今回が完結だと言ったな…あれは嘘だ…
もう少しだけお付き合い下さい。
「あら?もう帰っちゃうのね?」
「「!!!」」
予想だにしないコトが起こった。病院の方に顔を出しているハズの真姫がココにいたからだ。穂乃果もことりも、零が持っていった盗聴器からその会話は聞こえていた。
「何驚いてるの?まさかこの私が失態を犯すと思ってたの?」
「なるほど……初めからことりたちを誘き出そうとしていたんだね」
「ええ……部室に盗聴器が仕掛けられていたコトは分かっていたから、それを利用させてもらったわ……ねぇ穂乃果?」
「ぐっ……でもそのおかげで零君を助けられたもん!」
「フフフ……零はまた拘束すればいい…あなたたちもココから出さないわ……出れなくなる体になるって言った方がいいかしら?そのためにあなたたちをここへ誘き出したんだから……」
零、穂乃果、ことりが張ったすべての策略の上を行っていた真姫。何もかもが完璧の計画に、余裕の表情を浮かべざるを得ない。
「私はあなたたちが気に入らないのよ……いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも!同学年だからって零とベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタ!ムカつくのよその態度が!!!零と一緒にいていいのは私だけなのに!!!」
「嫉妬?見苦しいよ?」
「残念だったね?学年が違って……負け犬さん」
同じμ'sの仲間から罵倒を受けても、この2人は怯まなかった。むしろ仲間を蹴落とす姿勢である。あの頃の2人の純粋な性格は、とっくの昔に消えてなくなっていた。
「そんな口が聞けるのも今の内よ……何か言い残したいコトはある?特別に零に伝えておいてあげるから……」
「さぁて……消えちゃうのはどっちかな……?」
ことりは真姫に負けないくらいの笑みを浮かべる。それは穂乃果も同じだ。
「やめろ!!!!」
「零!?」
「「零君!?」」
危なかった。到着が後一歩遅れていたら、血生臭い展開になっていたかもしれない。
「あなた、どうして……私の計画ではあなたは部屋でずっと待っているハズ……」
「そうだろうな。お前は俺の性格を知っている。俺が鎖から解放されても逃げ出さないってな。でも、穂乃果たちが危険な目に遭いそうなのにジッとしてる訳ないだろ……これを見つけちまったからな」
俺が監禁されていた部屋に仕掛けられていた盗聴器を真姫に見せる。
「・・・」
真姫が初めて焦った様な表情を見せた。真姫は決まったレールの上を走るのが得意だ。それは自分の計画を完璧にこなすというコト。しかし、レールから外れてしまうと対処ができない。つまり、予想外の展開における対応力が低いというコトだ。
「さすが零君!穂乃果のピンチに駆けつけてくれたんだね!やっぱり未来のお婿さんは違うな~」
「ちょっと穂乃果ちゃん!勝手なコト言わないで!!」
「2人とも帰ってくれ」
「「へ?」」
「ここからは俺1人でやらなきゃならない、頼む……」
「「・・・」」
2人は黙って、しばらく考え込む。
「わかった。零君の頼みだもん……」
「それもことりを愛してるが故なんだよね?じゃあしょうがないなぁ~」
この時、俺はコイツらが拒否した時の対応策を一切考えていなかった。そのため都合のいいように解釈してくれて助かった。だが多分、コイツらもここまで計画的に来たらしいから、何か考えがあって帰るコトを選んだのだろう。
「すまないな」
「いいよいいよ。それじゃあね」
「必ず帰ってきてね」
そう言って2人はこの病棟から去った。
「さあこれで2人きりだ。お前はコレをお望みなんだろ?」
「消し損ねたのは残念だけど、それはいつでもできること…でも本当に気に入らないわあの態度……まるで零を自分のモノの様に……あなたは私のモノなのに!!!」
「俺は誰のモノでもない」
「何故気付かないのよ!!私の気持ちに!!ここまでしてあなたを欲しいのに!!あなたなら分かるでしょ!?」
「分からない」
「だったら分からせてあげるわ!!私の本当の気持ちを!!その為にあなたをもう1度監禁する。今度はもう2度とあの部屋から出してあげないわ。私だけの零なんだから、部屋から出る必要もないもんね」
「・・・」
俺は黙ってはいるが、じっと真姫の目を見つめていた。ここで怯えてしまっては真姫を救うコトはできない。
「そうよ、もうあなたをどこへも行かせない。今すぐに私を愛せとは言わないわ……でもたっぷりと分からせてあげる……私の愛を……」
「本当に俺のコトが好きなのか?」
「ええ!!いくらでも言ってあげるわ!あなたが好きって!零、私はあなたのコトが好き……」
「・・・」
