「...なぜだろう、温泉入ったはずなのにすげー疲れた。」
「大丈夫?...ふっ(笑)」
「その心、笑ってるね!?」
「だってさぁ...ふふっ、【
「だぁぁぁ!こっちはしんどかったんだぞ!」
ウチと綾乃は自販機で買った飲み物を片手にラウンジでくつろいでいる。土岐さんはさっきからウチの醜態にツボっている。こっちの身にもなってほしい。
「あはは、あ~笑った笑った!こりゃ一生こすれるよ。」
「...まさか、誰かに言いふらすつもりなん...?」
「誰も他人にバラすとか言って無くない?」
「ホッ...」
「う~ん、やっぱどうしよーかな。この手の話題って誰でもウケるしな~。」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中で何かが切れた感触がした。
「死にたいんか?」
「...!?」
「...あっ。」
土岐さんの顔がこわばったのを見て我に返る。前世で魔女退治をして以来、久しぶりに殺意が宿ったのだ。だが相手は魔女やQべぇではない、ウチと同じJKライダーだ。あ~ウチのバカ!土岐さんが黙り込んじゃったじゃん!!
こういうときってどう声をかければええんやろ...?
「あ、あの。土岐さんは冗談のつもりだったんよね?」
「...」コクッ
「その、怖がらせてごめんな。」
「......」
ウチは無難な言葉を選んだうえで正直に謝る。土岐さんは依然黙ったままだ。
「ジョークにマジギレしちゃうなんて、ウチもまだまだだなぁ。」
ははは、とウチは小さく笑う。
「わたしの方こそ、嫌な思いをさせてごめん。」
土岐さんが口を開いた。
「ウチはもう気にしてないから大丈夫。だから、そんなしょんぼりすんなって。」
「...うん、ありがとう。」
「それでね、さっきの温泉の件なんだけど...」
「わかってる。その代わり、わたしの事は綾乃って呼んでほしいな。君のことも晶って呼ぶからさ。」
「りょ~かい!んじゃ、改めてよろしくな、綾乃。」
「こちらこそよろしくねー、晶。」
お互い手を差し出し、そのまま握手を交わす。
「...指綺麗やな。」ボソッ
「どした?」
「ん?あぁ、なんでもないよ。」
あかん、心の声が漏れてしもた。にしても顔立ちといい手といいホント綺麗だな~。羨ましい。
「そうだ、晶って明日ヒマ?」
「明日はお土産買って帰るくらいかな。それ以外は何も決まって無いよ。」
「じゃあさ、一緒にツーリングしない?」
☆☆☆ーーー☆☆☆
翌日、ウチは綾乃と共に浜名湖へやってきた。
「すっごい気持ちよかった!」
「でしょでしょ~。」
現在位置は浜名湖ガーデンパークにある駐車場。目の前にはさっき渡った全長5.35kmの浜名湖大橋が見える。あれ、浜名湖大橋って確か全長7.6kmだったよね?と思う人は多いが、正式には旧村櫛料金所~中之島交差点の5.35kmの区間だけ。残りは有料道路時代の名残として浜名湖大橋と総称されていた区間だ。
「にしてもよく本体の距離を知っていたよね。調べたけど全長と各ルート別の距離しかヒットしなかったよ?」
「各ルート別の距離から自分で連立方程式を立てて計算した。」
「え、すご。計算って頭の中でやったの?」
「さすがに連立方程式が解ける電卓サイトを使った。解が少数になるのは分かり切ってるし()」
「だよね~()」
「そういや話変わるけど、ウチが神崎晶だってよくわかったよね。」
「あーそれね。なでしこがいっぱい写真送ってくるんだよ。その中に晶がバイクに座ってドヤ顔キメてる写真があったから気になってね。なでしこに聞いたら色々教えてくれた。」
「なんでそれを送ったんだよ...」
「わたしも思った。もうちょい普通の写真あっただろ~って(笑)」
