「おら飯作るどー。」
「お~。」
「各務原さんは焚き火のそばで休憩してて、どうぞ。風邪ひくとシャレにならないでしょう?」
「うん、ありがとう!」
というわけで、ウチと志摩さんはそれぞれのコッヘルとポータブルストーブを用いてお湯を沸かしている。
「2人とも、あっちで沸かさないの?」
「焚き火で沸かすと鍋が
「へぇ~そうなんだ!プロみたいだね!!」
「なんのや。」
志摩さんも同じような顔をしている。とはいえ志摩さんは手際が良い。きっとキャンプ経験者なんだろう。
そうこうしていると、コッヘルの水がぶくぶくと沸騰しはじめる。ウチと志摩さんは3人分のカップ麺にお湯を注ぐ。
「カップヌードルよ、3分間待ってやる。」
「何様だよ。そうだ各務原さん、私の電話貸すから家の番号言って。」
「引っ越したばかりで分かりません!!」
「だったら自分のスマホの番号は?」
「きおくにございません!!」
「う~ん困ったものだねぇ...」
マジでこの子どうしよう...と思っていたらちょうど3分が経った。
「どうぞ。」
「ありがとーっ。いただきます!」
「「いただきます。」」
さっそく出来立てほやほやのカップヌードルの麺をSU☆SU☆RU!んま~い!ちぢれ麺がスープと具材にいい感じに絡み合っているゾ~。そしてそのままスープを口に運ぶ。うまい、うますぎる!!
ふと隣を見ると、各務原さんがものすごいスピードでカレー麺をすすっていた。しかもすげー幸せそうな顔。わかるわ、うまいもんなカップ麺って。
「ん~~~~...プハッ!口の中ヤケドした!!」
「そう言うてるけどめっちゃ笑顔やな(笑)」
☆☆☆ーーー☆☆☆
「ねぇ、あなたたちはどこから来たの?」
カップ麺をすすりながら、みんながどこから来たかの話題になった。
「あたし?ず~っと下の方。南部町ってとこ。」
「南部町...ってもしかして内船とかそのへんからチャリで来たの!?40kmもあるやん...」
「40!?よくチャリで走れたな...」
「えへへ、それほどでも~。」
(コイツ、新手のフィジカルモンスターや...)
「晶ちゃんはどこから来たの?」
「ウチか?ウチは身延駅の近くよ。ここからざっと35分のところだね。」
「もしかして、あなたもチャリで...?」
「いや、125cc原付だよ。」
「あ、そういえば昨日あなたが真新しいバイクを押してたのを見たよ。あれって確かハンターカブのニューモデルだよね。あれってまだ発売されていないんじゃなかった?」
「え、そうなの!?」
「待ってなんで知ってるの()」
「私、今度から原付に乗るんだ。それで、車種を選んでいる時にたまたま目に入ったから...」
「あ~なるほど...ここだけの話、ウチの父がバイク関連の仕事やっててな。ウチがめっちゃほしいって言ったら上に掛け合ってくれたんよ。」
「「マジで!?」」
「うん、大マジ。あ、このことは絶対に外部に漏らさんといてね。」
「「わかった(よ)。」」
よし、外部漏洩の懸念はひとまずなくなった。
「それで、各務原さんはなぜこの本栖湖に?」
「"本栖湖の富士山は1000円札の絵にもなってる。"ってお姉ちゃんに聞いたんだ~。」
なるほど、ウチと同じ目的で来たのか。
「なのにさぁ、長い坂を上ってきたのに、曇って全然見えないんだもん...」
各務原さんが言う通り、今日の昼間はどんよりとした曇りだった。こんなに曇ってるのに何で来たんだよって思うかもしれないが、彼女は早く富士山を間近で見たかったのだろう。その気持ちはよくわかる。
「聞いてよ奥さん!」
「見えないって、あれが?」
志摩さんがそう言った瞬間、背中から1つの光が差し出した。おそらく雲が抜けて月の光が当たるようになったのだろう。ん?てことは...
