冒険者ワイ、薄汚れたハーフのエルフとダークエルフ(幼女)を買う   作:冒険者モブ

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ゴブリン大暴動(スタンビード)

 

「あ、すいません。自分素質増えてたの伝え忘れてました」

 

森へ向かいながら、まだ自分の更新をしていない事を思い出す

同時に受付からの拳骨が頭に来た。

 

「全く、報告義務違反です。今回は見逃してあげますので、羊皮紙を渡しなさい」

 

頭を抑えながら、羊皮紙を渡す

それを見て受付は少しだけこちらを見つめた

 

「……なるほど、主に少しは目を向けられましたか」

 

「向けられた理由不明ですけど…」

 

「主の御心は計り知れないもの、貴方に何か期待をしての事です。励みなさい」

 

「新しい魔導書買う必要出ましたけどねぇ…」

 

「支援魔法なら初級で銅貨5枚、手軽でしょう」

 

「…その、お二人は仲が良いのでしょうか?」

 

リーエルが話しかけてきた。

 

「…ええ、冒険者を引退して受付を始めた頃に、この子は来ました」

 

受付は、そう言って懐かしむ様に目を細める

 

「まぁ…冒険者をやるのは生きる為だったけどな」

 

「えぇ、今はこの様な姿ですが、初めて来た時は薄汚れたスラムの出の子供でしたよ。

 

まだ冒険者にはなれる歳ではないと何度説得しても、力はある、だから冒険者になると曲げませんでしたけど

 

流石にしつこかったので、なら力を見せてみろと、冒険者ギルドの訓練場を借りて手を抜きつつですが叩き潰しました。

それでも諦めませんでしたよ」

 

そう言って、受付は薄く笑う

 

「未熟な魔法を暴発も厭わずに放ち、自らの身を切る様に肉薄し、刃が欠けたナイフを振い、一生懸命に力を証明しようとしていましたね

 

勿論、光るものはありました。一度だけですが、この私へ魔法によるダメージを与えたのが証拠です」

 

これがその時の傷ですね、と受付は頬に残る切り傷の跡を指で撫でる。

 

「ほえー…ご主人様は中級の魔法までしか使えないのに、凄いや」

 

サリアの言葉に、受付は指を立てて答えた

 

「魔法は確かに初級、中級、上級、最上級と威力や使用難易度で別れていますが、初級魔法だから弱い、最上級だから強いとは一括りには言えません

 

例えば私に傷を与えた風刃(ウィンドカッター)も、数を放てるなら十分な脅威です。

 

魔法が使えるという事と、戦いの中に組み込めるという事は別なのです。

 

…まぁ、私が傷を受けたと聞いた教会の上層部は大慌てでしたけどね、しかも傷を与えたのがスラムの子となれば……最悪殺されていたかもしれません」

 

その言葉に、リーエルとサリアは息を呑む

 

「まぁ、私は赦しました。力を見せろと言ったのは私で、スラムの子と油断していたとは言え、こうして跡の残る傷を受けたのです。

 

私が赦した以上は教会も動こうとはせず、冒険者ギルドも特例でしたが、彼を冒険者と認めましたからね」

 

なので意外と強いんですよ、と受付はグレイの頭を雑に撫でる

 

「まだ子供扱いしてません…?」

 

「してますよ、貴方はまだ十四歳でしょう」

 

「「えぇっ!?」」

 

受付の言葉に、リーエルとサリアは驚く

 

「じゅ、十四歳!?」

 

「嘘だー!見た目全然十六歳とかなのに!」

 

「ええ、来た頃は栄養が足りていないので私が食べさせました。元聖職者ですが、子供である以上は、私の庇護下です…勿論、ゴブリン討伐で食べれる様になってからはしていませんが」

 

「…その時の食費は報酬から抜いて貰ってるけどな」

 

「ご主人様は2歳年上だったのかぁ…」

 

「…意外と近い年齢でしたね」

 

そんな事を話していれば、森の入り口が見えて来た

 

入り口には、一人の少年が立っている

 

毛皮で作られた外套からは、琥珀色の鋭い瞳がこちらを射抜く様に見つめている。

 

「…アレが森の管理人……の、弟子です。冒険者ではありませんが、この森を管理して下さっている狩人ですね」

 

受付が頭を下げれば、少年も頭を下げる

 

「……教会のか?」

 

