転生少女たちとゆるキャンパー   作:MT75B

48 / 48
45話です。
2026/9/10
なんか違うなーと思い、色々修正。


#45 グルキャン計画となでしこのモヤモヤ

前回のあらすじ

 

なでしこのソロキャン、無事完遂。

 

↑No Side

☆☆☆ーーー☆☆☆

↓なでしこ Side

 

あおい「なでしこちゃん、ソロキャンどやった?」

なでしこ「よかったよ~。富士宮観光できたし、キャンプ場も夜景がきれいなとこでね~___」

 

ソロキャンから明くる最初の月曜日、私と晶ちゃん、あおいちゃんの3人はいつものように野クルの部屋に向かっていた。今日は私がソロキャンしてきたときの話を聞くために集まるといった感じらしい。

 

なでしこ「あ~でも、ご飯食べ終えた後が少し暇だったかな。キャンプ場が圏外だったから、夜景を見ながらぼーっと考え事をしていたんだけど......」

 

私ははそこまで言い、顔をあおいちゃんたちに向けて続ける。

 

なでしこ「そしたら、またみんなとキャンプ行きたくなっちゃった!」

晶・あおい「そっかぁ。」

なでしこ「これからはグルキャンとソロキャン、交互に行こうと思います!」

晶「ソロとグル、どっちも楽しんでてエェナァ!」

なでしこ「うへへ~、いいでしょ~。」

あおい「なら、次はグルキャンせなな~。」

 

このあと、部室のドアを開ければ、のこぎりと斧を持って変なポーズをしていたあきちゃんがいたのはまた別のお話。

 

ーーーーーー

 

美波「でしたら、3月の頭に【伊豆】へ行くのはどうです?」

 

あきちゃんと合流した後、グルキャンをしたい旨を鳥羽先生に伝えるために私たちは職員室へ訪問。そこで先生が提案したのは、伊豆のどこかでキャンプしてみないかというものだった。

 

千明「伊豆キャンっすか!」

なでしこ「いいよね、伊豆!」

あおい「うん、ええよね!」

美波「伊豆なら冬でも比較的暖かいですし、山中湖でお世話になった飯田さんにもお礼に行きたいですしね。」

 

伊豆だったらここより南の位置にあるし、早咲きの河津桜もある故から暖かいのは間違いない。

 

晶「...ところで、山中湖でお世話になった飯田さんって言うてましたけど、確か酒屋さんの方でしたよね。」

美波「えぇ、そうですけど...」

晶「先生、実は池池目的で行きたかったりするんじゃないですか?」(・∀・)ニヤニヤ

美波「へっ!?い、いや、そういうつもりじゃなくてですね!?」

なでしこ「あはは...やっぱ先生は先生ですね...」

美波「各務原さん!?」

 

お酒目的というのもあることがバレたのか、先生は動揺している。

 

千明「つーか、なんで晶は先生の気に入ってる酒の名前知ってるんだ?」

晶「伶と恵那から聞いた。」

千明・あおい「あぁ...なるほど...」

美波「うぅ......」

晶「ま、まぁ!それで、どうして3月なんですか?」

千明「たしかに。まだ1か月も先ですよね?」

 

鳥羽先生は気持ちを切り替えるためか、コホンと咳ばらいをしてこちらに顔をむける。

 

美波「晶さん以外はこの前キャンプしたばかりですよね?」

なでしこ「はいっ、私も昨日行ってきました!」

美波「伊豆でキャンプとなると旅費もかかりますし、少し間を開けた方がいいかと思いまして。」

千明「たしかに、この前のキャンプでイス買っちまったから資金不足は否めない......」

あおい「せやなぁ。」

なでしこ「伊豆で美味しいもの食べたいもんね。」

晶「伊豆の魚はマジで美味いしな~。まぁ、高いものもあるけど。」

 

各々の懐事情や伊豆のうまいもんをたくさん食べたいという気持ちが、先生の意見を納得させる。

 

千明「先生もお金ないですもんね、主にお酒で。」

美波「そ、そんなことはないですよ??それに、今月末には期末テストがありますし。」

なでしこ・千明・あおい「そうだった!!」

 

そういえば2月にテストがあるんだっけ......う~、すっかり忘れていたよぅ!

