そして今作は晶視点が多くなる予定です。
#2 ふじさんと小さな出会い①
「ほな先行ってるわ~」
「あぁ、わかった。」
伶に先に学校に行くと伝え、自宅のドアを閉める。そのまま自宅のガレージに眠っているウチの相棒のもとへ向かう。
「今日から頼むで、相棒。」
マカセトケ!と聞こないはずの声がした気がする。この子がウチの相棒である"CT125・ハンターカブ"だ。
「うひ~寒いねぇ...」
4月にウチらが山梨県の身延へ引っ越してから7か月。ここでの生活もだいぶ慣れた。あれから16歳を迎えてすぐに小型限定普通二輪免許を取得し、125ccの原付で登校している。ちなみに通っている県立本栖高校は、身延線を使う場合は30分くらいかかる一方、バイクの場合は遅くても20分で行ける。
バイクはウチが今まで通りボカロ関係の動画と新しく入れたバイトで稼いだ金で買った。一応神崎家は毎月の全体収入がかなりあるので、
「バイクは僕が買おうか?」
と父が言ったのだが、自分の相棒は自分で買うと決めていたのでやんわりと断った。ちなみに父がバイク関連の仕事をしているので、発売日より1か月早く納品された。とても感謝している。
「...ちょっと冷たいけど、風が気持ちいい。」
そう呟きながら相棒と共に学校へ向かう。
☆☆☆ーーー☆☆☆
「うぅ、さすがに誘導モータ2つは重すぎる...」
「「いわんこっちゃない。」」
1週間分の授業を終えた金曜日の放課後。なぜ伶が誘導モータ2つをリュックに入れて持ち帰っているかというと、先月本栖高校で文化祭があったからだ。
「どうせなら有志で出店してひと暴れしようかしら。」
と、ほむらが彼女らしかなぬ発言をしたのがきっかけでこうなった。ウチはLEDマトリクスパネルによる行先表示再現、ほむらはLCD再現を行ったので荷物はそこまでない。ちなみに出店した結果は大成功を超えた盛況で、2日目には情報を聞きつけたインバータ界隈と行先表示器界隈の重鎮が訪問するほどだった。
「ほむらぁ...お前のせいだからね...(迫真)」
「いやモータを持ってきたのはあなたでしょ?私は一言も言ってないんだけど...」
「うっ...」
「にしても盛り上がったよな。た〇い〇氏にI〇氏、m〇〇a氏、A〇u〇a氏やま〇〇な氏が来たのは想定外だったけど。」
「ほんとにそうよ...最初名乗られた時は発狂しかけたわ。」
「晶ぁ~、お前バイクだろぉ~?持てよ持てよ。」
「厳しい。」
「なっ!?フラれた...」
「浮気したら殺すわよ。」
「ゴメンナサイ」
伶には悪いけど、ウチは傍観するしかない。そう心の中で手を合わせた。
「伶、悪いけどウチは先帰るわ。」
「そんなぁっ!それが姉に対する扱いなのかっ。」
「ほむら、ウチの姉御がすみません()」
「大丈夫よ。私が後で扱くから。」
(わ...悪い顔しとるなぁ...)
「終わった...」
そんなやりとりをしながら、ウチはハンターカブの始動準備を終えた。パールシュガーケーンベージュをまとった真新しいボディが輝いている。
「ほな、またあとで。」
「「うい~。」」
↑晶視点
☆☆☆ーーー☆☆☆
↓リン視点
「なにやってんだあいつら...」
「なんか盛り上がってるね~。」
「うお、斉藤か。」
「あの子たちが気になるの?」
「いや、べつに...」
「...!そういえばリン、今朝真新しいバイク乗って登校している子がいるって言ってたよね。」
「うん。」
「あそこに銀髪の子がいるけど、あの子が押しているのバイクってそれのことじゃない?」
斉藤が指をさす方向に、私が気になっているバイクを押す女の子がいた。
「あ、ほんとだ。あれ晶さんのだったんだ。」
「晶さん?あの子の事知っているの?」
「私のクラスメイトだよ。それに、この前の文化祭で電車の走行音と電光掲示板に出す行先データの再現をしているブースがあったでしょ。」
「あ~あそこの子たちかぁ~。すごい人気だったよね。」
「うむ。」
まさかあいつがバイクに乗るなんてな。しかもまだ発売されていないハンターカブのニューモデルだし。あれの発売日って来月だったよな?
