転生者が思想を残していったそうです   作:にーちゃみ

1 / 5
トーキン村のマーク

 

佐藤太郎、これは前世の名前だ。今はトーキン村のマークである。

気づいたらこの世界にいてかれこれ…何年だろう?まあ、若さが取り柄である年頃だ。

スマホも電話もそれどころか機械すらない、まるで中世の世界で生きている。

はじめは喜んだ。よくある転生物。現代知識で無双やと。

しかし蓋を開けてみれば何も知らないただの凡夫であった。

農業も知らない、石けんの作り方、なんだそれは。火薬?何からできているんだ。

はい詰んだ。

自我を持ち始めて数年は無知な者共に現代知識を教え授けようとしたが無知な者は私であった。

そんな傲慢だった私は当然、村の人に嫌われる。

はじめはそのことの重大性に気づかなかった。

生活レベルが中世、人に嫌われる=この時代では死を意味した。

心からの反省、村の人に挨拶をし、仕事を手伝い、大人の信頼を取り戻し、同世代の子どもたちと遊び、やっとこの時代、場所になじめたと感じる。友もでき、村社会にも認められた。

 

今の目標はこの時代を生き抜くことだけだ。生き抜くというのは、仕事に精を出し、長生きする事だ。長生きというのがこの時代難しそうであるためこの目標にした。まあ、長老って呼ばれるのがゴールだな。

 

今日も今日とて畑仕事だ。

この世界に来て初めて農業をしている。

現代の何だっけ、名前が思い出せない。自動で耕したり、収穫してくれたりする機械、害虫を駆除してくれる農薬。あれが欲しいと何度も思うよ。

試したいがこの時代の村でそんな余裕はないだ。

森も探索してみたいが怖すぎる、私が想像していた森ではなかった。

道はなく、昼でも夜みたいに暗い。そんなところにいる生き物に私なんかが勝てるわけがない。

というか農業で精一杯で何も試せない。

 

また私が知る世界はこの村だけだ。

たまに旅人がやってくるけど最近は来ない。前に来たときはまだ私が傲慢なときであった。

といってもたいした話はなく、村の外のことなど何もない。遠くに大きな町があるらしいで止まっている。

 

 

「何考え込んでるんだ?」

 

快活な声で私に尋ねてくる。彼は私と一番仲が良い友達であるピエールである。明るく優しい性格で一番始めに仲良くなれた友だ。

 

汗を拭い答える、なにもぼーっとしていただけだと。

 

「今日はあそこまでやったら切り上げるか」

 

そうだな。仕事終わりの晩飯の事を考えながら返答する。黒パンと燻製肉が楽しみだ。

 

 

 

私はこの中世レベルの世界で生きている。

意気揚々と太陽に拳を突き立てる。

 

「やっぱ変なやつだな」

ピエールはニコニコと笑っている。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。