高慢残念系美神の眷族なんだが、愛してもいいか?   作:神崎せもぽぬめ

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第二話 妖精の天敵

 

 

 

 

 リヴェリア・リヨス・アールヴにとって、アドニスとは天敵のような存在だった。

 

 まず一番最初の出会いからして、もうダメだった。

 

 迷宮(ダンジョン)十八階層。通称『迷宮の楽園(アンダー・リゾート)』と呼ばれる安全階層(セーフティポイント)の一つ。

 そこにある美しい泉にて厳重な警備のもと、リヴェリアは一人、水浴びをしていた。

 

 モンスターが出現しない安全階層(セーフティポイント)とはいえ、ここはダンジョンの中だ。油断はせず警戒を怠らないものの、迷宮の楽園の謂れとも言える泉水の美しさを堪能していた時だった。

 

『あっ、どうも〜』

『…………』

 

 上から落ちてきた変態(アドニス)と出くわした。

 

 それも、お互い全裸だった。

 

『…………』

 

 絶句である。

 今まで故郷の王森で大切に育てられてきた箱入り娘だったリヴェリアにとって、異性に裸体を見られること、ましてや異性の裸体を見ることなんて初めての経験だった。

 

『ぁ……ぁぁぁ……』

 

 大木の心?何それ美味しいの?

 

 魔導師は常に冷静を心掛ける?それ、この状況を前にして同じこと言えんの?

 

 

 見られた身体を隠すということも忘れ、ただただ羞恥が全身を巡っていくことだけが分かった。

 

 そして極めつけが。

 

『なんだよロキんとこの王族妖精(ハイエルフ)かよ。ハズレだなァ〜』

 

 全身を()()()()(誇張)ように見た後、そう残念そうに告げたのだ。

 

 

(ハズ、レ?………()()()だと?………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………この私の裸体が?)

 

 

 この時のリヴェリアは、同眷族であるフィンやガレスに言わせれば『お転婆』だった。

 エルフ特有の潔癖症と、美神にも勝るとも劣らないと評される美貌と肉体美(プロポーション)に当然のような自負を持ち合わせていた。

 

 つまり、プライドの塊だったのだ。

 

 

『………死ねェッ!!!』

『え、ちょっ、まっ────』

 

 

 その瞬間からリヴェリアは、絶対破壊究極魔導決戦機動兵器スーパー妖精と化した。

 

『我が名はアールヴッッッッ!!!!』

(意訳:破滅壊滅消滅掃滅殲滅焼滅全滅)

『ギャアアアアアアアア!?!?!?』

 

 

 最早生かしてはおけない女の敵である。人間のクズである。人類に仇なす害虫そのものである。

 

 言わばこれは聖戦。

 

 これからも増えていくだろう被害者の為、ここで抹殺する他ないのだ────!!!

 

 

 

 

 

 

 

 それからというもの。

 

 

『…………貴様、あの時の……!?』

『え〜っと…………………誰だっけ?』

『ッ私の初めてを奪っておいて、良くも抜け抜けと………ッ!!』

『いや絶対その事実はねぇよ!?頭ヘラかよ!?』

『あんな超絶残虐嗜虐(スーパーメンヘラ)女共と一緒にするなッッッッ!!!!』

『ギャアアアアアアアア!』

 

 地上でも地下(ダンジョン)でもお構いなし。

 出会ったが最後、無限追走劇(デス・レース)の始まり。

 

 美しい妖精から蛮族を射殺す残虐な番人にジョブチェンジしたリヴェリアは、走り回るアドニスにどう魔法をブチ当てればいいか模索し並行詠唱を極めることを選択し。

 愚かなる罪人(アドニス)は魔法を捉える超感覚を身に付け、回避術も備えた避けれる変態へと上位進化してしまった。

 

 

 時に共にダンジョン内で遭難し、時にたった二人で階層主に挑んだ事もあったが…………忘却の彼方へ吹っ飛ばしていい記憶だ。務めて忘れよう。

 

 

 

 ともかく、こういう経緯があって、リヴェリア・リヨス・アールヴは、アドニスのことが大の苦手なのである。

 

 だから目が覚めて、アドニスがLv.6になったと聞いた時、もう一回気絶しかけた。現実逃避したくなった。

 

 そんなアドニスは何をしているかと言うと。

 

「いいか?冒険者たるもの力も必要だが、知識はそれ以上に必要なんだぜ」

「うん。リヴェリアもそう言ってた」

「んじゃ、この問題を解け」

「分かった、お父さん」

「……ホントに分かってるのか?」

 

 恐らくこの世でもっとも教師に向いていない人類の一人である宿敵(アドニス)が教師の真似事をしている時点で驚天動地に他ならないが…………【ロキファミリア】の庇護下にある風の寵児、アイズ・ヴァレンシュタインが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ!

 

 下手に強くなってしまったアイズを大人しくさせるのは至難の業である。

 それをこうも容易く成し遂げるなんて…………まさに偉業と言えた。

 

「できたっ」

「おーどれどれ……これなんて書いてあるんだ……?」

「あっ、神聖文字(ヒエログラフ)で書いちゃった」

 

 まぁ私は神聖文字(ヒエログラフ)を読めるが???

