冒険者ワイ、薄汚れたハーフのエルフとダークエルフ(幼女)を買う   作:冒険者モブ

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自分よりも才能がある奴はごまんと居るもの

 

まだ日が昇らない頃、エルフは鳥の囀りと共に目を覚ました。

 

外はまだ薄暗く、窓から外を見れば薄らと雲が天を覆う

 

「…いつの間にか寝てましたか」

 

自分がベッドに居る事に気付き、辺りを見渡す

ダークエルフは涎を垂らしながらスヤスヤと隣で眠り

自分を買った冒険者は備え付けの椅子で眠っていた。

 

その見た目はごく普通の人間だ。

自分で切ったであろうその灰髪は切り揃えられておらず長さもバラバラで、肌も血色が良いとは言えず、病気かと思う程に白い。

その身を包むのは修復していない跡を探すのが難しいボロい皮鎧と、その下には鎖帷子に、平民の着る粗末な布の服とズボン

皮ベルトの右側には剣がかけられているが、その剣はショートソードで鞘も粗末な革製のものだ

左側には魔法袋(マジックサック)、見た目は小さな麻袋だが、本を取り出した事から内容量は見た目に以上に多いだろう。

 

薄く胸が上下している為に、生きている事は分かる。

 

「…よくもまぁ、その状態で私達を買えたものですね」

 

そう呟けば、エルフは二度寝する事にした

薄手の布団だが、ないよりはマシだ

 

エルフは二度目の安らかな眠りについた

 

 

 

 

そして、翌朝

 

「…ん、朝飯の時間だな」

 

ほんのり漂うスープの匂いと共に椅子から立ち上がった。

 

その音を聞き、エルフとダークエルフは目を覚ます。

 

「ん…もうあさぁ…?」

 

「んん…朝ですか」

 

モゾモゾと二人はベッドから起き上がる。

 

「朝食の時間だ、二人とも行くよ」

 

部屋を出て階段を降りれば、少人数だが既に朝食を摂っていた。

 

スープを作る女将さんが三人に気付き声を上げる

 

「おや、早いねぇ!アンタらの朝飯は出来てるよ!早く座んな!」

 

その言葉を聞き、階段を降りるスピードは速くなる

 

そして席に着けば、看板娘が朝食を運んで来た

 

「はい、いつものやつと、二人にはコレね!」

 

冒険者の前には黒パンとスープ、エルフとダークエルフの前にはハムと目玉焼きが乗ったトーストに、スープが付いていた。

 

「ちょっと待て」

 

「なんだい?奴隷用の飯をこんな子供に食わせろって言うんじゃないだろうね?」

 

女将はカウンター越しにそう言って睨む

 

「…いや、代金は幾らかと」

 

「一人に付き銅貨6枚!二人だから12枚と、いつものだから2枚で…しめて銅貨14枚!払ってね!」

 

ニコリと看板娘は笑う

 

「分かった、払うから」

 

そう言えば、看板娘は手を差し出し、お代を受け取る。

 

「しっかり14枚!じゃごゆっくり〜!」

 

手のひらの上で枚数を数えた看板娘は、そう言って他の客へ朝食を運びに行った。

 

「…本当に良いんですか?」

 

遠慮なくバクバクと食べるダークエルフに対して、エルフはそう言って冒険者を見つめる。

 

「…大丈夫…と言うか、この宿じゃ女将さんがルールだからな、反抗したとしても宿から僕だけ叩き出されるだけだし…まぁ…出された以上はしっかり食べてくれよ」

 

「…分かりました」

 

エルフはそう言うと、少しづつ朝食を食べ始めた

その様子を見ながら、黒パンをちぎり、スープに浸して食べる。

 

黒パンとスープ、これがこの宿で一番安い飯だ。

黒パンは硬く、スープに浸して柔らかくして食べる事が前提

スープも、少しの鹿肉と野菜があり、一口飲めば銅貨2枚とは思えない程の良い味がする…量は料金相応に少ないが

 

「…味も悪くないし、これで楽なんだよな…」

 

そう言えば、魔法袋(マジックサック)から干し肉を取り出すと、そのまま齧って咀嚼する

 

「…いつの間に干し肉を?」

 

「あ、ご主人様いいなー!頂戴!」

 

「ゴブリン討伐の途中に、どうしても森を通る必要があるんだよ。そこの管理人が通行料代わりに干し肉を要求するから、いつも常備してる訳」

 

そう言えば、エルフとダークエルフへ新しい干し肉をそれぞれ渡す

 

「食った以上は働いて貰うからな、まぁ依頼の前に素質を見る必要があるから教会に行くが」

 

「分かりました」

 

「わかったぁ!」

 

