と言える話ではなくて。
いえーい!と大声が聞こえる。山に住居を建てて早くも数週間が流れた。もっとも詳しい数字は覚えていない。もしかしたら月単位かもしれない。俺は大声の方を振り向く。秋姉妹は以前話した通りに、人間とはかなり友好的な神らしい。裏で何を考えているのかが分からず、魔法陣越しで話を聞いてみたことから発覚した。感性もかなり人間寄り。成る程、話した言葉に概ね嘘はない。紅葉で忙しそうにしている姿も見える。二人は秋が来たからと大急ぎで働き詰めている。
「まーちゃん!これ、農家さんたちからもらったもの!食べてね〜!」
「わかった」
「期日が迫ってるのにまだ描き終えてない…!」
「魔法では手伝えないぞ」
「知ってるわよ。だからこうして…っ、終わったぁー!」
「追加だ」
「いぎゃぁ…」
魔法陣だけで作られていた家の隣に神社が建てられたおかげで、俺の領土である魔法陣が小さくなっている。まさか巫女に言っていた同棲云々話が実現するとは。言霊だろうか。たまに来るパチュリー先生からの手紙は全て読まずに捨てている。中身に興味はない。咲夜がどうにかなったのなら、恐らくはその身で来るだろう。そうするように紙切れには書いてあったはずだ。中身の改変も今から出来るが、あの館を捨てた手前でそんなことはできない。関わる気もない。咲夜は立派に育った。これ以上関与するのは過干渉になる。
「…ねえ、この手紙って」
「捨てている。今度の夜に全て燃やすつもりだ。」
「えっ」
「姉さん〜、畑周り終わったわよ〜。はぁ…」
「穣子、ちょっと黙って」
「え?」
「この手紙、読まないの?」
「今度の月は満月だ。煙で月が遮られるかもしれないがそこはすまん」
そう言うことじゃないと叫ばれたが、それでも無視。手紙は全て燃やす。そこに違いはない。なんだかこの姉妹、妙に世話を焼いている風だが、神社の管理は全て俺がやっている。その点を考えれば恐らくは俺が世話をしていることになるはずだ。どうしてこうもこいつらは…まあ良い。咲夜が無事で、尚且つこの状況で良いのだと俺が思っているなら。多少は素を出しても良いだろう。…疲れた。十年近く気を張るのはかなり疲れた。手紙を焼いて月を眺めてもう終わりにするとしよう。
「…いや、無理だな。かなり疲れた」
「どうしたのよ急に」
「かなり気を張ってたからな。あの館になんか長居するんじゃなかった。」
「…ね、姉さん、何か変わったように見える?」
「何も…アレじゃない?人の子によくある、ほら、ち、厨二病っていう」
「そんなものじゃねえよ…」
「うわ口調変わった!」
秋姉妹の作る鍋を食い、少しため息。神社で神の作る飯を食うと言うのは、少し罰当たりに思える。かなり疲れたこともあるが、それ以上に触れておきたいことがある。この二人は秋が来たからと喜んでいるが、満月はいつどこで見るのか。姉妹揃って見るのなら、その視点から月と被らないように煙を焚くようにするから教えてもらいたい。が、何故かその話をしたら神社を追い出された。なんなんだ、あの姉妹は。とても神様の態度とは思えない。俺の魔法陣に寝転がって愚痴る。
「燃やすくらい良いだろ」
「ダメだから!縁を切るのはダメ!」
「そうよ。せっかくの縁なら持っておいて損はないの。」
「…日の入りだぞ」
「あ、本当」
「今年の私はかなり頑張ったから、相当人間たちに喜んでもらえるはず…!」
「一年の集大成ってことか」
「ええ!…まあ、手紙のことは好きにして良いわよ。」
「ちっ」
「じゃあ燃やすか」
煙が昇る。そう言えば、こう言う話を知っているだろうか。煙を焚くと、中を通る線が見えるのだと言う。パチュリー先生に教えてもらった迷信に近い何かである。まあ原理も何もない。煙を通すとモノが見えるようになるのか、モノを見るのに煙が必要なのかは分からないが、今この場においては関係のない話ではある。何せ煙を通るものなんて無いためだ。魔法を煙に通したこともあったが、透明にした魔法陣が見えることはなかった。煙が通らないような魔法陣はかなりバレバレだったがな。
「…ん?」
「み、みんな喜んでくれてるわよね…」
「お月見泥棒してるのよ、姉さん。ここからじゃ見えないけど…」
「…んん?」
煙の調子がおかしい。いや違う。煙じゃない。何がおかしい。何か、瞬く間に変わったような。変化が微妙すぎて分からないような。それとも…いや、何も変わって無いな。うん。変わってないことにして俺は知らんぷりを決め込もう。決め込んで寝るとしようかな。煙が出終えたのを見て、灰の山を空間移動魔法で風に飛ばす。うむ、風に乗って運ばれる灰はどうにも空に昇る姿が似合う。が、そんなことはお構いなしに後ろ手前姉妹が騒ぐ。一年の集大成だから仕方ないは仕方ないが。
「…俺は寝るぞ」
「あんなに綺麗な月なのに?」
「月は月だ。美人がいつ見ても美人なように、いつ見ても同じだ」
「あら嬉しい」
「今のは妹の容姿に関してだ。お前に関することでは無い往ね」
「ひどっ」
「…ねえ、誰かこっち来てない?」
「…俺は消える、じゃあな」
空間移動魔法を用いて逃げようとした瞬間、目の前を開くはずの魔法陣が解けた。慌てて飛来する奴らを見る。紅魔館の主人、レミリアである。咲夜にかけた魔法を感じ取るに、未だ死んではない。その上で、来るならパチュリー先生が来るようにとも釘を刺している。いったい今さら何をしに来たのか。もう一度魔法陣を作ろうとして、何度も失敗する。何故こうも失敗するのか。パチュリー先生の手紙を焼いたからか?仕込まれたか。レミリアが目の前に迫り、抵抗も虚しく捕まえられた。
「…なんだ」
「異変よ。手伝ってもらえる?」
「断固拒否」
「ウチのまーちゃんを誑かさないでもらえる!?」
「元はウチのよ」
「今の話をしているのよ。貴女も今の話を解決しに来たんじゃ無いの?」
「私は昔の恩を返せと言っているの。ねえ?」
「今ここで紅魔館に仕掛けた魔法陣を起動させることもできる」
「パチェが何もできない、とでも?」
弓矢を携えた謎のあいつが、不思議しかない咲夜を見て驚いたあいつが、出てくるぞ!
今作品では特に意味はない驚きだ!
普通に主人と同じような能力待ってる奴を見たら驚くよね。