「...やっぱりね。」
「...みえた...ふじさん。」
そこには、月の輝きに照らされた夜の富士山の姿があった。湖と山に囲まれ、日本一の高さを誇る名峰の名に恥じぬ、その凛とした姿に思わず息を呑む。
「...せっかくカメラ持ってきたことだし、写真撮るか。」
そうぼやきながら三脚をセットしていたとき、各務原さんがこう呟いた。
「あ、お姉ちゃんの電話番号知っていたよ。あたし。」
☆☆☆ーーー☆☆☆
「ウチのバカ妹が、ほんっと~~~~うにお世話になりました!」
そう言いながら頭を下げるのは、各務原さん...いや、なでしこの姉の桜さん。あのあとなでしこは志摩さんのスマホを借りて家に連絡した。その様子を見ていたのだが、時間が経つにつれなでしこの顔が青くなっているのがなんとなくわかった。
「別にたいしたことは...」
「ウチも気にしてないですよ。いい写真撮れましたし。」
そしてなでしこはというと、頭の上にたんこぶが3段生成されていた。きっと桜さんにおみまいされたのだろう。
「アンタ、持ち歩かなきゃ携帯電話とは言わないのよ!全然帰ってこねーし!!」
「ひえぇぇぇぇ!」
「おらっ、さっさと乗れブタ野郎!!」
「いでででで!やめれ~カレー麺がでるぅ...」
「「...(呆然)」」
桜さんがなでしこをSUVにけり込む姿を見て、ウチらはただ呆然と見ることしかできなかった。
「...なぁ、ウチのことは晶でええよ。お互いさん付けで呼ぶの堅苦しいじゃん。ウチもリンって呼ぶし、いいかな?」
「わかった。でも絶対今言うコトじゃないでしょ。」
「すまん。あの状況を見てられなくて話題を変えたかったんだ。」
お詫びでもらった大量のキウイを持ちながらリンと話す。
「晶、とりあえずキウイは半分ずつ貰おっか。」
「そうやね...さて、そろそろウチも帰ろうかな。家族に心配かけられんしね。」
そう言いながらウチは相棒のエンジンを始動させる。辺りはかなり冷え込んでいるからか、マフラーから煙がいっそう白く出ていた。
「そういえば、晶ちゃんだっけ。たしか身延駅の近くに住んでるんでしょう。よかったらわたしの車で先導するから一緒に帰らない?」
たしかに辺りは街灯が少ない。1人であのヘアピンカーブを曲がり切れるかと言われたら少々不安だ。ならば、答えは1つ。
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます。」
「やった~!一緒に帰れるね!」
「おい何窓から手を出してるんだブタ野郎!」
「あっお姉ちゃん腕引っ張らないで!」
SUVの中でまた乱闘が起きているのか...と思った矢先になでしこがウチとリンに電話番号が書かれた紙を渡してくれた。
「はい、これわたしの番号!さっき電話したときにお姉ちゃんに聞いたんだ!」
「お、そうかい。ほな帰ったら早速登録しておくね。」
「...うん。」
「リンちゃん、カレー麺ありがと!晶ちゃんも一緒にいてくれてありがと!今度は3人でキャンプ、やろ~ね!!」
「ふふっ。元気だねぇ...リン、また学校で会おう。気をつけてな。」
「うん、わかった。」
リンに別れを告げ、ウチはSUVの後ろをついて行きながらバイクを進めた。
☆☆☆ーーー☆☆☆
「うはぁ、こりゃすごいねぇ...」
翌日、神崎家の食卓には大量のキウイがあった。このキウイは言わずもがな桜さんから貰ったものである。
「これで半分なのね...全部食べ切るのに何日かかるのかしら。」
「というかこの量は僕たちだけじゃ無理だよ。暁美さんのところにも分けよう。」
「せやね...」
このあとウチと伶でほむらに大量のキウイを渡したのだが、ほむらがひっくり返ったのはまた別のお話。というかリンは大丈夫なんだろうか...
3話でした。次回は晶がバイクで遠出します。評価・感想お待ちしております。
番外編を書こうかな~って考えてます!どのお題がいいか選んでください!!
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