今度は誰が相手だ!?
第一話 ‐胎動‐
早朝・零の家
「あ~くそ眠い……最近目覚めが悪いな……」
ここ最近、穂乃果とことりからの連絡が沢山送られてくる。それも夜遅くまで。ここまでスマホの連絡用アプリを使ったのは初めてだ。
「また来てるし……」
昨日も話を適当に打ち切って寝たのだが、朝になると決まって『おはよう』の文字が通知されている。何時に起きてるんだコイツら?
ここで返信してしまうと、向こうから怒涛の返信通知が来てしまうのでやってはいけない。
「夜ぐらいぐっすり寝かせてくれよ……」
1人ならまだ対処できるが、2人と同時に連絡を取り合うとさすがに疲れる。学校でも散々話しているのに、何故夜中まで話したがろうとするのか。大体理由は分かっているけど…
「ふぁ~そろそろ家出ないと」
まだ学校へ行く時間ではないが、ある用事があるので早めに家を出る。
ガチャ
「穂乃果たちは……いないみたいだな」
さすがに朝早すぎるのか、彼女たちの姿は見えない。穂乃果もことりも最近朝よく家に来るのだ。普通なら女の子が家まで迎えに来てくれるコトは、周りの男から見れば非常に羨ましい光景だろう。だが、彼女たちは別と思った方がいい。明らかに裏に隠されたヤバさを感じる。
「それじゃあとっとと行きますかね」
近くにいるかもしれないので、なるべく音を立てずに家を出た。最近は常に朝から気を遣いっぱなしだ。
~※~
早朝・公園
「真姫!おはよう」
「おはよう、零」
俺の用事とは真姫に会うコトだ。穂乃果たちを含め、メンバーの様子について話し合っている。学校で話せればわざわざ朝早く出る必要もないのだが、学校では穂乃果たちの目があり、放課後はいつもまとわりついてくるため話す暇がない。つまり、早朝しかないという訳だ。
「最近教室ではどうなの?穂乃果たち」
「いつも以上にベタベタしてくるよ。休み時間とか毎回こっちの席まで来るし、何より授業中に目線を感じるんだよ。はぁ~俺がアイツらより席が前じゃなければな」
「たぶん席が後ろになっても振り返って見てくると思うけど」
「俺もそう思う…」
穂乃果もことりも、そこら辺の女子よりは圧倒的に可愛い部類に入る。そんな女の子から好きになってもらえるのは嬉しいが、アイツらは過剰すぎる。
「そっちは?花陽と凛はどうなんだ?」
「凛は特に問題ないわ。いつもと同じ活発でうるさいし」
「うるさいって…」
「問題は花陽よ」
「花陽?」
花陽があんな様子になるとは思えないんだが。しかし、あのことりですら不穏なオーラを隠すことなくプンプンさせている。もしかしたら花陽もなのか?
「最近やたらあなたの話が多くなってきたわ。あなた、この前の休みに花陽とご飯食べに行ったんでしょ?」
「そうだけど、どうしてお前がそれを?」
「花陽に何回も何回も聞かされているのよ!もう100回ぐらい聞いたわ。凛もウンザリしてたし」
「そんなに…」
「すっっっっっっごい嬉しそうに話すものだから、こっちも止めるに止めらないのよ」
花陽の笑顔を見ると、水を差すのは難しそうだしな。
「そうか。でも練習ではいつも通りなんだよな」
「そうね。それは花陽だけじゃないけど」
μ'sの練習は9人揃って滞りなく続けられている。穂乃果とことりの様子は依然として異常のままだが、驚くべきコトに練習は全員がいつも以上にしっかりとこなしている。俺はそれが不気味でならない。
「海未の話では絵里も同じコトになってるって言ってたけど、3年生は分からないからな」
教室も違えば、真姫の様な協力者もいない。3年生の内部事情を探るのは困難を極める。
「でも、できるだけ私の様なコトになる前に止めたいわね。あなたのおかげで大事には至らなかったけど、もしかしたら…」
真姫はそこで言葉を止めた。自分のしてしまったコトを思い出したのだろう。
「そうだな。それが一番だ。それより、そろそろ時間だし、学校行こうぜ」
「え、ええ…」
真姫の思考を無理矢理遮る。気にしなくていいって言ったのに。
正直言って、彼女たちが動き出す前に本人に問いただすコトはできる。だが、彼女たちが何を考えているのかを知らないと、事態を大きくしてしまう可能性が高い。不用意な質問は自分の首を絞めるコトになる。
~※~
「おはよう…」
俺はやる気のない声で教室に入った。話し込んでいたとはいえ、まだ朝は早い。教室には誰もいないと思っていたのだが……
「う~ん!気持ちいいよ~」
「ちょっとことりちゃん!そろそろ変わってよ!3分毎に交代の約束でしょ!」
「な、何してんだお前ら」
ことりは席に座り、机にグデーンと体を寝かせていた。自分の席でやるのは構わないが、ことりが座っているのは俺の席である。
「あ!零君おはよ~」
「おはよう零君!早速だけど、ことりちゃんを引き剥がすの手伝ってよ!」
「いやいや、その前に何してるのか聞いているんだが」
「何って、朝早いからちょっと仮眠を取ろうと思って」
「仮眠だったら保健室に行けばいいだろ。何で俺の席に座って寝てるんだよ」
「だってココ、凄く気持ちいいんだよ」
「そんなゴツゴツしたところより、保健室のベッドの方がいいに決まってるだろ」
「零君の席だからだよ」
意味が分からん。しかもコイツ、席の主が来たというのに離れる気ゼロだな。
「穂乃果も分かるよ。ことりちゃんの気持ち」
「一応聞こう」
「零君のイオンが一杯詰まってるんだよ!ココに座ると零君分が補充できるんだ」
コイツ、イオンのコトなんてよく分からないクセに。
「ことり、いい加減どいてくれよ。カバン置けないし」
「もうちょっと~」
「ことりちゃん!もう5分ぐらい経ってるよ!そんなコトなら穂乃果にも考えがあるもんね!」
ことりの方に体を向けていた穂乃果は、クルッと俺の方に体を回す。
ダキ!