 

千明「ね?大垣さん。」

 

本栖高校は前後学期制で、あきちゃんは後期中間テストで大失敗したらしい。幸い赤点は免れたものの、このままだと補修コースなのは間違いない。

 

晶「......っていうかさ、ここの学校のテストそんなに取りにくいか?ちゃんと勉強してればそれなりの点数行くと思うんやけど。」

千明「う"っ!で、でも聞いてくr」

あおい「前日にならんと火つかんって何回も聞いたわ。」

千明「グハ」

なでしこ「あきちゃん、勉強はコツコツやらないとダメだよぅ。」

千明「......」

美波「皆さんバイトや勉強をしっかり頑張って、皆で行けるようにしましょう?私も勉強なら協力しますから。」

千明「う、うす...」

美波「っと、そういえば薪を貰いに行くんでしたよね?大垣さん、そろそろ出ましょうか。」

千明「はい。」

 

ーーーーーー

 

晶「そうだ。先生、テスト休みに友人と旅行行くことになったので、把握よろしくお願いします。」

 

職員室から出て廊下を歩きながら、晶ちゃんは先生に旅行へ行くと言った。

 

美波「は、はい。それで、場所は?」

晶「三陸です。」

美波「......三陸?」

晶「はい、三陸です。」

なでしこ・千明・あおい・美波「えぇっ!?」

 

さ、三陸って岩手だよね!?そんな遠いところに行くの!?

アキちゃんとあおいちゃんの口はあんぐりと開き、鳥羽先生は驚きの余り目が点になっていた。

 

美波「いや、その、バイクなんですか?」

晶「今回は列車で行きます。さすがにバイクで三陸は遠いっす......」

美波「ですよね......じゃなくて!流石に高校生だけで行く距離じゃないでしょう!?」

晶「その件なんですけど、どうやら私の母と同行者の母も行きたいと言っておりまして......少なくとも先生が考えられているようなことは起こらないと思います。」

 

へぇ~、お母さんと一緒なんだ。仲いいなぁ。

 

なでしこ「同行者って言ってたけど、誰と行くの?」

晶「綾乃だよ。」

なでしこ「え!?綾ちゃんと一緒に行くんだ!?」

晶「テスト最終日の翌日に身延来るいうてたで。せっかくだし会ったら?」

なでしこ「うん!ありがとう!」

 

そういえば、綾ちゃんと最後に会ったのは正月だっけ。もう1か月経ってるのかぁ。

 

美波「晶さんとお友達、お二人の保護者の方も同行されるなら安心ですが、くれぐれも事故の無いように気を付けてくださいね?」

晶「はい。」

 

ーーーーーー

 

あおい「ところで、晶ちゃんは前回何位だったん?結構余裕にみえるけど。」

晶「今んとこずーっと学年1位。ちなみに伶も1位やで。」

あおい「え!?それすごない!?」

晶「まぁ転生者バフはあんま役に立たないし、あったとしても自分のためにならんわけやからね。特に工学関連はコツコツ勉強してる。他分野でわからんとこはほむらとか杏子、伶にも聞いてる感じ。」

あおい「はぇ~、晶ちゃんはえらいなぁ。どっかの誰かさんも見習ってほしいわぁ。」

千明「うぐっ。」

なでしこ「じゃあさ、今度数学教えてほしいな!」

晶「ええでー。」

千明「......アタシにも教えてくれ。」

晶「おう。一緒に乗り越えるぞ。」

 

☆☆☆ーーー☆☆☆

 