黒パンを食べ終え、スープを飲み干した後は、間に合わせようと必死に食べる二人をゆっくりと待った。

 

 

朝食を食べ終えた後、奴隷二人を伴って教会に向かった。

 

行く道中は周りから白い目で見られていたが、もうロリコン冒険者という噂が流れているので今更だ。

 

数十分後、教会へと辿り着いた。

 

昨日の夜の同じ様に、シスターは掃き掃除をしていた。

 

「おやおや、ロリコン冒険者が来ましたか」

 

「まだ言うか…昨日伝えた通り、素質を見に来た」

 

「はいはい、それにしてもエルフとダークエルフ…のハーフですか、素質を見る必要、あんまりないと思いますけどね」

 

「それでもだよ、この後装備とか買うしな」

 

「まぁ、こんな子供達を戦いに連れて行くと!?」

 

シスターはそう言って口元を抑え、悪魔を見る様に見つめる

 

「戦うのは自分一人だっての、素質を見て自衛ができる様にしときたい訳なんだよ」

 

「そうですか、では教会の中へどうぞ」

 

シスターが扉を開ければ、シスターに頭を下げて入る。

 

女神像は相変わらず鎮座していた。

 

「では、お二人の素質を見ましょうか」

 

入って早々にシスターは振り返ってそう言う

 

エルフとダークエルフは身構えるも、シスターは慣れた動作で手をかざす。

 

「警戒しなくても良いですよ、すぐに終わるので」

 

少しだけ、シスターの目が輝いた。

 

「はい、終わりました。羊皮紙に書いて来ますね」

 

そう言うとシスターはスタスタと教会に無数と言える程ある部屋の一つへと入って行った。

 

そしてほんの数分経った頃、シスターが羊皮紙を二つ持って出て来る

 

「はい、これがお二人の素質です」

 

そう言われて出された羊皮紙には

 

 

名前:リーエル

種族:エルフ

 

素質

風魔法:最上位

水魔法:最上位

槍の素質:上位

弓の素質:最上位

 

クラス適性

槍使い:上位

風水の魔法使い:最上位

弓使い:最上位

 

 

 

 

名前:サリア

種族:ダークエルフ

 

素質

闇の魔法:最上位

火の魔法:最上位

弓の素質:最上位

暗器の素質:最上位

剣の素質:上位

 

クラス適性

暗殺者:最上位

闇火の魔法使い:最上位

弓使い:最上位

剣士:上位

 

 

二人とも、当然の様に高い属性魔法と弓の素質を持っていた…ハーフとはいえ、エルフとダークエルフなら当たり前だが

 

そして、素質を見る以上は当たり前だが名前も知れた。エルフの方はリーエル、ダークエルフの方はサリアの様だ。

 

「ふふ、お二人とも良い素質をお持ちでしたよ。では銅貨4枚」

 

「はいよ」

 

シスターに銅貨を4枚落とせば、女神像の下にある箱に収める。

 

「この素質を書かれた羊皮紙は冒険者ギルドへの登録に必要です、大切に持っていて下さいね」

 

「分かりました」

 

「分かった!」

 

二人は頷いて大切に羊皮紙を持つ

 

「そうですね、次いでに見ましょうか?」

 

「僕もかよ」

 

自分はもうギルド登録しているから要らないんだが…

 

「大丈夫ですよ、次いでなのでお代は取りません!チップは貰います!」

 

「チップ払うの前提かよ」

 

そうツッコミを入れる最中にもう見終わったのか、その場で羊皮紙を一枚出してサラサラと書き込んでいる。

 

「はい、新しい素質とクラス芽生えていましたよ」

 

「マジかよ」

 

生きている中で、新しい素質やクラスを得る事は稀だ。

 

魔法の素質のない魔物使い(テイマー)が魔法を放てない様に

槍の素質がない者が、槍使いの様に槍を満足に振るう事が出来ない様に

 

本来ない素質のモノを後から得るというのは、神の気まぐれによってもたらされていると昔から言われていた。

 

受け取った羊皮紙を確認する。

 

名前:グレイ

種族:人間

 

素質

火の素質:中位

水の素質:中位

風の素質:中位

土の素質:中位

雷の素質:中位

光の素質:中位

闇の素質:中位

剣の素質:下位

支援魔法の素質:上位

 

クラス適性

全属性魔法使い:中位

剣士:下位

支援魔法使い:上位

 

 

羊皮紙には確かに新しい素質とクラスが書かれていた

 

「もうお前は前線に立つの辞めろって素質なんだが…剣の素質上がらなかったし」

 

「素質が上がるのは血が滲む様な努力をした方だけですよ、貴方の様に雑に振り回すだけな方は上がりません」

 

やれやれとシスターは溜息を吐く

 

