高慢残念系美神の眷族なんだが、愛してもいいか?   作:神崎せもぽぬめ

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プロローグ

 

 

 

 『英雄』とは生き様だ。

 

 

 神時代が到来する以前。

 人類は神の恩恵(ファルナ)無しに限界を超越し、大陸の果ての『大穴』から侵攻する怪物(モンスター)共を押しとどめるどころか、逆襲に打って出た。

 

 昔日の『英雄(かれら)』の末路は、その多くが悲劇的なものだった。

 

 けれど、けれど。

 

 『英雄(アイツら)』の生き様は、とにかくカッコイイんだ。

 

 

 だからこそ気に食わなかった。

 

 神と英雄の都(オラリオ)を名乗る迷宮都市で、『英雄』と持て囃された奴等が。

 男神(ゼウス)女神(ヘラ)の眷族共の傍若無人っぷりを極めた、その姿が。

 

 奴等の性格破綻とそれに比例するかのごとき暴力の度合いは酷いなんてもんじゃない。

 

 声を掛ければ挨拶代わりに殴り飛ばされ。

 顔を合わせれば蹴り飛ばされる。

 迷宮(ダンジョン)に潜ったところで、怪物(モンスター)共々魔法で吹き飛ばされる。

 

 弱ければ、存在すら許されない。

 弱いことはそれだけで罪だと、魂にまで叩き付けられる。

 

 昔日の『英雄』と姿を重ねて、密かに抱いていた憧れは───砕け散った。

 

 

 

 『英雄』とは希望だ。

 

 

 英雄譚を読むだけで、心が震え上がった。

 主神の駄女神は本を読んだりするの()()は上手かったので、彼等の危機には手に汗を握り、彼等の勝利に喉を震わせて喜んだものだ。

 

 『英雄』とは、希望を伝播する存在なのだとそう思った。

 

 

 だからこそ奴等が気に食わない。

 

 男神(ゼウス)の眷族の放蕩が女神(ヘラ)の女共に知られれば、大災害抗争(アポカリプス)が引き起こる。

 終末の喇叭の如く奇声を発しながら男神(ゼウス)の男共を『狩り』始める女神(ヘラ)ども。

 そしてそんな大災厄に不条理にも巻き込まれる。

 

 絶望を撒き散らす奴等は『英雄』なんてもんじゃない。いや、マジで。

 

 だから奴等を思いっきりこき下ろす劇を堂々とやってみせ─────気が付けば数十の家屋を貫いて、巨大市壁に叩きつけられていた。

 

小僧(レオン)と似て貴方も生意気ね?」

 

 こちらの必死の抵抗を()()()()()()()()女神(ヘラ)女帝(おんな)は愉快げにそう言った。

 

「ククッ………面白い奴だ。気にいったぞ」

 

 返す斬撃を男神(ゼウス)英傑(おとこ)は人差し指だけで撃滅し、()()()()()で意識を刈り取ってみせた。

 

 理不尽(そんなこと)の連続だった。

 

 隣をみれば、自分とは別の美神の眷族である猪、土の民(ドワーフ)の不良、生意気な小人に妖精と土の民(ドワーフ)が同じように蹴散らされ、ボロ雑巾のように倒れ伏していた。

 奴等の癇に障って玉砕するか、挑んではまた玉砕するか。何度も何度も浴びた屈辱。一矢報いるなんて、夢の果てだった。

 

 

 

 『英雄』とは奇跡だ。

 

 

 どんなに苦しくても、最後には抗う至高にして至光の灯火。

 たとえ一つ一つが弱い光でも、二つ集まれば淡く輝く。三つならばもっと。全て寄れば、太陽にさえ及ぶはず。

 

 どんな不条理を越える奇跡こそ、やはり『英雄』に違いなかった。

 

 

 だからこそ奴等を認めない。

 あんな不条理を体現してるような連中が、英雄であってたまるかと。憧れに唾を吐かれようが、当時の自分は必死に抵抗した。

 

 男神(ゼウス)女神(ヘラ)の二大派閥のうち、主に行動基準と性格が終わっていたのは後者だが、その中でもとびきりの暴虐無尽の女王がいた。

 