あれから杏子お姉ちゃんやリンちゃんをはじめ、野クルに来れなかった人や野クルに入ってない人にも声をかけ、最終的には綾ちゃんを除いてクリキャンに参加したメンバーが全員来る形となった。

それから私たちはバイトやテスト勉強漬け!野クルにも行きたかったけど、お金が無かったら伊豆の地の物をいっぱい食べれないし、テストで悪い点取っちゃったらそもそも行けなくなっちゃう可能性があるからね。

 

なでしこ「あぁ~またやり方間違えた!」

伶「この2つの式って混乱するよね。私もわかるよ。」

 

私の場合、可もなく不可もない成績だけど、数学とか物理がちょっと苦手。呪文のような公式がいっぱい出てくるし、覚えられたとしても計算量が多くて間違えちゃうことがある。

 

なでしこ「伶ちゃんはここの部分どうやって覚え間違えないようにしてるの?」

伶「$_n\mathrm{P}_r$の計算式だけを覚えるようにしてる。」

なでしこ「え、2つ覚えなくていいの?」

伶「うん。$_n\mathrm{C}_r$は$_n\mathrm{P}_r$を$r!$で割るだけだから、それだけを頭に入れれば使い間違えは起きないと思うよ。」

なでしこ「なるほど~。」

千明「そもそもこの2つってどう使い分けてんだ?」

伶「それはね___」

 

なので、数学が得意な伶ちゃんや晶ちゃんから教えてもらうことにしたんだ。基本的には2人で教えてくれるけど、片方がバイトのシフトに入っているときはこうして1人で教えるスタイルとなっている。

 

千明「ふぃ~.........疲れた。」

伶「お疲れさん。2人ともこれからバイトって聞いてるし、今日はここまでにしよっか。」

 

ーーーーーー

 

店長「2人ともおつかれ。もう上がって大丈夫だよ!」

なでしこ・杏子「はーい!」

 

お蕎麦屋さんでのバイトを終え、帰宅するために更衣室でお店の服から学校の制服に着替える。

 

杏子「ふぁ~あ、ねみぃ。なでしこは元気だよなぁ。」

なでしこ「へへへ、元気が取り柄ですから!」

杏子「羨ましいぜ~。」

 

身支度を終え従業員が通る出入口の扉を開けようとすると、後ろから店長のおばちゃんが駆け寄ってきた。

 

店長「はい、これ持っていきな!」

なでしこ「わぁ!みのぶまんじゅうだ!!」

杏子「こんなに良いんですか?」

店長「いいのいいの。あんたたちにはいつも助かっているからね。遠慮しないで!」

なでしこ「ありがとうございます!」

杏子「あ、ありがとうございます。」

 

私たちがお礼を言うと、おばちゃんはもっと笑顔になって

 

店長「も~いい子たちね~~!!」

 

と私たちの頭をくしゃくしゃになるまで撫でてくれた。でも......

 

なでしこ(まただ......)

 

なんでかわからないけど、どこかモヤモヤする感覚が広がっていく。

 

店長「っと、ごめんなさいね。もう暗いし、気を付けて帰るのよ。」

杏子「お疲れ様でした!」

なでしこ「お、お疲れさまでした。」

 

店長の言葉ではっと我に返り、私たちは急いで身延駅に向かった。

 

杏子「いやー危ない危ない。」

なでしこ「危うく帰るのが遅くなるとこだったねぃ。」

杏子「お互いの髪もさらにボサボサになっちまったな。」

 

一連の出来事に杏子お姉ちゃんは「ははは」と笑う。私は杏子お姉ちゃんがおばちゃんに撫でられている様子を思い出し、つられて笑うけど_____自分がいつもみたいに心から笑っていないような、そんな感覚がした。

モヤモヤを抱えたまま電車は最寄り駅に着き、冷えた空気の中のんびりとお家へ帰る。

 

なでしこ・杏子「ただいまー。」

桜「おかえりなさい。」

 

