デート・ア・サバイブ外伝 龍騎&555&デート・ア・ライブ 天宮ライダーズ   作:亜独流斧

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鏡の戦士

『西洋洗濯舗 菊池』

創業100年を誇る老舗のクリーニング屋で、確かな実績と店主の菊池氏の人柄によって、天宮市の主婦たちからの評判は良い。

しかしこの日、その菊池氏はいなかった。彼とその妻のかねてからの夢だった「アフリカでクリーニング屋を開く」という目標のため、一人息子と居候たちに店を任せ、夫婦揃って現地へと下見に向かったのだった。

そして今、その一人息子は仕上がった洗濯物をバンで配達しに外へ出ており、店番をしているのは不機嫌そうな茶髪の青年だった。

 

「ちょっとアンタ!それが客に対する態度なの!?」

 

店の前には何人もの主婦が詰めかけ、皆一様に鬼のような形相をしている。だが青年は怯むことも悪びれることもなく、

 

「うっせぇな…。オレの仕事は店番であって、あんたらにおべっかを使えとは言われてねーんだよ!」

 

と言い放つ。その態度に、主婦たちは更に不機嫌になる。

 

「言われてないって、店員がお客に取るべき態度として当然の事でしょ!敬語ぐらい使いなさいよ!それにその目つき!!」

 

「ほっとけ!目つきは生まれつきだ!大体文句があんのなら来なきゃいいだろ!洗濯ぐらい自分でやれよ!!」

 

「なんですって!!」

 

まさに売り言葉に買い言葉という表現がピッタリな状況。このままいけば、どちらかが手を出してもおかしくはなかった。

遠くから眺めていた木場勇治は、そんな状況を見かねて仲裁に入る。

 

「ちょっと待って下さい!彼も悪気があるわけじゃないんです!」

 

「な、なによアンタ…」

 

「木場!?お前何余計なこと言って…何でもない」

 

勇治のフォローに文句を言おうとした男を、勇治はひと睨みする。普段が温厚な勇治だけに、その目の怖さは半端なものではなく、青年は口にしようとしていた文句を引っ込めた。

 

「どうか許してやって下さい。お願いします」

 

突然現れた第三者の真剣な謝罪に、主婦たちは戸惑い、やがて数分後には皆ブツブツ文句を言いながらも帰って行った。

 

「ふう…。全く、なんで君はいつも喧嘩腰なんだい?ホントは優しい奴なのに」

 

「うっせぇ。オレは優しくなんてないし、態度だって普通だ。あいつらが細か過ぎるんだよ」

 

「ホントに素直じゃないな…」

 

勇治はそう言って苦笑する。そんな彼に青年はまた「うっせぇ」と呟いた。

 

「もう来ても大丈夫だよ」

 

勇治が店の外に向かって呼びかける。どうやら誰かを待たせていたらしい。

 

「なんだ?海堂か長田か?」

 

「いや、確かに二人もいるけど、別のお客さんだよ。さっきの状況に戸惑って入れずにいたんだ」

 

勇治がそう言うとほぼ同時に、二人の少年が店の中に入って来た。

 

「ごめんください…制服を洗ってもらいに来たんですが…」

 

二人のうちの、少し青みがかった髪の少年がそう言って手に持っていた紙袋を差し出す。もう一人の茶髪がかった少年も、同じように手にしていた袋を差し出した。中には大量の制服が入っている。

青年は随分量が多いと思ったが、店の外から三人の少女たちが中を覗いているのに気付き、彼女らの制服も含まれているのだと理解した。

 

「なんだ?最近の高校生は、デートで洗濯物出しにクリーニング屋に来んのか?」

 

「い、いや、そう言うわけじゃないんですけど…」

 

「乾くん、からかってないで仕事しなよ。そのうち啓太郎くんに追い出されちゃうよ?」

 

「あのお人よしに追い出されるとも思えないけどな。さてと…」

 

その青年・乾巧は「めんどくせーな」とぼやきながらも、袋から制服を取り出して枚数を数え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すまないね。せっかくの休日だというのに」

 

「別に構わないわよ。どうせ今日は夕食までヒマだったし。それよりも急ぎの用事っていうのは?」

 

同時刻、空中艦『フラクシナス』艦橋。本来は休日であるはずの司令官・五河琴里は、この艦の解析官を務める村雨令音に呼び出されていた。

 

「…ああ、二つ報告があってね。一つは例の擬似的なミラーワールドを作り出す顕現装置(リアライザ)の新型が完成したということだ。すまないが、今日帰ったら彼らに渡しておいてほしい」

 

そう言って令音は白衣のポケットから、小さな機械を取り出した。

 

「新型?」

 

