前回のあらすじ
綾乃、ぶっ倒れる。
↑No Side
☆☆☆ーーー☆☆☆
↓晶 Side
晶「うおぉぉぉぉ寒い!!!」
綾乃「の割には元気そうだね......」
2月の早朝、ウチと綾乃、母さんの3人は薄暗い冬空のもと身延駅へ向かっていた。今日から岩手の海側、三陸地方へ旅行するために、朝早い時間に起きて歩いているのだ。
ちなみに真弓さんとは甲府駅で合流する予定だ。ホテルの都合上甲府駅で落ち合った方がいいというのが理由らしい。
晴香「晶に限らず伶もこうなのよねぇ......ふぁ~あ。」
綾乃「晴香おばさんはこの時間に出ることってあるんですか?」
晴香「ん~、趣味でたくさん旅行してた時は慣れてたけど、最近はやってないから......10年は空いているかもね。」
綾乃「じ、10年......」
何回か聞いた話だが、母さんはウチと姉御が転生する前まで、父さんや友人らとよく旅行に行っていたらしい。親と趣味が一致するのは、彼らの英才教育がうまくハマったか遺伝的かが有力だが......神崎家のケースは多分たまたまなのだろう。子供から教育を受けたケースもあるだろうが、流石に逆遺伝はあり得へんし。
綾乃「晶~、あんま晴香おばさんに負担かけさせないようにしなよ?」
晶「いや、向こうが便乗しに来てるからいらんやろ。」
晴香「お~言うじゃない?じゃあ今日のホテル代は晶のおごりね。」
晶「え゛っ、なんでよ!?」
晴香「今回のホテル代を払った人に言うコトじゃないからでーす。」
晶「うっ!!」
晴香「ふふふ、奢りたくないなら全力で撤回することね。」
晶「し、します!させてください!!」
晴香「えーどうしよっかなー。」
晶「.........(白目)」
晴香「ふふふ、冗談よ。じょ、う、だ、ん。」
晶「......ホンマに申し訳ございませんでした。」
ウチは今まで母さんとの言い合いに勝ったことがない。こうやって、なんだかんだで言いくるめられてしまうわけで。
そんな家族間の一連のやりとりに、綾乃はクスクスと笑う。
晶「どした?」
綾乃「ううん、仲いいなーって思っただけ。」
晶・遥香「でしょー!」
綾乃「あはは、息ぴったりじゃないですか~!」
全員「あっはははは!」
3人で笑い合いながら各々のスーツケースを引いていれば、閑散とした身延駅にもあっという間についた。
『当駅始発5時27分発の富士行初電および、5時32分発の甲府行初電の改札を開始します。富士行の発車まであと10分ございますが、お乗り遅れの無いようご注意ください。』
おっと、もうそんな時間か......
ウチらはそれぞれのポケットから「身延➡甲府」と書かれた、JR柄の入った切符を取り出す。
駅員「お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
晶「ありがとうございます。行ってきます。」
ラッチ内の駅員さんに挨拶を済ませ、甲府行の出る2番線へと向かう。既に列車は2番線で待機していたので、おそらく身延で夜間滞泊をした車両を使う運用のだろう。
ウチらはドア横にあるボタンを押し、車両のドアを開けてボックス席に座った。
全員「はぁ~...」
車内に入れば、それはそれは暖房天国。しっかりとすべての扉が閉められていたので、ありとあらゆるところまで暖かい空気が行き届いていて最高だ。
綾乃「甲府には何時に着くんだっけ?」
晶「7時ちょうどやね。」
綾乃「意外とかかるんだね。そしたら寝るかぁ...」
晴香「私も......すぴー......」
晶・綾乃「もう寝てるし......」
5時32分、定刻通り甲府行普通列車は身延駅を出発する。窓から薄いオレンジ色の光が差し込む中、ガタンゴトン.......と軽快な走行音が......ひび......い......て..........................................................
ゴッ!!
晶「んぁ"っ!?」
何の拍子か、後頭部をどこかに勢いよくぶつける。
視界は少しぼやけているように見える......いつの間にか寝てしまっていたようだ。
晶(ん~、今どの辺りなんやろ...)