「いいえ、元教会の者です。今は冒険者ギルドの受付をしています」

 

「…そうか、おい、通行料」

 

「待ってくれ今出すから…」

 

魔法袋(マジックサック)から干し肉を4枚出す。

 

少年はそれを受け取ると、背嚢に入れた

 

「…一つ教える…今、いつも洞窟に居るゴブリン供の様子がおかしい」

 

「…報告にありませんでしたが?」

 

受付はメイスを持ち、少年を睨む

 

「…ほんの少し前だ、見た限りホブゴブリン、ゴブリンシャーマン、血塗れ帽子(レッドキャップ)が洞窟の前に陣取っている。恐らくロードの変異種による影響だ…

ギルドには師匠が報告に行ってたはずだ…すれ違ったか」

 

「……ダメですね、依頼は中止です。貴方達にこなせる難易度ではない」

 

受付はそう言って口笛を吹く。

 

鳩が一羽飛んで来て、受付の肩に止まる…教会の伝書鳩だ。

羊皮紙を書き、鳩の足に括り付ける。

 

それとほぼ同時に、森から数多の足音が響く

 

「…チッ、今は師匠が居ない…狙ってたか…」

 

少年は弓を引き、矢を放つ

 

「ギッ!?」

 

「ギャッ!」

 

「ギィェ!」

 

森から飛び出したゴブリン達は、眉間を矢で射抜かれた。

 

奥から続く様に、狼騎兵(ウルフライダー)達を引き連れたゴブリンジェネラルが現れる。

 

「グヒャ…グヒャヒャヒャ!!」

 

ジェネラルが腕を振れば、狼騎兵(ウルフライダー)は即座に自分達を囲んだ。

 

「ギヒヒヒ…」

 

「ギャハハ!」

 

狼騎兵(ウルフライダー)の獲物は槍だ、木や太い枝を削り作っただけの槍だが、狼に乗っている以上、機動力は脅威だ。

 

そしてジェネラルの背後には、赤く染めた頭巾を被り、ナタを持つゴブリン…血塗れ帽子(レッドキャップ)達が獲物は今かと待ち構えている。

 

「チッ…ゴブリンロードの変異種が産まれたにしては軍が出来上がるまでが早過ぎる…!」

 

「悪いな二人とも、初戦から生きるか死ぬかだ。俺の事は捨てても良いから自衛…無理になったら逃げろ」

 

それと同時に首輪は鈍く輝く…命令が受理された証拠だ。

 

「縁起でもない事を言わないで下さい。元とは言え聖職者の私が居ます…今回は特例です。私も戦闘に参加します」

 

そう言って、受付はメイスで地面を軽く叩く

 

狼騎兵(ウルフライダー)達の足元が鈍く光を放つ

 

「ギャ?」

 

反応が遅れた狼騎兵(ウルフライダー)は、狼諸共地面から貫いた岩の柱にその身を貫かれた

 

殆どは即座に反応し、その場から飛び退いたので無事だ。

 

「…チッ、ロードだけでなく、他の奴らも軒並み頭が良い様ですね…」

 

「「「ギャハハハ!!」」」

 

ゴブリン達は死んだ狼騎兵(ウルフライダー)を見て笑う

 

見ろ、あのバカは躱せずに無様に死んでいるぞ、と

 

これがゴブリン

 

醜悪なる小鬼の怪物。

 

「グギャギャ!」

 

「五月蝿い」

 

ジェネラルの号令に被せる様に、少年が矢を放つ

 

「ギャ?」

 

しかし、平然とジェネラルは矢を弾き、ニタリと笑った

 

「…チッ、腐っても将軍(ジェネラル)か…」

 

包囲に狼騎兵(ウルフライダー)に加えて血塗れ帽子(レッドキャップ)が加わった。

 

「ギヒヒ…!」

 

ナタを持ちながら、血塗れ帽子(レッドキャップ)は今か今かとにじり寄って来る

 

「…これでは鳩を飛ばせませんね…」

 

「師匠が来るにしても時間稼ぎは要りますね」

 

ジリジリと寄る血塗れ帽子(レッドキャップ)狼騎兵(ウルフライダー)

 

「…せめて支援魔法覚えてから来るべきだった…」

 

「嘆いても遅いです。来ますよ」

 

その言葉と共に、受付は鳩を空へ逃す

 

それと共に狼騎兵(ウルフライダー)血塗れ帽子(レッドキャップ)は飛びかかって来た

 

