高慢残念系美神の眷族なんだが、愛してもいいか? 作:神崎せもぽぬめ
プロローグより前のお話です。
あと本日二話目です。
三大
あれほど傲岸不遜に振る舞い、邪智暴虐を体現してみせた奴等の旅路は、華々しい英雄譚の終わりのようにありふれた末路を辿った。
約千年も続いた
勝手に期待させておきながら、
『救世』を望む民草は一様に失望と絶望に顔色を染め、いつもバカ騒ぎしかしない煩い神の連中だって、口を閉ざして思考に耽るばかり。下界に救いは無い、そう物語る表情で……
────ふざけるなよ。
何故分からない?
何故気付かない?
昔日の英雄に憧れたオレ達が、今度はアイツらの神話を繋いでいかねばならないと、何故気付いてやれない!?
気付いているなら下を向いてる暇なんてなかった。
分かっているなら止まってはいられなかった。
燃えたぎる血潮に突き動かされるまま、オレは走り出した。
「ってわけだから、ちょっと世界を巡ってくる」
「君らしい」と生意気な
「相変わらず突飛な小僧じゃ」と酒気帯びた
「二度と戻ってくるな」とお転婆すぎる
「……読めん男だ」と武の求道者である猪はただ呟いた。
「オラリオでさえ、君には狭かったのかもしれないな」と猫かぶりならぬ騎士かぶりをしたかつての悪童が苦笑した。
何度胃を破壊したか分からない
最初は
ここでノリの良い団員を確保し、彼ら彼女らを率いて歌と舞台を練習する為だ。
主神と怒鳴り合いながら脚本を執筆しては修正する日々。古代の英雄たちはもちろん、オラリオで醜聞しか遺さなかった
容赦はしない。
お前らにボコボコにされたオレたちのせめてもの復讐だと開き直る。
黒竜に敗れ散っていった
けれど、託された遺志を告げれば、同じような顔になる。
少しずつ、少しずつ。ほんのわずかな残火が広がっていくような感覚を覚える。
もっともオレは
そこには富があり、名声があり、ほとんどあらゆるもの────英雄さえも望める。
意志は途絶えさせない。灯火は巡らせる。どこまでも受け継がれるような、そんな英雄神話を高らかに歌った。
時には砂漠の国のオアシスを堪能したり、時には海へ行って
もちろん研鑽を怠ることはない。
竜の谷から降りてくる竜共が少しずつ多くなる。その分被害も増える。『学区』の届かない範囲にはできる限りオレが手を伸ばすことにした。
舞うように怪物共の爪や牙を回避し、踊るように剣を急所に叩き込む。
そして思い出すように
夢の中は何処までも続きそうな青々とした草原と剣を持つオレ。
そして、
『─────』
銀色の剣を正眼に構える
温かな日差しが妙に眩しくて相対してる人物の顔は良く見えない。でも、間違いなく、オレに似た誰かだった。
場違いにも、生き別れの兄弟でもいたのかと想像して───即座に否定した。少なくとも故郷と呼べる場所に居た肉親共は全員死んでいるから有り得ない。
なら、お前は誰だ?
その誰何を口に出す瞬間。
銀の残光が目の前に出現した。
『────』
「なッ!?」
己の油断を咎められるような一撃。まずは小手調べ、と告げるような瞬撃。
咄嗟に得物を横に掲げ、防御を試みる。
だが。
「ぐァ……おっっっっもッ!!!」
なんだ、この、衝撃は……!!
この馬鹿力、ホントにこの細腕と細い剣から産み出されているのか?!いやこの細腕はオレと同じだけれども!!言ってて悲しくなってきたぜオイ!
「くそッ……!!」
このままじゃいずれ地面に押し付けられ、首から下が埋まるという愉快な
それを避けるべく銀剣を斜めに滑らせ、斬撃の範囲から転がるように脱出。合わせるように足払いを仕掛ける。
跳躍で軽々と躱されるが、その動きは想定済み。本命はこの剣の一撃に委ねる。
「仕返しだくらえ!」
間違いなく、これまでの人生の中でも最速。
空中じゃ避けられない流星の如きその刺突に直撃を確信する。
そしてその直後。オレは目を疑った。
『─────』
そよ風が吹いた。
そうとしか感じ取れなかった。そのくらい速く、疾かった。
多分、恐らく。不自由な体勢にあった空中からオレの最速の刺突を
どうやって?知らない、分からない。
ただ、オレが見えたのは、
『──────?』
”こんなもんか?”なんて言いたげな雰囲気で
「この野郎……っ!」
懐かしいと思ってしまうことすら、屈辱を増す材料でしかない。
柄を握る手に、力が入った。
「まずはアンタをヘコませる」
剣先を向けて、宣言する。
夢の中だろうと負けてやるものか。
『──────』
「はァァァァァァッ!!!」
『アドニス』
Lv.5
力 :D563
耐久 :B712
器用 :A801
敏捷 :C686
魔力 :F390
【幸運】F
【適応】F
【魔防】H
『魔法』
【グロリアス・ハイヴォルテージ】
【】
『スキル』
【
【
【
・追憶体験。
・英雄巡火。
「一体何の夢を見てるの?アドニス………」
研鑽と冒険の証が刻まれた背中に、アフロディーテは小さく尋ねた。
ステイタス更新中に寝入った己の眷族は穏やかに眠っているようにも、戦っているようにも見える。
さらけ出した背中が語るのは、彼を導く
「文字化け?…………つくづくアンタは常識外れよねぇ。全くしょうがない子なんだから」
女神が懸命に解読と解釈を重ねた新たなスキルは、恐らく神時代の千年の歴史を象徴するもの。
英雄になるという決意と、
「ま、なんにせよ関係ないわ」
毒にも薬にもなり得るスキルを発現させておきながら、アフロディーテはあっけらかんに宣う。
「この私が貴方の物語を見届けるのだからね」
呼応するように切なく光る