物語はまだまだ序盤ですが、零君ファイトだよ!
今回は新たに表舞台に出てくる人が何人か登場します。
「あれ?零君、結構早いんやね?」
「の、希……」
希は俺から少し離れた廊下の先に立っていた。俺が考え事をしていたせいか、彼女に全く気が付かなかった。いや、気配すら感じなかった…まるでいつの間にか目の前に現れたみたいだ。
「何か深刻そうな顔してるみたいやけど、大丈夫?」
「平気だよ。ちょっと教室で絡まれてただけだ」
「ふ~ん」
「それじゃあ、俺行くから」
「待って!」ハ
「!!」
希の横を通り過ぎようとした時、急に希が俺の腕を掴んだ。この状況、どっかで見たことある……そうだ、真姫が呼び出した時だ。
「急にどうした?」
俺の頭にあの時の光景がフラッシュバックされる。唯一安心できるのは、希からはあの時の真姫の様な黒さは一切感じないところだろう。
「零君、最近思いつめた顔ばっかしてるように見えてな」
「そ、そうか?」
「ウチらの練習を見てる時もそう。何かを真剣に何かを観察してるような気がするんよ」
さすが希、細かいところによく気付く。μ's結成時からあれこれと周りに気を配っていた、影の功労者だしな。
「それで、何か零君に悩みがあるんかと思って話しかけたんや」
「・・・」
コイツはいつも色々なコトに気が付くし、希になら話してもいいかもしれない。もしかしたら、現在のμ'sの惨状を知っているかもし。
「じゃあ少し聞いてくれるか?」
「もちろん!」
何だか希がすごく嬉しそうだ。そんなに俺の相談相手になるのが嬉しかったのか。それとも……
~※~
「何で生徒会室?」
「まだ朝も早いから、エリチも他の役員の子も来ないから大丈夫や。それに、あまり人には聞かれたくないんやろ?それやったらココが一番やと思うけど」
「そうか……」
簡単にココへ誘われた様な気がする。こんなにホイホイ着いて来て大丈夫なのだろうか?
「それで?零君悩みって?お姉さんが解決したるよ」
「へーへーそれは頼もしいことで」
穂乃果や凛の影に隠れがちだが、希もかなりやんちゃする時がある。μ's内で一番、まじめな時とふざけている時の差がある人間だと思う。
「最近のμ'sのみんなについて、何か思うコトはないか?」
「みんな?いつも以上に真剣に練習してるよ。それは零君も見に来てるから分かってるやろ?」
「ああ、そうなんだけど……他に何かないか?ホラ、あの子の様子が少しおかしいだとかさ」
「う~ん、ウチはあまり気になってへんな~。みんながどうかしたん?」
「いや、穂乃果とことりが最近俺にベッタリでな。学校にいる間は、授業の時間以外いつも一緒にいるよ。授業中も熱い視線を向けられているけど」
「零君的には嬉しいことなんじゃないの?」
「アイツら普通じゃないんだよ。過剰すぎて逆に不気味だ。3年生の方はどうなんだ?絵里やにこの様子はどうだ?」
「特に気になるところはないよ」
「そうか……」
話を聞く限りでは3年生は問題ない様だ。とりあえず目標は穂乃果とことりだな。
~※~
「全く、零ってば何処へ行ったのよ」
真姫は学校中を駆け回っていた。先程、2年生教室に立ち寄ったのだが海未の説教が教室中に響き渡っていたため、入るのを躊躇した。その時にチラッと教室を覗いたが零はいなかった。
「電話しても出ないし、どういうこと?」
電話もメールもしているが、彼から返信が返ってくることはなかった。
「あら?何をしているの?真姫」
「絵里……」
真姫の目の前に絵里が現れた。零のコトに集中していたのか、声をかけられるまで絵里の存在には気付かなかった。
「廊下は走っちゃダメよ。あなたも生徒会長がいる部活に入ってるんだから、そのぐらいの規則は守ってほしいわね」
「そうね、悪かったわ」
真姫は絵里の言葉がいつも以上に冷たいと思った。それに、ちょうど真姫の進行方向の真ん中で仁王立ちをしている。まるで、ココを通さないと言わんばかりに。
「ちょっとそこをどいてくれない?通れないんだけど」
「この先は生徒会室しかないでしょ。鍵は私が持ってるし、行っても意味ないわよ」
「別にいいわ、意味なくても。私はココを通りたいの」
「そういえば、運ばなければいけない資料があったの忘れてたわ。真姫、ちょっと手伝ってくれない?」
「……嫌だと言ったら?」
真姫は確信した。絵里は確実に自分を生徒会室へ向かわせたくないのだと。
「ついでにことりに頼まれていた衣装の材料も届いたのよ。結構な量だから、できれば手伝って欲しいんだけど。衣装が早く完成すれば、みんな喜ぶと思うんだけどなぁ」