「…うむ。今までの物は、精霊の霊力を利用してミラーワールドを現実世界に作り出していた。一方で今回の物は、搭載しているコンピューターそのものと、そこに組み込まれたプログラム、あとはバッテリーなどにも改良を施してある。これにより今までの機能に加えて、霊力が発生していなくともミラーワールドを作り出せるようにしたんだ。…無論、それ程長くは持たないがね。現時点では最大20分が限界だ」

 

「つまり精霊が出現していなくても、鏡を介さずライダーに変身したり、カードを使えるようになるってこと?でも、なんでわざわざそんな機能を?」

 

琴里の疑問はもっともなものだった。

開発者である神崎士郎が直々にこの世界(・・・・)にもたらした『仮面ライダー』の力。それは主に二つの目的で利用されている。

一つ目は精霊の保護、及びそれに伴う危険からの自衛。そして二つ目の目的は、ミラーモンスターの駆除。これらの目的を達するだけならば、従来の機能のみで充分なはずだからだ。

 

「…最初の頃と状況がかなり変わったからね。精霊やAST以外にも警戒しなければならない相手が現れた」

 

真剣な表情で語る令音。彼女の言葉に、琴里は一つ心当たりがあった。

 

「…もしかしてDEM?そういえば七罪のときも、士道にちょっかいを出してくれたみたいね」

 

DEMインダストリー社。英国(イギリス)に本部を置く世界屈指の大企業であり、ラタトスクの母体を除けば、この世で唯一顕現装置(リアライザ)を製造することのできる組織である。ASTや世界中の軍や警察に秘密裏に顕現装置(リアライザ)を提供しており、その見返りとして様々な場面で大きな発言力を持っている。

更にそうした政治的な力に加えて、フラクシナスのような戦闘用空中艦や、顕現装置(リアライザ)を搭載した自動機械人形『バンダースナッチ』。そして世界最強とうたわれるエレン・ミラ・メイザースを筆頭とした、AST隊員たちよりも高い能力を持った魔術師(ウィザード)たちなど、並外れた軍事力も有する。

彼らは精霊を狩ることに非常に積極的で、更に封印能力を持つ士道や、ライダーたちとも何度か交戦していた。

だが、琴里の導き出した答えに対し、令音は首を横に振り、「少し違う」と言った。

 

「…確かに彼らもまた危険な存在だ。だが今回、これを製作するきっかけになったのは『とある生物』だ」

 

そう言って令音は手近にあったキーボードを操作し、艦橋のモニターにある映像を映し出した。

 

「な、何よこれ!?ミラーモンスター!?それともまさか精霊の霊装!?」

 

琴里が驚くのも無理はない。そこに映し出されたのは、灰色の体色をした人型の怪物であった。

 

「…ここに映っているのは一体だが、他にも数種類確認されている。『オルフェノク』と呼ばれているそうだ」

 

「オルフェノク?」

 

聞き慣れぬ名前に琴里は首を傾げる。

 

「…元々ネット上の都市伝説では有名な怪人だったらしいが、どの噂もよくある作り話の域を出ておらず、結果的に世間で知る人はそう多くない。だが…」

 

「こうして映像がある。それも令音、あなたが信用するほど信憑性の高いものが。つまり噂は事実だったということね」

 

「…うむ。この映像も他に確認されている物もフラクシナス(うち)やラタトスク機関が観測したものだ。他にもネット上に出回っている画像のうち、いくつかは何の加工もされていない本物の可能性が高いものだと中津川が突き止めた。…そしてここからが重要なのだが、ここ数週間の間にある街でのオルフェノクの目撃率が急増している。…もう分かっただろう?」

 

「なるほどね。そのある都市ってのが、天宮市(ここ)ってわけね…。全く、どうしてこう次から次へとトラブルばっかり起きるのかしら……」

 

琴里はげんなりした様子でポケットからチュッパチャプスを取り出し、包み紙をはがして口にくわえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、つり銭と領収書だ。水曜には仕上がると思うぜ」

 

「ありがとうございます」

 

制服を渡し、会計を済ませた士道。その一部始終を見ていた真司が抱いた感想は

 

(思ってたより普通の店員だ……)

 

というものだった。

確かに敬語をはじめとした礼儀作法に関しては、正直良いとは言えない。が、対応そのものはきちんとしており、何故先程の主婦たちがあそこまで苛立っていたのか真司には分からなかった。

 

「ほっとけ。声に出てんだよ」

 

「え、あ、すいません…。その、なんというか…」

 

どうやら真司自身気付かないうちに声に出してしまっていたらしい。真司が慌てて言い訳しようとしたとき、店内に携帯の着信音らしきものが響き渡った。

 

「わりぃ、オレだ。…もしもし、啓太郎か?お前今どこにいんだ。こっちは今日真理がいなくてめんど…忙しいんだぞ」

 

