冒険者ワイ、薄汚れたハーフのエルフとダークエルフ(幼女)を買う   作:冒険者モブ

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最初から好感度高い訳ないじゃん

宿に戻った後、問題があった。

 

「寝る場所はどうするか…」

 

自分がとっている宿は一人用、故にベッドは一つだけ…それに

 

「……」

 

「……」

 

買った奴隷二人はお互いに身を寄せ合ってこちらを睨んでいる。当たり前だろう、名も知らない冒険者に買われた訳だから、警戒心は強い

 

冒険者も聞こえが良いだけの何でも屋、素行不良な奴も多い。

そんなのも居る冒険者に買われた訳だから、こうして警戒するのも無理はない

 

「…あー、まず…名前を教えてくれる?」

 

しゃがんで出来る限り目線を合わせて、警戒心を解こうとするも

 

「お前なんかに教える名はない」

 

「…知ってる、私達を肉壁にして、依頼を楽する為に買ったんでしょ?」

 

初手拒絶、信用が一ミリもない…まぁ当然だが

 

「肉壁にするつもりはないし、そもそも君ら幼いのに肉壁になんてしたら受付に殺されるよ、冗談抜きで…」

 

受付のあの細腕に詰まったパワーはムキムキマッチョ並みなのだ、しかも本人は奴隷への酷い扱いは嫌う性格なので、普通に殺されかねない。

 

奴隷なんて幾らでも居るから肉壁にすればいい、と言った冒険者が昔居たが、受付によってシバかれ、徹底的な折檻の後に真人間に更生された。

 

冒険者ギルドにひっそりと存在する折檻部屋には死ぬんじゃないかと思う程の打撃音や骨の折れる音が響き、暫くの間冒険者ギルドにいる者が静かになった程

しかも受付は元聖職者…回復魔法を扱える為に、死ぬという事はない

 

そんな恐ろしい受付が自分の担当でもあるのだ、下手な事をすれば殺される。

 

「……大変なんですね?」

 

「…まぁ、担当してる受付が元聖職者でもあるんで…そもそも君らを買ったのはパーティを組む為ってのもあるんで」

 

「パーティ?冒険者って普通、初心者の間から既にパーティって作れるんじゃないの?」

 

「成程…コミュニケーション能力がないから、奴隷を買ってパーティを組むだけ組もうと言う訳ですか?」

 

ダークエルフは不思議そうに首を傾げ、エルフは蔑んだ目でこちらを見る。

 

「仕方ないんだよ、自分は魔法使い…冒険者の中じゃ溢れる程居る。まぁ、ゴブリン討伐を一人でこなせる程度の強さはあるんだけどさ、ロードとかジェネラル辺りも、倒せはするよ」

 

「よく生きて来られましたね?」

 

「普通、ジェネラルとかロードに遭う前に、ホブで殺されてると思う」

 

「そりゃ、運が良かっただけだよ。怪我はするし、大怪我も今日で10回目でね…流石に看過できないからってパーティ組まない限りゴブリン討伐の依頼を受けさせないって叩き出されたんだよ」

 

「当たり前の事をされている」

 

「ご主人様って、バカなの?」

 

「バカじゃなくて一人で出来る事をやり切れない無能って言うんだよ」

 

ハハハと笑う、そもそも中堅の冒険者なら一人で簡単な索敵、周囲の警戒程度はこなす事が出来る。

 

自分はそれさえ出来ない、常に行き当たりばったりで、罠のチェックや死んだふりのチェックはするが、背後からの急襲(バックスタブ)で何度死にかけたか覚えがない程だ。

 

そんな奴を仲間に入れる冒険者は居ない、仲間の危険や無駄な出費になる程なら最初から入れない。

 

だからこそのぼっち(ソロ)だったのだ。

 

「…私達を買った理由はまぁ、分かりました。でも私達は見ての通り、まだ成熟してる訳ではありません。ハーフなので、普通の子供よりは強いですけど」

 

「僕はパワーあるよ、おっきいタルとか持ち上げられるもん」

 

未だ目線を合わせる事はせず、一応は知りたい情報を渡してはくれる。

 

「…まぁ、それでも君らにやって貰うのは魔石の採取と最低限の自衛程度だね…魔法は使える?」

 

「…水魔法初級の水砲(スプラッシュ)と、風魔法初級の風刃(ウィンドカッター)だけなら」

 

点火(ファイア)目眩し(シャドーミスト)は使えるよ」

 

予想通り、二人はそれぞれの初級魔法を使う事は出来る様だ。

 

「…まぁ、出来なくても魔導書はあるから覚えさせてたけど」

 

そう言って、腰に下げている魔法袋(マジックサック)から魔導書を取り出す…出したのは風の中級魔法が書かれた本だ。

 

