ええ。正和の血よ
きったね
「なんで秋姉妹まで来るんだ?」
「まーちゃんの親とか知りたいもの」
「私はただ楽しそうだから」
何が何やら。なぜこんな目に遭っているのかも聞きたくないのだが、とにかく俺の出自を調べようぜって感じでこうなった。俺としては最近よく噂の僧侶と道士みてーな奴を見ておきたかったのだが、どうやら叶わないらしい。尤も命の恩人たる永琳の言い始めたことなら無視はしないが。とにかく、出自の調査ということで血液を採られた。前採らせたよな。捨てたらしい。後は細胞とか言って頬の皮を採られた。血が出るくらいの厚みで。あんまり痛くはなかった。
「まーちゃんの出自ってどんなものかしら」
「そもそもまーちゃんは幻想郷出身なの?」
「知らん。わからん。咲夜と出会ってから紅魔館にたどり着くまでが幻想郷なのかもわからん。最初の方は言葉もわからなかったし。」
「…西洋の妖怪に日本語教えられたのね」
「そこもあんまり覚えてないんだよなぁ。異変前はそんなに外出てなかったし。」
「あれ、お医者さんどこ?」
どこかに行っていた。そしてどこからともなくやってきた鈴仙が神様二人を追い払い、まだ少し時間がかかるとのこと。なんだか面倒な話になったな。帰ってるから家に結果を届けてくれないかな。無理か。個人情報なんとかって、月に住んでた奴らだからなのか知らないけど変に厳しいな。鈴仙の扱いに対する皆んなの反応くらい厳しいと思う。でも俺はその厳しい側にいるから庇いも慰めもしない。またビリビリさせてやろうか。…永琳がまだ来ない。俺の血液ってそんなに検査しづらいの?悲しい。
「師匠はまだ時間がかかるみたいです」
「残念」
「私とお話でもどうですか?」
「…見合い?」
「違いますね」
「暇つぶしならなんでもどうぞ」
「じゃあ…趣味は?」
「見合いだろこれ」
俺はそんなに条件良くないぞ。神社と姉妹の神と最高の妹が付いてくる。妹目当てなら妹に直接当たりにいけ。そんで砕けてこい。どうやら違うらしい。趣味。魔法としか言えないな。魔法と走り込みと、妖怪狩り。秋姉妹では何故か妖怪が出没するため、見かけ次第狩っている。数日に一回は山頂からかなり降りたところまで妖怪を狩りに行ったり。運動不足解消にも良いからなぁ。…まあ、ここの姫君にでも勧めてみれば良い。そこそこに強いだろうし、そこそこに運動不足だろうし、死なないし。人の役にも立つ。
「姫様殺す気ですか?」
「死なねえんだったら殺さねえよな」
「はぁ…あ、師匠」
「…お待たせ。鈴仙、席を外してくれる?」
「あ、はい」
なんだか空気が重い。どれくらい重いかというと、静葉が紅葉を塗っていた時に穣子がやらかして大混乱で紅葉をくしゃっと潰した後の二人揃う食卓並みに空気が重い。静葉も穣子もこちらに視線を送ってくる。こんな日が、だいたい一年に一回はある。今年はまだだったかな。とにかくそれくらい空気が重い。後の例は、レミリアがノーレッジに館の修繕を頼んだ後に出てくる、門番の気持ちくらい重い。己の必要性を何度も聞いてくるくらいには重かった。
「…貴方、本当に平凡な人間よ。魔法が使えるのは多分後天的なものかしら。」
「ん、そうか」
「ただし」
「今のでただしって付けられるのか?」
「ここでは私が語法よ。正和…貴方、変な記憶とかない?」
「どんな」
「親に殺されるような」
「あるわけないだろ、そもそも親がおらん」
「私の思い違いなら良いんだけど、一応ね。貴方の人生を穏やかにするための純粋な助言よ」
「長い」
「純孤とか言う月人には気をつけて。出来る限り接触は避けなさい。」
ジュンコって誰だ。そう聞くよりも早く話を切り上げられ、鈴仙に秋姉妹の場所まで移動させられ。そこにいたのはここの姫君と何故かお手玉して遊んでいる秋姉妹。見捨てて帰ろうとすると、急にこちらに反応して来た。一緒に帰って、永琳の言葉を反芻する。ジュンコ、月人。どちらも聞き覚えがない言葉だ。ジュンコは名前だろうか。それとも種族的なものだろうか。まあそんなことは今の俺にはわからないからどうでも良いな。誰か知っていそうな奴がいるだろうか。そもそも月人を知らんな。
「結局出自は分からなかったのね」
「そうだな。永琳でも分からないなら基本誰も分からんだろ」
「そんなに信頼できるの?」
「純粋に頭でも魔法でも弾幕ごっこでも負けた相手だからな。」
「へぇ…姉さんとは大違い」
「人気でも魅力でも負けてんのか?」
「まーちゃんのご飯はもやし炒めで良いね?」
穣子の飯は大根を細かく千切って白米の上に乗せたもの。静葉の飯は鍋。…悪いのだが、言い出したのは穣子なのだから俺にはもう少しマシな飯を出すべきだろう。少なくとも穣子とは逆のはずだ。いやでも大根だけで白米…いやそれでも、量自体はそちらの方が多いのだから、やはりその白米ともやし炒めは逆であるべきだろう。どうなってんだ。どうもなってねえんだ。悪ノリなんかするんじゃなかった。後悔の味が染み付いたもやし炒めは、普通に一口目で味に飽きて二口目から水で流し込むことになった。
「月人かぁ…」
「月なんか見てどうしたの、まーちゃん。」
「今日は満月だなあって」
「…秋以外で満月!?今年は厄年ね!厄払いしなきゃ…」
「穣子〜、静葉がおかしくなったぞー」
「姉さん早く寝てよ…」
永琳先生、これって…
ええ。出自不明、ガチで分からないわ
月に帰れや