「餃子、うま~。」
ウチは今、浜松駅の近くにある餃子屋さんで浜松餃子を堪能している。他の地域とは違い、餡にはキャベツ、玉ねぎ、豚肉が使われているのが浜松餃子の特徴だ。ちなみに浜松餃子の定義は"製造者が3年以上浜松に在住し、なおかつ浜松市内で製造されている餃子"だそう。
「嬢ちゃん、いい喰いっぷりだなぁ!」
「店主さん、ここの餃子美味しいです!お米が止まりません!」
「はっはっは、そうかい!そしたらそこにあるもやしと一緒に食べて見な。」
「もやしと一緒に?」
「そうさ。浜松では餃子をもやしと一緒に食べるってのがあってな。まぁいいから食ってみ!」
店主さんに勧められ、餃子をかじった後にもやしを口の中に放り込む。え、すごいなこれ。餃子の脂っこさをもやしが消し去ってくれた。口の中がさっぱりしたので再び餃子をある程度食べ、もやしを口に運び...ぬ、抜けられねぇ。なんだこの無限ループは!!
「...この組み合わせ考えた人天才っすね。止まらないですよ。」
「だろ?浜松の人はこうやって餃子を楽しんでいるんだよ。」
「なるほどぉ。」
「にしてもなぁ...嬢ちゃんの食いっぷりを見ると、前まで来てくれていたお客さんを思い出すよ。」
店主が昔のお客さんとの思い出をかみしめている。なんか気になるな。
「どんな人だったんですか?」
「小さい時から家族全員でウチの店に来てくれてたんだ。確か、妹さんが一番食ってたんだよ。それもうんまそうな顔しててな。"大将、今日もおいしいね!"って毎回言ってたなぁ...」
店主は続ける。
「引っ越しするって聞いた時は驚いたよ。10年以上の常連さんだったのに、残念だなぁ。」
「...寂しいですよね。」
「まぁでも、年末年始に帰ってくるって言ってるからな!だから、こんなしんみりとした空気は流せねぇ。あの子を笑顔で迎え入れたいんだ!」
「...!」
そうか。自分の故郷はなにも実家だけではない。ここのお店のように、旅に出た人を温かく出迎えてくれる場所はいくつでも創れるんだ。その人がいつでも帰ってこれるように...
「...その方はとても幸せですね。」
「ん?」
「いや~、ウチもそういう場所が1つでも多くあればなって。」
「な~に言ってるんだ。ウチの店があるじゃないか。」
「!」
「まぁまた気が向いたらでいいから来てくれ。そんときは腕ふるってやる!」
「店主さん...ありがとうございます!」
「うぉぉぉぉええ話だ!!」
「!?」
その後、酒に酔っていた常連さんたちが泣きながらウチの歓迎会(という名目での酒盛り)を始めた。急に泣き始めるからびっくりしたわ()
「...また来よう。」
そう思える場所が、また1つ増えた。
「そういえば、その方の写真ってあります?」
「あぁ~っと確かこの辺に......あった!」
そう言って店主はウチに写真を見せる。
「そうそうこの子だよこの子!」
店主は髪の毛が桃色の少女に指を置く...ん、ちょっとまて。この笑顔で髪の毛が桃色の少女、どっかで見たことあるぞ。
「むむ...」
「嬢ちゃん、どうかしたのかい?」
「店主さん、この子の名前って覚えてらっしゃいますか。」
「ん?あぁ覚えてるよ。確か各務原さんって言ってたなぁ。それがどうかしたのかい?」
「......店主さん。ウチ、この子と同じ高校です...」
『えぇぇぇぇぇぇぇ!?』
その瞬間、店内は驚きの声で染まったのだった。
☆☆☆ーーー☆☆☆
「まさかなでしこの故郷が浜松で、しかもそこでの行きつけのお店だったとはね。」
先ほどの餃子店で起こった出来事を振り返る。そんな偶然あるかぁ?
「さて、そろそろ移動しますか。」
餃子店をあとにしたウチは一旦ホテルに戻り、最低限の荷物だけまとめて浜松駅に向けて歩いている。
「せっかく浜松に来たんだから、弁天島のホテルで温泉に浸かってってや。日帰り入浴やってるから大丈夫だよ。」
店主がこうおすすめしてくれたんだ。夜のショートトリップも兼ねて東海道線で弁天島駅に行くっきゃない。
リン:{なでしこ飯、うまー
お、リンからだ。鍋のそばにでかい段ボールケースがあるけどなんだこれ?
晶:{おつかれぃ そこにある段ボールケースはなに?
リン:{あぁ、これなでしこが持ってきた40個入りの浜松餃子だよ
晶:{40個!?
リン:{しかもほとんどあいつの胃袋に消えやがった...
晶:{たまげたなぁ...