「ちょ!?」
「こうやって抱きつけば、零君分を一気に補充できるもんね!」
急に穂乃果が正面から抱きついてきた。俺の脇の下に腕を回し、背中の後ろでガッチリ手を組んで俺をホールドする。
「ずるいよ穂乃果ちゃん!」
「ずっと席を占領していたバツだよ!」
段々と穂乃果の縛り付けが強くなっていく。
「穂乃果!痛いって!離せよ!」
そう言ってはいるが、女の子の方から抱きついてくれるなんて夢のような状況だ、彼女たちの現在を知っていたとしてもドキドキしてしまう。
「離して欲しい?」
穂乃果はことりに聞こえないぐらいの声でボソッとささやく。
「ああ」
「や~だよ~!」ギュー!
「痛い!痛いって!」
「零君は穂乃果のモノなんだもん!絶対に離さないよ!」
俺には、その顔は無垢な笑顔には見えなかった。
「穂乃果ちゃん!いい加減にしないと怒るよ!」
「もう怒ってるじゃん!ことりちゃんは机とでも戯れとけばいいんだよ」
「うぅ~こうなったら…えい!」
「ちょっ!?」
今度はことりが俺の後ろから抱きついてきた。もちろん、腕を回されてホールドされる。見事に穂乃果とことり作のサンドイッチが完成した。
「もう!邪魔しないでよ!」
「邪魔してるのは穂乃果ちゃんだよ!」
2人のホールドがさらに強くなる。そうなれば段々と体は密着する訳で、2人の色々な部分が俺に当たる訳で…
「大丈夫だよ零君…邪魔な人たちはみーんなことりがお掃除してあげるからね…」
ことりも俺の耳元でささやく。何が大丈夫なんだよ…。それより、この状況を何とかしてくれ。
「ことりちゃん…そろそろ離れた方がいいと思うよ…穂乃果…こう見えて結構短気だから…」
「それはこっちのセリフだよ…まずは穂乃果ちゃんをお掃除しようかな…」
「俺を介して物騒なこと言うな!とにかく離せ!」
そんなコトを言っている最中でも、容赦なくホールドの力が強くなる。コイツらにこんな力あったっけ?何か得体の知れない底力を感じる。
「何ですか!?この声は!?」
「海未!?」
「「海未ちゃん!?」」
扉の音を大きく立てながら、教室に入って来たのは海未だった。教室で何かあったと思ったのか、少し焦っている顔だ。
「あ、あなたたち!?い、一体何をしてるんですか!?」
こういうコトに抵抗のない海未の顔は、みるみる赤くなる。
「「零君を穂乃果(ことり)のモノにしてるの!」」
「正直に言わんでいい!!」
「あなたたち……」プルプル
「う、海未……?」
「今すぐに離れなさい!!!」
~※~
「はぁ~ヒドイ目にあった……」
海未の怒声により事態は何とか収束した。しかし、あの教室にいると疲労感がMAXになるため、教室から抜け出したところである。2人はたぶんお説教中だろう。
「あれ?零君、結構早いんやね?」
「の、希…」
いつの間にか……俺の目の前に希がいた。
という事で第二章一発目でした。
いくらヤンデレだと言っても、穂乃果たちにホールドしてもらえるとは何と羨ましい…。しかし、零君爆発しろとは言えないこのジレンマ(笑
投稿ペースに関してですが、これからリアルが忙しくなりそうなので第一章のように高速では投稿できないと思われます。週2ペースぐらいで投稿できればいいかな?
では次回!