「微妙にダメージ喰らった気がする...」
「ごめんごめん。それで、昨日の夜になでしこから晶が列車で浜名湖一周してるって連絡が来たんだ。それで、弁天島でお風呂入るって~っていう情報も合わせて来たからあのリゾートホテルに訪れたってわけ。」
「なるほどな~。」
「でも、まさかほんとに会えるとは思わなかったよ。偶然ってすごいね。」
そうか、事前にウチの位置が分かっていたとしても数分ズレていたら会えなかったかもしれない。そう考えると今綾乃とツーリングできているのは奇跡に近いのかも。
「それで、なでしこは元気にしてる?」
「というかなでしこは元気すぎる。野クルに入ったのも8割はなでしこが強引に連れて行ったからだし...」
「あはは、あの子昔からああなんだよね。けど、引っ越す直前は友達できるかなーって心配してたんだよ。しかもずっと泣いてたし。」
なでしこの当時の心情はよくわかる。ずっと住んでいた街を離れる経験はウチもあったわけやし。
「まぁでも、元気そうで良かったよ。晶たちのような友達もちゃんとできたみたいだしね。」
綾乃がウチの目を見ながら言う。うれしいけどちょっと恥ずかしいや。
「...晶、照れてやんのー(・∀・)ニヤニヤ」
「うぇ!?あ!綾乃、そういえば見た?なでしこが浜松餃子40個食ったんだよ。」
「最初聞いた時、そっちの方も相変わらずか~って思っちゃった(笑) あと話そらすなよ~。」
「うっうるさいなぁ!そんなことより毎回思うんだけど、彼女の胃袋の構造どうなってるんや...綾乃、彼女の胃袋を満腹にさせたことってある?」
「そんなの1回もない!」
「「あははは!」」
こうして、ウチの浜松での時間はあっという間に過ぎていった。
☆☆☆ーーー☆☆☆
「もう帰るの?まだ15時だぞ~。」
ウチはバイクに跨った。頭の上からヘルメットを奥までしっかり被り、顎紐をしめる。
「綾乃、ウチだって本当はもっとここに居たいよ。」
「ならもう1泊すればいいのにな~。」
「ヒント、明日は平日。」
「うわそうじゃん。授業だるー。」
「おいおい...」
だるい授業もあるけどちゃんと起きるんやでー。実際に寝てるやつは成績下がってるし。
「...貴重品よし、お土産よし、その他所持品よし。エンジン起動。」
ウチは忘れ物チェックを行い、ハンターカブのエンジンを起動させる。アップマフラーから白い煙が出始める。
「エンジン起動確認、各種計器異常なし!」
「晶、それいつもやってるの?」
「1人の時は声出してないけどね。でもかっこよかない?」
「ふふっ、たしかに。」
綾乃と会話しながらウチはヘルメットの上からゴーグルをかぶせる。
「...また会えるよね?」
綾乃が名残惜しそうにウチを見る。
「もちろん!」
その言葉に対する答えはこれしかないよね!綾乃の顔が明るくなる。そんな彼女と約束を1つ交わした。
「綾乃、近いうちに一緒にツーリングしよう。目的地はどこにしようか?」
「いいね~!まぁ、あまり遠すぎるところはやめろよー。」
「わーってるさ。ほな、また会おう。」
「うん。」
ウチはゴーグルを目元に装着し、ハンターカブのアクセルを踏む。バランスが安定してすぐさま右の親指を上に挙げた。ミラー越しではあるが、綾乃もサムズアップで返事してくれたのを確認した。
「...新しく応募したバイトと免状、受かってるかな。」
帰ろう、ウチの第2の故郷へ──
浜松の旅が終了しました。次回は四尾連湖キャンプまでのつなぎとなります。評価・感想お待ちしております。
番外編を書こうかな~って考えてます!どのお題がいいか選んでください!!
-
ほむらの断髪式
-
少女の突発弾丸旅
-
球技大会 in 3月
-
その他(感想欄に記載をお願いします)