先に言っちゃいますが、ほむらが持ってきたクーラーボックスの中身は大量のジビエ肉です。
2025/12/7 タイトル変更
(リン視点)
私たちは今、なでしこのお姉さんの車でキャンプ場に向かっている。
「リンちゃんたちはどこで食材買ってく?」
助手席に座っているなでしこが私に問いかける。
「この先にゼブラっていうスーパーがあるよ。暁美さんも...って寝てやがる...」
「あはは...じゃあそこにしよう。」
私の隣で寝ている女の子、暁美さんは初めてのキャンプが楽しみの余り寝れなかったそうだ。やれやれ、クールキャラなのに案外ガキなもんだぜぃ。
「それどの辺りにあるの?52号沿い?」
「あ、はい。52を右折して5分ぐらいのところです。」
ハンドルを握るなでしこのお姉さんが話しかける。しかし、ほんと美人だよなぁ...あと車がめっちゃ快適...!一方でなでしこはというと...
「あ~む。」
お徳用グミを食べていた。こっちはムニョムニョしてるけど本当に姉妹なのか?
そうこうしているうちにゼブラの駐車場に進入する。
「なでしこにリンちゃん、着いたわよ。ほむらちゃんを起こしてあげて。」
「わかった!ほむらちゃん、スーパーに着いたよ!!」
「......」スピー
なでしこが大きな声で暁美さんに声をかけるが、彼女は起きない。
「起きろー。買い出しするんじゃなかったのか?」
今度は私が暁美さんの肩をペシペシ叩きながら言う。
「......」スー...
ダメだ、起きない。どうしたもんか...
「なかなか起きないわね。」
「ダメだねこりゃ。」
なでしこはそう言いながらこっそり暁美さんの寝顔を撮る。
「おい、サボるな。」
「えへへ、可愛くてつい。」
「まぁたしかに。」
私も1枚撮ろうとしたとき、1件のメッセージが届いてた。
晶:{やぁやぁ
晶:{キャンプは順調ですか
送り主は晶だ。...待てよ、彼女は確か暁美さんとは長い付き合いだって言ってたな。どうしたら彼女が起きるか聞いてみるか。ついでに合法的に寝顔撮れるし。
リン:{今スーパー着いたとこ
リン:{(ほむらの寝顔の写真)
リン:{さっきから暁美さんがこんな感じで起きない
晶:{えすご
晶:{ほむらの寝顔を撮れた人ってなかなかいないよ?
リン:{マジか
晶:{ほんで、ほむらを起こす方法ね~(考える顔)
晶:{【
リン:{まだやってない
晶:{(1件のリンク)
晶:{この動画を大音量で流せば大抵の人は起きるゾ☆
リン:{わかった
リン:{ありがとう
晶:{あ~そうそう
晶:{できたらでいいからその様子を動画で撮ってウチに送ってくれる?
こいつ、絶対に遊んでるな。まぁ面白そうだしいいか。
リン:{楽しみにしとけ
晶:{サンキュー!
晶と密約し、私はおもむろに手をポッケの中に突っ込む。だが、作戦に必要な道具は無かった。
「...なでしこ、イヤホンって持ってる?」
「持ってるけど、それがどうしたの?...あ、なるほど。」
「...あれをやるのね。」
質問をしただけで2人は私の作戦を理解した。
「リンちゃん、これ!」
「ありがとう。ついでにスマホも貸してくれる?」
「スマホも?」
「晶から動画撮ってくれと頼まれた。」
「あぁー...」
なでしこからスマホとワイヤレスイヤホンを受け取る。Bluetoothでスマホと接続したイヤホンの片方を暁美さんの耳にそっと付けた。そして、なでしこのスマホでYouTubeを開き、【ATS目覚まし時計】と検索する。私はそのまま動画を再生した。
↑リン視点
☆☆☆ーーー☆☆☆
↓ほむら視点
「なでしこ、ついでに缶コーヒー買ってきて。甘いやつ。」
「うん、わかったー。」
私たちは車から降り、ゼブラの入り口に向かう。
「......(沈黙)」
「ほむらちゃん、大丈夫?」
「ご、ごめん暁美さん...」
「大丈夫よ。志摩さんと各務原さんは悪くないわ...」
「全然大丈夫な顔じゃないよ!?」
さて、なぜ私がこんなにも疲弊しているのか。ちょっとだけ遡ってみよう。
ーーー(数分前)ーーー
「...?」
私は右耳になにか入れられたような違和感を覚えた。その瞬間、
ジリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!キンコンキンコンキンコンキンコンキンコン......
