人里に来ている。理由としては、最近宗教活動が活発なためだ。もしかしたら博麗霊夢が呼び込みをしているかもと思い来た。結論からすれば、見つかる前に一度帰った。秋姉妹神社に住んでいることがなぜかバレて野菜を押し付けられたためである。里の外には厳しいんじゃなかったか、お前ら。そして博麗霊夢も見つからず、適当によく分からん格好で布教している集団を眺めている。何を言っているかもよく分からん。そのうち里の至る所に張り紙しそうな勢いだ。人外感覚である。
「あれ、何やってるんですか?」
「早苗こそ」
「正和さんこそ」
「…布教活動してる霊夢が見れると思ってな」
「じゃあ無理ですね。あの人は布教活動してませんよ」
「だろうな。で、早苗は?」
「その布教活動をしに来ました」
「そうか」
なんだか訳が分からんが、とにかく布教をするらしい。大通りというわけでもないのに、なぜこの道で布教するのか。そして博麗神社としては客を取られ続けているが大丈夫なのか。更には秋姉妹もこれで良いのか。…まあ、良いんじゃないか?少なくとも秋姉妹は秋に信仰されるだろう。博麗は知らん。そこでとあることを思い出した。空飛ぶ船とどこかに消えていく変な魂の異変。尼さんと良く分からんやつになったらしいが、もしや目の前にいるよく分からん格好している奴がその片方なのだろうか。いや俺も男なのに妖精のような服でかなり変ではあるのだが。
「…まあ良いや。早苗、近くの寺ってわかる?」
「鞍替えですか!?」
「お前の鞍ではない。あれだ、尼さんを見に行く」
「…ああ、そういうことでしたか。でしたら布教活動が終わるまでお待ちください!」
自分で探すか。人里に通う妖怪から、魔法やらなんやらを扱う時は路地裏でやれと言われているため、路地裏で空間移動。人里を抜ける。ちなみにやったことがバレると博麗神社がどこまでも追いかけてくるらしい。逃亡生活である。悪いが死にたくないのでかなり丁寧にやった。バレてないだろうな。バレてたらどうしようもねえな、フランドールにやれって言われたことにしよう。そうすれば死ぬのは免れるはずだ。人間は妖怪より弱いからね、仕方ないよこれは。空を飛んで、とりあえず変な建物巡るか。
「ここだわ」
「ここだわ!!」
「…お前誰?」
「私はかそだ」
「ここって寺?」
「…はい!」
「今って尼さんいる?」
「いません!人里に」
「あれが尼さんかよバケモンみてえな格好してんな」
「…」
後この山彦うるせえな。いやそんなことはいい。確かここの尼さんとは別の、よく分からん格好のやつがいたはずだ。俺が見たのはそいつかもしれない。しかし、本人がいないのなら確認が取れない。人里との位置関係を頭に叩き込み、空間移動で人里の路地裏に戻る。目の前に博麗霊夢。空間移動を伝って寺の前へ。…やらかしたか、これ。いやでもまだ…多分、博麗霊夢の見間違いとして処理できるかもしれない。期待できないな。仕方ない、妖怪に脅されたことにしよう。誰にしようかな。ノーレッジとかにしとくか。後で詫びの野菜と手紙渡して許してくれるかな。
「見つけた」
「早えよ」
「初犯だから容赦するけど、次はないから。」
「ありがたや」
「…で、正和はなんでここにいるのよ。信心なんて持ってないでしょ」
「魔法を扱う尼さんの話を聞いてな。見に来た」
「…それなら期待外れだと思うけど」
「?」
「そいつの魔法、ほとんど身体強化のはずだし」
ほとんど。つまりは、身体強化の魔法が幾つもある。つまりは効果を重複させてあり得ない強さで殴ったり出来るということか。…脳裏に星熊勇儀がチラつく。出会ってすぐに死ぬかと思ったあの怪力化け物だ。…いや、身体能力ばっか使う魔法使いだからと言って、それに尼さんだ。重複させても、吸血鬼と並ぶ腕力が精々だろう。そうであってほしい。むしろ星熊勇儀くらいの化け物が何人もいてたまるか。あんな化け物両手で数えれる数で十分だ。それより多かったら世界が狂う。
「後萃香が会いたがってたわよ。じゃ、伝えたから」
「えっ」
「…えっ!!!!」
最後に存在を醸し出そうとした山彦に威力最大の電気信号を流し、失神させる。伊吹萃香、つまりは鬼の四天王。自称ではあるが。星熊勇儀も鬼の四天王だ。…どう見積もっても同等の力はある。鬼を避けて生きていくには、やはり博麗神社や妖怪の山との関わりを断たねばならないのだろう。が、残念ながら断てば、今後妖怪退治と称して殴られる可能性がある。無理か…断念である。それほどまでに俺にとっての星熊勇儀はトラウマなのだ。帰ろう。山彦うるさい。俺は帰るよ。
「あー怖かった」
「あら、まーちゃんおかえり」
「今お客さん来てるから静かにね」
「誰?」
「豊郷耳って人よ。今挨拶回りしてるらしいのよ。」
居間に入るとすぐにわかった。見た時の一回目の言葉は、ため息に取られた。今挨拶回りをしていて、魂云々の噂で聞いたオーラ。霧雨から聞かされていた格好。間違いなくこいつが噂のよく分からんやつである。そしてそれと同時に、あのめちゃくちゃ変な格好で布教していたあの女が、俺が見たがっていた尼であることが確定した。その二つの事象に対するため息。そして、目が合った時のいやらしさ。恐らくは万人が嫌うものではない。寧ろ万人が有り難がるだろう。だからこそいやらしいのだ。
「どうしたの?」
「あいつが帰るまで外歩いてる」
「…苦手?それとも好みだった?」
「苦手。静葉に伝えとけ、あいつ胡散臭いぞ。穣子もちゃんと警戒しとけよ」
「…私?」
豊郷耳「ん、君が━」
正和「はぁ…」
豊郷耳「えっ」(扉閉まる)
これくらいのスピード感