高慢残念系美神の眷族なんだが、愛してもいいか? 作:神崎せもぽぬめ
思ったより反響があったことについ最近気付いたので、とりあえず続きをば。
行き当たりばったりです。
アドニスは早くもオラリオへ戻ってきた事を後悔していた。
己の主神であるアフロディーテが白目を剥いて泡を吹きながら女神ヘファイストスに
では何が問題か?それは────
「おとうさん……?」
なんか見知らぬ間に娘ができてた件について。しかも金髪金眼の
「アドニス……君、ついにリヴェリアに手を出したのか……」
「おい若作り
「お主も人の親になるとはのぅ……いやはや、人生何が起こるか分からんものじゃ」
「酒の飲みすぎかよガレスの爺さん、アンタにまでボケられるのはもう収拾がつかないから止めてくれ……」
「リ、リヴェリアママがホンマにママやと……!?んなアホな……!!処女受胎……神の奇跡……デキ婚……う、うちは認めんで!!」
「アホはアンタだろこの残念女神」
「だァァれがまな板ツルツルペッタンコ女神じゃボケェ!!」
「だから言ってねえって…………いやなんかこれ最近も聞いたぞ?」
キレッキレの叡智を誇る【ロキ・ファミリア】の団長フィン・ディムナ。超絶怪力の大酒豪、ドワーフのガレス・ランドロック。策略謀略なんでもござれ、天界のトリックスター、悪神ロキ。
二人と一柱は何故か拘束状態のアドニスの目の前でやかましすぎる会話をしていた。アフロディーテのいびきほどうるさいものはこの世にないと思っていたが、コイツらに比べたらアフロディーテの方がまだ静かだと言えた。
その上件の金髪の娘っ子───たしか名前はアイズと言うらしい───は鎖でグルングルンにされているアドニスの顔をグニグニと弄ったり髪を引っ張ったりするので、余計に訳が分からないことになっている。
「ちょいちょいちびっ子ちゃん」
「ちびっ子じゃない、アイズってよんで」
「じゃあアイズちゃんや、ちょっとこの鎖取ってくれない?」
「うんわかった、お父さん」
「いやお父さんじゃないんだけど」
「……だいじょうぶ。よしよし」
「……なんでオレ、幼女に頭撫でられているんだ???」
どうやらアイズはアドニスの事を自身のお父さんだと認識し、その上記憶喪失をしてる可哀想な存在と思っているらしかった。
アイズ曰く、そのお父さんとアドニスの外見はめちゃくちゃソックリで、違いと言えばアイズと同じ金色の瞳であることくらいだと言う。
ヘラファミリアの女達が膨らみもしてないお腹を撫でて「貴方の子よ」と外堀から埋めてくる恋愛テクニック(?)を持っている事をアドニスは知っていたが、純粋無垢な子供の方から「お父さん」呼びされるのはヘラ達が去ってから開発されたテクニックなのだろう。流石オラリオ、世界の中心と言われるだけの事はある。
もちろんアドニスは
ちなみにアイズの母親役をやっている三首領の最後の一人。
今はうわ言のように「デキ婚……処女受胎……アイツと結婚……?……ウッ」と魘されているようだった。
アドニスは今、【ロキ・ファミリア】のお膝元である黄昏の館のフィンの執務室にいた。
何故ここにいるのか。という根本の議論の前にアイズが突然ドアを開けて場を掻き乱して今に至るため、話は全くもって進んでいなかった。
フィンはコホンとわざとらしく咳をして、口元で手を組み顎を支える。
フィンの小さな身体に不釣り合いな大きな執務机だと言うのに、今は何故かそんなに気にならなかった。
「さて、改めてアドニス。久しぶりだね」
「おう。最後に会ったのは八年前くらいか?」
「いや、五年前にふらっと訪れた君が神フレイヤを攫って
「あ〜そんなこともあったな」
フィンとしてはそんなこともあったなぁ、程度で済ませていい出来事じゃなかったが、対
「最近じゃオラリオだけでなく世界全体できな臭い動きが見え隠れしとる。お主のとこの
「それについては問題ないな。ウチの女神の『魅了』で強引に箱庭を作ってやったから、信者の炙り出しは正直楽勝だった」
「ほーん、やっぱ『魅了』ブッパがいっちゃん強いなァ〜」
恐らく
そして来る決起の日。自分達もその流れに乗って波乱を起こすという