「うぴゃあ!?ナニナニナニナニナニナニナニナニナニナニ!?!?!?!?」
突然私の右耳からベルとそれに続く警告音のようなものが大音量で流れた。それはうるさいを通り越して耳が痛くなるような感じだ。私は急いで右耳に付けられたモノを取り外す。
「...イヤホン?」
周りでは各務原さんと志摩さん、桜さんがこちらをじっと見ている。
「おはよう、ほむらちゃん!」
「やっと起きた。」
「え、どういう状況なの?」
私の質問に志摩さんが答える。
「スーパー着いたから起こしてたんだけど、なかなか起きなかったから晶に相談したんだよ。そしたら「片耳だけでもいいから最大音量でうるさい音を流してみたら?」って言われてやってみた。」
「そういうことなのね...」
「ほむらちゃん、もししんどかったら少し休んでからでもいいのよ?」
「うぅ...そのお言葉が染みます...」
ーーーーーー
時を今に戻そう。
「それで、2人はお肉何買ってく?」
「そうだな...豚バラ、カルビ、豚トロ、ホルモン、ハラミ、タン、ロース...」
「あ、私豚トロすき~。ほむらちゃんは?」
「えっ!?えっと...」
私は思わず硬直してしまった。というのも、私はイノシシとかシカを狩って大量の肉を用意したからだ。かと言って、何も買わないという回答は明らかに良くない。
「ほむらちゃん?」
「...実は、何買うかまだ決めてなくて。」
「おいおい、焼き肉キャンプやろうって言ったのはどこのどいつだよ。」
「ははは...」
私は無難な解答をした。まぁ何買うか決めてないのは事実だしセーフよセーフ。
ちなみに精肉コーナーにはバラとカルビしか無く、志摩さんはショックで泣いていた。
「炭焼きだったら、串ものだっておいしいよ!!」
とフォローしていた各務原さんがとてもいい子すぎて感動しちゃったわ...
☆☆☆ーーー☆☆☆
私たちは一通り買い出しをし、ゼブラをあとにした。
「いや~まさかあおいちゃんのバイト先だとは思わなかったよ。」
「しかも私のこと認知してたし。あの子何者?」
「彼女はなでしこと同じ野クルのメンバーだったはず。」
「私がみんなの様子を送ってるんだよ~。」
「あ、なるほど。」
どうやら私と志摩さんが一緒に写っている写真を各務原さんが野クル、野外活動サークルのメンバーにも送っていたみたい。もちろん伶や晶にもだ。
「にしても犬山さんだっけ?なんかお母さんみたいな感じだったわね。」
「野クルのおかんってか。」
「その例えをしたのほむらちゃんが初めてだよ。」
「あら意外。野クルのみんなは犬山さんの事をなんて呼んでるの?」
「私は"あおいちゃん"かな。晶ちゃんは"あおい"で、あきちゃんは"イヌ子"って呼んでるよ。」
「「イヌ子...?」」
「そもそもあきちゃんって誰よ。」
「大垣千明ちゃんっていう野クルの部長の子だよ~。」モグモグ
部長さん、あだ名のセンスがなさすぎじゃないかしら...
「うまー...」
...各務原さん、さっきから何食べているんだろう。少し湯気が出ているのとサクッという音がしているから揚げ物なのは間違いない。というかさっきお徳用グミ1袋平らげたって聞いたんですけど。
「......」
となりでハンドルを握る桜さんが無言で車の窓を開けた。冬の冷たい風が各務原さんに向かって吹く。
「おおお姉ちゃんさむいいい!!」
「メンチカツ臭が車内に充満すんのよ。」
私はその様子をただただ静観するしかなかった。
☆☆☆ーーー☆☆☆
「そういえば、四尾連湖キャンプ場なんてよく知ってたね。」
「確かに。あなたつい最近まで静岡に住んでたんでしょう?」
「うん、実はね...」
各務原さん曰く、四尾連湖キャンプ場を知ったのは野クルのメンバーに良いキャンプ場がないか聞いたときだそう。どうやら野クルのキャンプ地候補だったようで、今回のキャンプはその偵察も兼ねてらしい。
「富士五湖よりかは知名度低いけど、紅葉ではそこそこ有名だよ。」
「そうなの!?」
「らしいわね。」
そんな会話をしていたら、あることを思い出した。
ーーーーーー
話は4日前、イノシシを狩り終え猟友会の事務所に戻ったときの事である。
「ほむらさん、お疲れ様~。はいこれお茶。」
「ありがとうございます、天野会長。」
「にしてもすごいわね~。猟友会に入ってから4体のイノシシを駆除するなんて。」
「いや、私よりスゴイことやってる子が2人もいるじゃないですか...」
「あ~あの2人は異常よね...」
あの2人とはもちろん伶と晶のことだ。彼女たちは既に7体の駆除対象を倒しており、猟友会の中では期待の新人として語られている。私には到底及ばないのだ。
「でも、ほむらさんもはっきり言って異常よ。まだ入りたてなのにイノシシ2体を一瞬で駆除しちゃうんだから。それも無傷でね。まぁ転生者だしそれはそっか。」
なんか天野会長に納得されちゃった...って、ん?今私のこと転生者と言ったわよね?