「まぁ、新しいクラスを得た以上は更新する必要がありますね…それに、昨日言ったでしょう?良い事があると」

 

そう言ってシスターはドヤ顔で胸を張った。

 

「にしては即効性あり過ぎるだろ」

 

寝て起きたら素質とクラスが増えたなんて、他の冒険者から嫉妬の目を向けられかねない

 

「まぁまぁ、良いじゃないですか、もう剣士として無理に立つ必要はないんですし」

 

「なりたかったなぁ…魔法剣士…」

 

幼い頃から憧れていた魔法剣士への道はほぼ絶たれた

 

「それに、支援魔法ならお二人を強化する事は出来ますし、意外とバランスの取れたパーティでは?」

 

「幼女を前に立たせる畜生にはならないが?」

 

「貴方が子供を前に立たせて後衛で魔法を撃つとは私も思ってません、まぁ仮に死んでもここに来たら死んでいようが蘇らせますし」

 

そう言ってシスターはにっこり笑う

 

「アンデッドになっていたら問答無用で滅ぼしますけどね」

 

「…そうだな、そこだけはいつも安心してるよ」

 

「ではでは、チップ下さい」

 

「銀貨一枚でいいか?これから軽い怪我した時の治療費込みだ」

 

「良いですよー、代わりに大怪我な時にチップ貰いますね!」

 

「守銭奴め…」

 

シスターは笑顔で銀貨をポケットに入れ、羊皮紙を渡す

 

「ではでは、冒険者ギルドに行ってらっしゃ〜い」

 

シスターに見送られながら、冒険者ギルドに向かった。

 

 

冒険者ギルドの扉を開ければ、自分の担当が不機嫌な顔で待っていた。

 

「…まさかとは思いますが、その様な子供とパーティーを組む気ですか?」

 

「そのまさかだよ、素質だって自分より上だ」

 

リーエルとサリアは、怯えながらも羊皮紙を受付に差し出す

 

「……確かに、高い素質とクラス適性はありますね…」

 

そう言うと、真っ直ぐこちらを見つめた

 

「貴方を信用していない訳ではありませんが、前線に子供を立たせる気ではないでしょうね?」

 

「…流石に育ってからですって、後衛で自衛と魔石の採取をお願いするだけですよ」

 

「…成程、ならいいでしょう」

 

そう言って受付は納得して、リーエルとサリアに冒険者ギルドの一員としてのギルドカードを差し出した。

 

「料金は貴女達の主から貰うので大丈夫です、これで貴女達も冒険者ギルドの一員です。冒険者ギルドには、自分を買い直すという奴隷解放制度があります。分からない事や、もし他の冒険者に何かされそうになったとなれば私に言って下さいね、悪意があるなら絞めますので」

 

そう言って二人に微笑んでギルドカードを渡す。

 

「受けるのはゴブリン討伐ですね?」

 

「はい、お願いします」

 

依頼書を受け取り、銅貨4枚を渡す。

 

「では、装備を購入後、もう一度ここに来て下さい。今回は確認の為に私も同行します。自衛はしますが、戦闘時に頼らない様に」

 

そう言って、受付は自分を見つめた

 

冒険者ギルドを出ると、二人は緩々と息を吐く

 

「あの人、ニコニコしてるけど、全身に重しが乗ったようなプレッシャーがありました…」

 

「あのお姉さんちょっと怖いよ…」

 

「…まぁ、元冒険者の元聖職者で、現役の頃は悪魔殺し(デビルスレイヤー)やってたからな…冒険者ギルドで確認出来た殺した悪魔の数は6000体、聖職者として殺した数は分かってないからな…そもそも悪魔自体、一番弱くても新米じゃすぐに殺される程度には強いしな」

 

だからこそ、本来なら冒険者ギルドの受付に留まって良い人材ではない。しかし本人はギルド長と交渉したのか、受付に留まっている。

 

「まぁ、そんな人が君らの味方だ、この街であの受付に歯向かおうとする奴はほぼ居ないよ…そもそも辞めたとは言え元聖職者…彼女に何かあれば教会も出て来るからな」

 

「…権力って恐ろしいんですね」

 

「…そんな人が味方かぁ…」

 

「自分を買い戻した後でも、味方になってくれるさ。勿論、装備代は請求させてもらうが」

 

「ケチですね」

 

「ケチ!」

 

「魔導書の分は請求してないだろ!」

 

二人からケチと呼ばれながらも、いつも行く馴染みの装備屋へ行く

 

ドグラ装備店と看板を掲げた店が、いつも行く装備屋だ。

 

「…なんだ、遂に奴隷を買ったか?」

 

店主は白髭を蓄えた褐色肌の老ドワーフだ。名前をロウ爺と言う

 

「パーティ組めって事でね…素質は…」

 