「今、めんどくさいって言った…」

 

「言ったな…」

 

「言ったね…」

 

「お前ら黙ってろ!」

 

呆れた顔の真司たちに、巧はしっしと手を振る。だが、その時電話越しに焦ったような声が聞こえてきた。

真司たちには会話の内容までは聞こえなかったが、どうやらかなり重要な話らしく、巧の表情がかなり険しいものになった。

 

「分かった。お前今どこに…店のすぐそばじゃねえか!すぐ行くから待ってろ!」

 

そう言って電話を切った巧は、一度店の奥へと引っ込んだかと思いきや、すぐにアタッシュケースを持って戻って来る。

 

「悪い木場、店頼む」

 

とだけ言い残し、巧はそのまま店を飛び出していった。

 

「ちょっと乾くん!?……店員の君が出て行くんじゃなくて、オレたちにでも頼めば良かったのに…。まあ、そこが君らしいんだけど」

 

突然のことに唖然としていた真司や士道と違い、勇治はどうやら大体の事情を把握していたらしい。突然店番を押し付けられたにも関わらず、かなり落ち着いていた。

 

「あの、木場さん…。一体…」

 

「ああ、彼のことなら大丈夫。大したことじゃないよ」

 

勇治はこの事に関して説明する気はないらしい。もっとも、ただの客という真司たちの立場を考えれば当然と言えば当然のことだが。

 

「まあ、制服は渡せたし、十香たちも待たせてるから帰るか」

 

「そうだな。それじゃあ木場さん、色々ありがとうございました」

 

「うん。それじゃあまた。機会があればまた会おう」

 

真司と士道は勇治に別れを告げ、店の外に出た。

 

 

 

 

 

「ぬ?シドー、シンジ、もう用事は済んだのか?何やら先程、中から男が出て行ったが」

 

「ああ、大丈夫。待たせて悪かったな。というか、海堂さんと長田さんは?」

 

「説明。士道たちがいなくなった後、海堂が夕弦たちに言い寄ってきて、そして結花さんに連れて行かれました」

 

「……そうか」

 

何気に直也が呼び捨てになっていたのだが、二人ともあえて触れないでおく。

 

「そんなことより士道よ。我はおぬしらが帰還するのを待ちわびていたぞ。さあ、いざ参ろうではないか!」

 

「そうだシドー!早くスーパーへ行こうではないか!そしてひき肉が安かったら、今夜はハンバーグなのだ!」

 

「異論。夕弦は久しぶりに、真司の餃子が食べたいです」

 

「まあまあ、まずは行かないことには始まらないし。取り敢えず―――」

 

と、そこまで真司が言いかけたとき、真司と士道の頭の中に、彼らにとっては聞き慣れた耳障りな音が響いてきた。

 

「…全く、なんでこう狙ったみたいなタイミングで出てくるんだよ。仕方ない、行くか士道」

 

「そうだな。悪い十香、耶俱矢、夕弦。もう少し待っててくれ」

 

「ぬ?何故なのだシドー」

 

「ごめんな。オレたちやらなきゃならないことが出来た。でも、すぐに戻るから」

 

士道がそう言った後、士道と真司はズボンのポケットからカードデッキを取り出す。二人はそれを近くにあったショーウィンドウにかざす。すると、鏡に映った彼らの腰にベルトが装着され、それと同時に実際の彼らの腰にも同じ物が現れた。

 

「「変身!」」

 

二人はベルト『Vバックル』にカードデッキをはめ込む。すると二人は龍をモチーフとした、西洋甲冑を思わせる姿へと変化した。

 

「興奮。やはり何度見ても、真司のその姿はカッコいいです!」

 

真司が変身したのは仮面ライダー龍騎。赤を基調としたボディに、左腕に装備されている龍の頭部を模したガントレット型召喚機『ドラグバイザー』が特徴的な仮面ライダーである。

 

「くっくっく…。我はやはり士道の変身後の方が好みであるな。その姿はまさしく、漆黒の戦士(シュヴァルツ・ケンプファー)と呼ぶにふさわしい!」

 

一方士道が変身したのは、龍騎とそっくりな姿をしているものの、全身真っ黒な体色、龍騎と比べてつりあがった目が特徴であった。龍騎のものよりも禍々しい紋章をデッキに刻んだこのライダーは、名をリュウガと言った。

 

「しゃッ!行くぜ士道!」

 

「ああ!」

 

二人は三人の精霊に見守られながら、先程のショーウィンドウからミラーワールドへと飛び込んだ。

 




お読みいただいてありがとうございました。今回、士道がサバイブ本編より先に変身を披露することになりました。そして次回は、ようやくファイズを出せる予定です。
ご意見、ご感想などお待ちしています。
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