「ふんっ!」

 

「死ね」

 

受付と少年が飛びかかって来た狼騎兵(ウルフライダー)血塗れ帽子(レッドキャップ)を瞬く間に仕留めるも、それを逃れる者も一部いる。

 

「っ…風刃(ウィンドカッター)!」

 

リーエルが風刃(ウィンドカッター)を唱える

 

「ギャッ!」

 

風刃(ウィンドカッター)血塗れ帽子(レッドキャップ)の喉を切り裂いた

 

しかし、血塗れ帽子(レッドキャップ)の戦意は落ちていない

 

「グッ…ギャァ!!」

 

そのナタを振り下ろそうとするが

 

「あー、クソ!お前ら弱い方から狙うもんな!」

 

グレイが体当たりをして血塗れ帽子(レッドキャップ)の姿勢を崩し、そのまま倒れ込んだ血塗れ帽子(レッドキャップ)に剣を突き立てた。

 

「っし、次!」

 

突き刺したままの血塗れ帽子(レッドキャップ)を背後から迫る狼騎兵(ウルフライダー)に叩きつける

 

「ギャァ!?」

 

姿勢を崩して狼から落ちた狼騎兵(ウルフライダー)をグレイは蹴り飛ばす。

 

狼はそそくさと森へ逃げて行った。懐いている訳ではなかったのだろう

 

「あわわわ…」

 

サリアの方は状況に付いて行けず、蹲っている

 

「グギャー!」

 

ジェネラルが号令を出す、即座にゴブリン達の狙いはサリアに集中した。

 

「チッ、私がジェネラルを殺します。二人は周りのゴブリンを!」

 

そう言いながらも狼騎兵(ウルフライダー) 血塗れ帽子(レッドキャップ)を見ずに殺す受付に、二人は頷いた。

 

氷結の壁(フロストウォール)!」

 

グレイが唱えれば、サリアとリーエルを囲む様にドーム状の氷の壁が出来上がる

 

「やるなら最初からやっとけよ」

 

「うるせー!大暴動(スタンビート)なんて経験した事ないわ!」

 

「それでよく今まで冒険者が務まったな…」

 

「言ってる場合かよ…!チッ!」

 

ジェネラルの後ろにはゾロゾロとゴブリン達が現れる

 

鉄の槍と盾を持ったゴブリン、髑髏の杖を掲げるシャーマン、鉄の鎧に身を包むボブ

 

「おいおい、幾らゴブリンが製鉄技術を持つ事もあるとは言え、この数はあり得ないだろ…!」

 

「だが、その分通りは良いはずだ…紫電龍(ライトニング)!」

 

少年が手を挙げれば、空を即座に暗雲が覆い、暗雲から龍の様に数多の雷が降り注ぐ

 

「「「ギャァァァ!!」」」

 

鉄装備を身に付けたゴブリン達は直撃を受けるも、ジェネラルだけは雷が避けた

 

付与術(エンチャント)!?ゴブリンシャーマンでも覚えないだろ!」

 

「ですが今ので大半のゴブリンは死にました…今ですね」

 

受付はそう言って踏み込むと縮地の様にその身を消し、ジェネラルの前に現れる

 

「はぁっ!」

 

そのメイスがジェネラルの鎧を砕く…事はなかった。

 

ガァン!と鉄同士が打ち合う大きな音と共に、メイスは弾かれた。

 

「…まさか…そんな…!?」

 

そして、振り抜いた受付は姿勢を戻せずに無防備だ

 

「ギャヒヒ!」

 

それを逃すジェネラルではなかった。即座に受付の腹を殴り、森の奥へと吹き飛ばす

 

 

 

 

 

木々は薙ぎ倒され、その先で受付は森にある岩に叩き付けられた

 

「ぐっ…ふぅ…我が身を癒したまえ…!《治癒(ヒール)》」

 

そして、立ちあがろうとする受付を、十体のジェネラルが囲む

 

その鉄の鎧は、よく見れば何かが彫られている

 

「…その模様…なるほど…邪教の…!」

 

『グギャハハ!!!』

 

ジェネラル達は笑う

自らの勝利を確信し、負かした後にこの女をどう弄ぼうかと、ニタニタと笑みを浮かべる。

 

「…舐めるなよ、ゴブリン供…私は教会の元聖職者…悪魔殺し(デビルスレイヤー)だ!」

 

