなと同じコトをにこたちも察知した。

 

 

「零、あなた自分の心配もしなさいよ。腕の怪我、どうなったの?」

 

「真姫の応急処置のおかげで大事に至らなくて済んだよ。だから俺の怪我の心配はもういらないぞ」

 

「心配するわよ!!零は私たちの仲間なんだから、傷ついた仲間を心配するのは当然でしょ!?」

 

 

 μ'sの全員を救い出し、また元の日常へと帰らせてくれたのは紛れもない神崎零だ。絵里たちは零がどれだけ苦労してきたのか、その全ては知らない。たぶん自分たちの想像よりも遥かに大きい苦労や重圧があったのだろう。だからこそ『心配いらない』の一言だけで終わらすなんて出来るハズがないのだ。

 

 

「またこうしてみんなが同じ日常に戻ってきたんだ。俺はそれだけで満足だよ。みんなが笑顔で、楽しく過ごしている日常を見ているだけでな」

 

「笑顔……それが零君の望んでたコトなんやね……」

 

「あぁ、だから俺も戻ってきた日常を楽しんでるし何の問題もない。あとはμ'sの活動さえ再開すれば、もうすべて元通りだ」

 

 

 元通り?本当にそうなのだろうか?足りていないモノがある。確実にあと1つ、μ'sの日常に欠かせないものが……

 

 

「もうこんな時間か、悪いもう行くよ」

 

「ちょっと!!」

 

 

 絵里の制止も聞かずに零はその場から立ち去る。絵里たちは今まで彼から伝わってきた違和感が、自分たちの中で肥大化してきているのが分かった。零の言葉は自分たちに重くのしかかったが、その言葉は自分たちというよりむしろ零自身、つまり自分自身に向けて言っているように感じた。必死に自分の心へ言い聞かせているかのようにも聞こえた。

 

 

「零、全然笑ってなかったわね……にこたちに向けた"あの笑顔"は偽物だわ」

 

「うん、でも何かを抱え込んいるって感じではなさそうや。たぶん自分の中で答えをもう出していると思う」

 

 

 希は零が既に自分なりの答えを持っていて、それに従った結果あの雰囲気になってしまったと考えている。μ'sが名も無きグループだった時から、メンバーをサポートしてきた彼女なら分かる。彼が特に思い悩んでいるコトはないと。もしあったとしてももう結論を出しているのだと。

 

 

「多分みんなも同じコトを思っているはず、ここは一度みんなで話し合った方がいいかもしれんね」

 

「そうね、でももう少し様子を見てからにしましょう。零の心を知るには、今日だけだと時間が足りないと思うから……」

 

 

 

 

 なぜ彼から"笑顔"が消えてしまったのか、どうしてこれほどまでに雰囲気が変わってしまったのか、その真実を探るため、そして自分たちを導いてくれた英雄を救い出すため、今度はμ'sメンバー9人が1つとなって動き出す。

 

 

 




『子供から大人になる』『成長する』それってどういうことなんでしょうかね?今回や次回はそれにも注目して頂けたらと思います。


今回は地の文でやけに同じ内容の文章が多かった気がします。みんながそれぞれ零君の異変に気付く回なので、仕方ないといえば仕方ないですが。


そして次が最終話・後編、つまりこの小説の最後となります。
最後はμ'sの9人が、あの零と直接対決します。互いの心をぶつけ合え!!
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