洗面所を交代で使って手洗いうがいを済ませ、私たちはリビングに向かった。

 

杏子「はいこれ。」

修一朗「おぉ、みのぶまんじゅうじゃないか!」

静花「こんな量どうしたの?」

杏子「実は、バ先の店長から帰り際に貰って......」

なでしこ「せっかくだからみんなで食べようよ。」

修一朗「じゃあ早速......」

杏子「アタシらの分も残してよ?父さん。」

修一朗「お、おう。」

 

私がソロキャンから帰ってきたとき、杏子お姉ちゃんとお姉ちゃんたちの間に変化があった。杏子お姉ちゃんはお姉ちゃんたちに敬語を使わなくなって、”桜ねーちゃん”、”父さん”、”母さん”と呼ぶようになっていた。特にお父さんは「やっと父さんって呼んでくれた!!」って大喜びしてたっけ。

私も杏子お姉ちゃんが1歩踏み出してくれたことが嬉しかった。でも、お姉ちゃんたちが杏子お姉ちゃんを撫でることが増えていくたびに、

 

なでしこ(いいなぁ、背が高くて......)

 

と羨ましく思うと同時に、言葉に表せないナニかがジワジワと膨らんでいっている気がする。

 

桜「......あんた、ぼーっとしてるとまんじゅう無くなるわよ。」

なでしこ「え。」

 

気が付いたら、袋の中にあった大量のみのぶまんじゅうが半分に減っていた。

 

修一朗「お父さんとお母さんは十分食べたから、あとは3人で食べちゃっていいよ。」

桜「私ももういいかな。2人で食べちゃいなさい。」

なでしこ「う、うん。」

杏子「ありがとう。」

 

いけないいけない。明日からテストなのに、こんな調子じゃまともに出来ない!切り替えないと!!

私は自分の頬をパチンと叩き、残ったおまんじゅうを口の中に入れていった。

 

☆☆☆ーーー☆☆☆

 

綾乃「なでしこー、遊びに来たぞー。」

なでしこ「ひさしぶり、綾ちゃん!」

 

無事に期末テストを乗り越えて、テスト休みに入った最初の日。私の幼馴染である綾ちゃんがうちに訪ねた。綾ちゃんも今日からテスト休みで、明日から晶ちゃんと一緒に電車で旅行しに行く。今日は前乗りも兼ねてこっちに来てくれたんだ。

 

綾乃「あれ、桜さんたちは?」

なでしこ「お姉ちゃんは大学、お父さんとお母さんは仕事でいないよ~。杏子ちゃんはバイトが終わったって言ってるからもうすぐかな。」

綾乃「じゃあ今はなでしこだけ?」

なでしこ「うん。あ、入っていいよ~。」

綾乃「お邪魔しまーす。」

 

綾ちゃんを家に招き入れ、私はキッチンに向かいお湯を沸かす。

 

なでしこ「ココアあるけど飲む~?」

綾乃「飲む~。」

 

洗面所から戻ってきた綾ちゃんの分も用意し、食卓にココアを煎れたマグカップを2つ置いた。

 

綾乃「はぁ~......あったまる~~~~。」

なでしこ「だねぃ......」

綾乃「電車降りた時マジで寒くてさぁ~。よく寒がらずに過ごせてるよね。」

なでしこ「綾ちゃんもそのうち慣れるよ。」

綾乃「いーや、無理だね!」

 

そんなたわいもない話をしていると、外からバイクのエンジン音が聞こえ、それは家の前で止まった。

 

綾乃「あれ、なでしこの家族でバイク乗ってる人いたっけ?」

 

しばらくすると、リビングのドアから上着を何枚も重ねた杏子ちゃんが入ってきた。

 

杏子「あ”ー!寒すぎだろ!!」

なでしこ「おかえり~。」

杏子「ただいま。お、綾乃じゃんか。」

綾乃「ひさしぶりー。もしかして、さっきバイクって杏子ちゃんの?」

杏子「おう。あとで見るか?」

綾乃「見る見るー。」

 