視界をはっきりさせるために、目元を右手でごしごしする。先ほどと比べて日の光が差し込んでいるから、外の様子がよくわかる。車窓を見れば傍に線路が2本通っており、列車は減速している。ということは、甲府の1つ手前の
晶「...金手?え、そろそろやん。」
『金手~、金手です。』
トサッ___
晶「?」
列車はブレーキを勢いよくかけて停車し、同時に左肩に何か乗っかったような感触がした。
綾乃「すぅ......すぅ......」
晶「......なんや、綾乃か___かわいい寝顔だぜ。」
ウトウトする彼女の頭をポンポンと軽くたたき、そのまま優しく撫でまわす。
綾乃「ん......あきら?」
晶「おはよ。もうすぐ着くで。」
綾乃「うん......その......」
晶「?」
綾乃「手......」
晶「......あっ。」
しまった、彼女が起きたらすぐ離すつもりやったのに......
晶「ごめんな。とりあえず、そろそろ降りる準備しよか。」
綾乃「わかったー......ふぁ~あ~あ......ねむ。」
辺りが明るくなっていく中、列車は金手駅をゆっくりと発車する。終点の甲府駅に着いたのはすぐのことだった。
ーーーーーー
晴香「いや~、いいもの見さしてもらったわ~。」(・∀・)ニヤニヤ
晶・綾乃「......................」
7時ちょうど、時刻通り甲府駅に到着したウチらは南口改札へと移動する。
母さんは寝てると思って油断していたが、まさか見られていたとは......
晴香「で?晶はなんで綾乃ちゃんをなでなでしてたのかなぁ~?」
晶「うっうるさいなぁ!なんだってええやないか。」
晴香「あ、もしかして綾乃ちゃんの寝顔見て母性出た感じ?」
晶「そ、そんなんちゃうし!」
晴香「ん~図星だねぇ。」
母さんの指摘に苦しまぎれな対応をしていたのが仇となったか、ニヤニヤする母さんにガンガン詰められる。はぁ、これだから見られたくなかったんよ...
晴香「それで、綾乃ちゃん。」
綾乃「は、はい。」
晴香「どうだった?娘の撫でる技術は。」
綾乃「へぇっ!?」
晶「おいコラ!」バシッ!
ウチは母さんの左肩にチョップを下す。本当にさぁ!もう!!どんだけおちょくれば気が済むねん!!!
晴香「いてっ!」
晶「もうさぁ、これ以上恥かかせんといて?」
綾乃「......」
晴香「あはは、ごめんごめん。人待たせてるし、さっさと行こっか。」
そう言いながらも満足げな表情でスキップしながら改札口へ向かう母さんに続き、ウチも切符を取り出しついて行こうとする。が、服の袖を綾乃がグイっと引っ張ってウチを引き留めた。
晶「?」
綾乃「あ、あのさ、晶。」
晶「どしたの。」
綾乃「その......さっき私のこと撫でてたじゃん?」
晶「は、はい...」
綾乃「えと......だから......次は、2人きりでいるときに、や、やって...ほしい...なー...」
綾乃は顔を赤らめ、少しモジモジした様子でウチにお願いしてくる。
晶「ひゃ、ひゃい......」
余りにも普段とはギャップの異なる彼女を前に、ウチは情けない声で返事してしまう。
晴香「2人とも?早く来なよー!」
晶「う、うん!ほな行こか。」
綾乃「あ、待って。切符持ち帰りたいんだけど...」
晶「わかった。有人改札に行こう。」
綾乃「ありがとー。」
今日という1日は、まだ始まったばかりである。
☆☆☆ーーー☆☆☆
無事に真弓さんと合流し、甲府駅構内で朝食を調達したウチらは7時40分発の特急あずさ4号に乗車する。
綾乃「それにしてもこの【キュン♡パス】ってすごいね。特急とか新幹線にも乗れるんだ。」
晶「しかもフリーエリアがこんだけ広いおまけつき。」
ここからはJR東日本が発売している【キュン♡パス】というきっぷを使っていく。これはJR東日本のフリーエリア内で新幹線や特急を含む列車が平日乗り放題になる早割パスで、1日用と2日間用の2種類を展開している。さらに、JR以外の一部私鉄にも乗れる優れものだ。それでいてお値段は2日間用がなんと18000円!超安い!