ついでに周辺諸国に繋がる動線にも魅了済みのスパイを仕込んだので、決起の際のタイミングも殆ど誤差なく掴める計算だ。
「────
「……そうか」
それっきり黙りこくるフィン。
勇者である彼の脳内では今、果てしない情報の精査が行われているだろう。そこまで賢くないアドニスがそれを邪魔する訳にもいかないので、頭の上に居座る
「もごっ……ゴクンッ。なぁガレス、ところでオレなんでもごっ……ゴクンッ。なんでオレ拘束もごもごっっ!…………ゴクンッ。ちょ、アイズちゃん
「フハハハハハ!八年前までは儂らを振り回してた生意気小僧が、今じゃ
「ちょ、アイズたんここで殺したらマズイで!せめて
「ゴクンッ!勝手に殺害予告立てんな!」
「お父さん、これ、嫌いだった?」
「いやクソ美味いが」
「良かった。じゃあもっとあげるね」
「ちょっ、誰か止めろォ!」
目を輝かせながらありとあらゆる食い物を口にぶち込もうとするアイズに対し、アドニスは必死に抵抗した。
だが離れない。こんな小さな身体に秘められているとは信じ難いほどの力で、彼の黒髪を握りしめる。
「いでででででで!力つんよっ!」
「当たり前や!うちのアイズたんは九歳にしてLv3、そんじゃそこらの幼女とは格が違うんやぁ!」
「……マジかよ」
己を窒息死させようと頭上に寄生している幼女は、オラリオでも希少である上級冒険者だとロキは
そして胴体に巻きついている
「んじゃこの拘束を解いてもらう前に……一体全体、なんでオレはこんな鎖でグルグル巻きにされたか答えてもらおうか」
なんで厳重に拘束されてアイズにも見下されるような姿勢なのにここまで偉そうになれるんだと、ガレスは疑問に思ったが口には出さなかった。
「問い返すようで悪いが、お主ら。オラリオに着いて、先ず最初にやろうとしたことはなんだ?」
そんなもの決まっている。
アドニスは当然のような口調で言った。
「バベルの塔の前の広場で
「はい却下」
思考の渦から帰ってきたフィンが一刀両断する。
たまらず、アドニスはとびきり濡れた子犬のような顔をした。その結果どうやらフィンたちはあまり犬が好きではない事がわかった。
「何度も言うけど、今が暗黒期じゃなかったらその案に賛成していたよ」
そう語るフィンの口調の節々には不甲斐ない感情が染み付いていた。
そもそも暗黒期の到来は
あの規格外の英雄共よりも与しやすいと判断した
「
「…………」
笑顔と希望が覆い隠されつつある暗黒期。
そんな
希望を歌うのも良い。理想も歌う、それも結構。しかしそれだけに固執するのは愚か者のすることだと、フィンは理解していた。
フィンには既に、暗黒期を晴らした未来を見据えている。
アドニスの役割は秩序側の
無論、
────そしてその当たり前の理屈を己の一存で握りつぶす愚者が、アドニスだった。
「違ぇなフィン。舞台に立った時点でもう脚本はお前の手から離れてんだぜ?」
アドニスは跳ね起きた。
両の足でしっかり立ち上がり、フィンの両眼を見据える。
「なら
楽しい場所にオレあり。ならオレが居るところは笑顔が溢れて仕方ない場所であるべきだろ?」
アドニスは
古代から始まり、嘗ての二大派閥が巡らせた英雄の残火を。絶やすことなく歌ってきた。
【歌劇王】の謂れは、そこにある。
暗黒期なんか知ったこっちゃない。今までのように暴れて、秩序も混沌も巻き込んだ喜劇を生み出してやるとアドニスの眼は訴えていた。
「それに、だ。フンッ────!!」
呼気を込めた一声の後、アドニスを縛っていた
「なっ…………」
「バカな……」
「おお〜」
「ふふん」
フィンは言葉を失った。
ガレスはその身で強度を知るからこそ、驚いた。
ロキは素直に感心した。
アイズは後方腕組み娘面をしてドヤ顔をしていた。
「お前らなんか勘違いしてねぇか?」
パラパラと服に着いた鎖の破片を払い除け、アドニスは悠然と言い放つ。
彼が愚者として振る舞える、絶対的な根拠を。
「今のオレはLv.6だ」
この間、リヴェリアちゃんはぐっすり寝ていましたとさ。
良かったね!リヴェリアちゃん(御歳9▉)!