杏子お姉ちゃんは綾ちゃんに「あいよー」と返事し、部屋着に着替えてリビングに戻ってきた。そのままマグカップを取り出し、ココアを煎れて私の隣に座る。

 

杏子「はぁ~あったまるぜ~。」

なでしこ「あはは。なんか綾ちゃんみたい。」

杏子「誰だってそうなるだろ。」

綾乃「さっきなでしこが「寒いのは慣れ」って言ってたけど、実際どうなの?」

杏子「いや、普通に無理だろ。まだこっち来て2か月しか経ってないし......あれ、なでしこも山梨来て3か月だよな!?」

なでしこ「はてさて?なんのことじゃろか?」

綾乃「おばーちゃん、ボケちゃだめだよ。」

杏子「......ほんと、強いよな。なでしこは。」

 

杏子お姉ちゃんは優しい表情で私の頭を撫で、最後にポンポンと柔らかく叩く。私の事を撫でてくれるのはとても嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。

 

綾乃「ふーん......」(・∀・)ニヤニヤ

杏子「......なんだよ?」

綾乃「いやぁ?随分と甘やかしてるんだなぁって。」

杏子「だ、だってよぉ...その......

 

杏子お姉ちゃんが言い返そうとするが、彼女の声量はどんどんと小さくなっていく。

 

 

杏子「な...なでしこが...かわいいのがわりーんだよ...」

 

 

杏子お姉ちゃんは両手で顔を隠し、とても小さい声で呟く。よーく見ると、彼女の顔はリンゴのように赤くなっていた。

 

なでしこ「......へっ?」

綾乃「なんて?」

杏子「......みんなでゲームやるか?」

なでしこ「う、うん!」

綾乃「無視すんなよー!」

杏子「うっせー!!これ以上恥かかせんな!!!」

 

ものすごく頼りになって、とても親しみやすくて.........口調はほんのちょっと荒いけど、家族や友達を大切にしている杏子お姉ちゃん。

そんなカッコいい彼女から想像できないような、まるで恋をしているヒロインのような表情をしていた。ただ、なんて言っているか分かんなかったけど...

 

なでしこ(杏子お姉ちゃんも、あんな顔するんだ...)

 

リビングで杏子お姉ちゃんと綾ちゃんがイィィィといがみ合うなか、私の胸は足早にドクドクと鼓動し始める。

 

杏子「あぁぁぁぁもう!なでしこ!!早くゲームを......なでしこ?」

なでしこ「ひゃいっ!」

綾乃「ひゃいっ!って......なんか顔赤くない?」

なでしこ「き、気のせいじゃないかな。」

綾乃「.........」

 

うん、これは気のせいだよ。気のせい気のせい___

 

綾乃「あ、そうだ。なでしこ、マリカで先にレース3本勝った方が杏子ちゃんを独り占めできるってのはどう?」

なでしこ・杏子「!?!?!?」

 

あ、綾ちゃん何言ってるの!?

 

杏子「お前マジかよ!?まぁいいんだけどよ。」

なでしこ「いいの!?」

杏子「これ、アタシが勝った場合ってどうなんだ?」

綾乃「その場合は何も起こらないってことで。」

杏子「えぇ......」

 

突然綾ちゃんから宣戦布告をかけられて混乱する私。だけど、ここで綾ちゃんに勝たないと杏子お姉ちゃんが獲られちゃうのは______

 

なでしこ(......獲られちゃう?)

 

杏子お姉ちゃんは誰のものでもないのに、どうして獲られちゃうって思っちゃったんだろ...?