「素質なんぞ言われんでも分かるわい、ワシもそこまで目は落ちとらんわ、アイラや」

 

そう言えば、アイラを呼ぶ、ロウ爺の孫娘だ。

 

「呼んだー?じぃちゃん」

 

アイラは鮮やかな赤髪をポニーテールにし、小麦色の肌を惜しげもなく晒しドワーフにしては背がとても高く、胸にサラシと下はズボンのみと身軽な格好だ。

 

「お!グレイじゃん!久しぶり!」

 

そう言って背中をバンバンと叩く、正直めちゃくちゃ痛い

アイリはとても珍しい、ドワーフと獣人の混血児(ハーフ)だ。

本来、ドワーフは人とのハーフが主で、エルフや他の種族との間ではドワーフとして生まれる。

しかし、可能性の話として、他の種族とのハーフになる可能性はなくはない。ただし種族としての特徴はドワーフであり、体格や素質等をその種族から引き継ぐという形だ。

 

そんな中、アイラは獣人の高身長と筋肉質な肉体とドワーフの頑丈な肉体という良い所取りのハーフとして生まれた。

 

その為、本人の軽いスキンシップは結構なダメージになる。

 

「あ、悪ぃ!つい力入れ過ぎちまった!」

 

背中を抑える自分を見て、アイラは謝罪する

 

「気を付けてくれよ…ホント…」

 

「アイラ、槍と弓、剣、革鎧を持って来なさい」

 

「了解!」

 

そう言うとアイラは風の様に去って行く 

 

そして数分も経たずに、リーエルとサリアの前には、武器と革鎧が並んだ。

 

どれもこれも二人に合わせてなのか、普通の装備より小さめだ

 

「お前さんらにはアイラの作ったものが良かろうて」

 

リーエルとサリアはそれぞれ武器を手に持つ

 

「…凄い、この弓…引きやすい、手にも馴染む…」

 

「こっちの剣、まるで重さがないみたいに軽いよ!」

 

二人は初めてにも関わらず、武器を触っていた

 

「ふふん、そうでしょ?まず装備を作るなら子供用から!じぃちゃんからそう言われてるしな!」

 

「ふん、ワシから言わせればまだまだ半人前よ。どうじゃ、武器は満足行くかね?」

 

「これなら使えると思います」

 

「うん!とっても使い易い!」

 

二人がそう言えば、ロウ爺はニコリと笑って頷いた

 

「そうかそうか…次いでじゃ、アイラ、革鎧も着せて直してあげなさい」

 

「はーい、じぃちゃん。二人とも行くよー」

 

そう言ってアイラは二人を連れて店の奥…女性用の更衣室に行った。

 

「それで、幾らになりますかね?」

 

「あの子ら二人の装備なら、アイラの出来の良い試作品じゃ、しめて銀貨10枚じゃの」

 

「本来なら30枚になりませんかね?あの完成度だと」

 

「ふん、ワシの作る物と比べるでないわ。グレイ、お前も観る目が培われているが、まだまだ甘いの、アレは数百回使えば壊れる程度じゃ、武器と装備に命に預ける以上、数千数万と使っても壊れぬ物が良い品なんじゃよ」

 

そう言って、早く寄越せと手を出すロウ爺に、銀貨10枚を渡す

 

「グレイ、その革鎧と鎖帷子もそろそろ寿命じゃろう、買い替えて行け、ワシの手慰み程度の物なら銅貨10枚で売ってやる」

 

「…いつもありがとうございます」

 

「ふん、感謝するならワシの満足の出来の品を買える様に稼ぐんじゃの」

 

そう言って、新しい革鎧と鎖帷子を受け取り、着ていた方を差し出した

 

「ロウ爺の品はみんな銀貨100枚からじゃないですか、まだまだ先は長いですよ…」

 

「ふん、本当なら買える金はあるじゃろうに…見逃しておるのを忘れるでないぞ?」

 

「……はい、早めに買える様に稼ぎます」

 

そう言って、ロウ爺に頭を下げた。

 

そして少し経った後、新品の革鎧と武器を身に付けた二人がアイラと共にやって来たので、二人に頭を下げて店を出た

 

これでやっと、ゴブリン討伐の依頼に行ける…その前に受付に顔を出す必要があるが

 

冒険者ギルドに戻れば、受付はメイスを持ち、黒い鎧に身を包み待っていた

現役時代の頃から使っている装備だ、今の自分なら全財産を使っても全く届かない鎧と、教会が指定する高位の聖職者に送られる、幾重にも魔法の刻印が彫られたメイス

 

「しっかり新品ですね、良いでしょう。ゴブリン討伐依頼を了承します。では行きましょうか」

 

そう言って、自分達は受付と共にゴブリン討伐に向かった。

 

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