「…風の中級魔法の本…しかもその厚さ…全ての風の中級魔法が書かれた物じゃないですか、だいぶ高いと聞きますけど?」

 

「そりゃ高かったよ、銀貨100枚だったしね…でも一冊買えば後は好きに使えばいいしさ、中古で売るのも買った値段に対して半分以下と金にならないし、なら持っておくだけでいいかなってね」

 

「…成程」

 

「ねぇー、闇とか火はないの?」

 

「あるにはあるよ、風と比べたら薄いから覚えられても3つ程度だけど」

 

闇と火の中級魔法が三つ覚えられる魔道書を出せば、ダークエルフの方は目をキラキラ輝かせている

 

「読みたい!!!」

 

「ダメです!読ませる対価に何かするに決まってます!」

 

「んな事幼女にするか!?」

 

つい反射で叫んだが、隣からドン!と壁を叩く音がした。うるせぇと言う事だ。

 

「…ここの宿は意外と壁が薄いんだ、出来る限り声は張り上げない様にね」

 

「……はい」

 

「…わかった」

 

二人とも口元を抑えて返事をした

 

「…まぁ、奴隷になったけどさ。冒険者ギルドじゃ自分を買い直す制度もあるから、それを達成すれば自由になるよ」

 

「…ゴブリン討伐程度で銀貨250枚を稼ぐのって結構先になると思うんですけど?」

 

「…まぁ、流石にね、報酬も3人で分けたら*1ハーピィの涙程だろうし…」

 

「…うーん」

 

「でも、パーティが組めるならゴブリン討伐以外の依頼も受けられる。ダンジョンにだって潜れるはずだ。そこでお宝を手に入れて換金すれば、意外と早く買い直せるかもよ?」

 

「…でも、装備も何もない私達じゃ殺されるのが関の山ですよ?しかも買い直しは装備費用や魔法を覚えさせたなら魔導書の価格の半分は請求する事が出来ると聞きますし…ザッと見積もっても…私なら銀貨500枚になりますね」

 

…エルフの方は見た目に反して頭が回る様だ、口減しに売られたとは言え、元々賢い子だったんだろう

 

「えー増えるの…?ご主人様請求しないで〜」

 

ダークエルフはそう言ってこちらに抱きついた。

 

「請求するかは君らの活躍次第だよ、そもそも装備品や食品…諸々の生活費がかかるのは覚悟してたしさ…」

 

夢の暮らしが遠のいて行くが、仲間が増えれば効率アップだと自分に言い聞かせる。

 

「…珍しいですね、普通奴隷ならそんなにお金を回すなんて考える人は少ないと聞きましたけど」

 

「君達は僕のパーティメンバー…自分の命も預けるんだから、盾とか渡して頑張れよなんてできる訳ないでしょ?そんな事やったら受付に殺されるしさ」

 

「…逆にその人が担当でないならやるつもりがあったと?」

 

エルフはそう言って睨む

 

「まさか、命を預ける相手に金を惜しめば死ぬさ、昔はコストがかかるって奴隷達に粗末な装備を与えてパーティ組んでた奴も居たけど、普通に死んだしな」

 

「…そうですか」

 

そう答えれば、エルフはもう話す必要もないと口を閉じた

 

「それじゃ、怪我の治療の為に教会に行って来るから、ここで待ってるんだよ、悪い奴が来たら殺しても良いから」

 

その言葉に、二人の付ける首輪から鈍い光が溢れた…奴隷への命令だ。

奴隷の主人となった者には、奴隷に対する命令権がある。そして奴隷達はその命令の範囲内であれば自由に行動が出来る…という訳だ。

 

そう言い残して、扉を閉めた。

 

 

部屋には静寂が訪れる。

 

「…と言う事ですが、どうします?」

 

エルフはダークエルフへ、小さな声で語りかけた

 

「…まぁ、大人しく、自分を買い直せるまではあの人の元で働くしかないんじゃないかなぁ…」

 

「…そうですね、それ意外に道はありませんし…それに…私達が趣味という訳ではなかった様ですから、身の安全は取れたでしょう」

 

「魔導書も置いて行ってるし…読んでいいって事かな?」

 

「でしょうね、単純に忘れて行ったならあちらの落ち度ですし」

 

二人は、命令通りに部屋の中で待ち……置いて行った魔導書を読み込む事で時間を潰す事にした。

 

 

 

 

「…あ、魔導書置いて来たわ…まぁいいや」

 

宿を出て教会を目指す…怪我の治療の為だ

夜も近くなってきている為、外を歩く人も疎らだ。

 

宿から徒歩で数十分、すぐに教会は見えて来た

教会の前ではシスターが掃き掃除をしていた

 

「…おや、今噂のロリコン冒険者さん」

 