「...どこでその情報を?」
「どこもなにもここにある駆除履歴を見れb」
「そうじゃなくて、なんで私が転生者だってことを知っているんですか?」
「あれ、言ってませんでしたっけ。私あの時の女神です。」
「え"」
うそでしょ?なんで女神さまが私の目の前にいらっしゃるのよ。
「実は天界の規定で数年に一度地球で暮らすことになりまして。」
「それ私に言って大丈夫なんですか...」
「転生者だったら言っても大丈夫!って上司がおっしゃてました。もちろん秘密よ?」
なんか都合いいわね。っていうことは、彼女たちも知っているのかしら。
「伶さんと晶さんにもこのことは言ったんですけど、やはり同じような反応をしていましたね。」
「普通そうでしょ。あとしれっと人の心の中読まないでくださいびっくりします。」
私はそう言いながら今日の活動内容を活動報告書に記入する。
「おっとこれは失礼しました。それで、伶さんと晶さんから聞いたんですけど、今度四尾連湖にキャンプしに行くんですよね?」
「そうですね。彼女たちは参加できないようですけど。」
「あら。ではお1人で?」
「いえ、高校の友達と3人で行く予定ですが...それがどうかしたのですか?」
女神さま...いや、天野会長は真剣な顔で口を開く。
「実を言うと、ここ最近鰍沢の方でイノシシが人を襲う事例が発生したの。」
「...!」
「ほむらさんは全然大丈夫かもしれないけど、お友達はただの一般人でしょう?だから、くれぐれも襲われないように気を付けてね。」
「承知しました。遭遇したら被害が及ばないうちに駆除するか逃げるようにします。」
「一応言っておくけど、天界の立場として転生ボーナス関連の事を他人に見られても大丈夫。ただ、万が一見られたら説明はあなたたちが行ってね。」
「はい。」
ーーーーーー
時を戻して、現在。
「ふぉぉぉぉ!!!」
「各務原さん!?」
(犬ダッシュ...)
私たちは四尾連湖キャンプ場に到着した。駐車場の目の前には四尾連湖が広がっている。
「ここが四尾連湖か~。」
「各務原さん、足速いわよ...」
さすがは紅葉の名所、四尾連湖の周りは一面黄色に染まっている。
「キャンプに来られた方々ですか?」
「あ、はい。予約した各務原です!」
管理人さんに声をかけられ、私たちは受付のある建物に移動する。管理人さん曰く、キャンプサイトは対岸に位置しており、車の侵入はできないから湖沿いを歩いて行く必要がある。クーラーボックスとかどうやって運ぼうかしら。
「あの、手で運ぶには重い荷物があるんですけど、どうすればいいですか?」
「でしたら、入口のところにある荷車は自由に使っていただいて大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
私たちは限られた荷車になんとか荷物をまとめた。私がまとめた荷物があまりにも異質な点は置いておこう。
「じゃ、行ってくるね。お姉ちゃん。」
「ん、行ってらっしゃい。明日の昼過ぎに来るから起きてなさいよ。」
「わかってるよー。」
「2人とも、夜は冷えるから気を付けてね。」
「あ、はい。」
「「ありがとうございました。」」
私たちのために往復で送迎してくれた桜さんとはここでお別れ。本当に頭が上がりません。
☆☆☆ーーー☆☆☆
「紅葉がきれいだねー、2人とも。」
「ちょうど見頃みたいだしね。」
湖沿いにある遊歩道の周りには、黄色く染まった紅葉とそれを映した四尾連湖がある。自然とはなんて雄大なのだろう。
「そういえばここって紅葉以外にも、牛のお化けの言い伝えで有名らしいね。」
「そうなのね。もしかしたら四尾連湖から突然出てきたりして。」
「ないない(笑)」
志摩さんと牛のお化けについて話していたら、前を歩いていた各務原さんが転んだのだった。
9話でした。勉強の合間に書いたので5日かかりました...
それでは次回も何卒。評価・感想お待ちしております。
番外編を書こうかな~って考えてます!どのお題がいいか選んでください!!
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