 

醜い(ゴスペル)

 

 英雄譚なんかにうつつを抜かす姿が気に入らないと、吹き飛ばされた。

 

五月蝿い(ゴスペル)

 

 ある英雄譚の演劇がうるさいと言われ、舞台まるごとめちゃくちゃにされた。

 

巫山戯るな死ね(ゴスペル)ッ!!!!』

 

 最愛の妹が気に食わない男とデートしているらしく、何故かその怒りの矛先がこちらに向かってきた。

 

 もう訳が分からなかった。

 不条理の塊だった。

 

 

 ………仮に、そう仮に。

 

 万が一、億が一にもアイツらが主役の英雄譚なんてものがあったのなら。

 

 自分より少し歳が上の少女が織り成す蹂躙劇に巻き込まれる道化が、きっと自分なのだろう。

 それ以上でも以下でもない、『弱者の咆哮』を上げるちっぽけな存在が己なのだろう。

 

 

 

 だから巡らせなければ。

 

 本物の英雄を。

 彼らが辿った軌跡と、成し遂げた偉業を。

 途絶えさせてはならぬ、英雄という名の残火を。

 

 

 世界が英雄を欲しているように、憧れが焼き付いた心と受け継いだ想いも、一人でも多くの者に巡らせるのだ。

 

 

 だから証明しなくてはならない。

 

 我々が次代の英雄の担い手であると、他でもない英雄の都(オラリオ)に刻まねばいけないのだ————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きなさい、私の愛し子(アドニス)

 

 青空は無く、灰色の雲に覆われていた。

 神と英雄の都(オラリオ)なんて言われていたあの時がいっそ恋しいと思える程、零落した今の迷宮都市(オラリオ)は嫌に静かだった。

 

 瞼の裏が覚えている黄金期は遥か遠く、時代が告げる暗黒期とやらは人々から笑顔を奪っている。

 

 薄く開けた瞳に映るのは、そんな光景だった。

 

「………もう着いたか。思いのほか早かった」

 

「全く………感謝なさい?この私の膝の上で眠れるなんて、下界には過ぎたご褒美なのだからね!」

 

「『感触は素晴らしかったけど馬車の揺れが気に入らなかったので星1です(笑)』」

 

「店側に非が無いタイプの厄介感想(クソレビュー)じゃない!」

 

 二人の間に流れていた真面目(ドシリアス)だった筈の空気。

 それが一転し、急に霧散する。

 

 黒髪の青年は肩を竦め、彼の主神————美の女神アフロディーテは憤慨した様子だったが………視線を交わしてどうしようもなく笑いあった。

 

「まず都市に入ったらあの白亜の塔(バベル)でふんぞり返ってるフレイヤと、無乳女神のロキのとこにカチコミに行くわよ!『闇派閥(イヴィルス)を抑止すら出来ない都市最強二大派閥さん(笑)』ってね!」

 

「やっぱお前はとことん残念な女神だな………」

 

「だーーーーーれがクソ雑魚残念ツンデレチョロインじゃあ!!!」

 

「そうは言ってねーわ」

 

 周りの視線を色んな意味で奪いながら門の前に立つ。

 

 冒険者のケツを叩きに来たと言っても過言ではない似た者同士の一柱と一人は、暗黒期を終わらせる救世主の如き面持ちで長蛇の列に加わる。

 

 そして、

 

「だ、第一級の上級冒険者!?か……」

 

「「か?」」

 

「確保ォーーーー!!」

 

 

 想定していたものとは異なる形で、元冒険者アドニスと女神アフロディーテはオラリオへ帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

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TIPS

 

 

女神アフロディーテに誘われて英雄の都にやってきてしまった少年アドニス。

 

最強と最凶の眷族—————当代最高の英雄に憧れを抱いていた彼は、男神(ゼウス)の馬鹿野郎共が問題を引き起こし女神(ヘラ)の女共が『狩り』を始める光景に、解釈違いを引き起こす。

 

言うなれば『偶像(アイドル)に彼氏がいることを知って反転アンチになったファン』。

 

 

 

 

 

 

 





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