晶:{そういえば、今日晩御飯食べたお店がなでしこが引っ越す前によく通っていた餃子屋さんだったんだよ
リン:{え、そうだったの?
晶:{そうなんですよ 店主さんがなでしこによろしくだって伝えておいて
リン:{わかった
リン:{そっちは今何してるの?
お、ちょうど列車が来た。邪魔にならないところでスマホで写真を撮る。
晶:{今から温泉入りに弁天島行く
リン:{おぉ
晶:{なんか新型車両来た(写真付き)
リン:{目元がかわいいなコイツ
晶:{この人前から乗りたかったんだよね めっちゃうれしい
リン:{温泉入った後湯冷めしないように気を付けてね 風邪ひくから
晶:{わかった アドバイスありがとb( ̄▽ ̄)d
湯冷めか...確かにこの時期は体をちゃんと拭かないと冷えちゃうもんな。気をつけよ。
ウチを乗せた列車は浜松駅を発車したあと、ぐんぐんとスピードを上げていく。それでも乗り心地はかなり良く、つり革につかまらなくても全然立てるほどだ。さすがは315系、JR東海の最新悦車両にふさわしい走りを魅せてくれる。
やがて、左側に国道301号線、右側に東海道新幹線の線路が並走し、弁天島駅に到着した。
「ホーム広っ!そんでもって改札口がホーム上にあるんか。不思議な構造やねぇ。」
自動改札機にSuicaをかざして出場する。身延線とは違って東海道線はほぼ全駅で交通系ICカードが使える。西富士宮~甲府にも早く導入してくれんかねー。
お目当ての日帰り温泉は弁天島駅の目の前にある。外観から見てここはリゾートホテルなのだろう。
「敷居高いなぁ...ん?」
ウチはホテルの駐車場に停まっていた一台のバイクに目を移す。暗くて分かりにくいけど、ホンダのエイプ100 TypeDかな?ウチもホンダなのでちょっと親近感がわいた。
「やっぱエイプってエンジン回りがいかついな。これほんとに100ccなんか?」
「わたしのバイクが気になるの?」
「はい、そうで...す!?」
え、いつの間に持ち主がウチの後ろにいたの!?しかも女子!?!?
「あはは、脅かしてごめんね~。」
「...心臓に悪いっすよおねーさん。はっ、勝手に見てごめんなさい!」
「気にしないで~。それより中に入ろうよ。寒いじゃん。」
「たしかに。」
☆☆☆ーーー☆☆☆
「「はぁ~~~~。」」
最っっっっっっ高!!冷えた体にアツアツの温泉が染みるわぁ。
「やっぱ冷えた体には温泉だよね~。」
「わかります(笑)」
「そういえば、君はどこから来たの?」
「山梨の身延ですね。浜松駅までバイクで、そこからは鉄道使ってぶらぶらしてます。」
「へぇ~、よくここまで来たね。遠かったでしょ。」
「まぁ身延駅から浜松駅までバイクだったので多少は。全行程列車使えばそこまで遠くない距離ですね。」
「あれ、身延かた浜松までってどのくらいだっけ。」
「特急と新幹線乗り継げば2時間で着きますよ。バイクだと3時間半かかるんですけど...」
「え、遠くない?」
「ん?列車で2時間で行けるんですよ。近くないですか?」
「え?」
「え??」
あれ、列車で2時間で行ける場所って近いんじゃないの?違うっけ。
「...あ"ぁ~いい湯っすねぇ。」
「お~い水に流すな~。」
「あ、バレました?」
「当たり前でしょ(笑)」
あはは、と2人で笑う。
「ほんと君面白い子だね。なでしこが言ってた通りじゃん。」
「それほどでも~ってなんでなでしこのこと知ってるんですか?」
ここで急展開。さっき会ったばかりの女子が"なでしこ"という4文字を発した。なんだコイツは、なぜなでしこの事を知っている。
「君は確か...神崎晶さんだったよね?」
「ファッ!?」
うおぉぉぉぉいなんでウチの名前知ってるんだよぉ!怖いよ誰か助けて!!
「あ、ごめんごめん。わたしは土岐綾乃、なでしことは幼馴染の関係だよ~。」
「それ先に言うてくださいよ...」
「あと敬語じゃなくていいよ。わたしたち同い年でしょ?」
「ほなお言葉に甘えて...はぁ~とけうぅぅぅブクブク」
「ちょっ沈んでる沈んでる!」
「ブクブク...ブフッ!」
その瞬間、鼻に熱々のお湯が一気に入ってめっちゃむせたのは言うまでもない。
はい、綾乃初登場回です。案外オリジナル回の方が速く書けるな...
次回は浜松編最後です。評価・感想お待ちしております。
番外編を書こうかな~って考えてます!どのお題がいいか選んでください!!
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その他(感想欄に記載をお願いします)