「もう噂になってんの…??」

 

シスターにそう返せば、クスクスと笑う

 

「人の噂は流れるのが早いのですよ、見た所…今日も怪我の治療ですか」

 

「いつもすいません」

 

「いえいえ、冒険者をやろうとする聖職者はごく少数…仕方のない事ですから」

 

どうぞ、と教会の中へ案内される

 

教会の中は長椅子が並び、奥には石のベッドが鎮座している

 

そして教会の最奥には、大きな女神像が建っていた

 

治癒神・ユースティア

 

生きる者を守護する者であり、同時に悪を許さない正義の神でもある

大半の聖職者はこの神を信仰しているが、治癒魔法は治癒神を信仰する者が扱える訳ではなく、神を信仰する聖職者であれば誰でも扱う事が出来る。

 

そして、元聖職者であっても、治癒魔法は扱う事が出来る。

 

そんな事を思いながら、石のベッドに座り、服を脱いで怪我を見せる

 

「今日の怪我は……まぁ、いつもの火傷と裂傷ですか…どうして早く来なかったとは言いませんが、せめて応急処置はして欲しいものです」

 

そう言って、シスターは怪我に手を添えた

 

「慈悲深き我が神よ…この者の傷を癒したまへ…《治癒(ヒール)》」

 

そう唱えれば、怪我は綺麗さっぱり消えた

 

「では、治療費を頂戴しますね」

 

「はい、銀貨3枚」

 

差し出された手に、銀貨3枚を落とす

 

「…いつも思うのですが、チップ位はくれてもいいと思うのです、私だけですよ?夜にも関わらず、健気に貴方を待ってこうして癒すのは」

 

「…まぁ、本当に命に関わるなんて事があった時に、チップ出しますよ」

 

「ケチですねぇ…」

 

そう言いながら、シスターは女神像の前にある箱に銀貨を収める。

 

「というか、毎回怪我した時必ず居ますもんね」

 

「ええ、治癒神様からのお告げがありますからね。私は清廉で真面目なシスターですから、こうして怪我した哀れな人にも手を差し伸べるのですよ」

 

「清廉ならチップ要求しませんよね?」

 

その言葉に、シスターは目線を逸らす

 

「…いいじゃないですか、知り合いなんですから偶にはチップくらい下さいよ」

 

「…分かりましたよ、今日貯金半分消し飛んだんでこれくらいしか渡せませんけど」

 

そう言って、シスターに銅貨を10枚渡す

 

「まぁ、良い事をしましたね!明日は良い事がありますよ!」

 

露骨な程の笑顔で受け取ったシスターはそう言う

 

「だと良いんですけどね」

 

「失礼ですね?この私が、良い事があると言ったのです、あるに決まってますから」

 

そう言ってシスターは胸を張る……慎ましい胸だが

 

「いってぇ!?」

 

「何か良からぬ事を考えましたね?天罰です」

 

「ただのゲンコツだろ!?」

 

目に見えない早さで放たれた拳は的確に頭を撃ち抜いた。

 

「ま、予想は付きますよ。貴方は昔から分かりやすいですから…それに、私はまだまだ成長期なんです。いつか求婚殺到の美少女になりますからね」

 

「既に美少女だろ」

 

また拳を喰らった、解せぬ

 

「……ふん、今美少女ならもっと凄い美少女になるんですよ、ではお帰り下さい」

 

「はいはい、今度は件の奴隷連れて来るんで…」

 

「まぁ、私の前で奴隷を自慢する気ですか?」

 

「違うわ!素質を見る為だよ!」

 

人にはそれぞれ素質がある。魔法の素質や剣の素質…と言った具合に、人には何かしらの素質がある

 

自分の素質を知るには、教会で診断して貰う必要がある。

 

因みに自分は中級魔法までを全属性覚えられる程度の魔法の素質があり、更に剣の素質も少しあった。

しかしぶっちぎりであったのは魔物を手懐ける素質だ。

しかし、魔物使い(テイマー)の素質はゼロだった、宝の持ち腐れだろこれ

 

「では、明日お待ちしていますね〜チップも下さいよー」

 

そう言って見送るシスターの言葉を背に、自分は宿へ帰った。

 

宿へ戻れば、二人は魔導書を持ちながらうたた寝をしていた。読み込もうとしたのか、顔面は魔導書に埋まっている。

 

溜め息を吐いて、二人をヒョイと抱えてベッドに移す

そのまま布団を被せ、自分は椅子に座り、眠る事にした

 

明日は色々忙しくなるし、出費がどれだけになるか、それを考えながらゆっくりと瞼を閉じた。

 

 

 

*1
雀の涙の異世界版。ハーピィは殆ど泣く事がない為、極端に少ない報酬や手持ちのお金を指す言葉になった

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