 リヴェリアの中の幼き妖精王女(リヴェリアちゃん)が、『わがなはあーるゔ!』と対抗心を燃やしていた。

 

「えッ、神聖文字(ヒエログラフ)書けんのかよ!?天才じゃねェか……!!」

「お父さん……わたし、凄い?」

「凄いってもんじゃねえよ……ヤバいぞ」

「わたし、ヤバいの?」

「ああ、ヤバい」

 

 ゴブリンよりも乏しい語彙力にほんの少しだけ憐れみを抱く。

 

「じゃあ次は実践だ!ダンジョンに行くぞ!」

「うん!」

「とりあえず37階層くらいで腕試しといこうや」

「37階層………!!」

 

 おめめキラキラなアイズがうきうきで装備を整えたところで、ようやくリヴェリアが再起動を果たした。

 

「ふざけるな!アイズはまだLv.3だぞ!深層なんて早すぎるッ!」

「Lv.6のオレ様がいるんだ、余裕に決まってんだろ。な?アイズちゃん」

「うん、よゆーよゆー」

「クッ……!純真無垢なアイズが汚されてしまう……!!」

 

 アイズは最速記録保持者(レコードホルダー)の名に相応しい速度でアドニスに懐いていた。

 ここで無理に引き剥がしてしまえば────

 

『リヴェリア、しつこい』

 

────なんて言われるのは火を見るより明らか!

 そんな事言われたなら、リヴェリアの心は硝子のように砕けるだろう。

 

(クッ……どうすれば……!!)

 

 そんな悩めるリヴェリアの元に、

 

 

「ンー流石に深層まで行かれるのは困るな」

 

 

 勇者(ブレイバー)フィン・ディムナが助け舟を出す。

 

「安全を担保したとしても帰ってくるのに5日は最低限掛かるだろう?キミに加えてアイズも欠けるのは僕としても困るわけだ」

 

 そこで、と一旦言葉を区切り。

 フィンはリヴェリアに目を向けて言い放つ。

 

「地上で開催される炊き出しエリアの警備をリヴェリアとアイズを連れてお願いしたい。高確率で闇派閥(イヴィルス)の白兵たちが暴れるはずだ」

「ま、モンスターも雑兵も変わらないしな。オレはいいぜ」

 

 Lv.6成り立てのアドニスは調整できればそれで良かったのだろう。それを見抜いたフィンは地上での代替案を提示する。

 

 しかしリヴェリアからすればもっと悪い展開になってしまった。

 

「だがフィン、それでは………!」

「あぁリヴェリア、キミの杞憂は分かっているつもりだ」

 

 アイズ・ヴァレンシュタインは強い。

 その年の割に、ではなく、純然たる剣士として、強い。

 けれど、まだ9歳なのだ。

 その頃の自分は何をしていた?モンスターに怯えることなくただただ平穏を享受していた。ましてや同じ人類と争うだなんて、考えすらつかなかっただろう。

 

 だから思う。

 子を想う親のように、人類の悪い側面に慣れて欲しくないと。

 身びいきでも構わない。

 ただ、アイズが人を殺す所を見たくないだけなのだ。

 

 その気持ちを、フィンは大いに察していた。共感すらしていた。

 

 故に、

 

「僕から君へ、冒険者依頼(クエスト)だ。アドニス」

「!」

 

 

「達成条件はアイズの手を汚させずに無傷で帰還させ、且つ被害を決して出さないこと」

 

 つまり全てを救え。そういう指令(オーダー)だ。

 

「報酬は……そうだな、うん。さっきキミが壊した加工型超硬金属(ディルアダマンタイト)製の鎖の賠償金を無かったことにしよう」

「はァ!?ちょ、金取る気だったのかよ!?」

「もちろん……もしかして、自信がないのかい?」

「は?できらァ!」

「じゃあよろしく頼むよ」

 

 コイツの前世はきっと、悪魔だったに違いない。ニンマリと笑うフィンを見て、アドニスはそう思った。

 

 だがやってやるとも思った。

 

 流石に無辜の人々が死んでしまっては、笑えない。

 それに────

 

「じー………」

 

 自分を父親だと勘違いしてるこの小さい女の子に、残酷なことをさせたくない。ほんの短い時間の付き合いだが、そう考えてしまった。

 

「安心しな、オレが守ってやるからさ」

「……うん」

 

 金色の頭を雑に撫でくりまわし、アドニスはあっけらかんに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「安心しな、オレが守ってやるからさ」

 

 派閥の団長(フィン)を前に、堂々と宣言したその冒険者の横顔を、彼女は見ていた。

 

『私は、お前の英雄になることはできないよ』

『いつか、お前だけの英雄に巡り逢えるといいな』

 

 いつか言われた言葉を思い出して、その金色の瞳に滲むような()()を浮かばせて、じっと。

 

 待ち望んでいた瞬間が訪れたかもしれないと、ただ、眺めていた。

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

TIPS アドニスへの評価

 

フィン「Lv.5の時の話だけど、ノってる時は僕らより強いよ」

ガレス「酒もかなり強いのぅ。ドワーフ顔負けじゃ」

リヴェリア「私の前であの男の話をするな!…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………いつか絶対ギャフンと言わせてやる。覚悟しろ」

 

アイズ「………お父さん、じゃない、かも……でも……」

 

 

 

 

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