絵里は真姫の問いかけを完全に無視した。言葉を巧みに利用して真姫を自分の土台に誘い込む。
「くっ……わかったわよ」
μ'sのコトを引き合いに出されると真姫は弱い。歌の作曲を一人で受け持っている彼女だからこそ、μ'sに入れ込む意気込みも強いからだ。
「ありがとう、真姫。届いたものは職員室の隣の教室に保管されているから、先に行ってて。教室にカバンを置いてくるから」
「え、ええ……」
絵里は真姫を先に行かせる事で、生徒会室に一切近寄らせないつもりだ。真姫がこの場から離れていく時も、絵里はその場から動かなかった。
(フフフフ……これでOKね。後は希に任せましょう)
~※~
「結局希は気付いてなかったのか……」
あの後も希と少し話したが、希は初めて聞いた様な顔をしていた。
「『変なコトがあったら、ウチのスピリチュアルパワーが察知してくれるから大丈夫や』って言ってたけど、既に察知できてないんだよなぁ」
どうせなら真姫の時から察知して欲しかったが。
「あっ!零君、おはようにゃー!」
「うわ!凛!勝手に抱きつくな!」
後ろから声を掛けられたと思ったら、飛んできた凛に思いっきり抱きつかれた。俺の首元に腕を回し、ヒョコっと顔を出す。
「零君を見たら、こうしたくなっちゃって」
「わかったから離れろ」
「もう少しだけ!」
「ったく…」
今日だけで何回ホールドされるんだ……
「にしても今日は早いな。どうしたんだ?」
「凛、今日日直なんだ」
「わざわざ日直で早く来るとはご苦労なコトで」
ちなみに、俺は日直だからって早く来たコトは一度もない。
「そうしないと真姫ちゃんがうるさいんだもん。『凛は仕事が遅いから早く来なさい』って」
「ホントにアイツは容赦ないな……それじゃあこんなところで油売ってる場合じゃないだろ」
「でも零君とこうしたかったんだにゃ!」
「どうして?」
「最近、かよちんが零君の話ばっかしてて」
「ああ、聞いたよ」
「その度に胸がチクチクするんだにゃ。初めは気のせいだと思って流していたんだけど、少し前からチクチクが痛みに変わったんだにゃ」
そ、それって……
「その後からかな?かよちんが零君の話をする度にイライラするんだ…今日、登校している時も同じ話するんだよ……いい加減うっとおしいなぁって……」
「凛、お前……」
凛の声が段々と震えてくる。いつもの元気いっぱいの彼女とは違う。怒りや憎しみといった負の感情しか込められていない。
「何回同じ話をすれば気が済むの!!かよちんだけの零君じゃないにゃ!!」
「!!!」
突然、凛が大声で叫びだした。その声は、心奥底に秘められている感情をすべて吐き出している。
「正直言って邪魔だよ!!零君を取らないでよ!!凛ももっと零君とお話したいにゃ!!」
「凛!!」
「!!!」
「・・・」
俺は完全に言葉が出なかった。あの凛が花陽のコトをここまで罵倒するなんて、思いもよらなかったからだ。
「……ごめん零君。もう行くにゃ……」
スっと俺から降りた凛は、足早に廊下を駆けていった。
あの怒りの篭った凛の声は、明らかにμ'sのみんなを消し去ろうとしていた真姫と同じものだ。このままではいずれ同じ道を辿ることになるだろう。
「くそっ!穂乃果たちのコトで手一杯だっていうのに……ん?」
何気に携帯を見たら、真姫からの着信やメールが溜まっていた。
「やべ!忘れてた。何かあったら連絡しろって言ったのはこっちなのに……俺が連絡しなかったらアイツ怒るよな」
希から聞いた、現在の3年生の状況や今さっきの凛のコトなど、報告しなければならないコトが一杯だ。
画面をタッチして真姫に電話をかける。
プルルルルルルルル
プルルルルルルルル
・・・
「出ない……」
今度は真姫の方から音沙汰がなくなった。この学校にいるコトは確かなんだが…本でも読んでいて気付かないとかか?
まだ時間はあるので、俺は1年生教室へ向かった。
~※~
「零君、だいぶ精神的に辛そうやなぁ」
希は零と凛の会話を影から聞いていた。まだ朝も早く、生徒が少ないこともあり、聞いていたのは希だけだ。
「でも、それも今日で終わり。ウチが癒してあげる……一生な……」
黒い片鱗は再び近づく……
という事で第二章の二話でした。
新しく希、絵里、凛が話に絡んできました。前々からヤンデレの予兆があった人もチラホラいますけどね。
感想を頂いた際、零君に精神安定剤や胃腸薬をプレゼントしてくれた方がいらっしゃったので、それを飲んでこれからも頑張れ!(投げやり)
でも、今回は癒してくれるそうですよ…?
ではまた!