 

ーーーーーー

 

綾乃「がぁーーー負けたーーー!!!」

杏子「お前あそこで落下はダメだろ。」

綾乃「杏子ちゃんだってショートカットミスってんじゃん。」

杏子「ぐっ!でもこれが敗因だしな......」

 

レースゲームで対戦した結果、ゲームの上手い杏子お姉ちゃんでもなく、引っ越す前はよく遊んでいた綾ちゃんでもなく、先に3回勝ったのは私だった。

 

綾乃「まぁ、ルールはルールだし、なでしこに譲りますわ。」

杏子「......だってよ。」

なでしこ「......うん。」

 

私は未だに実感が湧かないまま、ソファに座っている杏子お姉ちゃんの目の前に立つ。

 

杏子「......なでしこ?」

なでしこ「!」

 

気が付いたら、私は無意識に右手を彼女の頭に置いて、彼女が私にしていたように優しく撫でていた。

 

杏子「.....立ちっぱなしだと辛くないか?」

 

違うよ、杏子お姉ちゃん。

 

杏子「隣に座っていいんだぞ。」

 

そうじゃないんだよ。

 

杏子「なんなら、アタシの太ももに乗っかってm」

 

 

なでしこ「うるさいよ!!それじゃあ杏子お姉ちゃんのこと一生撫でられないじゃん!!!!!」

 

 

杏子・綾乃「!!」

なでしこ「......あっ。」

 

私は自分が出した声量に思わずビックリしてしまう。でも、それを越すようにいろんな感情が一気にぐちゃぐちゃになっていく。

 

なでしこ「私がソロキャンから帰ってきてから、杏子お姉ちゃんとお姉ちゃんたちとの間が結構仲良くなったよね?そのときからお姉ちゃんだけじゃなくて、お父さんやお母さんも杏子お姉ちゃんの頭を撫でることが増えたよね!?」

 

目の前の視界がどんどん滲んでいく。どんなに我慢したくても、そのスピードは無情にも上がっていく。

 

なでしこ「私だってずっと、ずっとずっとずっと撫でたかった!!なのに、杏子お姉ちゃんはいつもお姉ちゃんたちに取られちゃう!!!杏子お姉ちゃんも杏子お姉ちゃんで嬉しそうにしてるのを見てて......私だって家族なのに......なのにっ!!!!」

 

あぁ、だめだ。抑えなきゃいけないのに......

 

なでしこ「もうわかんない!!家族みんなの事がドンドン嫌いになっちゃうし、それが嫌なのに杏子お姉ちゃんのことを見るとモヤモヤする自分が嫌いだよぉ!!!」

 

ーーーーーー

 

なでしこ「うぅ......ひっく......」

 

あのあと私はリビングを飛び出し、自分の部屋で全身に布団をかぶって泣いていた。

私だってあんなこと言いたくなかった。杏子お姉ちゃんが獲られるって考えたり、私だけ撫でることができていないという不満を爆発させたのだって、私自身のエゴみたいなものに......!

 

なでしこ(私って、本当に最低だ。)

 

コンコン!

 

杏子「......なでしこ。」

なでしこ「...なに゛?」

杏子「入っていいか?」

なでしこ「やだ。」

 

今の私の顔は泣きすぎてボロボロだ。こんなの杏子お姉ちゃんに見られたくないよ。

 

杏子「別に泣きすぎて顔崩れたくらい気にしねーって。」

なでしこ「!?」

 

なんでわかったの!?

 

杏子「......鍵あけっぱじゃん。顔見ないようにするから、それでもいいなら入るぞ。」

なでしこ「それなら......」

杏子「へーい。」

 

杏子お姉ちゃんは部屋のドアを開け、スイッチを押して電気を点ける。

 

杏子「ベッド座るぞ。」

なでしこ「うん。」

杏子「......モヤモヤしちまったか?」

なでしこ「......うん。」

杏子「さっき聞いた感じ、3週間くらい?」

なでしこ「......うん。」

杏子「そうか......」

 

杏子お姉ちゃんは布団を無理やり剥がすようなことはせず、ただただ優しい声で話しかける。

 