「リンももうじきバイクに乗るんでしょ。カブに乗るリン、楽しみだな。」
「いや、私が乗ろうとしているのはスクーターだし。」
「そうだっけ。ところでリン、明日キャンプ行くんだよね?どこ行くの?」
「いつものとこ。あそこ松ぼっくりとか大量に落ちているし。」
「そっかぁ。気を付けてね。」
↑リン視点
☆☆☆ーーー☆☆☆
↓晶視点
土曜日の夕方、ウチはバイクの試運転2日目を兼ねて本栖湖に行くことにした。なんでもその場所は1000円札の絵の舞台にもなっているらしい。
「父さ~ん、ちょいと夜の本栖湖に行ってくる。」
「そういえばそうだったね。気を付けるんだよ。まだ乗りたてなんだから。」
「わかってるよ父さん。」
「それと、帰ってくる頃は遅いだろうから、これを持っていきなさい。」
そう言って父はカップ麺とお湯を沸かす機械を渡してくれた。
「ありがとう。それじゃ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
父にそう言ったあとガレージに向かう。
「今日もよろしくな、相棒。」
オウ!と返事が来たような気がする。まぁいいか。
☆☆☆ーーー☆☆☆
今日の目的地である本栖湖は県道9号線と国道300号線を進めば35分で着く。というかそれ以外の行く手段がない。
「さみ~!流石に夜は厳しかったか...」
山の寒さがバイクで走るウチを襲う。でももう市ノ瀬駅の近くまで来てもうたし...
「う~~!上等じゃゴルァ!!」
ウチを苦しめる気温が悪いわけでもないのに悪者扱いにしながら、常葉川にそってひた走る。この先は甲州いろは坂と呼ばれる難所があるらしい。まぁチャリとは違ってペダルを漕ぐ体力を必要とせんから大丈夫やろ。...と思っていた時期がウチにもありました。
「なんやこのヘアピンカーブはぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
実はこの甲州いろは坂、本栖湖に近い場所では日光のいろは坂に匹敵するほどの急カーブが連続している。そういった事前情報をまともにチェックしていなかったウチにバチがあたった。
「でも...これ楽しいかもしれへん!」
そして気が付いたらヘアピンカーブの手前の直線で速度を落とし、半クラッチを使う技を連続で行うコツをつかんでいた。やばい、ホンマに楽しすぎるって!!本当はもっと楽しみたいところではあるが、今日の目的地である本栖湖に到着した。このあたりには浩庵というキャンプ場がある。それもあってか、綺麗なトイレ施設があった。ウチはそこでトイレ休憩をした。
「ふぃ~スッキリしt...」
そう言い切ろうとした瞬間、ウチの目の前にチャリを持った女の子が泣き顔でこっちを見ていた。その子はスマホのライトで彼女自身の顔に当てていた。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」
思わずトイレのドアを勢いよく閉じる。そししてそのまま鍵を閉めた。なんやあれ!怖すぎて自分もびっくりするほどの高周波を口から出してもうたやん!!
「ふえぇぇぇぇん!あ"げ"てよ"ぉぉぉぉ!!」
「うぉっ、何事だ!?」
☆☆☆ーーー☆☆☆
「んで、今日山梨に引っ越しに来て、自転車で富士山見に来たんだけど...」
「疲れてベンチで横になったら熟睡してもうたと。」
「へゔ。」
あのあと、たまたま本栖湖でキャンプをしていた、クラスメイトの志摩さんが駆けつけてくれた。そして、なりゆきでウチもキャンプ場に少しお邪魔することになり、今に至る。もちろんデイキャンプ料金は支払った。
「っていうかあそこで寝てたん!?普通そんな熟睡できないと思うんだけど...」
「えへへ。」
「褒めてないぞ。一応あっちは坂道だし下まですぐだとは思うけど。」
「むりむりむり!ちょうこわい!!」
髪の毛が桃色の少女、各務原さんは涙目にこう言う。まぁ確かに怖いわな...
「家に連絡して迎えに来てもらうのは?」
「それだ!」
志摩さんの助言に対し、各務原さんはスマホを探し出す。しかし、取り出したのはスマホではなくトランプ52枚セット(税込み430円)だった。どうたらスマホを家に置いてきてしまったそうだ。追い打ちをかけるように各務原さんのお腹が鳴る。
「...なぁ志摩さん。これちょっとまずくない?」
「うん...あ、ラーメン食べる?」
「え!?くれるの!?」
「1500円。」
「じゅっ...15回払いでお願いしまふぅ...」
「ウソだよ。」
「志摩さん、笑えん冗談はやめて差し上げろ()」
「あ、でも...晶ちゃんの分はあるの?」
「あ~...2人分しかないや。どうしよう。」
「そこは心配いらんよ。ウチも念のため持ってきたし。」
そう言いながらウチは日清のカップヌードルとコッヘル、ポータブルストーブを取り出す。
「なら、3人で食べれるね!」
そういった各務原さんは天使のような笑顔だった。
2話でした。原作だと記念すべき第1話といったところです。
次回は後編です。お楽しみに。評価・感想もよろしくお願いします。
番外編を書こうかな~って考えてます!どのお題がいいか選んでください!!
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