目が覚めた時には既に傷は塞がっていた。何をされたのか、何をされてないのかも分からない。変な部屋で胸元を弄られた覚えならある。目まぐるしい変化が終わった時には妙に硬いベッドに寝転がっており、本当に何をされたのか分からない状態のまま放置されていた。横にはレミリアだけ。なんでこいつなんだ気を失ったような体験の後には昨夜の顔を拝みたかったのに。こいつの顔に福はないだろう。悪魔を自称するやつに福がつくなら巫女の顔には神がつく。
「あら、起きたのね」
「咲夜には…そうだな、『マッスルお兄ちゃんは矢で受けた傷を筋肉で埋め自然治癒力でその傷を治した』とでも」
「事実そのままに伝えるわ。それで、体の調子は?」
「多分万全。じゃあ帰る」
屋敷の中を彷徨き、なんだかよく分からん囲いを見つめながら門を探す。その途中で妙に怯えるウサギを見つけた。電気信号を増やす魔法を使って案内させる。…そう言えば、あの姫君も永琳も、何故か痛がらなかったな。本当に発動していたのかも怪しい。電気信号が出ている時はどんな一瞬でも痛みは走るし動きも阻害されるはず。電撃に耐えられるような種族なのか?それとも死なないことにカラクリがあるのか。門に近づくと、センスのない服が出て来た。配色がまず気持ち悪い。
「担当医になんの断りもなく退院するの?」
「目に毒だ」
「おおっあおじ、ぃぃ」
「会話が成り立ってないわね。てゐは何をしてるの?」
「電気信号を流し続けてる。お前には効かなかったけどな」
「ああ、あれね。電気信号の元が分かれば対処は簡単よ。絶縁体を一枚被せてたし」
「姫は」
「輝夜はそもそも永遠と須臾を操るのよ。だから貴方、厳密には輝夜に触れてすらないんじゃない?」
よく分からないな。まあ理解しなくても良いんだろうけど。ウサギを手放し、魔法陣に乗って上昇。そもそもここがどこかすら昨夜は確認できなかったのだ。魔法陣での空間移動もままならない。上空である程度の位置を把握し、空間移動をしようと思った時に目の前を矢が通る。何故だか永琳はまだ殴り合いたいらしい。わざわざ下に降りて話を聞くことにするか。是非とも無意味な矢であることを祈りたいのだが、未だ弓矢を構える永琳の姿勢からはそんなものは読み取れない。
「何」
「貴方の名前は?」
「…正和」
「そう、良い名前ね。」
「それだけか?」
「それだけよ。どこかで見たことがあると思って名前を聞いておきたかったの。」
空間移動で秋姉妹神社の隣に移動する。この神社の名前はいつの間にか決まっていた。経緯は知らない。一応秋ではあるのでまだ穣子は外で活躍中だとか。姉の方は秋の前、夏の終わりが一番忙しくなるためもう後一年は絵を描いて紅葉に塗る色を決めているらしい。働き者な神である。それに比べて何故か俺の魔法陣、そのど真ん中にいる鬼ときたら。魔法陣で空間移動魔法を使い、どこかに送る。
「…疲れた。」
「あれ、帰ってたの?」
「なんだ静葉、帰ってたら悪いか?」
「そんなこと言ってないわよ。月見しながら食べようって穣子が作ってたお団子。まーちゃんの分残ってるけど食べる?」
「…食べる」
全く働き者な神である。ありがたい。団子…待てこれ餅だな?新年でもないのにどうして餅が出ているのかは知らないが、腹には溜まる。団子よりもありがたいかもしれない。太陽を見る限り、まだ午前中だろうか。静葉の後ろをついて行き神社に入る。何故管理している奴が招かれる側なのか少し疑問だが、まあ住んでいるのは神だ。仕方ないと割り切る。しかしこの場合、俺は神主ということになるのか?…そもそも神主って何やってるんだ?秋以外ほぼ何もしてない神が住み着いてる神社で神主って、何をするべきなんだ?
「うぅ…酷い」
「口に出てたか?」
「バッチリ」
「そうか。穣子は」
「午後には帰って来るわよ。最近、神社が出来たって人里で騒いでるらしいわ。まあ場所が場所だから、人なんて来ないと思うけど」
「管理人は隣家の人間だけどな」
「…あ、でも一人来てたわね。昨日。霧雨魔理沙って子が」
「?何言ってんだ、昨日は異変とか言ってただろ」
「…まーちゃん、二日帰ってこなかったよ?」
「は?」
どうやら二日間寝ていたらしい。目まぐるしく視界が変化したのに、二日間。二日間も寝ていたのか?それとも二日間ぼーっとしていたのか?目まぐるしく変化した視界の正体がわからない。なんだったんだ、あれは。まあ正体のわからないものはわからないままで良い。副作用が出なければ別に無視してれば良いし。帰ってきた穣子が持って来た野菜や肉を食べ、境内をある程度掃除して、今日は終了。魔法陣に戻り、眠る準備をする。あれ、布団がない。どこにやったかな。
「布団はこっちに移したわ!さ、寝ましょ!」
「穣子うるさい」
「…そういえば、霧雨はなんて言っていた?」
「あの子?あの子はねぇ…そうね、まーちゃんについて話してくれたわね。今入院してるんだって。それだけね」
なんとも律儀と言うべきか。ようわからんが、伝えてくれたらしい。だから帰って来ても詳しく聞かなかったのか。神社の中で眠る準備をしていると、社の戸が叩かれた。誰が尋ねて来たのか。無視して眠る。秋姉妹神社の世話を誰かに押し付けようと画策したいが、押し付け先が今の所霧雨しかいない。押し付けてまた別の山を見つけてそこで暮らすようにしたい。まさか適当な山を見つけて住もうとしただけで神に付き纏われるとは。誰も思いはしないだろう。
「正和ー!」
「時間を考えろ霧雨」
「退院したなら教えてくれよ!宴会やるんだからさぁ!」
「不参加。じゃあな」
「ちょちょちょ、ダメだって。宴会やろう?」
「断る。」
寝ていた二日間にあったこと
紅魔館のレミリア不在によるフランドール主人化&咲夜が不安で仕事が手につかないことによるパチュリーノーレッジ従者化、それに伴うフランドールの独裁化