杏子「......ごめんな。」

なでしこ「え?」

杏子「辛かったろ。1人で抱え込んじゃって。」

なでしこ「......杏子お姉ちゃんが謝ることはないよ。」

杏子「なでしこはそう思うかもしれねーけど......結局なでしこだけやりたかったことできなかったじゃんか。」

なでしこ「......」

杏子「結局1人で抱え込んでいることに気づけなかったんだし......アタシは桜ねーちゃんと違って不器用なんだなーって。家族としても、友達としても失格だよ。」

なでしこ「それは違う!」

 

「姉失格」って聞いた私は思わず布団から飛び出し、杏子お姉ちゃんの腰を後ろから掴む。

 

杏子「!?」

なでしこ「杏子お姉ちゃんは誰よりも家族思いで、友達の事を大切に出来るカッコいいお姉ちゃんだよ!!」

杏子「あ、アタシは別にかっこよくなんか......」

なでしこ「私の方が家族や友達として失格だよ!だって、だって......お姉ちゃんたちから杏子お姉ちゃんが獲られるって思っちゃったんだもん...!」

杏子「...っ!」

 

ダメだ、せっかく泣き止んだのに...

 

なでしこ「杏子お姉ちゃんが1歩踏み出してくれたことは嬉しかったよ。でもね、私が帰ってきたときからずっとね、杏子お姉ちゃんが遠くへ行っちゃうみたいで...」

 

頑張って感情が溢れないようにしてるのに...

 

なでしこ「いつ゛か、私の手が届かなくなっちゃいそうで...ひっく...寂しかった!怖かった!」

 

あぁ、やっぱり我慢できないや。

 

杏子「......なでしこ、顔向けていい?」

なでしこ「うぇ?」

 

杏子お姉ちゃんは体の向きを私の方に変え___

 

杏子「......!」

 

そのまま私をガっと抱きしめた。

 

なでしこ「!?」

杏子「なぁ、なでしこ。」

なでしこ「なに...?」

杏子「情けないけどさ......少しこのままでいてもいいか?」

なでしこ「......!うん、いいよ!」

 

ーーーーーー

 

杏子「その、今日から一緒に寝る?」

なでしこ「え?」

 

お互いの気持ちが落ち着いたころ、杏子お姉ちゃんから意外な提案をされた私はキョトンとしていた。

 

杏子「さっき、アタシが座った状態だと撫でられないって言ってただろ?」

なでしこ「うん。」

杏子「一緒に寝れば身長差関係なく横に並べれるから、なでしこがアタシの事を撫でれると思ったんだけど......」

なでしこ「たしかにそうだけど......本当にいいの?」

杏子「別にダメな理由なんてないだろ。」

なでしこ「さっきあんなに言っちゃったのに?」

杏子「あんなに言ってくれたおかげだろぉ!」ウリャァ!

 

杏子お姉ちゃんはグイっと私のほっぺを掴み、そのままグイグイと引っ張りだす。

 

なでしこ「ちょっ!?おぉぉぉぉぉやめひぇ~~~~~!!!!」

杏子「アタシだってなぁ!なでしこがずっと睨んでくるから嫌われたのかと思ってたんだぞ!」

なでしこ「!」

 

そっか......杏子お姉ちゃんには申し訳ないことしちゃったな。

 

杏子「だから、その...アタシの事を全力で甘えて...ほしいなぁ...

 

杏子お姉ちゃんは再び顔を赤くし、少しモジモジしながらお願いをする。その姿に私は思わずドキッとしてしまう。

 

なでしこ「う、うん......」

 

その時、部屋の扉から綾ちゃんが入ってきた。

 