そう叫ぶと共に、巨大な魔力が荒れ狂う

 

「寧ろ好都合です、私の戦い方は多くを巻き込む…離してくれて助かりました…彼らなら…死ぬ事はないでしょう」

 

「ギッ…ギャギャ!?」

 

ジェネラル達は戸惑う、ただ楽に倒せると思っていたというのに、この女から溢れ出す魔力は…まるで、悪魔(・・)の様ではないかと

 

「これに気付くという事は、邪教が背後に居るのは確定ですね」

 

その言葉と共に、振るわれたメイスによって

 

ジェネラル達はまるで巨大な鉄球を受けた様に腹が凹み、そのまま食い破る様に大穴が開いた

断末魔はなかった

ジェネラル達は、その巨体を大地に沈ませる

 

「…っ…はぁ…久々とは言え…殺して来た悪魔達の力を使うと、呑まれそうになりますね」

 

頭を抑えながら、受付は走り出した。

 

 

 

その頃、グレイ達は

 

「チッ、矢が刺さらん」

 

「というかゴブリン共が来ないし、まさか街に行ったんじゃないだろうな!?」

 

受付を吹き飛ばしたジェネラルと戦っていた

 

「街に行ったとしても師匠にギルドマスターが居るだろう、あの二人が居る以上、街が落ちる事はあり得ない」

 

「万が一があるだろ!っとぉ!?」

 

ジェネラルの振るう大剣を、寸前で回避するグレイ

 

「どうする!魔法は全部弾くし矢は刺さらんと来た」

 

「飛ばして刺さらないなら簡単な話だ、時間を稼げ、後後ろの仲間に攻撃が来ない様に立ち回れよ」

 

「分かってるっての!」

 

そう言えば少年は唱える

 

「我が身を写せ影人形(シャドードール)

 

少年の影がニタリと笑う、影は這い上がる様に立ち上がれば、ナイフをその手に持った。

 

「…この状態は陽の光を受けると焼ける、お前が死ぬ気でジェネラルの注意を逸らすんだな」

 

「じゃあ矢で援護しろよ!?最低限!」

 

ジェネラルの周りは何度も攻撃を避けている為に地面がガタガタだ。

 

「オイ!クソデブ!お前一回も攻撃当たらないよな!図体だけデカいバカかよ!」

 

「グォァァァ!?」

 

グレイの煽りはジェネラルに効いた様だ。怒り狂ってその大剣をグレイに振るい続ける。

 

「っ…おいおい…予想より動き良いんだけどコイツ!?がっ!?」

 

左肩を大剣が切り裂いた、腕が飛び、地面に落ちる

 

「ギャハハ!」

 

ジェネラルは笑うと、その腕に何度も大剣を振るった

 

バラバラにされ、轢き潰され原型を留めなくなる

 

「…予想よりバカで助かったな」

 

笑い声を上げるジェネラルの影には、少年の影がナイフを首に突き刺していた

 

「幾ら魔法が当たらなくても、コレは効くだろ?」

 

少年の影がジェネラルの影の首を斬り飛ばす。

 

それと同時に、ジェネラルの首は綺麗に斬れ、宙を舞った。

 

「…俺の腕無事か??これ」

 

土と肉塊になった己の腕を見て、グレイは呟く

 

「…まぁ、高位の聖職者なら治せるだろ」

 

「ええ、つまり私です」

 

グレイと少年は即座に距離を取った

 

「ジェネラル相手に腕を取られるとはまだまだですね、グレイ。

 …主よ、我が身にその癒しの手をお貸しください…《欠損治癒(リペアヒール)》」

 

受付がそう唱えれば、土の混じった肉塊は消え、グレイの左腕は戻った。

 

「…あとで請求させて貰います」

 

「…分かりました、それで…どうします?」

 

「教会には既に鳩を飛ばしました…そう遅くない間に教会の聖騎士達が対処します…ですので、我々は一度、ここで離脱します」

 

そう言えば、受付は結晶を取り出した

 

「では、《転移(ワープ)》」

 

その言葉と共に、森から四人は離脱した

 

それから少し経ち、ゴブリン達の死体は、ピクリと震えて動き出す

 

首がない者、腹に穴を開けた者、矢が刺さった者

 

それらはゆらゆらと、森の外へと動き出す

 

ゴブリン達の大暴動(スタンビード)は、こうして…始まった

 

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