「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」
「俺はお前のコトが嫌いだ」
「え!?」
「語弊があったな、"今"のお前は嫌いだ」
「どうして、どうしてよ!!まだ愛が伝わってないのね!!きっとそうよ!!全く、肝心なところでおっちょこちょいなんだから……」
「まだ分かってないのか……」
「いいわよ…そんな言葉…もうすぐ私のコトしか見えなくしてアゲル…私の心があなたに染まったように……あなたの心も私に染めてアゲル……」
真姫の声は曇っていた。いつもの綺麗な歌声をしていた声とは思えないぐらいに。
「さあ、もうお話はおしまい。次にあなたが目を覚ますのはベッドの上よ!!」
バチバチ
「・・・」
真姫は校舎裏でやったコトと同じように、スタンガンで俺を気絶させるつもりだ。だが、俺に2度同じ手は通用しない。
「おとなしくしていれば痛くないから……」
コツコツ
静寂の中に足音だけが響く。
コツコツ
コツコツ
「言っていたよな?お前」
「ん?」
俺の言葉に真姫は足を止める。どうやらまだ人の言葉を聞けるぐらいには狂っていなかったらしい。
「俺に惹かれたって」
「そうよ…あの時からあなたは私のモノだったのよ」
「あの時か、まだ半年ぐらいしか経ってないのに懐かしいな。お前もそうだろ?」
「・・・」
「たぶん、この半年に色々なコトが詰まっていたんだと思う。俺はスクールアイドルじゃないけど、一緒にダンスや歌の練習もした。一緒に頑張って、一緒に努力して、一緒に支え合い、一緒に笑い、時には一緒に泣いたりもした。ラブライブ出場決定の時なんて嬉しさの余り泣いていたもんな、みんな……それにお前も……」
「そんなの、私にとってはどうでもいいコトなのよ……私にはもうあなたしか見えない……」
「思い出してくれ。お前と俺の出会いを。俺はお前のピアノの演奏に感動した。それにあの歌唱力、音楽には微塵も興味がなかった俺が初めて音楽に惹かれたんだ。いや、音楽をしているお前に惹かれたんだ!!」
「!!」
「誰でもよかった訳じゃない。優雅にピアノを引くあの姿、聞いている人の心に響く様な声。真姫だからこそなんだ。だからお前がμ'sに入ってくれて時はとても嬉しかった。またお前の歌が聞けて、一緒に話したりできるって思うとな」
「・・・」
「その後も真姫自身のコトもたくさん知った。初めは堅物のイメージだった真姫がドンドン崩れて行ったんだ。いつもは素っ気ない態度を取ってるけど、実は仲間思い。何度も見たし、聞いたコトがあるよ。みんなが失敗したり、落ち込んでいる時に励ましている姿をな」
「やめて!それはもう以前の私。私はあなたと……え!?」
コツコツコツ
今度は俺から真姫に近付いていく。逃げはしない。絶対に。
コツコツコツ
「来ないで……あなたは私のモノ……あなたから来るなんて許せない……」
コツコツコツ
「来ないでったら!!!」
ブン!
パシ!
「え!?」
俺は振り上げられた真姫の右手首を掴む。力が緩くなった真姫の手からスタンガンを取り上げる。そして……
俺は真姫の背中に腕を回し、彼女を抱きしめた。
「!!!」
「戻ってくれ!あの時のお前に!もう1度、あの笑顔を俺に見せてくれ!楽しそうにピアノを弾き、歌を歌っているお前を!そしてまた一緒に笑おうぜ。だってそっちの方が"楽しい"だろ?」
「たの…しい…?」
「お前もμ'sのみんなと一緒にいて楽しいだろ?また一緒にあの日々を送らないか?」
(楽しい?そうだ…そんな気持ち、ここ最近忘れていた。私が零に惹かれたのは彼の楽しそうな笑顔だった。私のピアノや歌を興味津々で楽しそうに聞いているあの笑顔。その笑顔があったからこそ、私は音楽という道を進むコトができた。私をμ'sに、あの素晴らしい仲間がいるμ'sに引き合わせてくれた。それなのに私が……私が自分の笑顔を忘れていた……自分で何もかも壊そうとしていたなんて……)
「え?」
俺の首元に水滴が落ちた。横目で真姫の顔を見ると、それが何なのかは一発で分かった。
「何泣いてんだよ。お前らしくもない」
そう言って、真姫の頭を優しく撫でる。
「ごめんなさい……私はみんなを……あなたを……う、うぅ……」
真姫の涙は止まらない。
「いいよ。みんなも絶対分かってくれるさ」
「でも、私はあなたにヒドイことを……」
「もういいよ。こうやってお前が戻ってきてくれたんだ。とっても幸せだよ」
「うぅぅ……うぁああああん!」
今まで溜まっていた何かが一気に吐き出されたのか、真姫は大声で泣き始めた。それは本当の真姫が戻ってきたコトを意味する。俺も少し泣きそうになった。
「おかえり、真姫……」
ということで、後1話お付き合い下さい。次回はヤンデレ度が低いかもしれません。
では次回が本当の第一章完結編!