綾乃「......落ち着いた?」

杏子「おう。ごめんな、こっちの家庭事情に巻き込んじまって。」

綾乃「いいのいいの。私の方こそ焚きつけちゃってごめんね。」

なでしこ「う、うん...」

綾乃「で、なにやらお互いの顔が赤くなってるけど......」(・∀・)ニヤニヤ

なでしこ「その......杏子ちゃんの甘え方がかわいくて......」

杏子「あっおい!」

綾乃「へぇ~。まぁ、杏子”お姉ちゃん”はなでしこのことが好きだもんね~。」

杏子「え、何でその呼び方知ってんだ!?」

綾乃「なでしこが怒っているとき、無意識に言ってたよ。」

なでしこ「あ.......」

 

実は、お姉ちゃん呼びだと杏子ちゃんが「なんか恥ずかしいし、他の学校のやつらにバレたらまずい気がするから。」ってことで、家族しかいない場面以外は杏子お姉ちゃんと呼ばないようにしているんだけど......私が泣き叫んでいるときにいつの間にか言ってしまったようだ。

 

なでしこ「ご、ごめんね...」

杏子「うぅ、一番知られたくないやつTOP2に知られちまった...」

綾乃「失礼だなー、私は周りにバラさないよ!」

杏子「でもネタにするだろ?」

綾乃「君のようなね、勘のいい子はね、嫌いだよ。」

杏子「~~~~~~~~!!!!!!」

 

何気にここまで弱っている杏子お姉ちゃんを見るのは初めてだけど......こんなにかわいい表情するなんてずるいよぅ......

冬の曇り空の下だけど、今日はいつも以上に暑く感じていた。

 

綾乃(あれ?なんか思ってる以上にいい雰囲気だな......)

 

ーーー(おまけ)ーーー

 

【その日の夜】

 

なでしこ「そ、それじゃあ、今日からよろしくお願いします...」

杏子「よ、よろしく......」

杏子(やばいやばいやばい寝間着姿のなでしこめっちゃかわいいんだが!?)

なでしこ「じゃあ早速......」(( ・ω・)ノ”ナデ...

杏子「......」///

なでしこ「..............」(( ・ω・)ノ”ナデナデナデナデ...

なでしこ(杏子お姉ちゃん、結構照れてる......)

杏子「......なでしこぉ。」

なでしこ「ひゃい!」

杏子「こ、これ以上されると......嬉しくて逆に寝れなくなっちまう......」///

なでしこ「っ!?」

なでしこ(そ、それは反則だよぅ...!)///

 

 

【次の日】

 

なでしこ「ふぁ~あ、おはよ~......」

杏子「あ、なでしこ......おはよ。」

なでしこ「うん......あれ?他のみんなは?」

杏子「父さんと母さんは仕事。桜ねーちゃんさんはついさっきドライブ行ったぜ。」

なでしこ「そ、そうなんだ......」

なでしこ(ってそりゃそうだよね。もう9時だもん。)

杏子(......なんつーか。)

なでしこ・杏子(ドキドキしちゃって目を合わせられない......)




45話でした。なんか、うん、我ながらにすごいもんを書いてしまいました......
実はまだ書くつもりじゃなかったんですけど、ここまで来たならもう出しちゃえ!ってなりました(笑)
それでは、次回もよろしくおねがいします。

番外編を書こうかな~って考えてます!どのお題がいいか選んでください!!

  • ほむらの断髪式
  • 少女の突発弾丸旅
  • 球技大会 in 3月
  • その他(感想欄に記載をお願いします)
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新人先生はネタバレ生徒しか引けない(作者:KuRoNia)(原作:ブルーアーカイブ)

シャーレに着任したばかりの先生が、シッテムの箱で見つけた『募集』機能。▼それは、シャーレに入部届を出している生徒をランダムで呼び出す、いわゆるガチャのようなものだった。▼軽い気持ちで初回募集を行った先生の前に現れたのは、臨戦状態のホシノと黒いドレス姿のシロコ。▼だが先生は、まだアビドスにも行っていない完全な新人先生だった。▼「うへ……最序盤じゃん」▼「ん、ネ…


総合評価:14342/評価:8.91/連載:79話/更新日時:2026年09月10日(木) 00:30 小説情報


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