ちなみに、特急・新幹線などの座席指定が出来る回数は1日用が2回、2日間用が4回までと制限があるので注意である。
綾乃「あれ?そういえばお母さんと晴香おばさんは?」
晶「あーなんかね、2人は大学時代の友人らしくて。」
綾乃「え!?そうだったの!?」
晶「そんで、今回は基本的に別行動のつもりだから2人で仲良くね~と言い残して去っていったよ...」
綾乃「そうなんだ。知らなかった......」
△△△ーーー△△△
晴香「いぇ~い久しぶり!」
真弓「久しぶり~!!」
パチン!!(ハイタッチ)
△△△ーーー△△△
綾乃「そういえば、初めて会ったとは思えない感じだったかも。」
晶「せやろ?綾乃がごはん選んでいる間に聞いたらそういうことだって。」
綾乃「なるほどね~。あ、動いた。」
甲府を出た特急列車は先ほどまで乗っていた身延線と別れ、次の停車駅である八王子に向けてグングンスピードを上げていく。しばらくは住宅の多いエリアを飛ばしていたが、塩山駅を通過すると甲府盆地の外側をなぞるようにして勾配を駆け上がる。
やがて勝沼ぶどう郷駅を通過したところで、辺りはザ・山!の景色へと変貌した。このあたりからトンネルの数が目立ってきたので、峠越えを始めたと言えるだろう。
綾乃「......トンネル長いね。」
晶「しょうがないさ。これから八王子の方まではこんな感じの峠越えやし。」
綾乃「えー、つまんないなぁ。」
晶「なんで?」
綾乃「だって、バイクと違って横からしかないから、外を見たって暗いだけじゃん。」
晶「あ~そういうことね。」
綾乃「晶はつまんないって思ったことないの?」
晶「昔はつまらんって思っとったけど、最近はそうでもないな。」
綾乃「そうなんだ?」
晶「まぁ確かにただ眺めてるだけじゃあね。でも、トンネルを出た後の景色を想像するのって楽しくない?」
綾乃「あぁ~、その考え方もあったかー!」
晶「せやろ?だから旅ってのはさ___」
ゴォォォォォ.......ゴォッ!!!
晶「視点を少し変えるだけで、超!楽しくなるもんなんやで。」
ウチがそう言い切ったと同時に列車は長いトンネルから飛び出し、外の光を一気に取り込むことで車内を一瞬にして眩しくさせた。
綾乃「......!______そうだね。」
ーーーーーー
その後も列車は
綾乃「大月って結構東よりなんだね。」
綾乃はスマホを見ながら呟く。
晶「そやね。八王子まであと20分といったとこ........あ!」
綾乃「どしたの。」
晶「そろそろ朝ごはん食べない?八王子ついちゃうと乗客が増えてまうかもやし。」
綾乃「増えるって?」
晶「うん。八王子からは通勤で特急乗る人がそれなりにおるみたいで、食べ物のいい匂いが広がると迷惑かなって...」
綾乃「なるほど。それだったら食べちゃおっか。」
リュックサックから先ほど買った朝ごはんを取り出し、前の座席に取り付けられた簡易テーブルを展開して置く。今日はお昼をいっぱい食べる予定なので、ウチは【俵おむすびセット】にした。
綾乃「あ...それ...」
晶「うん?......あっ。」
窓側のテーブルに目を向けると、ウチと同じ【俵おむすびセット】がそこに鎮座している。どうやら綾乃も同じものを買っていたようだ。
綾乃「被っちゃったね。」
晶「見事にな。」
晶・綾乃「......ふふふっ。」
ごはんを買ったタイミングは微妙に違がったのに、こうしてまんま被ったのはなんの因果だろうか。
晶「ほな食べよっか。」
綾乃「うん。」
晶・綾乃「いただきます!」
今日も会社へ向かう人が多い中、ウチらはちょっと贅沢な時間を過ごす。八王子、立川、新宿と止まるたびに、徐々に建物が高くなっていくのを実感する。ビルの乱立するエリアを縫うように走り、終点の東京駅に到着したのは9時29分のことだった。
ーーー(おまけ)ーーー
【新桂川橋梁】
綾乃「高っ!?こんなとこよく橋かけられたなぁ~。」
【高尾駅】
綾乃「晶っ!ホームに天狗いるよ!!」
【新宿駅】
綾乃「おぉ......めっちゃ人いるじゃん。」
【万世橋付近】
綾乃「ビルすれすれじゃん!おもしろ~い!」
晶(ふふっ......綾乃のはしゃぐ姿を見ると、昔のウチを思い出すなぁ。)
47話でした。次回もよろしくおねがいします。
番外編を書こうかな~って考えてます!どのお題がいいか選んでください!!
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ほむらの断髪式
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少女の突発弾丸旅
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球技大会 in 3月
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